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騎神伝  作者: 一一【ニノマエ ハジメ】
試練
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疾風迅雷2

 雷に撃たれ黒い煙を上げながら降下するヒュウガマン

 

 地上でその様子を見る明は懐で両手を包むように構え能力チカラを収束する。

 ヒュウガマンが地面に落下する瞬間を狙って放つ雷吼砲、エネルギーの塊がヒュウガマンを呑み込まんと迫る。

 次の瞬間、強烈な旋風つむじかぜが吹き荒れヒュウガマンの身体を一瞬持ち上げ、間一髪雷吼砲を躱すヒュウガマン

 外れた雷吼砲を風針尖で暴発させると、そこから放たれた強烈な閃光で明の視界を一瞬奪う。

 その隙に旋風の勢力を拡大し巨大な竜巻に変え、その中でヒュウガマンは体勢を立て直し能力を一気に解放、それを見て明も全能力を解放する。

 

 

 雷に選ばれし者の操る天を覆う黒雲と、風に選ばれし者が起こす強大な勢力の竜巻、その二つの現象が及ぼす異常気象を前に、人々に為す術は無い…

 

 

 

 ーー4 天災 ーー

 

 既に【騎知らせ】などの避難要請によって繁華街から人は消え、人的被害の心配は無い。

 避難してきた人々が離れた場所から先ほどまでいたはずの繁華街を見る。その光景はまるで映画でも見ているかのようだった。

 町中を破壊していく雷と竜巻、至る所で発生する火事と建物の崩落、そしてぶつかり合う二人の騎神…その姿はまさに風神と雷神!

 

 

 風を纏い高速で移動しながら竜巻・かまいたち・風針尖といった多種多様な能力を駆使して戦うヒュウガマンに対し、雷陣太鼓と雷吼砲といった高威力ながら直線的な攻撃と、自身の持つ卓越した戦闘スキルのみで戦う明

 

 一見高所から遠隔操作できる風針尖や、全てを巻き込み破壊する竜巻を操ることのできるヒュウガマンが有利に見えるが、明はそれを冷静に見極め対処していく

 

 巨大な竜巻で呑み込もうものなら、凄まじい旋風に流される瓦礫を足場に上空に飛び上がり一気にヒュウガマンに接近して襲いかかる。そんな芸当を平然とやってのける明にヒュウガマンは危機感を覚え接近する明を風針尖で迎撃して遠ざける。

 

 手数では圧倒しているはずのヒュウガマンに対し、その戦術をいとも簡単に突破し逆に反撃に転ずる明、この状況を打破するためにヒュウガマンは一計を案じる。

 

 

 高層ビルの周囲に強烈な竜巻を発生させ、ものの数秒で周囲の全てを更地に変えるヒュウガマン

 そして自身は風に乗ってその屋上まで飛び上がり明を挑発する。周囲の竜巻は消滅し一人地上に取り残される明、ゆうに50mはあろう高層ビルを見上げ鼻で笑う。周囲には足場もなく、停電中でエレベーターも使えない。

 屋上に行くには非常用階段以外に道は無く、延々と続く階段の段の列に途方に暮れる。一般人なら……

 

 

 明は駆け上がる。能力を使うでもビル自体を破壊するでもなく、ただひたすら階段を駆け上がって行く。息を切らせなが一定のスピードで着実に登って行く明

 徐々に大きくなる階段を叩く金属音に明の接近を感じるヒュウガマン……しばらくすると足音と同時に荒い息遣いも聞こえてくる。明がすぐ下の階層まで昇ってきている…仮面の奥で闘志を燃やすヒュウガマン

 

 そして、非常口の扉が破壊され明が現れる。

 

 

 全身から湯気がたたんばかりに汗をかいて肩で大きく息をし、重そうな脚で前に出る明

 その姿は大きく消耗しているように見える。

 ヒュウガマンの目的はコレだった。明の体力を消耗させ動きを鈍らせ一気に決着をつける!そのつもりだった……

 

 

 しかし、その目算は大きく外れる結果となる。

 

 

 

 ーー5 頂上決戦 ーー

 

 消耗している明に隙を与えず容赦無く襲いかかるヒュウガマン

 だが次の瞬間、明は大きく深呼吸…息を整えた瞬間動きが一変する。

 

 襲いかかるヒュウガマンを最低限の動きで去なすと同時にカウンターの一撃を叩き込む。

 咄嗟に身体を捻り急所を外すヒュウガマンは体勢を崩しながら距離をとる。すると明が呟く。

 

「……やっとあったまってきた。」明の呟きに同様するヒュウガマン。仮面の奥の瞳に映る明はニヤリと微笑む。

 階段を登らせることで体力を削るはずが、逆にそれが良いウォーミングアップとなり追い詰められるヒュウガマン。

 そんな明の底の知れなさに恐怖すら覚える。

 

