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騎神伝  作者: 一一【ニノマエ ハジメ】
出会い
24/56

キミはともだち3

 まるで視界を遮る壁のように巨大な筋肉の塊が闘気と海の前に立ち塞がり、背後に居る少女をすっぽりと覆い隠してしまう。

「どけっ!」闘気の命令にカムイは無言で首を横に振る。

「その女と知り合いなのか?」海の質問にも無言で首を横に振るカムイ

「じゃあなんだ?どうしてお前がその女を護る?」この質問にカムイは無言で威嚇、牙を剥き出しにして唸りながら二人を睨みつける。

 その様子に背後に居た少女は驚きその場で腰を抜かした。

 

 凄むカムイの脚の隙間から尻餅をつく少女を確認した海はすぐさま攻撃に出ようとするがそこへ翼が割って入る。

 

「待ってください!違うんです、彼は裏切ったんじゃない、これは彼の本能なんです。」息を切らしながら駆け寄り必死で弁明する翼に少し警戒を解くカムイ

 だがそれを見逃す闘気ではなかった。

 隙をついてカムイに斬りかかるが、竜馬が刃を受け止めた。

「ダメだよ闘気、人の話は最後まで聞かなきゃ」竜馬の正論に闘気は舌打ちで返す。

 その瞬間、しびれを切らしたカムイは腰を抜かした少女を抱えその場から逃げ出した。

 闘気は追撃しようと斬撃を飛ばすが翼が全て撃ち落とし相殺した。

「ですから聞いてください!彼の一族・・・アテム族の掟について・・・」

 

 

 

 ーー4 掟 ーー

 

 まず、カムイ君が現代の科学が及ばない辺境の島の先住民族アテム族であることはお話ししましたね。

 アテム族は独自の文化を持つ原始的な部族で、その特徴として女性を神聖なものとして崇める世界でも珍しい女尊男卑の思想を持つ人々なんです。

 つまり彼にとって女性とは、傷つける事はおろか敵視することもありえない神聖な存在なんです。

 彼からすれば女性に危害を及す存在自体が敵であり、そういう存在から本能的に女性を護るよう教育されてきた・・・彼はそういう人間なんです。

 

 

 翼の説明を聞きため息を吐く闘気、そして翼に尋ねる

「で?文化の違いだけであいつの行動を許せとでも!?

 そりゃ都合が良すぎやしないかおぼっちゃん!?」納得いかない闘気、今度は切先を翼に向ける。

「温室育ちの平和ボケも大概にしろ!俺らは今戦争をやってんだ。お前一人のわがままに付き合って命を落とすわけにはいかねぇんだよ!!」闘気の言葉に翼は自分の正直な気持ちを打ち明けた。

「僕のわがままでしかない事はわかっています・・・ですが・・・それでも僕は彼を、友達を失いたくない!」瞳を潤ませながら訴える翼に闘気は激昂

 

「ふざけるな!!あの女の能力は危険だ。それを護るというのなら・・・あいつも敵だ。あいつを護ると言うのなら・・・翼、お前も敵だ・・・」翼に冷たく残酷な視線を向ける闘気、そこに海が割って入る。

「なんのつもりだ藤堂」

コイツを殺すってんなら、俺から殺せ・・・俺は翼のボディーガードだ。

 それと同時にお前にも借りがある。

 だからお前に借りを返すために俺の命を差し出す。その隙に翼が逃げ切れば仕事も全うできる。これで貸し借りゼロだ!」そう言って闘気の直刀の刃を掴み自分の胸に押し当てる海、それを見て竜馬が直刀を弾き飛ばす。

「海さんボクのこと忘れてない?実際海さんのこと助けたのボクなんだけど・・・」その言葉に苦い顔をする海に対し、竜馬は大剣を振りかぶり襲いかかる。

 

 槍で受け止め応戦する海を力任せに押し込み翼から切り離す竜馬

「待て白金!これじゃあ翼が!!」自分を力任せに押す竜馬の背後に直刀を振りかぶる闘気が見え焦る海

 だが、慌てる海に竜馬は耳打ちする。

「安心して、闘気に翼君を殺す気は無いよ。」

「えっ!?」

 

 

 

