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騎神伝  作者: 一一【ニノマエ ハジメ】
試練
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Thunderstruck2

 雷鳴轟く世界で相対する明と時生、その戦闘は周囲の全てを巻き込み破壊する凄まじいものとなっていた。

 

「お前が!お前さえいなけりゃ俺は!!」明に対する恨み節を吐きながら周囲を巻き込み暴れ回る時生と、接近戦を避け回避に徹する明

 そんな二人の戦闘を雲の上から見下ろす道雪は判断に迷う。

 戦闘に集中するあまり試練を蔑ろにする行為と断ずるか、戦いながらも前には進んでいると放置するか……道雪が決めあぐねる中、二人の戦闘は激しさを増していく。

 

 

 

 ーー3 あの日の太刀筋 ーー

 

 時生の無差別な広範囲攻撃に苦戦する明

 幸い距離を取りながらの回避は知らず知らずの内にゴールである山脈の方向へ向かっていた。

 明も雷吼砲で反撃を試みるも、直線的な砲撃でしかない雷吼砲では剣先の全てを巻き込む時生の攻撃範囲外からでは簡単に避けられてしまう。

 かと言って時生の広範囲攻撃を持ってしても卓越した明の動きを捉えられず苛立っていた。

 

 時生の無秩序な攻撃を次々と避けていく明、時生の一撃一撃に込められた見覚えのある太刀筋に過去を思い起こす。

 

 

 

 あれは一年前…強い奴を求めて道場破りしながら全国をある程度回った頃、当ても無く彷徨う中で暴走族の連中とよくやりあった。

 

 ルールや規則に縛られた一対一の他流試合に飽き飽きしてた俺は、規則に縛られない無法者たちの相手をしてた。

 奴らにルールは無く、流派も型も無い

 だからこそ、その動きは野生的で予測不能、武器も使うし集団で来ることもある。

 だから面白い!

 だが、それも最初だけだった。

 無法者故にその動きはバラバラ、避ければ自爆に仲間割れ、何もしなくても勝手に崩壊する連中が多い中、鏑木コイツが現れた。

 

 鏑木は確か亞楼アローとかいう暴走族の何代目かの総長だった。

 メンバーの数もかなり多くその辺じゃかなりデカい部類の暴走族だった気がする。

 会って見ればその数は相当なモノで、溜まり場に集結した族車の数に圧倒されたのを覚えている。

 そして、族車の海を割って現れたのが数人の幹部を連れた鏑木だった。

 周囲の耳障りな族車の空吹かし音とヤジで鏑木が何を言っているのか全く聞き取れなかったが、奴が一対一タイマンで決着をつけようとしているのはわかった。

 ボコボコにへこんだ金属バットをカラカラと引きずり、族車のライトに照らされながら真っ直ぐ向かって来る鏑木に少し感銘を受けた。

 なぜならそれまで相手してきた暴走族の総長たちのほとんどが、最初は下っ端の奴から順に俺を襲わせたり、複数で俺を囲ませたりと数に頼んだやり方しかしてこず、酷い時には俺が下っ端連中を潰している間に逃げ出す腰抜けもいるほどだった。

 

 その点、一人で来た俺に対し対等な条件で向かって来る鏑木は稀有な存在だった。

 少なからずそれまでも一対一でやり合う総長もいるにはいたが、その大半が一発または数発で沈む奴らばかりでつまらなかった。だが、鏑木は沈まなかった。

 鏑木は防御をしないし避けることもしない。俺の攻撃の全てを天性の打たれ強さだけで耐え、腕力に物をいわせた馬鹿力でバットを振り回し大暴れ、、、そういえばあの時も周りにいた奴を何人か巻き込んでたな

 暴走族の中で俺相手にあれだけ良い勝負ができた奴は鏑木ただ一人だけだった……

 

 

 

「サーカキーーーーッ!!」時生の一際大振りな一撃が大地を一層深く切り裂いた瞬間、勢い余って能力の源である時生の剣が地面に食い込み引っかかった。その一瞬の隙を逃さず明は一気に距離を詰める。

 力任せに剣を引き抜く時生と一気に距離を詰めながら必殺の一撃のために力を拳に込める明

 

 互いが互いの間合いに入った瞬間、その間に道雪が割って入る。

 

 しかし、二人の全力の一撃は止まることはない!

