家無き子3
17時00分 名楠町中央公園
三叉槍の石突きが地面に重く突き立てられる。
柄を握る手は小刻みに震え、血が滴り落ち、大きく肩で呼吸しながら槍を杖代わりにやっと立っている状態の新入り
そしてそれを囲むように立つ三人の騎神
この絶望的な状況でも新入りの瞳に宿った闘志は変わらない・・・
それでもやはり3対1の数的不利に合わせ身体中に負ったダメージは大きく、足下に溜まった血だまりがそれを物語っている。
「とりあえず、さっきのジジィはもう戻ってこないだろう。つーことでコイツは俺がいただくってことでいいか?」騎神⓵の提案に騎神⓶⓷は仕方なさそうにうなずく。
「んじゃ、遠慮無く!」騎神⓵は新入りが杖代わりに突いていた槍を足で払う。
支えを失いその場に倒れ込む新入り
立ち上がろうとする新入りに今度は背中を踏みつけ大きく鎌を振り上げ、新入りの襟首目掛けて振り下ろす。
だがそこに火球が飛び込む。
騎神⓵は突然の出来事に驚き、鎖鎌を構え直して火球の飛んできた方を睨み付ける。
そこには大剣の切っ先を突き付け構える竜馬と、その横でめんどくさそうに頭を掻きむしる闘気が居た。
「行くよ!闘気!!」竜馬の掛け声に「はぁ~・・・」と心底呆れたようなため息を吐きながら闘気が続く。
ーー7 竜馬の必殺技 ーー
騎神たちに気勢の唸り声を上げながら接近する竜馬
大剣を引きずりながら真っ直ぐ向かって行く。大剣の切っ先が地面を削る度にバチバチと火花を上げる。それが大剣の熱量を表し、刀身内の炎の勢いが竜馬のヤル気と覇気を物語る。
それを見て構える三人の騎神に対し、勢いよく飛びあがり「必殺・・・」この言葉を聞き闘気が足を止める。「あのバカ・・・」
「大・炎・上!!」気合の入った声とともに空中で上段に構えた竜馬が大剣を地面に叩き付けた。
次の瞬間、叩き付けた先から大爆発を起こし、爆風で砂煙が舞い上がって視界を奪いその場にいた全員が咳込む。
徐々に砂煙が収まり視界が戻るとそこには砂煙で咽び涙目になる三人の騎神と新入り・闘気、そして『大炎上』の爆発でできたクレーターの中心で自信満々に構える竜馬がいた。
『さぁ来い!!』と言いたげに構える竜馬の頭を闘気が後ろから叩く。
「このバカ!!いきなり必殺技使うやつがあるか!」闘気の思わぬ突っ込みに対して叩かれた頭を押さえキョトンとする竜馬
「だって大炎上気合入るし、派手でカッコイイじゃん・・・」竜馬の言葉に呆れて声も出ない闘気は諦めたのか直刀を構え戦闘態勢に入る。それを見て竜馬も構え直す。
「行け竜馬!」闘気の合図とともに騎神たちに向かって行く竜馬
それに対し騎神⓶が盾を構えながら前に出て竜馬の攻撃を受け止めようとするが、騎神たちが竜馬に気を取られている隙に闘気が騎神たちの側面に廻り斬撃を飛ばし牽制
闘気の動きに驚いた騎神⓶は斬撃側に盾を向け防御、無防備になった騎神⓶に竜馬の大剣が迫るが、そこに騎神⓵が飛び込み竜馬の攻撃を受け止め、そのまま鍔迫り合いになる。
同時に闘気は騎神⓶に斬りかかる。
騎神⓶は盾を構えて攻撃を受け流しつつ後退る。
「おい、新入り!一応助けてやったんだから騎神⓷の足止めぐらいやってくれよ!!」騎神⓶の盾を何度も斬りつけながら新入りに呼びかける闘気
それを聞いて立ち上がった新入りは槍を騎神⓷に突きつけ構える。
すでに三人相手に戦い満身創痍にも関わらず、その構えは鋭く闘志に満ち、鋭い眼光から放たれる殺気に騎神⓷は圧倒される。
