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騎神伝  作者: 一一【ニノマエ ハジメ】
試練
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Thunderstruck3

 おっちゃんのこぼした地面の酒染みを踏みつける男の足

 足の主は海だった。

「藤堂くんどこへ!」小林が海を呼び止める。

 だが海の眼は虚ろなままフラフラとおぼつかない脚で外へ出ていこうとする。

 小林は海の服の袖を掴み止めようとするが、その手におっちゃんの手がかかる。

「行かせてやってくれ……」

「でも彼はまだ…っ」

コイツの思うようにさせてやってくれ…頼む。」おっちゃんに乞うように諭され袖から手を離す小林、海を見つめるその瞳から涙が溢れた。

 

 おぼつかない脚でゆっくりと着実に公園から出ようとする海、しかし国道の手前で躓き体勢を崩す。見つめる小林が慌てて駆け寄るが間に合わない…そこへ倒れる海を受け止める影

 

「行きますよ藤堂さん!」影の正体は燕尾服に身を包んだ長身の銀縁眼鏡の優男…橘だった。

 橘に支られ車に乗せられる海、それを心配そうに見つめる小林に橘は一言

「邸に戻って、藤堂さんの部屋を掃除しておいてください。彼がゆっくり休めるように…」

「はいっ!」希望に満ちた表情で邸に向かう小林を見て、おっちゃんは満足そうに残りのワンカップ酒を一気に飲み干した。

 

 

 

 ーー6 心の帰還 ーー

 名楠町鈴井川河川敷

 

 カムイの巨体が宙を舞い地面に叩き付けられる。すぐに立ち上がり側で倒れる翼と美樹の二人を守ろうと傷だらけの身体で立ち塞がるカムイ

 しかし、蹂躙される仲間たちを前に防波堤に腰掛けガムを噛むばかりで動こうとしない闘気

 そんな闘気を怪しんで警戒する明、すると漠然と眺めてるだけだった闘気の視線が横にそれた。

 視線の先に現れたのは一台の高級車

 見覚えのある車を前に闘気は思わず「……マジかよ、」と呟く。

 停車した車から現れた海、その姿は全快とは言い難いものの、はっきりと明を見据えていた。

「海、来た!!」快気炎を上げるカムイに翼が気付き海を見て「藤堂さん……」と感嘆の声を上げる。

 

 未だ虚ろな表情ながらもその眼は以前のモノに戻り始めていた。

 据わった眼を確認した橘は海にヘアゴムを差し出した。ゴムを受け取った海は髪を一つに束ねてゴムで止め、額を剥き出し明を睨むその表情は気合に満ちていた。

 おぼつかず震える手を無理やり止めるように握る勢いで騎神化

 その手に握り締める三叉槍で恐怖を振り払い真っ直ぐ明に向かって行く。

 そして橘と目が合う闘気、それを合図にゆっくりと立ち上がり力強く背伸びをすると「……仕方ねぇな!」と騎神化し参戦する。

 

 

 闘気とやつれた海、傷だらけのカムイと満身創痍の翼と気を失った美樹。そんな五人と相対する明…勝敗は明らかだったが、闘気に戦う意志はなかった。

 

「なぁアンタ、本当は竜馬と戦いたいんだろ?」必死で立ち向かう海とカムイをよそに明に語りかける闘気

「アンタからしたら俺は雑魚、藤堂は役不足、カムイはほぼサンドバックだし、翼と美樹にいたってはもはや論外…戦闘狂のアンタにとって骨があって戦い甲斐があるのは竜馬ぐらいだろ?」海とカムイを遇らいながら耳を傾ける明、二人を蹴散らし一瞬で闘気の懐へ入り込み拳を突き立て「…だったら?」と問う。

 明の拳を直刀でなんとか受け止める闘気

 衝撃で痺れる手をにやけ面で誤魔化しながら意味深に一言「……賭けをしないか?」

 地面に這いつくばり呆気に取られる一同、それに対し余裕の笑みで「どんな?」と内容を尋ねる明に表情を崩さず話し始める。

 

