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騎神伝  作者: 一一【ニノマエ ハジメ】
試練
37/56

風来のシレン2

 暴風を諸共せず次々と先頭集団を追い抜いて行く風の騎神(実力者)

 彼らは理解していた。この世界で騎神を撃破しても何の意味も無い事を…そのため翼達前線の弱い騎神は進行の妨げにでもならない限り襲われることはなくなっていた。

 重要なことはただ一つ、風神の元へ辿り着くこと!それのみだった。

 

 しかし…翼を追い抜いていった騎神達が進む先の砂嵐が徐々に朱に染まり始めていた。

 

 

 

 ーー3 朱の砂漠 ーー

 

 ゆっくりではあるが着実に歩み続ける翼は僅かな砂の色の変化に気付く。

 その色は進むほど濃く広範囲に広がっていき、更に歩を進めると見渡す限りを朱の砂漠が覆い尽くし、そしてその先の大きな砂丘を乗り越えた先に見たものは……朱に染まる砂漠に散らばる人体の一部と、逃げ惑う騎神をけたたましく笑いながら次々と切り刻む大鎌の騎神(狂人)がいた。

 

 

 翼は目の前に広がる光景に腰を抜かし、その場に尻もちをついたまま立ち上がれなくなってしまった。ショックのあまり気が動転し呼吸もうまく出来ない。

 その間も目の前で繰り広げられる虐殺行為にこれまでに経験したことのない恐怖を覚えた。

 

 そして死神は翼達の存在に気付く……

 

 死神が放ったかまいたちが翼のそばで立ち尽くしていた騎神の首を掻っ切った。

 舞い散る大量の血飛沫を浴びる翼、目の前で起きたショッキングな出来事に瞬きを忘れ凍りつく

 次の瞬間、大きく見開かれた瞳に返り血が入り視界を塞いだ。

 痛みと驚きで目を覆う翼に容赦無く大鎌を振り上げ襲いかかる死神

 死神の接近を察し無理やり目を開く翼

 すると今度は突風と共に大量の砂が目を直撃した。

 激痛にその場で悶絶する翼、悶絶し倒れ込んだおかげで死神の鎌を運良く躱すことができたが、空振った大鎌をひる返し再び翼を狙う死神

 

 しかし、その刃は翼の手前で止まる。同時に周囲の空気が弾け強烈な破裂音と衝撃波が周囲を劈いた。

 大鎌を受け止めたのは風を纏った一本の棒だった。

 

 完全に視界を塞がれた翼は何も見えない状態で気配だけでもう一人の騎神の存在に気付くと目をつぶった状態で必死に訴える「逃げてください!この死神ヒトは危険です!!」翼のこの言葉に騎神は死神の攻撃を躱しながら話す。

「わかってるよボッチャン!今はこんな奴と殺りあってる場合じゃない。」

「あなたは……!ヒュウガマンですか!?」

「覚えてくれてて光栄ですボッチャン!どうやら目が見えてないようで……好都合だ!」ヒュウガマンは仮面もハットも被っておらず、顔を晒していた。

「どうするつもりですか……?」

「どうするもこうするも……今は時間が無い!ボッチャン、暴れんでくださいよぉ〜」ヒュウガマンは隙をついて風を乗せた一撃で死神を吹き飛ばすと翼を抱え上げ、能力を使って飛び上がり猛スピードで移動した。

 吹き飛ばされた死神は砂丘に叩き付けられ、その衝撃で崩れ落ちてきた砂に呑まれた。

 

 高速で移動するヒュウガマンは瞬く間に騎神達をごぼう抜きし、一気に風神が居るであろう巨大な竜巻へ突入する。

 凄まじい暴風の中を突き進むヒュウガマンに抱えられるだけの翼はあまりの風圧に顔を上げることすらできず、ただ身体を預けることしかできなかった。

 

「ボッチャン!ゴールだ!!」暴風域を抜けて竜巻の中心に辿り着くとヒュウガマンは翼を竜巻の中心に鎮座する風神目掛け投げ飛ばした。

 

 

 

 ーー4 風神 ーー

 