『あれだけ俺らに痛めつけられて、もう立っているのがやっとのはずだ・・・出血量からしても意識が朦朧としてるはず・・・・・なのに・・・なんで、なんで立ち上がる!?なんで戦おうとする!?なんで・・・なんでまだ勝つ気でいるんだお前は!!?』新入りの気迫に圧される騎神⓷
ここに竜馬VS騎神⓵ 闘気VS騎神⓶ 新入りVS騎神⓷の構図が出来上がり、それぞれの一対一の戦いが始まる。
ーー8 騎神の戦い ーー
・竜馬VS騎神⓵【雷猿鎖鎌】
竜馬の一撃を鎌で受け止めた騎神⓵は両手と持っている大剣を素早く鎖でグルグルに巻き付けて拘束、距離をとって鎖を引き竜馬の腕を締め上げる。
鎖が腕に食い込み苦悶する竜馬、それを見て「どうだ?鎖鎌相手に下手に向かって行くとこういう目に合うんだよ。いい機会だ!さっき邪魔してくれた分、たっぷり痛めつけて殺してやる!!」そう言って鎖を操り竜馬を跪かせる。
悔しそうな表情を浮かべる竜馬を見て騎神⓵は高笑い、鎖を操って投げ飛ばしたり地面に叩き付けたりと竜馬を弄んだ。
嘲弄する騎神⓵に遂に堪忍袋の緒が切れた竜馬は切歯扼腕、鎖の巻き付いた腕を怒りに任せて思いっきり引っ張り上げる。
その勢いで手前に転ぶ騎神⓵『しまった!』と思った次の瞬間、竜馬は逆方向へ走り出した。
騎神が立ち上がるよりも早く走り出した竜馬に引きずられる騎神⓵、引きずられながらも抵抗しようと鎖に電流を流そうとするが、地面や落ちている石に体のいたるところを打ちつけ集中できずチカラを込められないでいる。
鎖鎌を離せば引きずられずに済むかもしれないが、武器を手放すと騎神の能力が使えなくなり一対一の場合不利になる。
しかも竜馬の両手に巻き付いた鎖は先程弄んだせいで複雑に絡まり外すのも難しい、この状況に騎神①は焦り始める。
次の瞬間、竜馬は急停止し全身の筋肉バネをつかって勢いよく鎖を引き上げる。
その勢いにのって引き寄せられる騎神⓵
生き残りを賭け鎌を振るうが、その一撃が竜馬に届くことは無かった。
鎖鎌の鎌に比べ、リーチに勝る大剣が騎神⓵の身体を一刀両断
騎神⓵は鎖鎌とともにオーブとなって竜馬のベルトの石に吸収されていった。
腕に巻き付いていた鎖も消え去り、自分の中で力が増していることを感じた竜馬はニカッと笑って大剣を天高く突き上げて勝利の雄叫びを上げた。
・闘気VS騎神⓶【土蛸盾】
竜馬の勝利の雄叫びがこだまする中、闘気は呆れ顔で騎神⓶と対峙する。
闘気の表情とは裏腹に、騎神⓵が敗れたことを知り警戒する騎神⓶
「まさか騎神⓵が敗れるとは・・・君たちのことを過小評価していましたよ。」騎神⓶の丁寧な言葉遣いに一笑する闘気
「無茶苦茶なことするわりに育ちはいいみたいだな?」
「覚醒前はそれなりの会社でそれなりの仕事をしていたのだがね・・・騎神であることが会社にバレて、バケモノ扱いされた挙句リストラさ・・・・・」闘気は納得したように頷き「で?今はこれか?」と冷静に尋ねる。
騎神⓶は一笑し朗々と語り始める
「なかなか察しのいい子だ!そう、騎神のせいで職を失った私は騎神の能力と立場を有効活用できる今の仕事を始めた。これがなかなかいい仕事でね、騎神の戦いは天災扱いされて法的措置を受けることもないし、騎神の力を前に警察も手が出せない。それに・・・仕事の依頼人は皆権力者ばかりな上に騎神のチカラを恐れている、だからギャラも良い。どうだ君・・・騎神①の後釜になる気はないかい?」騎神⓶の勧誘に対し、口元を緩ませる闘気