 

「まず確認したい、アンタの目的は?騎神の戦いに生き残って叶えたい願いはなんだ?」闘気の問いに対し「知るか。」の一言で返す明、それに対し口角を上げる闘気

「だろうな、榊明 榊流古武術宗家榊家の次男として生まれ、若干16歳で前当主である父親を倒したことで当主となり、その実力は歴代最強と噂されている。

 ちょっと調べさせてもらったよアンタのこと…」厚顔で話す闘気に少し目尻をピクつかせる明

「アンタは強い奴と戦いたいだけ!武道家や格闘家相手に戦ってもそれは形式ばった試合でしかない、かといってそこら辺のヤンキーや喧嘩自慢、暴走族とやり合っても弱い者いじめになっちまう。

 試合は外野がうるさくつまらない

 喧嘩は相手が弱くてつまらない

 つまらないことばかりでうんざりしてたアンタが騎神に覚醒した。

 騎神という今までに無い対戦相手が全国に現れたことで、アンタは騎神狩りを開始した。強い奴を求めて……どうだ?今楽しいか?」先程よりもさらに厚顔で問いかける闘気に対し明は少し眉をひそめ、それを見た闘気は我が意を得たりとほくそ笑む。


「そらそうだろうな…騎神とはいえその人間の本質は変わらない。弱い人間は騎神になっても弱いまま!しかも、騎神相手に素手で殺りあってあの結果じゃ拍子抜けもいいもんだ。

 

 そこで竜馬と出会う。あいつとの戦いは楽しかったろ!?

 あいつはいつだって正々堂々、全身全霊で戦う。実力はアンタの足下にも及ばないだろうが、予想外の動きをする竜馬を倒すのは骨が折れる。そして、騎神の戦いの中であいつは強くなる!

 強くなったあいつと戦いたくないか!?」

 この誘いに明の瞳が一瞬輝く。

「で?賭けの内容は?」

「今日から一週間以内に竜馬が試練から戻ってきたら、翼の案を承諾してくれ…もし戻らなかったら、俺の命をやる。」予想外の賭けの内容に驚く明

「他人のために命を差し出すと?」

「差し出すわけじゃない、意味が無くなる。」

「意味?」

「俺と竜馬の望みはお互いが最高の状態で決着をつけること

 つまり、竜馬がいなくなった段階で俺には騎神の戦いを続ける意味が無い。

 目的を失ったら騎神の戦いなんてリスクでしかない、とっとと退場する方がいい」説明しながら明に接近すると闘気は周りには聞こえないように声を落として話し始める。

 

「アンタにはなんのメリットも無い話かもだが、北条院財閥の情報網は結構使える!仲良くしといて損は無い、おすすめだ!」闘気は橘を顎で指す。

「俺の情報も北条院財閥そこから…どこまで知ってる?」鋭い眼光で闘気を睨む明

「安心しろ!俺が知りたかったのはアンタの経歴だけで、何をしてきたかだの()()()()()()なんて知らないさ…知りたくなったら知れるってだけで……

 ただ、何を()()にしても情報ってのは大事だろ!翼の味方になるだけで大体の情報は手に入る。アイツ、いやあのヒトを味方につけることで得られるメリットは案外でかいぞ……」明は闘気の意味深な言い回しに警戒しつつ少し考え答えを出す。

 

「いいだろう一週間後、場所は河川敷ここで……」

「交渉成立だな……」

 闘気の提案を了承して騎神化を解く明

 だが、自分の命を賭けているにも関わらず妙に軽いノリで話す闘気を不信に思いながらも、翼たちのもとへ向かう闘気を見送る。

 

 

 交渉が終わり翼たちと合流する闘気

 意識を取り戻し訳もわからず奇声を上げて騒ぐ美樹をよそに、防波堤の上で闘気の交渉を見ていた橘が、立ち去る明の背中をジッと見つめていた。

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