 上空から投げ飛ばされ何かにぶつかる翼、ぶつかったそれは弾力性のある柔らかいような硬いようなモノ、それが翼の全身を受け止めたため高所から投げ出されたにも関わらず目立った怪我も無く無事だった。おぼつかない様子で立ち上がる翼が目を擦りようやく戻り始めた視界で見たものは自分がぶつかったであろう()()…それは天高く聳える巨人?いや、鬼だった。

 

 大きな富士額から天を衝くような立派な一本角を生やし、そこから「怒髪天を衝く』を体現するように逆立つ頭髪、長い顎髭を蓄える下顎から突き出す牙と、顔中に走る深く刻まれた隈取りのような大きなシワはまさに鬼の形相だった。

 

 

「ガーハッハッハッハッハッハッ!!

 まさかあの場所から小僧を抱えながら馳せ参じるとは…まっことお主は我を楽しませてくれるわ!!ガハハハハッ」腹を抱え周囲の騎神を吹き飛ばしそうな勢いで笑う風神に翼は再び腰を抜かす。

 

 怯える翼を見た風伯は語りかける

わっぱ!お主もまっこと果報者よ!

 能力チカラ無き者がこの試練を突破できるとは前代未聞!其方そなたを抱えて来ねば、あの者はもっと早くにここへ参じていたであろうに……其方を抱えても尚、馳せ参じよったわ、、、ガーーハッハッハッハッハッハッハッ」風伯の豪快な笑い声で翼は我に返りヒュウガマンを探すがそこにそれらしい姿はなかった。

 周囲には試練をクリアした騎神達が居たがどれも憔悴しきった様子で、うなだれる者やその場に寝転ぶ者、中には騎神化が解けるほどに衰弱した者も居た。

 ヒュウガマンの騎神化した姿は知っていても素顔を知らない翼は砂漠を彷徨った疲労感もあり膝から崩れ落ち、探すことを諦めた。

 

 

「さぁ!残る枠は一人!!

 次に我が元へ現れた者を以って風の試練を締めとする!!」試練のタイムリミットが迫る中、最後の騎神が暴風の中から姿を現す。

 竜巻の中心に入った騎神は「助かった」と安堵の表情を浮かべた瞬間、騎神の胸を大鎌の刃が貫いた!

 口から大量の血を噴き出す騎神、恐る恐る後ろを振り返ると、そこに居たのは顔を覆う長い前髪の隙間から覗く虚な瞳と口から長い舌と涎を垂らす死神

 まるで獲物を前にした肉食獣のように興奮する死神は騎神の胸を切り裂き、露出した肉に喰らいついた。

 目の前で繰り広げられる人が人を喰らうという悍ましい光景に周囲の騎神達は武器を取るが、風伯が一息でそれを止める。

 

 人肉を喰らう死神が風伯と目が合う、捕食中の獣のように風伯に獲物を取られまいと目で威嚇する死神

 風伯の鬼の形相を恐れつつも大鎌を手に風伯にも襲い掛かろうとする。

「止まれ瀬文せぶみ!!!」風伯の一喝に動きを止める死神、すると大鎌を手放し小刻みに震え頭を抱え苦しみ始めた。

「それで良い…最後の一人は死神ヌシだ!これをもって試練を終了する。」風伯の号令に周囲を囲っていた巨大な竜巻は消え去り、それと同時にゴール手前まで迫っていた騎神達は身体中の水分を一瞬で奪われたちまちミイラ化し砂状に崩れ去っていった。

 

 その光景を前に翼は消え去った無数の命への深い悲しみとどこまでも無力な自分への怒りに震えた。

 

 

 

 ーー5 選ばれし者 ーー

 

 試練が終わり風の奥義と固有技の習得も完了した翼は一人風伯の元へ向かう。

 

「風神風伯様一つお聞きしてもよろしいでしょうか?」話しかけてきた翼に対し風伯は一瞬翼を見て軽く頷く。

「僕を助けた騎神、僕はヒュウガマンと呼んでいるのですが彼について教えて頂けませんか?彼の本当の名前とか…」

「あの者の名を明かすことはできん……だが、何故あの者が試練の最中でも其方を救うことができたのか・何故あの者が其方に己の力を誇示できるのか……それはあの者が【選ばれし者】故だ……」

「選ばれし者!?とは、なんですか?」

「選ばれし者とは、我ら魔神がその者の能力チカラ・才能を認め、格別に引き立てられる者のこと……要は我れが認めた強者ということだ!」どこか腑に落ちていない様子の翼を見て風伯は付け加える。

「つまり、其方と奴の実力は天よりも高く地よりも深い…月とスッポンと言った方が解りやすいか?

