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騎神伝  作者: 一一【ニノマエ ハジメ】
試練
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鋼の錬金術師1

第30話 導かれし七人・カムイの続きのお話です。

 6月1日 嬉優市内鈴井川河川敷 


 天空から落下した塊は川縁に突き刺さった衝撃で大きな亀裂が入る。

 亀裂は徐々に全体に広がっていき、次の瞬間破裂音と共に爆散し表面を覆っていた金属片が周囲に飛び散った。その衝撃で舞い上がった土煙の中巨大な影が現れる。……その影に翼は目を輝かせた。


 影の主はカムイだった。


 

 空を見上げ大きく深呼吸するカムイに翼は大きく手を振りカムイを出迎える。

 カムイも嬉しそうに手を振り返し、駆け寄る翼との再会を喜ぶ。しかし翼の側で笑う闘気を見たカムイは怪訝な表情で言う

「闘気、元気無い、どうした?」カムイに本心をつかれ一瞬驚く闘気

「美樹どこ?海・竜馬どこ?」三人を探し不安な様子で周囲を見回すカムイを翼が宥める

「まだ僕たちしか帰還してません。他の皆さんもそのうち戻られると思うのでここで待っていたんです。」

「なら、カムイ待つ、美樹・竜馬・海、みんな帰って来る。必ず!」カムイは河川敷の草むらに座り込むと川縁を見つめる。翼もカムイの隣に座り仲間の帰還を待つが、、、カムイの表情に違和感を覚える。


 

 カムイくんは山城さんを見て『元気無い』と彼の変化に気付いていましたが、それはカムイくんも同じ…帰還した彼の瞳はどこか疲れた様子で……それとは別にどこか…雰囲気も変わったように感じました。

 やはり、試練で何かあったのでしょうか。


 


 ーー1 鉄の試練 ーー


 落ち行く無数の六面体が奈落の底へ呑まれていく、くぐもった悲鳴も徐々に聞こえなくなり静まり返る空間

 そんな中残された騎神達の部屋に銀色の球体が出現する。


 鉄の騎神達は過去にその球体と一度対面していた……

 それは騎神に覚醒した時…火の騎神である竜馬も覚醒時に火の玉が出現し、そこから祝融の声を聞いた。

 それは鉄の騎神も同じ、覚醒時に身体から銀色の球体が出現し声を聞き騎神に覚醒した。

 そして今、球体が覚醒時に聞いた声を発する。

「「お前達(おまんたつ)!これから試練スレン開始かいすする。」」不思議な訛りのある独特な口調と重厚かつ地響きのような野太い声が空間全体を震わせる。

「「の名は鉄の神タタラ!

 おまぁらの能力ツカラ証明せい、、、球体をおまぁらの想い描く姿に化え…そして鉄の奥義【鉄巨人(てっきょじん)】として眷属にせぇ

 さぁ、はずめろ!」」タタラの試練開始の合図と同時に鉄の部屋が収縮し始め、中に居る騎神達はいろめき出す。


 

 鉄の騎神の能力とは鉄を操る能力

 それは何も無いところから金属を召喚したり、召喚した金属を遠隔操作するもの…

 しかしこの試練で試されているのは鉄を()()能力では無く、鉄の球体を素体として新しく何かを()()する能力


 これまで大半の鉄の騎神が鉄の召喚・操作の能力で戦ってきた。

 そこに突然創造の能力を要求され動揺する騎神達、しかも部屋の収縮によって迫り来る壁に騎神達はパニック状態になる。


 だが、そんな中でも早々に「できたー!!」の声と共に早々と試練を終える者も現れ、その騎神の部屋は形状変化し球体となって天高く舞い上がって行った。


 それを見た騎神達は焦り、必死に球体に力を込める


 

 球体の形状は鉄の能力で容易に変化させることができた。だが、問題はどんな形に変化させるかである……物を形造る上で重要なのは想像力、思い描く形を具象化するには造形を細部まで細かくイメージして、その全てを納得のいく形まで昇華させる必要がある。


 しかし、それは容易なことではない…

 特に弱肉強食の野生の世界で生きてきたカムイにとっては……


 

 閉鎖空間に閉じ込められたストレスと迫り来る壁への恐怖、そして試練への焦り、その全てがカムイの思考を蝕み精神的に追い詰める。

 この状況においてカムイの頭の中に浮かぶのは美味しかった麻美の手料理…カムイは現実逃避していた。


 だが、時間は無い。

 容赦無く迫る鉄の壁、ただでさえ巨大なカムイの身体に対しこの部屋は狭すぎた。

 今にもカムイを押し潰さんと迫る壁に、カムイは両腕を大きく開き左右の壁に手を突き受け止める。壁と壁に挟まれる形で止めるが、迫る壁の圧力で徐々に掌が鉄の壁にめり込んでいく。

 身体を駆け巡る激痛を歯を食い縛り耐えるカムイ、しかしそれでも迫る壁が止まることは無い。

 圧迫され軋みをあげる筋骨、力むあまり皮膚が裂けそこから血が吹き出し鉄の球体にかかる。

 鬼の形相で耐えるカムイが血の滴る鉄の球体に映る自分の顔を見た瞬間、カムイの中の封印されていた記憶が蘇る。


 忘れていた、忘れたままでいたかった筈の、血塗られた過去を……。


 


 ーー2 大虐殺ジェノサイド ーー


 それは幼き日の記憶……誰も知らない小さな島、手付かずの豊かな自然が創り出す独自の生態系の中に原始的な生活をする民族 アテム族の集落があった。

 カムイはその集落で生まれ、アテムの教えの中狩猟の技術・本能を身に付けながら成長していた。

 あの日までは……


 