「悪いが・・・自分より程度の低い奴に遣われんのはゴメンだ!」闘気のこの言葉に騎神⓶の眉がピクリと動き、顔が強張る。
「騎神の力つかって小銭稼ぎたぁ、やってることが小せぇんだよあんた!」構えたままタバコを取り出し火を付けながら話す闘気に、騎神⓶の眉間にシワがよる。
「こうやって、俺がタバコ吸いだしても動かねぇとこ見ると、あんた他の二人に攻めを任せて防御に徹してるくちだな・・・ルーチンワークの染みついたサラリーマンがやりそうな手だ!」ゆっくりとタバコを吹かしながら話す闘気に、騎神⓶の頬がピクピクと動く。
「まっ、それなりの会社っつっても、聞いたことも無いこんな小さな会社潰してもこの程度にしかならねぇぞ」話しながらスマホを取り出しあるサイトの記事を見せつける闘気
そこには『地盤沈下の影響により倒壊した建物』と書かれた写真と数行に満たない文章が羅列した小さな記事だった。
「あ・ん・た、だろ?」スマホの画面を揺らしながら見せつける闘気に奥歯を噛み締める騎神⓶
その顔を見てニヤリと笑い「浅い見栄・浅い欲・浅い戦法そしてその浅い考え・・・程度の低い人間の典型だな!」そう言い放った闘気の笑みに、完全に堪忍袋の緒が切れた騎神⓶が凄まじい形相で襲い掛かる。
が、騎神⓶の攻撃は闘気に届かず大剣に阻まれる。
竜馬が騎神⓶の攻撃を受け止めた隙に、騎神⓶の側面に回った闘気が呟いた。
「考えろよ・・・あんたの仲間は一人死んでんだ。そいつを殺したヤツが次にどう動くかくらいわかんだろ?」直刀を上段に構え、絶望する騎神⓶に最後の言葉を贈る。
「安い挑発に乗って真っ直ぐ突っ込んでくるとは・・・・(笑)程度が知れるぜ・・・」一笑の後、闘気は直刀を振り下ろした。
・新入り[水鮫槍]VS騎神⓷[木馬鉈]
騎神⓶のオーブが闘気に吸収されたことで、騎神⓷は焦り始める。
最初は3対1で有利な状況だったのにも関わらず、今では立場が逆転
しかも先程の闘気と騎神⓶の戦いを見るかぎり、竜馬と闘気がいつ乱入してくるかわからない・・・
目の前の満身創痍の新入りを倒したところで1対2で数的不利、逃げれば背後をとられ絶体絶命
竜馬たちの方に目をやると二人は離れた場所のベンチに座り込み、闘気は新しいタバコに火をつけながらこちらを観察し、かたや竜馬は学校カバンからジュースを取り出しゴクゴクと飲み始める。
そんな二人の行動に新入りと竜馬たちの関係を疑い始める騎神⓷
「おい、お前と竜馬・闘気は仲間じゃないのか?」と新入りへ問うも、無言で三叉槍を突き付け間合いを維持し続ける新入りに、ため息を漏らしつつ鉈を構えて攻撃の機会をうかがう騎神⓷
だが、離れたベンチからは口から煙を吐きながら観察する闘気、その目は真っ直ぐ騎神⓷を捉え離さない。
騎神⓷はこの視線を気にして攻めあぐねてしまう。
そうこうしているうちに竜馬がゴクゴクとのどを鳴らしながら飲んでいたジュースを「ぷはっ~っ」とうまそうに飲み干すのを合図に、新入りが決死の攻撃を仕掛ける。
気勢と共に三叉槍の切っ先を騎神⓷の喉元目掛けて突っ込むが、鉈でいなされてしまう。
「まだそんな力を残していやがったかこの野郎!!」といなした鉈を持ったまま拳で新入りの顔面を殴り飛ばす。
決死の攻撃を躱されカウンターを受けた新入りはその場に倒れ込み立ち上がれない、新入りの身体はすでに限界をむかえていた。
「これで終わりだ!!必殺!」騎神⓷は大きく鉈を振り回し天高く突き上げた。