 だが選ばれし者が味方についている限り、其方は騎神の戦いにおいて抜きに出た存在ということは確か!故に我れは其方を果報者と言ったのだ。

 そもそもこの試練は其方のような戦わぬ騎神を淘汰することも目的であった、にも関わらずあの者は其方を救った。それを良しとしたのも奴が選ばれし者だったが故だ!」風伯からはヒュウガマンについて明確な情報は得られなかったが、その絶対的な実力差とヒュウガマンがいなければ絶対に生き残れなかったことについては理解できた。

 

 そして全ての騎神の固有技の習得が終わり、騎神達は元の世界へ帰還したのだった。

 

 

 

 ・嬉優市内鈴井川河川敷

 

「なるほど……ヒュウガマンの強さは風神のお墨付きってワケか……」

「ええ、だから僕は今ここに居る。ヒュウガマンに大きな借りを作ってしまいました。」川縁で話し込む闘気と翼、しばらくすると河川敷横の車道に一台の高級車が停車する。

「翼様!」珍しく取り乱した様子で降車する橘、河川敷の土手を駆け下り翼に怪我がないか確認する。

「ご無事で何よりです翼様!」

「橘さんどうして!」早すぎる橘の登場に驚く翼

「ヒュウガマンから連絡がありました…『翼様が試練を終え帰還した・帰還場所は試練が始まる直前に居た場所』と、それでここだとわかりお迎えに上がりました。邸の者達も翼様のお帰りを待っています。」息を切らし迎えに来た橘に帰宅を促されるが、他の仲間の帰還を待ちたいと言う翼に対し闘気が「俺はもうしばらくここで見てるから誰か戻ったら連絡する。」と言うので、後のことを闘気に任せ橘と共に車に乗り込む。

 

 

 闘気は走り去る翼と橘を見送ると川縁を見つめ考え込む。



 まさか翼が先に戻るとはな…ヒュウガマンとの繫りも切れてないとなると……少々厄介だな……、、、

 


 ポケットの中から未開封のタバコの箱を取り出す闘気、だがタバコを吸う気にはならなかった。

 河川敷にそよぐ風が川縁を見つめる闘気の心を虚しくさせる……

 

 

 翌日、河川敷で合流した翼と闘気は天空から落下してくる塊を目撃する。

 その塊は河川敷を貫き、その衝撃に近くに居た二人は驚愕する。

 そして、川縁に突き刺さった塊がひとりでに動き出す。

 警戒して騎神化する二人、塊の正体は……

 

 

 

 ーー 極秘データ ーー

 警視庁警視総監特別執務室

 

 警視総監室井正健(むろいまさたけ)は机に広げたとある資料に頭を抱えていた。

 

 そこにはアナログな黒いファイル状の資料に[公安機密資料わノ漆]と書かれていた。中身は多くの部分が墨で黒く塗り潰されておりほとんどが見えなくなっていたが、塗り潰されていない部分に[津田スケヒロ甲ノ拾参]と[瀬文武斗]の文字があった。

 

 そこへ連絡が入る。

「警視総監!津田スケヒロの捕獲作戦、ただ今終了しました。」隊員の息を切らせながらの報告に「ご苦労、被害は?」淡々と状況説明を求める警視総監に対し隊員は少し間を置いて答える。

「二個小隊…壊滅です。」この報告に深く落胆する室井「しかし、よくその被害で済んだな…」警視総監のこの言葉に隊員は深くため息を吐いた後「ええ、援軍が来ましたから…」

 

「何者だ!?」

「あの男を抑えられる者は一人しかいないでしょう!戻ってきたんですよあの男が!」

 

 

 特殊部隊の死体が散乱する血の滴る現場で、気を失った死神を肩に抱え歩く偉丈夫……【土獅拐】の騎神 工藤剛巡査が……

 

 

 

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