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騎神伝  作者: 一一【ニノマエ ハジメ】
試練
41/56

白雪姫〜スノーホワイト〜2

 …あれ?あたし何してたんだっけ?

 …あれ?あたしどこにいるんだっけ?

 …あれ?あたし何がしたかったんだっけ?

 

 ……あれ?ママは?パパは?…どこ?

 

 

 

 ーー2 子の心親知らず ーー

 

 ・美樹 3歳

 小さい頃の思い出といえばバレエ教室

 先生はママ、パパと結婚するまでは世界中を飛び回る一流のバレエ団に所属してたらしいんだけど、パパと出会ってあたしが生まれてからはママが叶えられなかった夢をあたしに託すため、バレエ団の経験を活かしてあたしに英才教育をするようになった。

 

 小さい頃は優しく一つ一つゆっくり丁寧に教えてくれた。時々怖い時もあったけど、あの頃はできるようになる度にママがすごく褒めてくれて、その時のママの笑顔を見るのが嬉しかったし楽しかった。

 

 ・美樹 6歳

 ママは発表会が近付く度に厳しくなった。

 ママは大きな発表会はもちろん町内の小さな発表会でも手を抜くことなく、つま先から指先、頭の角度まで厳しく矯正した。

 そのおかげでいろんなところでいろんな賞を貰えて周りの人達はいっぱい褒めてくれたけど…ママはあんまり褒めてくれなかった。

 

 ・美樹 7歳

 小学校はバレエの名門校、朝とお昼は学校の先生が、放課後はバレエ教室の先生が、夜はママが指導した。

 正直、この頃ママの笑顔を見た記憶が無い。

 

 ・美樹 12歳

 この頃には周りに居る同級生や先生たちのことを嫌いになってた。

 コンクールが近くなる度に同級生は嫌がらせ、先生たちは細かいことをチクチクガミガミ言うようになってムカつくし、ママに言っても「嫌がらせなんか気にしない!」「先生の仰る通り直しなさい!」ばっか……あたしの気持ちなんて関係ないんだ………

 そしてそんな日はよく放課後のレッスンを抜け出した。

 

 そして、そこで出会ったんだ。

 あたしが本当にやりたいことに……

 

 そこにはビルのガラス窓を鏡代わりに踊る人たち、ストリートダンスとの出会いだった。

 それぞれ好きな服着て好きな曲かけて自由に誰の指図も受けず、好きなスタイルのダンスを踊る……そこにはウザいやっかみも口うるさい押し付けも無い、ただただ『好き』を表現する世界、、、

 そこには辛い涙も悔し涙も無い、そこにあるのは笑顔と真剣な顔に流れる汗だけ

 ムカツク悪口も陰口も嫌がらせも無い、聞こえてくるのは楽しい会話と笑い声、そしてダンスをより良くするための試行錯誤と口喧嘩

 

 

 大事なことは、

 演目ナニを踊るかじゃなくて、どう踊りたいか!

 どこで踊るかじゃなくて、誰と踊りたいか!

 格式を(どう)見せるかじゃなくて、魅せることなんだ!!

 

 それに気付いた瞬間、あたしはダンスにのめり込んだ。

 夜な夜なレッスンを抜け出してはいろんなジャンルのダンサーたちに教わっていった。ポップ・ジャズ・ロック・ブレイク・アニメーション・ハウス他にもいろんなスタイルのダンスを教わるたびに友達が増えていった。

 

 

 ・美樹 14歳

 家に帰る時間も段々と遅くなって、そのたびにママと喧嘩した。

 ママは二言目には「あなたのために」って言うけど、本当にあたしのためなの?