「「朴突崑」」空に巨大な丸太が現れ、左手を前に出して突き上げた鉈の柄尻を左掌に叩き付けた。
するとそれを合図に巨大な丸太が新入りを押し潰そうと落下し始めた。
新入りは三叉槍片手に這いずっていたが、迫りくる巨木に「終わった・・・」とその場でそっと目を閉じた。
が、そこに竜馬の唸り声「うぉぉぉぉぉぉーーーーーーーー!」
竜馬の奇襲を予測していた騎神⓷は『来た!』とばかりに鉈を構え振り向くが、その瞬間騎神⓷の頭上を影が飛び越えていった。
そして竜馬たちがいたベンチには闘気が一人頭を抱え心底面倒そうにため息をついていた。
その光景に騎神⓷が急いで自分を飛び越えて行った影を追うと一人朴突崑の巨木に突っ込んでいく竜馬「「大炎上!!!」」大剣を巨木に叩きつけた。
爆発音とともに衝撃で大きく破損した巨木は新入りから大きく逸れた場所に落下、公園そばの国道に巨木の一部がはみ出し道路を一部遮断、巨木落下の風圧でグランドの砂を巻き上げ視界不良の中、竜馬の声が響く
「今だ!!」
「・・・必殺」石突きが地面を突く音とともに水柱が上がり、天高く人影が飛び上がる。
夕日を背に見えた影は長得物を持つ総髪の男・・・「翔水一擲」全身全霊を込めて三叉槍を投擲
放たれた三叉槍は石突きから水を放出、その水圧の勢いを乗せた三叉槍は猛スピードで騎神⓷へ接近、騎神③の胸部を貫通し地面に深く突き刺さる。
騎神⓷の身体はオーブに変わり、落下する新入りのベルトの石に吸収された。
新入りはそのまま力無く地面に叩き付けられる。
ーー9 家無しの仁義 ーー
一瞬気を失っていたのだろうか、新入りはグランドの中心で蹲ったまま動かなかったが、少し間を置いて動き出すも起き上がれずその場に大の字に寝そべり大きく呼吸する。
その様子を見て竜馬は笑顔でサムズアップを送るが、闘気が無言で割って入り新入りに刃を突きつける。
「闘気!?」戸惑う竜馬に闘気が冷淡に言う
「言ったはずだ、コイツをうまく遣えば手っ取り早く騎神を倒せる。そのために隠れて対策立てたんだろうが!」闘気の言葉に言葉を失い、うつむく竜馬
闘気は新入りに切っ先を突き付けながら言う「あんたもわかってんだろ・・・これは騎神の戦い、弱肉強食の世界でそんな状態でいることがどういうことか・・・」闘気の言葉に逃げるでも命乞いをするでもなく、ただ仰向けでジッとしている新入りに切っ先を突き立てようとした瞬間「「ドタドタ」」と慌てた足音が近づいてくる。
「待て、待ってくれ!!」離れたところで隠れていたオッチャンが慌てて走ってくる。
「頼む!コイツのことは見逃してやってくれ!!頼む・・・」その場で土下座し額を地面に擦り付けながら懇願するオッチャン
その姿を見て新入りが口を開く
「いいんですおやっさん、元々あんたに救われた命だ・・・頼る人も帰る場所も無くして空腹で行き倒れてた俺に・・・あんたは食う物と寝る場所、それに仕事までくれた・・・・・おやっさんには返したくても・・・返しきれないほどの恩がある。」息も絶え絶えになりながらオッチャンへ感謝の気持ちを伝える新入りに、オッチャンは大粒の涙をこぼしながら新入りの手を握りしめる。
「おやっさんの公園を守る。・・・それが・・・それだけが俺にできる唯一の恩返しだ・・・・・そのためなら俺の命くらいくれてやる。
あんたたちのお陰でこの公園を守ることができた・・・・・その借りは返す。さぁ・・・殺れ!」新入りは『覚悟はできている』とでも言うように穏やかな顔で瞳を閉じる。
