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騎神伝  作者: 一一【ニノマエ ハジメ】
試練
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炎のチャレンジャー4

 竜馬たち火の騎神が炎の闘技場に送られてからどれほどの時間が経ったのだろう……

 祝融が支配するこの世界には昼も夜も無く、常に日にさらされ時間の間隔が無くなる。

 すでに何日も居る気がするし、まだ数時間しか経ってない気もする。

 腹が減れば闘技場内の食堂で食事を摂り、眠くなれば仮眠施設で眠る。

 一見何不自由無く快適に過ごせる空間ではあるが、対戦順を待つ者たちにとっては気が気ではない。

 

 逆に試練を終えた勝者たちは祝融の足下の高台の一室に送られ、特別な空間で下の階層とは比べられ無いほど贅沢な待遇を受けていた。

 その中で朱音は次々と送られてくる勝者たちに目を光らせ、記憶を頼りに犯罪者の有無を確認していた。

 

 

『まったく、仕事熱心だね!あんたは!』周りでくつろぐ騎神たちの動向を観察中の朱音の心に語りかける祝融、それに対し朱音も心の声で答える。

『試練が終われば元の世界に戻るんでしょ?

 だったら戻った後の仕事を円滑に進めるために今のうちに情報を集める方が効率的だし、ここで全員の顔を覚えとけば後で警視庁のデータベースから私の知らない犯罪者ホシが居るかも知れないんで…邪魔しないでもらえます?』祝融に対してもドライな態度を崩さない朱音

 それに対し祝融は朱音の威勢の良さを気に入り、嬉しそうに笑い語りかけることを止める。

 

 

 一方その頃、待ち時間を共に過ごす竜馬と隆之介は娯楽施設で遊んでいた。

「なー竜馬くん、俺らいつ出番くんねやろなっ!」闘技場内の娯楽施設の一つバッティングセンターでバットを構えながらボヤく隆之介

「ん〜、ていうかここに来て何日経ったのかな〜、だってご飯食べて遊んで寝てをもう何回やったんだかわかんないよ……」

「せやな〜、スマホも時計もイカれて使えへんし、火人は何も教えてくれへんし、流石にいい加減闘技場内の施設(ここ)にも飽きてきたしな〜」

「早く帰りたいよ〜」ホームシックで感傷的になる竜馬とは裏腹に、隆之介は豪快なホームランを叩き出して大喜びではしゃぐも傷心の竜馬を見てやり場を失う。


「ま〜、俺は早く竜馬くんの戦ってるところ見たいけどな!

 多分やけど、竜馬くんはおもろい戦い見してくれると思うし、俺自身竜馬くんと戦ってみたいしな!」

「え?やめてよ…せっかく仲良くなったのに……」膝を抱えうずくまる竜馬に対し、バツが悪そうにバッターボックスに戻りバットを構え直す隆之介

 

 

 そして……祝融の大音声が響き渡る。

 

 

「「さぁ、いよいよ最後の対戦だよぉ!あんた達!刮目して見なっ!!」」闘技場の全てのエリアに響き渡る祝融の声、次の瞬間試練の勝者達全てが観覧席に戻された。

「さぁ、盛り上がっていくよぉ!なんつったってこのあたしのお気に入り!選ばれし者の戦いだからねぇ!!」客席を煽る祝融の声と共に闘技場中の炎がこれまで以上に燃え盛り、対戦を盛り上げる。

 

 

 

「なんや、やっと俺の番かいな……んっ!?」隆之介は気付く。

 火の試練のクリア条件は一対一の対戦で勝利すること、勝者は高台へ移動し試練終了まで待機することになる。

 

 つまり最後の対戦、すなわち対戦相手は最後まで闘技場内下層に居る者……隆之介の視界に居るのは白金竜馬ただ一人

 

 見つめ合う二人は炎に包まれリングに移動した。

 

 

 

 ーー5 火に選ばれし者 ーー

 

「マジか、人が悪いで……火ん神さん」隆之介はリング上から高台の頂上に鎮座する祝融を見る。

「「さぁ、見せてみな隆之介!!あんたの戦いを!!!」」期待に満ちた表情で隆之介を見る祝融に溜め息を吐きヘアバンドの位置を直しながら気持ちを切り替える隆之介

「ごめんな竜馬くん…帰りたがってたけど、帰せそうにないわ〜」ヘアバンドの隙間から覗くその眼光は先程までのおちゃらけたものではなく、戦う意志に満ちた一人の騎神の眼になっていた。

「明石くん……」一眼で隆之介の意志を理解した竜馬

 二人は同時に騎神化する……

 