 ・20時05分 高架下公道

 

 カムイは暴れる少女を抱えながら走っていた。

「降ろして〜!」と泣き叫ぶ少女にカムイは闘気たちが追ってきていないことを確認すると少女を降ろした。

 降りた少女はカムイに警戒し武器を構え臨戦態勢に入るが、カムイは見向きもせずその場を後にしようとする。

 背中を向け歩き出したカムイに対し、少女は鞭をカムイの足元目掛け叩きつけた。

 鞭に打たれた場所から強力な冷気が発生、するとカムイの足にみるみる内に氷が張り付きカムイの足を止める。

 

「助けてくれたことはあんがとだけど・・・

 あんたも騎神なんでしょ?だったらあたしに倒されてよ!!」少女は鞭を振り回しカムイに襲いかかるが、カムイは騎神化せず攻撃を回避するのみだった。

 しかし、少女の攻撃に押され高架線の柱に追いやられてしまう。

「何あんた、騎神になんないの?女の子に気使ってるつもり?ウケる〜

 まぁあたしは楽で良いけどね!」少女は能力でカムイの左右に氷の壁を出現させ逃げ道を奪った。

「あんたの、女の子には手を出さないみたいなとこ結構好きだったよっ!じゃあね」

 少女が止めの一撃を繰り出そうと鞭を振り上げた瞬間カムイが騎神化

 驚いた少女が恐怖で顔を覆い蹲った瞬間、カムイが斧を振り下ろした。

 

 

 恐る恐る少女が目を開けるとそこには目の前の地面に食い込む巨大な斧と牙を剥き出し唸るカムイ、そして背後に目をやるとそこには巨大な刃で体を両断された騎神がオーブに変わり、カムイに吸収されていった。

 カムイは間髪入れず斧を横に薙ぎ左右の氷の壁を破壊、気付くと周囲を数名の騎神に囲まれていた。

 

 スマホアプリ【騎知らせ】を使用する騎神は闘気だけではない。当然他の騎神たちも使用しそこから情報得て行動する騎神も多い。

 

 かく言うこの少女もその機能を逆手に取った戦術をとっていたと言える。

 あえて人通りの多い場所で騎神であることを見せることで周囲に通知を送り、その情報をもとに集まってきた騎神たちをダンスで魅了、見惚れている間にダンスに合わせて放たれる凍てつく波動による範囲攻撃で全身を凍らせ一網打尽にするというもの。

 

 しかし、少女にその意図はない

 少女自身は騎神化した方が動きやすいし衣装がかわいいというのと、能力を使えば思い通りのステージを作ることができ、多くの人の目を引くことができるからという、単に好きなダンスを踊り自分の承認欲求を満たすための行動だった。

 

 

 取り囲む騎神たちは二人に向け遠距離攻撃を放つがカムイは少女を背に護りながら斧で全ての攻撃を受け止める。

 カムイの行動に困惑する少女、絶え間なく続く攻撃を必死に受け止め続けるカムイを見て少女の中に今までに無い感情が芽生え始める・・・が、そこに一人の男が現れる。

 

「何故殺接近戦で仕留め無い?」騎神の一人に突然話かけるジャージ姿の男、それに対し「あのデカブツの攻撃力はヤバいからな、まずは距離置いて体力削ってから仕留める。文句があんならあんたがアイツを殺れよ!」騎神の言葉に男は「わかった・・・」と答えた瞬間、一瞬で騎神の首をへし折った。

 騎神はその場に力無く倒れながらオーブに変わり、行き場なく彷徨う。

 その様子を見た他の騎神たちも男に気付くが、格好とその様子からニュースにも流れていた『騎神狩り』とわかり警戒するが、数の暴力と距離をとっていればどうにかなると複数で襲いかかる。

 

 複数の騎神の放つ攻撃に対し明は騎神化し掌から雷吼砲を放つ。

 巨大な電気エネルギーの塊が全ての攻撃を消滅させながら騎神たちに迫り呑み込んでいく・・・その先に建つ高架下の柱を一部抉ったところで消滅し、さっき迄居た騎神と同じ数のオーブがゆっくりと明に吸収されていった。

 

 そして・・・残る騎神はカムイと彼が護る少女のみとなった・・・

 