 

 一気に接近し肉弾戦を仕掛ける明、ヒュウガマンも卓越した棒術で迎え撃つが、そこは明に一日の長があり圧倒される。

 風針尖を使って距離を取るも、身体のあったまった明の動きは圧倒的で、すぐに追い詰められるヒュウガマン

 たまらず風を纏って屋上から飛び出し空中戦に切り替えるが、ここまで戦ってきて明がその対処を考えてないわけがなく……黒雲から雷陣太鼓の落雷が襲いかかる。

 すぐさま避けるヒュウガマンだったがその動きこそが明の狙いだった。

 

 雷陣太鼓の落雷を避けるにはヒュウガマンとて全力で移動する必要があり、空中移動の際の姿勢制御はそれなりにコントロールが難しいはず……つまり咄嗟の動きに対し次の動作は一瞬遅れ、そこに隙が生じる。

 

 案の定、次々と襲い来る落雷の回避に集中するあまり、一瞬明の存在が意識から漏れる!それに気付いた時にはもう手遅れ……


「雷吼砲!」明の放つ巨大なエネルギーの塊を避ける術はヒュウガマンには無い。

 

 

『避ける術は無い?なら受け止めればいい』

 

 

「風針尖!」ヒュウガマンは自分と雷吼砲の間に膨大な量の風針尖を召喚、螺旋状に展開して盾とした。

 次々と雷吼砲に呑まれ消滅していく風針尖の羅列、破壊されるたびに風針尖を追加して食い止めようとするヒュウガマン

 徐々に雷吼砲の勢いも衰えていくも、既にヒュウガマンを呑み込む一歩手前まで迫っていた。

 

 

 次の瞬間、大爆発と共に消滅する雷吼砲と風針尖……そしてヒュウガマン

 

 全力の雷吼砲を放ち終え一息吐く明

 一瞬気を緩めた瞬間、背後に流れる風を感じ反応する。

 

 

「必殺・神風の颪(かむかぜのおろし)」ヒュウガマンの棒の先に集約された風が生み出す真空の一撃が明の脇腹を掠める。

 脇腹付近で炸裂した真空波が明を吹き飛ばし、屋上の頑丈な鉄製の手摺りに全身を叩きつけ手摺りを変形させる。

 真空波を受けた脇腹部分の服は木っ端微塵に吹き飛び、露出する腹部には無数の裂傷とそこからの出血で思うように動けない明

 

 それに対し止めを刺そうと接近するヒュウガマンだったが、何かが落ちた音に脚を止める。

 その音の主は白い破片、その破片を見つけると続けて一つまた一つと同じような破片が落ちる。

 急いで顔を確認すると頬の部分の仮面が一部砕けそこから徐々にヒビが広がっていることに気付き焦るヒュウガマン

 顔を手で覆いながら明を睨みつける。

 

 

 ヒュウガマンの背後からの一撃に反応した明は神風の颪を避けると同時にヒュウガマンの顔面に一撃加えていた。それが掠め仮面のみを破壊していたのだった。

 

 そうこうしているうちに仮面のヒビは全体に広がり完全に砕け散る。

 満身創痍ながらもまだ戦える明を前に、ヒュウガマンは素顔を晒すのを恐れその場から飛び去って行った。

 逃げるヒュウガマンを明は追撃しようとするも、立ち上がるのがやっとの状態で手を出せず歯噛みするのだった。

 

 

 

 この戦いで街の機能はほぼ壊滅……復旧に向け多くの機関が動くが、この出来事が民衆からの騎神に対する不信感を助長させ、以前から問いただされていた騎神排除の動きが活発化することになる。

 

 

 

 ーー6 新施設 ーー

 翼邸

 

 橘に案内され闘気は書斎の一画に新設された喫煙室に案内される。

「どうです?条件通り設置いたしました。

 この中であれば喫煙しながらお好みの本を読むことができます。

 読書中()()は素行の良いあなたのことですから、貴重な書物などに灰をこぼすようなことは無いと思いますが、それだけはお気を付けください!」以前提示した条件を律儀に果たした橘を鼻で笑う闘気

「まさか本気で作るとはな……」喫煙室をまじまじと見ながら呟く闘気

「ご不在の間に、製作期間は十分ありましたから…それに、ご帰還されずとも使用人の中にも喫煙される方はいらっしゃるので無駄になることもありません。」皮肉まじりに冷めた表情で返す橘にさらに返す。

「でも帰ってきたからこれは俺専用だな!」

「ええ〜、残念です!」頷きながら冷めた笑みを浮かべる橘と、喫煙室の中で真新しい内装を眺めるばかりで喫煙しようとしない闘気に橘は問いかける。

 

「何故、あんな賭けを?」

「車で翼に説明した時聞いてたろ?