その時、新入りの胸ぐらが力任せに引っぱられる。
「馬鹿野郎!!お前はまだ若い、まだまだこれからじゃねぇか・・・どんな馬鹿でもなぁ、カタギにはなれんだよ!!こんな老いぼれを置いて先に死のうとなんかするな!!」ものすごい剣幕とともに大粒の涙と鼻水を垂らしながら『生きろ』と諭す。
その様子を見ていた竜馬が不安げに闘気の方を見ると、竜馬の表情を見て面倒そうに頭を掻きむしる闘気
舌打ちしてため息を吐くと新入りに向けていた直刀を返し背中に戻す。
「はぁ~、恩返しだか何だか知らんが連中を倒したからってここが安全だって保障は無ぇぞ
連中の元締めが他にも騎神を何人雇ってるのかわからねぇからな・・・」闘気の注意喚起に息を呑む三人
「そこで提案だ!あんたには今後俺らの所有物になってもらう。」闘気の提案に困惑する三人
「今回、騎神同士組んで金儲けしている連中がいることが分かった。今回は三人相手でどうにかなったが、これからもっと多くの騎神相手に戦うことになった場合、トカゲの尻尾があると便利なんでね・・・」闘気のこの言葉に新入りが『なるほど』と納得したようにうなずき闘気を見る。
「あんたらにはここを守ってくれた借りがある。断る理由は無い・・・俺の命で良けりゃくれてやる・・・その代わりここを・・・おやっさんを守るために・・・手を貸してくれ・・・・・」そう言って手を差し伸べる新入り、その手を握り締め「契約成立だ!」と微笑む闘気
新入りと闘気の握手の上にさらに手を乗せる竜馬
「ヨロシクね!・・・えーっと、なんて呼んだらいいのかな?」名前をたずねる竜馬に新入りは藤堂海(19)と名乗る。
ここに新入り改め、藤堂海【水鮫槍】が竜馬・闘気の仲間に加わった。
傷だらけの海を竜馬とオッチャン他のホームレス達が総出で手当てを行うなか、闘気がお近づきのしるしにと缶コーヒーを手渡すと隣に座り海に問いかける。
「それにしても『さぁ・・・殺れ!』だの『俺の命で良けりゃくれてやる』だのまるで自分の命なんてどうでもいいみたいなことよく軽々しく言えるよな!死にたいわけじゃ無さそうだし・・・なんでそんな簡単に自分の命を他人に差し出せる?」タバコを吹かしながら訊ねる闘気、その隣で横たわる海は少し間をおいて答える。
「俺には・・・守れなかった人がいる・・・・・失ったものは取り戻せない・・・守れなかった俺に、生きる資格は無いと思っていた。でも・・・そんな俺をおやっさんは救ってくれた。そんなおやっさんを俺は守る!それが、俺の生きる理由・・・元々生きてたって仕方ない人間だ・・・だったら、俺の命ぐらいくれてやるさ・・・」真っ直ぐな眼で話す海を横目にタバコの煙を吐きながら闘気は言う。
「まぁ、詳しいことは聞かねぇ・・・誰だって知られたくない過去の一つや二つあるしな・・・。」そう言いながら闘気はタバコの灰を落とす。
「だが、ただの死にたがりじゃ守りたいものは守れない。あんたに生きる意志が無きゃ・・・オッチャンが死ぬだけだ。」闘気はタバコを足元に落とし踏みつけて火を消した。
闘気が踏みつけたタバコの残骸を見て海は闘気の眼をジッと見つめる。
「じゃーな!オッチャンのことは任せたぞ」「ヨロシクね海さん!!」公園を後にする竜馬と闘気、二人が去った公園で海は一人決意を固めるのであった・・・
帰宅途中、闘気は心の中で『いい駒が手に入った・・・』とほくそ笑んでいた。