 大剣を八相に構える竜馬と槍を肩に担ぐような独特な構えの隆之介

 対峙する二人の武器に炎が燈り覇気を燃料に激しく燃え盛る。

 

 

「「さぁ、はじめなっ!!」」祝融の号令と同時に飛び出す二人

 当然、竜馬の初手は「大炎上!!」

 リングの中心に力強く叩きつけられる大剣、大爆発の勢いにリング上のタイルの多くを吹き飛ばし中心部に大きなクレーターを創り出す。

 大炎上の一撃を前に一切臆することなく土煙の中佇む隆之介

 やがて視界が開け見えてきた竜馬は、充実した気合と覇気に満ち、大剣を構え凄む。

 それを見た隆之介は満足そうに微笑む。

「火ん神さん、前言撤回や!おもろい戦いになりそうやで……」竜馬の大炎上に答えるように隆之介も槍に能力チカラを込める。

 燃え盛る槍の炎に気づいた竜馬は警戒、それに対し隆之介は闘志に満ちた眼で「派手やな竜馬くん!でも、俺も負けてられへん…」凄む隆之介

 次の瞬間、槍の穂先を突きつける。

 

「…焔壱式ほむらいちしき朧火おぼろび!」

 

 突き出された矛先から強烈な熱波の刺突が一直線に突き出される。

 横に飛んで避ける竜馬、熱波の一突きがリングを焼き尽くし突き出した穂先から直線状に焼失、その先の観覧席の壁まで焼き尽くした。

 二人の放った挨拶代わりの一撃で、すでにリングは元の形状を失った。虚しく燻る炎の中、二人は改めて相対する。

 

 先に動いたのは竜馬!全身全霊の大振りの一撃を槍の柄で受け止める隆之介

「まだやで、竜馬くん!」受け止めた大剣を押し返し燃え盛る槍を振り回す。

 

「…焔弍式ほむらにしき陽炎かげろう!」

 

 高速で回転する槍から放たれる熱波が闘技場中を覆い、ジリジリと熱された空間で振るう槍から熱刃が産まれ、周囲のもの全てに無差別に襲いかかる。

 当然観覧席にも飛び火する熱刃、それに対し祝融は火人に指示を出し無数の火人を熱刃の盾にして他の騎神達を守った。

 

 一方竜馬は迫り来る熱刃を切り裂きながら隆之介に接近し鍔迫り合いになる。

 密着した状態で睨み合う両者、だが隆之介からは笑みが溢れ、その表情からは撰ばれし者としての絶対的自信と余裕が伺える。

 

 だが、そんな隆之介に対し祝融が声を上げる。

「隆之介!!いい加減遊びは止めなっ!!これは試練なんだよ!?弁えな!!!」祝融からの叱責に鬱陶しそうな表情で竜馬を押し返す隆之介

 困惑する竜馬に対し隆之介は不機嫌な顔で構え直し、一瞬竜馬と目を合わせた途端その眼は殺気に満ちた眼光に変わり襲いかかる。

 

 

 素早く鋭い槍捌きに必死で対応する竜馬

 先程までの能力を使った一方的な攻撃から一変、槍術を駆使した接近戦を挑んできた隆之介に驚く竜馬

 持ち前の反射神経で何とか対応するも、防戦一報で追い込まれていく…そして一瞬の防御の隙間を突かれ、石突きで顔面を殴られ怯む竜馬

『まずいっ!』と距離を取ろうとする竜馬に対し、その隙を逃さず飛び上がり距離を詰める隆之介

 その表情には一切の慈悲も甘えも無く、右手に握る槍に全体重を乗せた重たい一撃が竜馬を貫こうと迫るその刹那、隆之介は呟く。

「竜馬くん、ホンマ短い間やったけど…楽しかったで……ほなな。」ほんの一瞬優しさと悲しさが混じったような表情をした。

 

「……焔参式ほむらさんしきえん!」

 

 貫徹する鋒から巻き起こる大爆発

 周囲の全てを焼き尽くし、その衝撃と熱量にリングは完全に消滅し観覧席前の壁も一部融解した。

 その威力に祝融もたまらず観覧席前にバリアを貼り騎神たちを守る。

 

 そしてリングだった場所の中心で、悲しい表情で虚空を見上げ深く息を吐く隆之介

 

 朧げな表情で視線を下ろした先で隆之介は眼を見開くことになる。

 

 

 そこで目にしたのは焼け爛れた観覧席の壁にめり込んだボロボロの竜馬が、ゆっくりとヒビ割れた大剣を杖代わりに立ち上がるところだった。

 

 

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