 月夜の静寂を切り裂くヘリの音

 風圧で軋む木々と闇夜に蠢くサーチライトの光に集落は大混乱

 アテムの矜持のもと女を守る為に武器を持って立ち塞がる屈強な狩人達

 そこにヘリから黒ずくめの武装集団が降り立ち、アテム族目掛け有無を言わさず銃を乱射する。

 原始的な武器しか持たないアテム族に抗う手段は無かった……


 

 女子供を身を挺して守ろうとする男達だったが、一人また一人と銃弾に倒れその銃口は女子供にも容赦無く向けられていった。

 繰り返される発砲の光と硝煙、鳴り響く銃声に逃げ惑う女子供達、平和だった集落は一瞬で地獄へ変わり、地面を薬莢と死体の山が埋め尽くす。


 集落をあらかた制圧した部隊は生き残りがいないか島の探索を開始する。この部隊はアテム族を一人も生かす気が無かった。部隊の目的はアテム族の殲滅、、、まさしく大虐殺(ジェノサイド)だった。


 

 部隊は探索する中で子供を連れ逃げる女を発見、隊員の一人が背後から女を撃ち脚を止める。

 傷を負った母を助けようと駆け寄る子供だったが、母親は「逃げろ」と叫ぶ。子供は泣きじゃくりながら再び駆け出す。

 残された母親に止めを刺そうと銃口を向け引き金を引く隊員

 引き金を引き絞る瞬間、何かの影が視界に飛び込み、腕が吹き飛ばされる。


 血を噴き出し叫ぶ隊員が見たものは、地面に転がる自分の腕とそのそばに突き刺さった血塗れの斧だった。

 次の瞬間、茂みから巨体が飛び出し片腕を失った隊員の頭を掴み側の大木に叩きつけた。

 衝撃で頭蓋骨を粉々に砕かれた隊員はその場で絶命、一緒に行動していた隊員が生き残りの狩人に銃口を向けるが、銃ごと拳で弾かれその衝撃で腕の骨が折れた。

 狩人の人知を超えた腕力に怯んだ隊員は次の瞬間殴られ首の骨がへし折れ絶命した。

 狩人は傷を負った女の元へ駆け寄るが女は首を横に振り、逃げた子供を救うように狩人に指図した。

 この女は狩人の妻だったのだろうか、狩人は女の手を強く握り締め、強い目で女の意志を継ぐと子供の元へ駆け出す。

 隊員の叫び声を聞き付け迫る隊員達に女は石を投げ付け声をあげる。


 

 背後で鳴り響く銃声と同時に女の声が止み、瞳に涙を抱え振り向かずに走る狩人は先を走る子供を発見する。


 子供の背後から銃口を合わせる隊員を後ろから襲い斧で首を叩き切ると、少し離れた場所から子供を狙う隊員に斧を投げ付けた。

 背後から追いついてきた隊員たちに首を切った隊員の身体を投げ付け足止めするとその隙に投げた斧を拾い上げ、絶命した隊員を銃弾の盾にして接近、隊員たちを斧で斬りつけていった。

 狩人の猛攻にたまらず逃げ出す隊員たち


 狩人は深追いせず子供の元へ向かい、子供に追い着くと逃げ場所の指示を出す。


 少年の走る先には大きな崖があった。崖の先には漆黒の大海原、そして崖下には切り立つ岩礁の群れ……飛び降りればまず命はない。

 しかし、それしか逃げ道は無い…奇跡を信じ、狩人は少年に全てを託し脚を止める。

「「おおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーっ」」狩人の雄叫びは島中に響き渡り、位置を把握した隊員たちが隠れて狩人を取り囲む。


 隊員の一人が離れた場所から狩人の頭目掛けてライフルの照準を合わせ発砲する。

 狩人の側頭目掛け迫る弾丸、しかし発砲時の発光を狩人は見逃さなかった。

 次の瞬間弾丸が撃ち抜いたのは、狩人の頭の前に掲げられた先程殺された隊員の頭だった。

 貫通力の高いライフルの弾丸もヘルメットを冠ったままの生首は貫通できなかった。


 隊員の位置はわかっている。

 今度は狩人の投げた斧が隊員の頭をヘルメットごと叩き割った。

 狩人の反撃に驚いた隊員たちが一斉に立ち上がり狩人目掛け銃を乱射する。

 狩人は右へ左へ変則的な動きで銃弾を躱しながら隊員の首を投げつける。

 迫る仲間の生首に怯えて一瞬引き金から指が離れる隊員その隙を逃さず狩人は落ちている石を拾い上げ思いきり投げつける。

 人知を超えた筋力を持つ狩人の投石は隊員の骨はおろか内臓をも破壊した。


 空いた弾幕の隙をついて隊員たちを惹きつけ別方向へ駆け出そうとする狩人、、、そこへ少年の声が響く。

 先を走る少年に気付いた隊員の一人が発砲し、弾丸が少年の右肩を掠めた。幸い少年の服の袖の一部が吹き飛んだだけで済み、少年は衝撃に驚いただけで怪我は無かった。


 少年に迫る隊員

 少年を護るため駆け出す狩人

 銃口を少年に向け引き金に指をかける

 咄嗟に側の岩を投げる狩人

 岩が隊員に命中し、その隙に駆け出す少年

 隊員が再び銃口を少年に向け引き金を引いた。

 一直線に少年に向け駆ける狩人、周囲の隊員たちからの銃撃を受けるも止まることなく少年と隊員の間に立ち塞がった。


 崖に向かって駆ける少年が背後の凄まじい銃声に振り向くと、そこには無数の銃弾を強靭な身体一つで受け止める父の姿があった。


 

 壮絶な父の最期に少年は父の名を叫び、その大きな背中から意志を引き継ぎ駆ける。


 海は…もうすぐだ!





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