 

 

 ーー5 守護神 ーー

 

 明の圧倒的な力を目の当たりにし恐怖で動けない少女を尻目に、カムイは勇猛果敢に向かって行く。

 カムイは大斧を振り上げ明に立ち向かうが、明はヒラリと躱し逆にカムイのみぞおちに強力な一撃を喰らわせる。

 的確に急所を捉えた拳に怯むカムイにとどめを刺そうと力を込める明だったが、そこへ間髪入れず反対側からカムイの大きな拳が飛んでくるのに気付き紙一重で躱した。

 明の拳は明らかにカムイのみぞおちを抉っていた、明も手を抜くことなく本気の一撃だった・・・しかしカムイはその一撃を耐え、明に向かっていく。

 

 カムイの我武者羅な攻撃を見極め次々と回避する明、その表情はどこか楽しそうだった。

 大振りなカムイの攻撃の隙を縫って明も拳を突き出す。しかしカムイは明の攻撃を避けようともせず全て受け止めてしまう。

 明の拳が身体にめり込むたびカムイの顔は歪み苦悶の表情を浮かべるがすぐさま反撃、攻撃は躱されるもののその不屈の闘志に明の口角が徐々に緩む。

 殺気剥き出しの目を爛々とさせながら笑うその表情に狂気的なものを感じながらも、恐ることなく向かい続けるカムイ・・・しかし、それも限界を迎える。

 

 明から受けた打撃の数々が蓄積し限界を迎え膝を付く。

 痣だらけの身体はすでにいうことを聞かず、斧を握ることすらできない状態にまで追い込まれカムイは叫ぶ「逃げろ!!」その声に少女はようやく我に返り逃げようとするが、明が逃すはずもなく少女の足元に電撃を飛ばし、衝撃で少女をつまずかせる。

 明は標的を少女に変更、動けないカムイを振り切り少女に襲いかかる。

 稲妻を纏った拳を少女目掛け振り下ろすが次の瞬間、カムイが最後の力を振り絞り少女に抱きつき明の拳を受け止めた。

 

 稲妻を纏った拳を背中で受けたカムイは夥しい量の血を吐き出し、口から滴る血が少女の頬をつたう。

 頬をつたう生暖かい感触に少女の口から自然と言葉が漏れる「・・・なんで?」震える声で見上げる少女に満身創痍のカムイは血に染まる唇を震わせ空な表情で微笑んだ。

 

 そんなことはお構い無しに明の容赦無い攻撃がカムイの肉体を襲った。まるでサンドバックを殴るようにカムイの身体に拳を打ち付け続ける明、そのたびにカムイは血を吹き出し耐え続ける。

 だが決して少女を離すことはなく、傷つく度少女を強く抱き締め死守した。

 

 

 明の攻撃を耐え続けるカムイに対し、絶え間なく拳を打ち続ける明の額にも汗が滲み始め、最後の拳を打ち込むと一呼吸置き構えを変える。

 腰を落とし地面を踏み込み勢いよく放たれたのは強烈な蹴りだった。

 体重を乗せた鋭く芯に響く脚技の数々、時に鉄の棍棒のように、時にしなる鞭のように襲いかかる蹴りの応酬にカムイの肉体は限界を迎える。

 

 度重なる打撃の応酬に肉が裂け血が吹き出し全身血まみれの状態、出血で意識が混濁するもそれでも少女を庇い続けるカムイ

 明もカムイの返り血を浴び、血を吸って真っ赤に染まった下衣が徐々に重くなっていく。

 

 

 出血量が危険値に達しみるみる内に青ざめていくカムイに少女が泣き叫ぶ。

「もう止めて!!なんで?なんでこんなことすんの・・・・・・もういい・・・もういいから!!!」少女の叫びにカムイは最後の力を振り絞り雄叫びを上げながら少女を投げ飛ばし明を振り払った。

 しかし失血の影響か意識を失いカムイはその場に大の字に倒れ動かなくなった。

 明はその状態のカムイを放置し標的を少女に変える。だが満身創痍のカムイが明の脚を掴んだ。

 

 弱々しく握る大きな手に明は悲しそうな表情で電撃を纏った手刀を振りかぶった。

 

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