表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
騎神伝  作者: 一一【ニノマエ ハジメ】
試練
42/56

白雪姫〜スノーホワイト〜閑話

 6月2日 未明 橘は都内某所の喫茶店にいた。

 シックな店内に流れる古いレコードの程良いBGMと座り心地にこだわった革張りのソファーとオーク材の机が程良い感覚で立ち並ぶ店内

 

 そこへ1組の夫婦が入店する。橘は立ち上がり丁寧に自己紹介をして夫婦を席に案内する。申し訳なさそうに席に着いた夫婦は落ち着かない様子で橘を見る。

 

 二人は彩奈夫妻、美樹の両親である。

 父 彩名宏樹あやなひろき(42)

 母 彩名美咲あやなみさき(38)

 警察にも美樹の捜索届が出されていなかったため、橘は調査部に依頼して以前から両親の所在を把握していた。

 だがそのタイミングで試練が始まってしまい両親への連絡を遅らせていた。そして、美樹が試練から帰還したこのタイミングで報告することにしたのだった。

 

 

 橘は美樹が翼邸で住み込みで働き元気でやっていること、騎神であること、昨日試練を終え無事帰還したことを伝えた。

 彩名夫妻は美樹の無事を聞くと喜んだが、騎神への覚醒は知らなかった。

 

 そして橘は切り出す。

 何故、家出した娘の捜索届を出さなかったのか…そもそも何故、美樹が家出することになったのかを……

 

 

 

 ーー4 親の心子知らず ーー

 橘の問いに両親はばつの悪そうな顔で話し始める。

 母美咲はこれまでの美樹へのスパルタ教育の内容とそれに伴う経緯について説明した。

「……私が悪いんです……自分のことばかりで、あの子に無理を強いてしまった。今思えば家出して当然です。」内容を聞いた橘は確かに年頃の娘が家出するには十分な理由とは思ったが、だからと言って親が娘を放置する理由にはならないとも思った。


「だから、あの子の好きにさせてあげたかった…『子供のため』と身勝手な正義をあの子に押し付けて意見を無視してきたダメな母親です。連れ戻したところで、またあの子をいたずらに苦しめてしまうのは目に見えています……。だったらいっそ、私の目の届かないところで生きてくれた方があの子にとって幸せなのでは……そう、思ったんです。」 

 俯き顏で深く反省する美咲の肩に優しく手を当て妻を励ましながら夫宏樹が口を開く。

「最初は反抗期だからだと思っていました。娘もそういう年頃ですから私も距離を置くようにしていたのですが、どうやらそういうことでもないことがわかりまして……

 

 ある日、帰宅途中にオフィスビルのガラス越しに踊る娘を見たんです。最初は「こんな夜更けに何しているんだ!」と注意しようかと思いました。ですがお恥ずかしながら、その時久しぶりに娘のあんな笑顔を見たものですから注意する気が失せてしまい……仕方なく遠くから娘を見守ることにしました。

 それからは娘にバレないように変装したり、何度も周りを往復したり、双眼鏡を使って遠くから眺めたこともありましたが、その時はさすがに怪し過ぎて職質されたこともありました。

 あの時はただ父親として悪い大人に騙されないように見張っているつもりでしたが……逆に私が不審者扱いでしたよ。

 

 実際にはただ『娘にはバレエよりもやりたいことができた。』だけ…出て行くまで、そんなことにも気付けない……本当にダメな親です。」二人の親としての葛藤に、翼の教育係である自分を重ね合わせ共感する橘

 

 

 そして宏樹は二枚の写真を取り出し橘に見せる。一枚目は発表会でバレエを踊る美樹、二枚目は外でストリートダンスを踊る美樹

 橘は一枚目の写真を見た時、一瞬それが美樹だとわからなかった。

 そこに写る美樹は無表情で目に輝きは無く、機械のように踊る人形のように見えた。

 一枚目の写真を見て驚く橘に対し、宏樹は二枚目の写真を手に取り言う。

「やはり、一枚目そっちの美樹に驚くんですね。

 私たちは逆に二枚目こっちの美樹に驚いたんです。

 まだこんなに無邪気に笑えたんだなって……もう何年もこんな笑顔、見たことなかったんですよ……

 橘さん…娘は今、笑ってるんですよね…?だとしたら娘のこと、よろしくお願いします。」橘のよく知る底抜けに明るい美樹の写る二枚目の写真を差し出し切願する宏樹

 写真を受け取り見比べながら考え込む橘に美咲も頭を下げ懇願する。

 

「私じゃダメなんです……昔の恩師にも言われました。

 私の教育はあの子の自由を奪い、元々持っている豊かな感性や才能を奪っているって…『子供はあなたの夢を叶えるための道具ではありません、あなたが子供の夢を叶えるために協力するべきなのです。子供はあなたの操り人形じゃない!』恩師の言葉でようやく自分が母親であること、母親として本当にすべきことを教えられた気がしました。」二人の美樹を思う親心に触れ橘は微笑み「『可愛い子には旅をさせよ』ですか……」しみじみと口ずさみ満足そうに笑う橘

 

「喜んで、お預かりいたします。

 美樹さんのご両親がお二人のような方でよかった。

 これからは定期的に美樹さんの様子を報告させていただきますので楽しみにしていてください。」

「「ありがとうございます!!美樹を娘をよろしくお願いします。」」

 

「いえ、私もお二人から大切なことを教わりました。そしてお母様の恩師の方のお言葉も…さぞ立派な方なのでしょうね。」

「ええ、今ではバレエ協会の理事で、あの子の学校の理事長でもあるんです。

 若い頃はよくお世話になって、あの人に恋心を抱いてた時期もありました……、でもあの人…ゲイだったんです。」

 

 

 ほぼ全ては美樹の勘違いだった。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