「どけっジジィーーーーッ!!」

「…………!!」

 時生の怒声と明の無言の殺気が容赦無く道雪を襲う。

 振り下ろされる雷刃の一閃と拳聖の雷撃

 次の刹那…二本の稲光の閃光が大地の彼方まで走った。

  

 気付けば時生の喉笛には道雪の刀の切先が突き付けられ、明の拳は逆手に持たれた鞘の鐺で押し止められていた。

 

 二つの閃光の正体は道雪が時生の雷刃の一閃を一刀両断して割ったモノと、明の拳を鐺で止めた際に相殺された雷撃の放電現象だった。

 

 

「次は無かっ!そう言うたど……。

 ええか!こっから一歩も退がること能わず、退がる者あらば…我が愛刀雷切(らいきり)の錆になることと心得よ。」少し前まで雷のような迫力で恫喝していた道雪の冷徹な殺気に満ちた囁きに一瞬で肝が冷える二人、恐怖で一歩も動けない両者に道雪は「時が無かっ!」次の瞬間明の拳を止めていた鞘を押す衝撃で明をゴールである山脈向け吹き飛ばし、一瞬で時生の背後に回り刀を振り下ろす。

 それに反応して道雪の刀を剣で受け止める時生だが、道雪の剣圧に押されそのまま明同様吹き飛ばされる。

 刀を鞘に納め肩に掛け直すと道雪は一言「雷神様、後はおまかせいたします。」

 

 

 

 ーー4 動く山 ーー

 

 かなりの距離を吹き飛ばされた明と時生

 ゴールである山脈の目の前に落ちた二人はその山の圧倒的存在感に驚愕する。

 山の周辺は雷鳴の轟音が常に響き続け、それと呼応するように大気そのものが大きく揺れ平衡感覚が狂わされるような感覚に襲われる。

 そして目を疑うような現象を目撃する。

 

「山が……動いて…いる!?」

 

 動く山を前に立ち尽くす明は山の正体に気付くのだった。

「山が動いているんじゃない……呼吸してる。

 この音は雷じゃない……いびき?大気が揺れているのは吐息のせい!

 つまり、この山そのものが……雷神!!」自分達が目指していた山そのものが雷神だと知って呆然と立ち尽くす明と時生、だが道雪の言う通り雷神の下まで辿り着いたにもかかわらず何も起こらない、それどころか少し離れた場所では先に辿り着いていた騎神たちが雷神を攻撃していた。

 そこへ道雪が現れる。

「言うたろ、雷神様ばご尊顔拝むことが試練の目的ち…拝めねば皆ここで野垂れ死にじゃ!どうする?」道雪の助言に明はそびえ立つ雷神に至近距離で雷吼砲を放つが、雷神はビクともしなかった。

 時生も電撃を纏った剣を突き立てるも雷神の硬い皮膚に刃が立たず、傷一つつけることもできない。

 騎神たちが動かぬ雷神を前に途方に暮れる中、道雪は一人輿の上でどぶろくを飲み始める。

 

 そんな道雪を見て明は考える。

 

 

 今俺たちが攻撃している場所は雷神のどこの部分なのか…もし足の裏や肘や膝などの感覚の鈍い部位の場合、全体像もわからないほどの巨大な存在が気付くはずがない…、ならまずは雷神の全体像を把握した上でウイークポイントを探す方が確実だ!

 

 

 明は雷神の周囲を一周するため歩き始めた。しかし見渡す限り続く山脈を前に心が折れそうになるが、一箇所僅かに走る亀裂を見つけ出し渾身の一撃を叩き込む。

 すると亀裂の周辺が一部崩れはするものの雷神に反応は無い、その後も同じ場所に何度も攻撃を加えるもやはり雷神に反応は無い。

『無駄か……』と明が諦めかけた時、背後から迫る殺気を感じる。

 その正体は時生を中心とした騎神の集団

 

 一向に反応の無い雷神に業を煮やした明に恨みを持つ騎神たちが群れとなって明を襲いに来たのだ。

 中でも時生は明一人に暴走族を潰された哀れな漢として明を憎む騎神たちの中でも有名だった。

 