 一つ、竜馬が戻らないきゃ戦う意味が無いから。

 二つ、翼と俺は相性が悪い!現状藤堂・カムイ・美樹が翼側についている以上数的に俺が不利、おまけにおたくらのセキュリティー部門の連中は俺を消したいみたいだし…おっと、()()は翼に説明してなかったか〜

 実際あんたも藤堂と同じ意見…てか、あんたが首謀者なんじゃないのか?橘さん」喫煙室の椅子に腰掛け橘を見上げる闘気

 それに対し否定するでも肯定するでもなく、橘はおもむろに喫煙室の扉を閉め室内の空調の電源を入れる。

 

「こちらの空調システムはタバコの煙・臭いを取り除くだけでなく、室内の空気を浄化しマイナスイオンを発生させることで温度・湿度など最適な環境に保つことができます。

 

 そして、室内は完全防音仕様、声が外に漏れることはございません。」橘の意味深な説明に室内は沈黙に包まれる。

 

 

「先程あなたは『不利だ』とおっしゃいましたね。ですが、実際のところどうなのです?」闘気の背後に立ち質問する橘、椅子に座りガラス張りの壁の向こう側を見つめる闘気は「何が?」と目を合わせようとしない。

「あなたの脳内では、心の中では、今の状況をどう考えているのですか?」

「ピンチなんじゃねぇか?密室で背後を取られ、防音の部屋じゃ助けを呼んでも誰にも届かない…今襲われたら……」「そうではありません!」橘の強い声に口を止める闘気

「その頭の中に描かれている筋書きは、今後何が起こるかを予測しているのではないのですか?」橘の言葉を鼻で笑う闘気

「ちなみに、人間の武器で騎神を殺すことは不可能です。銃弾は貫通せず、刃物も通らず、毒物も体調を崩す程度で致死には至りません。

 そのことをあなたが知らないはずがない。

 もう一度お聞きします。

 あなたの考える今後の筋書きは?」ガラスに映り込む橘の表情を見て再び鼻で笑う闘気

「いい大人が十代のガキ相手になんて顔してんだよ!あんたらのことだ俺の個人情報は筒抜けなんだろ?だったら分かんだろ俺のIQとか〜学力とか〜その辺のこと……」闘気はめんどくさそうに話しを逸らそうとするが、橘はそれを許さない。

 

「確かに調査の結果、IQもそれに伴う学力も平均もしくはそれ以下、校内のテスト・考査でも常に赤点ギリギリの点数で補講予備軍という判定ですが…それがもし、意図的に操作されたモノだとしたら……」橘のこの言動に呆れ笑う闘気

「『能ある鷹は爪を隠す』と言います。

 もしあなたがクラスメイト全員の学力を全て把握し、あえてギリギリのラインを狙って問題を解いていたとしたら……それはあなたが高い知能の持ち主であるということ

 ちなみにあなたのテスト・考査の点数は常に赤点から僅か1〜2点の差、これは完全に狙っているとしか思えない!いや、遊んでいる。」

「かいかぶりすぎだよ橘さん……そんなことして俺になんの得がある?成績も悪く内申書も最悪なはず、こんな生徒がいい大学に入れるわけないし、就職もうまくいかねぇだろ!

 まぁその辺うちは自営業なんで問題は無い!要はそういうことだよ橘さん!

 さぁ話しは終わったしそろそろ帰るかぁ!」椅子から立ち上がり喫煙室から出ようとする闘気を橘が止める。

 

「あなたがおっしゃったんですよ『俺の個人情報は筒抜け』と、あなた…いえ、山城工務店の資産についてはどう説明します?」橘のこの一言に闘気の目の色が変わる。

「うちの従業員が頑張った。それだけだろ?」

「あの規模の工務店で、しかも社長もほぼ不在の状況であそこまでの利益を上げられるとは到底思えません。しかも、僅かではありますが複数の企業の株も保有し、その全てが利益を上げている。この状況で事業拡大はおろか、従業員の増員も行わないということは…会社の資産運営に従業員が関わっていないということでは!?

 つまり、実質今の山城工務店を運営しているのはあなただということに他ならない!」問い詰めてくる橘に闘気はため息を吐き頭を掻く。

 

「北条院財閥の人間があの程度の金で驚くなよ……」観念したのか目を逸らしながら呟く闘気

「その才能をお借りしたい……協力していただけませんか……」丁寧に頼む橘に対し闘気は再び椅子に腰掛け面倒臭そうに答える。

 

「……内容は?」

 

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