 

「あたしはあたし、あたしの人生!ママのじゃない!」咄嗟に出た言葉に、ママは何も言い返せず大粒の涙を抱えたまま部屋を出ていった。

 ママのあんな顔を見たのはその時が初めてだった。ママを傷付けてしまった罪悪感とあたし自身の本当の気持ち、胸の中に残るモヤモヤでバレエにもダンスにも気持ちが入らなかった。

 

 そんな時、単身赴任のパパが帰ってきた。

 小さい頃からパパはいつでもあたしの味方でいてくれた。ママが機嫌が悪い時はいつもパパに甘えてた、パパはどんなに仕事で疲れていても必ずあたしを慰めてくれた。

 でも、久しぶりに帰ってきたパパは少し様子が変わってた。

 あたしを見る目が前と比べてどこか違うような気がした。

 小さい頃、パパはあたしがケガしないようにすぐ手の届く距離であたしを見守ってくれていた。友達と公園で遊んでいても離れた場所で常に見守ってくれて、あたしが手を振るとすぐに振り返してくれた。

 その頃の優しい目は覚えてる…でも、今あたしを見るパパの目はあの時とはどこか違う……

 あの目…あの目をあたしは知ってる……ストリートで踊るあたしたちの…ダンスを見てない人の目、女のカラダを見ている人の目…いつも離れたところから見てる気味の悪いおじさんと同じ目……

 

 そして、ママもパパのあたしを見る目の変化に気付いてた。

 ママはパパを愛してる。だからこそパパがあたしばかりを見ることが許せなかったのかもしれない……ママはあたしに嫉妬心を抱くようになって、バレエのこと以外でもあたしに強く当たるようになった。

 口には出さないけど、ママの目は言ってた「「このドロボウ猫!!」」そう言っているように見えた(聞こえた)

 

 

 

 この家にあたしの居場所は無い……そう考えるようになった頃、ママに連れられ理事長に会うことになった。

 バレエの名門校の理事長だけあって、この業界ではかなり有名な人らしい。ママも若い時に()()()になったって言ってた。

 

 そういえばクラスの娘が噂してた。

 この理事長のお気に入りになることが、一流のバレリーナになるための一番の近道になる。でも逆にこの人に嫌われたら最後、どんなに実力がある娘でもプロの目に入ることを封じられ、華やかな表舞台への道が完全に閉ざされてしまうらしい。

 

 つまりはそういうこと……このおじさんとそういう関係になること、そうしないとママの夢は叶わない……

 聞いたことがある。この理事長は生娘にしか興味の無いロリコンで、学校で気に入った娘を見つけてはバレエ団への紹介状を餌に好き勝手する最低のクソ野郎だって……

 

 

 ママはあたしにどこかへ行ってほしかったのかな……

 パパがあたしばっかり見てるから?

 あたしがバレエを嫌いになったから?

 ママの夢を叶えられない娘はもういらない娘なの?

 いらない娘だから、こんなオヤジの慰み者にするの?

 

「そんなの嫌!!」あたしはママの手を振り解いて逃げ出した。

 

 嫌だった。ママもパパもバレエも、それを取り巻く汚い大人たちもそれに操られる同級生みんなも全部……嫌!!!

 

 外は雨が降ってたけど、そんなことにも気付かずあたしは走った。1秒でもこんな所居たくなかったから、でも帰る所っていっても……

 

 

 ビショビショで家に帰るとパパが居た……

「どうした美樹!」と心配するパパの目は濡れたあたしのカラダを見ていた。

 バスタオル持って来てあたしを抱きしめようとしてきた。パパも所詮は男!

 男なんてみんな一緒!カラダ目当てなんだ!理事長もパパもみんな!!

