炎のチャレンジャー5
満身創痍、息も絶え絶えで立っているのがやっとの竜馬、服の大半が焼け落ちあらわになった肌は火傷で痛々しく爛れ、その激痛に顔を歪ませる。
そんな竜馬の惨状を前に隆之介は虚空を見上げ溜め込んでいた涙が一気に流れ落ちる。
一瞬放心状態になった後、涙を拭う隆之介、拭った後に見せた表情は出会った頃の顔に戻っていた…笑顔の瞳の奥に闘志と覇気を宿らせ構える隆之介
高台の頂上で対戦を眺める祝融は二人の対戦に釘付けだった。火の神祝融の瞳に映る二人はどう見えているのか、それは誰にも分からないが、その表情からこれまでのどの対戦よりも心躍らせていることが伺える。
「隆之介!竜馬はホンモノだ!
アレを出すなら今じゃないのかい!?」祝融のこの言葉に対し隆之介は『邪魔するな!』と言いたげな表情で祝融を睨みつける。それで察した祝融は「ああ、ならいいさ……」と満足そうに微笑み口を閉じる。
ーー6 さよなら ーー
「まさか…まさかな〜
竜馬くんはおもろい奴やと思ってたけど、ここまでとは……『焱』まで喰らって立ってたん竜馬くんが初めてや!
せっかく仲良うなったのに……性格悪い火ん神さんのせいでお別れや!!」徐々に涙で満たされていく瞳と、溢れる嗚咽を堪えながら話す隆之介
「でもな〜竜馬くん……悲しいけど、これって戦争なのよ!
古いガンダムネタやけどわかる?フフッ……」無理に冗談を言っても溢れる涙は止まらず、泣きながら無理やり笑おうとするも、唇が震え隆之介から軽口が止まる。
「フ…フフッ……わ、わかんないよ……」途切れそうな意識の中、爛れた顔を僅かに綻ばせる竜馬
ヒビ割れた大剣の刀身内の炎はまだ消えてはいない。
そんな竜馬を見て力強く眼を瞑り小刻みに頷く隆之介
満身創痍でありながらそれでも戦う姿勢を崩さず、あくまで隆之介と友達として接する竜馬
その覚悟と意志を受け取った隆之介が再び開いた瞳は今までとは比べ物にならない程の闘志と気迫に満ちたモノとなっていた。
両手で真っ直ぐ突き出すように構えた槍に炎は無く、細く錆びついた槍を握り締めたその姿は派手好きな隆之介からは想像できないほど簡素で、構えも今までの肩に担ぐような独特なものではなく腰を落とし竜馬に対し真っ直ぐ鋒を突き付けるオーソドックスな槍の構えに変わっていた。
しかし竜馬はわかっていた。
この構えこそが、この槍こそが真の隆之介の姿であることに……本気の隆之介と対峙した竜馬は激痛の中、再び大剣を八相に構える。
竜馬の闘志も死んでいない、構え直すと同時に刀身内部の炎も勢いを取り戻しヒビから覇気の炎が溢れ出てくる。
しばらくの沈黙と静寂の後、先に動いたのは隆之介!駆け出した後に舞った汗の水滴がリングのあった地面に落ちる前に蒸発した。
一瞬で間合いに入った隆之介は槍を手元に深く引き絞り、全身のバネと勢いを乗せた真の全身全霊の一撃を突き出した。
竜馬は背後の観覧席の壁に背中を押し当て踏ん張ると、ヒビ割れた大剣で最期の一撃を受け止める。
「焔終式・煉獄……さよなら、竜馬くん…」
槍の鋒が大剣の刀身を触れた瞬間
大剣の刀身は木っ端微塵に砕け散り、次の瞬間バックドラフト現象のような強烈な炎の渦が竜馬諸共背後の観覧席の壁を突き破りその先の観覧席をも貫通、闘技場の一部を破壊し倒壊させた。
観覧席に居た騎神たちの多くは『煉獄』の炎に巻き込まれ、倒壊した瓦礫の下敷きとなった。
火の試練…その結果は火に選ばれし者 明石隆之介の一撃によって、多くの騎神が命を落とす結果となった。