 先述の通り時生は覚醒前から周囲を巻き込む喧嘩をしてきた生粋の暴れ鮫だったため、明との一対一タイマンのつもりが時生自身の攻撃のせいでメンバーの多くが負傷、愛想を尽かして脱退する者が多発して暴走族としての勢力を著しく失った亞楼は自然消滅した過去がある。

 時生は亞楼解散の全て原因を明のせいと考え恨み続けていた。

 試練を諦めた騎神たちがそれに同調し、明に恨みを晴らしに群れとなって襲いかかってきたのだ。

 明は心底呆れた表情で溜め息を吐き、襲いくる騎神の群れに立ち向かう。

 次々と騎神たちを打ちのめしていく明

 やはり最後は時生との一騎打ちとなり、息も絶え絶えの中立ち向かう。

 

 

 流石に疲労困憊の明は時生の馬鹿力にしだいに圧され始め、山肌に追い込まれる。

 時生は追い込まれた明に対し剣を上段に振りかぶり「これで終わりだ!死ねーっ榊!!」と刃を振り下ろす。明はその瞬間を逃さず剣の軌道を読みながら大きく躱し、背後の亀裂に刃を喰い込ませた。

 

 次の瞬間、一瞬の隙に時生の懐に入り込み鉄山靠で時生のみを吹き飛ばすと、亀裂に食い込んだままの剣の柄頭に全身全霊を乗せた拳を打ち込んだ。

 時生の剣はその衝撃で亀裂の奥に深く突き刺さり、そこから夥しい量の血が噴き出す。

 

「「「うごおおおおおおっっっ!!!!」」」

 

 地響きと共に山が、動いた。

 

 

 

 ーー5 雷神の目覚め ーー

 

 動く山脈、激しく荒れる天候、広がる大地の至るところで生じる地割れと地崩れ、天変地異の真っ只中切り立つ山脈は姿を変える。

 

 世界そのものを揺るがすような叫び声を上げ、くるぶしの辺りを掴み明が突き刺したであろう亀裂部分を確認した雷神は「「「道雪ぅぅぅ!!抜いてくれーーーっ!!!」」」雷神の天を衝かんばかりの巨体では時生の剣は小さすぎて摘むことができなかった。すぐに道雪が現れ剣を引き抜く。

 雷神は傷を押え渋い顔で天変地異から命からがら生還した泥だらけの騎神たちを見渡す。

 

 

 その姿は風神とよく似た鬼だった。

 違うところは風神は一本角だったのに対し、雷神は二本角

 風神と同じ隈取りのような大きく深いシワが顔に刻まれ、下顎から立派な牙が突き出しているものの、状況が状況だけにその顔は鬼の形相とは程遠いものだった。

 寝惚け眼に口に涎の跡、足を痛がるその姿は戸棚に足をぶつけて悶絶するおじいさんにしか見えなかった。

 

 

「うぬらっ!頭が高かっ!!

 こちらにおわすお方を何方と心得る。

 うぬら雷の騎神を統べし魔神!雷神 鳴神なるかみ様に在らせられるぞ!!!

 頭が高か!ひかえいっ!!」道雪の大音声の口上に騎神たちは従うが、それは雷神を敬ってのモノというより単に道雪の迫力に気圧されてのものであった……

 

 そして跪く騎神たちを前に雷神が口を開く。

「「我を目覚めさせたは貴様か!?」」雷神の世界そのものを震わせるような迫力の大音声に対し、恐れながも顔を上げる明

 見上げた視界の全てを覆うほどの巨大な鬼の顔が明を見ていた。

 圧倒的な雷神の迫力にゴクリと喉を鳴らす明、だが決して雷神から眼をそらさず、真っ直ぐ雷神を睨み続けた。

「「良い眼だ、よかろう!其方を雷に()()()()()とする!!」」雷神のこの発言に訳も分からず困惑する明

 

 そこへ道雪が雷神の前に出て言い放つ。

「これを以って試練ば終了する!

 各々奥義・固有技の伝授を開始すっと!」

 道雪が話す後ろで雷神は再び眠る体勢に入ったことは言うまでもない……

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