 

 あたしはパパの手を振り払いまた飛び出した。

 

 

 それが一ヶ月くらい前のこと……

 それからはストリートの友達の家を転々として、そのうちに騎神の力が目覚めて今に至るって感じ……なんなんだろうあたしの人生って、、、なんか・・・どうでもよくなってきちゃったなぁ……

 

 

 遠退く意識と思考、眠る寸前の心地良い脱力感に呑まれていく美樹

 凍月は「堕ちたな……」と眠る美樹を見つめ冷静に呟いた。

 

 

 

 ーー3 眠り姫 ーー

 

 まぁ、よく保った方か……能力値がいくら高かろうが経験不足は否めない。面白い娘だったが、これも試練の習いだ。

 

 

「さぁ、次は……んっ!?」凍月は次の観察対象を探そうと他の棺に視線をずらそうとした瞬間、何かを感じ再び美樹の棺に視線を戻した。

『・・・どういうことだ!?』美樹に視線を戻した凍月は眠る美樹の変化に気付く。

『・・・体温が・・・上がっている?』これまでにない出来事に驚く凍月

 そして更なる変化に気付く

『何故だ!?何故汗をかく?…何故息を荒げる?…何故紅潮する?…棺が内側から溶け始めている…だと!?』美樹の体温が上昇したことで棺の内部と外側で温度差ができ、棺の表面が曇り始め内側の表面に水滴が垂れていた。

 予想外の出来事に凍月は棺に近付き美樹の様子を見る。

 中では気持ちよさそうに眠る美樹が「「ムフフフフッ」」と鼻の下を伸ばし、身体をモジモジさせながら気持ち悪くほくそ笑んでいた。

 そんな異常な状況に驚きを隠せない凍月は棺に手を当て美樹の頭の中を覗き込んだ。

 そこから見えてきたのは美樹の夢、深層心理の奥にあるビジョンに見たのは……至近距離で見つめる男の顔、ボサボサの頭に大きな眼、ゲジゲジの太い眉と太い首、そして日焼けした傷だらけの筋骨隆々の巨大な肉体と右肩に刻まれた焼き印…美樹はカムイの夢を見ていた。

 しかし、美樹の夢の中のカムイは恐ろしく美化されていた。

 本当なら野生的な生活の影響で身体中土汚れや生傷の絶えない見た目の筈だが、美樹の夢の中のカムイは汚れ一つないツルツルの肌にある程度整えられた眉、ボサボサの乱雑だった髪型は自然と絵になるルーズな印象のオシャレヘアーに変わっていた。何よりその表情は今までに見たことのないニヒルな笑みを浮かべ美樹を見つめ、流暢な言葉で甘い台詞を囁いていた。

 

 

「なるほど、想い人の夢か」凍月は『年頃の娘がよく見る夢』と納得したが、次の瞬間始まった淫らなビジョンに凍月はその場で噴き出し、目頭をおさえ首を振りながら「好色な娘だ!」と呆れた表情で美樹を見ると、棺の中で幸せそうな表情で「カムカム〜」と寝言を呟きながら汗ばむ身体をモジモジさせていた。その様子に心底呆れながら頭に手を当て天を仰ぐ凍月、次の瞬間最後の棺が崩れ去り、試練の終了を告げた。

 凍月はそれを確認すると美樹の棺に振り返り「娘、其方の勝ちだ。想い人とその夢を叶えられると良いな……試練を終了する!」凍月が手を掲げると空を覆っていた雪雲が割れてそこから強烈な太陽光が降り注ぎ氷の棺を溶かしていった。

 

 生還した騎神たちが試練の終了に安堵の表情で眠る中、ただ一人陽の光に目を擦りながら不機嫌な表情で目を覚ます美樹「……良い夢見てたのに、、、」見上げた先の凍月は冷たい表情で見下し毛布を手渡し「眠れ」と一言言って粉雪になって消えていった。

 美樹は手渡された毛布に包まり再び眠りについた。

 

 その後、氷の騎神たちは順に目を覚ましそれぞれに奥義と固有技を習得し帰還した。

 

 

 

 カムイと美樹の帰還から2日後

 6月3日の深夜にニュースが流れる。

 その内容は日本中の至る場所で突然原因不明の間欠泉が吹き上がり、そこから若者が現れるというもの。もちろんそれは水の騎神達の帰還を意味した……だが、確認された騎神の全ては女性だった…………。

  

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