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騎神伝  作者: 一一【ニノマエ ハジメ】
試練
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鋼の錬金術師2

 闇夜を必死に駆ける少年の視界に、地平線の先まで広がる漆黒の大海原が現れる。


 


 ーー3 任務と倫理 ーー


 しかし、すでにそこには隊員が居た。銃を構え走る少年に立ち塞がる。

 だが、引き金にかけた指を引こうとはしなかった。

 この隊員は若く、実践経験の無い新人だった。銃で人を殺すことに対し未だ迷いを抱え、しかも今銃口の先にいるのは子供……隊員の手は震え、何度も迷いを振り切ろうと力むもどうしても引き金を引けず、最後には銃を地面に叩きつけ葛藤の中息を切らし呻きながら震える手を地面に叩きつける。

 その隙をついて少年は崖の先端に向かって駆けて行く。


 そこへ集落で虐殺を行っていた隊員が合流し少年に向けすぐさま発砲する。幸い弾は少年を逸れ弾切れをおこす。

 隊員は舌打ちすると持っていた手榴弾のピンを抜く。その音に反応した若い隊員が先輩隊員に組み付く。

「待ってください!!子供は……子供を殺すことは無い!!!」若い隊員の行動に困惑する先輩隊員は「はぁ!?知るか!!」と手榴弾を少年目掛け投げつけた。


 爆発音と同時に飛び散る雑草と土煙、そして崖の手前でピクリともせず倒れる少年…

 それを見た若い隊員は発狂し、手榴弾を投げた先輩隊員を組み敷き殴りかかる。

「なぜ!?なぜ子供を!!」組み敷かれた先輩隊員は若い隊員の我武者羅に振り下ろされる拳を避けながら語りかける。

「これが、任務だからに、決まってんだろ!餓鬼が、どう、なろうと、知ったことか!」先輩隊員は冷静に対処し組み敷き返すと、今度は若い隊員を一方的に殴り付けた。

「いいか、これは、任務だ!仕事に、私情を、持ち込むな!お前も、()()なら、その辺の事、いい加減、弁えろ!!」一方的に殴られ鼻や口から血を噴き出しながらぐったりと動かなくなった若い隊員


 若い隊員が抵抗しなくなったので立ち上がり一息つく先輩隊員…すると物音が聞こえる。

 物音の方へ目をやると、音の主は少年だった。少年は爆発の衝撃で吹き飛ばされ頭を強く打ちつけ気を失っていただけだった。

 焦った先輩隊員は銃を構えるが弾切れしていることに気付き、再び手榴弾に手を伸ばすが若い隊員がそれをさせない。先輩隊員の腕を掴み抵抗する。

「逃げろーーーーーッ!!!」若い隊員の叫びに少年は崖から飛び降りる。

 その瞬間若い隊員は少年の破れた袖の隙間から右肩に刻印されたアテムの焼き印を見た。


 次の瞬間先輩隊員の拳が視界を塞いだ。


 

 後に崖下をヘリで調査したが、崖下の岩礁に少年の遺体は見つからなかった。しかし崖の途中の岩壁に少年のものと思しき血痕が残っていたため、落下する途中で身体を打ちつけそのまま落ちて海中の鮫に捕食されたものと考えられた。


 

 しかしその少年は生きていた。

 確かに岩壁に頭を打ちつけ記憶が曖昧になってはいたが、奇跡的に岩礁から外れた水面に落下し、少年は海を数日間漂流した後に本州に流れ着いたのだった。


 


 ーー4 ユビル ーー


 収縮する部屋の壁に圧迫され軋みを上げるカムイの身体は限界を迎える。恐らく数カ所の骨が圧迫骨折し筋肉を切り裂いている。見る見るうちに青褪めていくカムイ

 今にも押し潰されそうな状態の中、呼び起こされた過去の記憶が鉄の球体を形状変化させる。


 それはあの日カムイを命を賭して護り散っていった父の姿…アテムの狩人ユビルを模した鋼の戦士…

 遠退く意識の中カムイは父ユビルの姿を模した鋼を前に再び父の名を呟く。


 同時に鉄の部屋の収縮が止まり、カムイの部屋が球体に変化し上昇していく……。


 

 上昇した先に見えてきたのは視界を覆わんばかりの巨大な球体、迫る球体に対しカムイは力を振り絞り壁にめり込んだ腕を引き抜く。

 骨が砕け、肉も裂けた状態で力無く垂れ下がる両腕

 両腕を駆け巡る激痛を振り払い、雄叫びを上げ迫る球体に立ち向かおうとするカムイ


 その時、ユビルを模した鋼が前に出て一人でに斧を振り上げ球体に立ち向かう。

 ユビルの姿を模した小さな鋼が巨大な球体に斧の一振りを衝き立てた。


 次の瞬間、球体に食い込んだ小さな傷から一気に亀裂が生まれ、球体は崩壊

 中から大量の液体金属が放出され、ユビルを模した鋼と一緒に部屋ごとカムイの身体に吸収されていった。


 全てを吸収し何もない空間に一人漂うカムイ…気付けば身体の痛みは消え、砕けた骨も裂けた筋肉も元通りになっていた。

 意識もはっきりしているが身体が動かない…いや、動かしたくない……身体を巡る心地良い疲れがその気を無くさせているのだ。

 カムイは父の記憶と意志を胸に深い眠りに落ちた。


 その後、カムイは鉄の奥義と固有技を習得し帰還した。


 


 ーー5 季節外れの ーー


 川縁を見つめる三人……やがて雲行きが変わり小雨が降り始める。

 ポツポツと落ちてくる水滴を掌で受ける翼

 やがて水滴の中にヒラヒラとした物が混じり始め、やがて空から落ちゆく水滴の全てが雪に変わっていった。

 みるみる内に白一色に染められる川縁に一人の少女が舞い戻る。


 

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