インターミッション [ 一章 → 二章 ]
● ここまでのあらすじ。
小説家志望の堀江咲也は、遂に本願成就!
ライトノベル界の登竜門と言われるコンペの最終選考に残り、いよいよ結果発表当日、編集者から電話連絡が来た! ……という段階で異世界へ召喚される。
異世界ライターが異世界召喚である。
召喚された先の王様からは「余の影武者を務めてくれれば、対価として貴族生活を保証する」というアメをチラつかされ、咲也以外の召喚同期生全員がそのオファーを受諾。
咲也も流れで、その契約を結ぶことになってしまう。
咲也の召喚同期生『ブラザープリンシィズ』は、王様曰く「並行世界の自分」らしく、
顔は全員、王様と瓜二つ。
見栄え的には、おそ松さん状態である。
そんな彼らだったが、それぞれが別の世界で別のバックボーンを以って過ごしてきた者であり、
各人各様のスキルを持ち合わせていた。
ある者は芸術、ある者は技術、ある者は身体的能力、と、元の世界で培ったスキルを用い、
発展途上の中世風世界で爆発的アドバンテージを発揮する、という異世界召喚者のお約束的展開で貴族生活を謳歌した。
ただ一人、咲也を除いては。
堀江咲也(小説家(の卵))の能力と言ったら、テキストベースの物語を書くことだけだが……
そもそも識字率が全然の中世風世界では、マーケットが存在しない。
貴族は伝統的なオペラを好み、
庶民は吟遊詩人や琵琶法師を聴く。
音楽もトークも絵も、何も嗜みがない純作家の咲也には、出る幕がないのだ。
結果、
酒浸りのニート貴族と化した咲也だったが、
テュルミー中尉と名乗る謎の軍人にスカウトされ、思想警察なる怪しげな組織で邪教徒の取り締まり任務に携わることに。
その任務の最中、
自称・流しのハートフルケアマネージャーなるコスプレ女、ルッカ・オーマイハニーと知り合いになったり、
帝都一のお節介見合いババア、アルコ婆から、熱烈に見合いを勧められたり、
(自称)小説家・堀江咲也の異世界人生、果たしてどこへ行く?
● ここまでのあらすじ - その2
何故か、超やり手見合いババア、アルコ婆さんにロックオンされた堀江咲也、
「独身の男はいねがー! 適齢期の男はいねがー!」と、なまはげ並みの勢いでストーキングを受ける羽目に!
「異世界など未練はない、一刻も早く元の世界へ戻って、売れっ子小説家として生きる!」
と決意する咲也は、アルコ婆の追跡を必死に避け続けるも…………遂には、根負け。
「一度だけ!」との約束で、アルコ婆プレゼンツの見合い話を受けるが……
見合いの席に現れたのは、嘘みたいに美形の眼鏡エルフ・ジュンコさん。
その、あまりの美しさに、決意が揺らぎかける咲也。
心の揺れをアルコ婆に察知され、危うく縁談をOKしてしまいそうになる咲也だったが……
「破談の使者」は突然現れた!
災厄の龍が帝都を襲ったのである!
もはや、見合いとかやってる場合じゃない!
一兆℃のドラゴンブレスで帝都を焼き払う龍を前に、果たして咲也、ルッカ、アルコ婆の運命や如何に!?
● キャラクター紹介
堀江咲也
ライトノベル界への登竜門、連撃大賞の最終選考に残り、「編集者から連絡が来た!」の所で異世界へと飛ばされた、“自称・日本で最も運の悪い作家”。
作家デビューしてないけど。
妙に義理堅く、倫理を尊ぶ性格は、お婆ちゃん譲りのものらしい。
翻訳妖精
異世界では特に珍しくもない妖精種の中でも、コティングリー種と呼ばれる種は、特に言語に対する秀でた感覚が認められ、
尻尾を宿主の神経系にブッ刺すことで、思考を共有できる荒業を備えるが、
妖精さんと宿主との間には相性問題が存在し、マッチングが適合する確率は一割以下である。
ルッカ・オーマイハニー
自称・流しのハートフルケアマネージャー。
昼間っから酒場で飲んだくれているようなダメ人間に、「幸運の絵画」を売りつけてくる、「(咲也曰く)近寄ってはいけない危険人物」。
困っている人を探し当てるのは非常に優れているが、人を見る目は全く無い。
アルコ婆
自他ともに認める「帝都一のお節介見合い婆」。
一度目を付けた獲物(独身男/女)は、成婚するまで決して許さない、マムシの仲人。
特技は、人の素性を見抜く千里眼と、好みの性癖を見抜く人間観察力。
常に数百人のマッチング相手を抱える、凄腕婚活コーディネイター。
テュルミー中尉
帝都の邪教徒を取り締まる組織、「思想警察」の首魁。
マクシミリアン帝の開明施策を拠り所に、帝都を我が物顔で荒らし回る権力の犬なので、
民からは非常に迷惑がられているが、
思想警察の隊士からはカリスマとして慕われている。
マクシミリアン帝
咲也たち十二人「ブラザープリンシィズ」を召喚した、現国王。
啓蒙主義に基づいた開明施策で、「文明開化帝」の異名を持つ賢王。
教会や貴族が秘匿してきた知識を広く解放したことで、民からの支持も篤い。