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騎神伝  作者: 一一【ニノマエ ハジメ】
出会い
21/56

鉄血のオルフェン4

 数分前 マンション屋上

 ライフルを構える朱音はイライラしながら銃口を右往左往させていた。


 

 あーーーっまたいいとこで入ってきた!

 何なのよ死神アイツ!さっきから照準合わせたタイミングで間に入ってきて何考えてんのよ。

 対峙してる間に犯人を狙い打てたのに、引き金引く直前で動き出しやがってーーーーっ

 あーーーハラたつーーー、この際死神から撃ち殺そうかしら・・・今なら・・・いっそ今なら・・・・・

 歩のカタキ・・・・・・


 

 朱音は何かに駆り立てられるように照準を死神に合わせ引き金を・・・

「一条!お前の任務は何だ?お前のすべきことは何だ?お前にできることは何だ?お前の今しようとしてることは、五代が望んでいることだと思うか?」東郷の言葉に我に帰り引き金から指を離す朱音

 そこにインカムから剛の声「よっしゃ、追いついた!」


 


 ーー6 死神の意志 ーー


 なんで!?なんで死神あんたが隊長の攻撃を受け止めてんの!?なんで目の前の犯人より隊長を優先してんの!?

 ふざけんな、だったら犯人は私が始末する。 


 朱音はマガジンベルトから一発の弾丸を取り出しライフルに込める。そしてその場から逃げる犯人Cに狙いを定め引き金を引く。

炸裂(エクスプロード)(バレット)」ライフルから放たれた弾丸は真っ直ぐ直進、剛と死神を抜き犯人Cの背中を撃ち抜く直前、死神の鎌が犯人Cを庇い弾丸を受け止めた。

 その瞬間、炸裂(エクスプロード)(バレット)の名の通り、弾丸が炸裂し周囲に散った破片が連鎖的な爆発と炎上を繰り返す。

 爆発による衝撃で死神は吹き飛び、犯人Cも背中を焼きながら逃げて行く。

 犯人Cを追おうと剛は駆け出そうとするが、死神が傷だらけの体で立ち塞がった。


 

「あの子は・・・・あの子だけは・・・・」傷だらけになりながら必死で剛の行く手を塞ぐ死神

 今まで見たことのない死神の真剣な表情に剛は迷い攻めあぐねる。

「朱音ちゃん犯人狙えるか?」

「・・・すいません、犯人がその先にある川に飛び込み姿を眩ませました。」意気消沈の朱音に剛は「まぁ仕方ねぇよ、それにあんだけでかい傷負わせたんだ、あいつもしばらくは大人しくしてるさ・・・」と励ます。

「それに、今は死神コイツに聞きたいことが山程できたからなっ!!」死神の確保のため死神に接近する剛、だがその途中無数のかまいたちが剛に襲いかかる。剛は【土】の能力で周囲の土を拡散させかまいたちを相殺、その隙に死神が背後に周り剛に斬りかかった。

 死神の大鎌をトンファーで受け止めた剛は、死神にこれまでの経緯を聞こうと死神の方を見た。しかし、そこにいたのは目の焦点の合っていないいつもの死神が「カカカカッ」と笑いながら鎌を振るっていた。


 その姿を見た剛は落胆し、死神を力任せに投げ飛ばし、再度向かってくる死神に対し、「お前、マジでなんなんだよっ!!」と怒りのボディーブロウを叩き込んだ。死神はその場で嘔吐、その後死神の頚椎を打って気絶させた。

 任務失敗と死神から何も聞き出せなかったことに悔しさを滲ませながら剛はインカムで指示を出す。「撤収・・・」




 ・18時00分 犯人Cが飛び込んだ川から数km下流の河川敷


 数時間冷たい川の水に流され衰弱しきった犯人Cは、命からがら川岸に上がりフラフラと歩き出すが、すぐに限界を迎え車道の真ん中で倒れてしまう。

 そこに一台の車が止まり中から少年が飛び出し犯人Cに声をかける。

「大丈夫ですか!?」車から降りてきた少年は翼だった。翼は犯人Cの濡れた体と真っ青になった唇を見てすぐさま橘に指示を出す。

「橘さん!救急車を!!」橘は上着を脱ぎシャツの腕をまくりながら犯人Cに近づき「近くに北条院所有の大学病院があったはず、ここからなら車で運んだ方が早い・・・翼様は足の方を持ってください。」二人は協力して犯人Cの巨体を車に乗せ病院へ急いだ。


 


 KCS本部 死神を収監し今回の任務失敗を反省する三人

「すまねぇ、最初から室井ちゃんの忠告を聞いておけばこんなことには・・・」正臣と朱音に土下座して詫びる剛

「過ぎた事です。それに取り逃がした犯人については問題なさそうです。

 逮捕した2名の聴取によると取り逃した騎神は主犯ではなく、あくまで主犯は逮捕された2名で騎神はその計画に利用されただけのようです。

 聴取の中で2名は騎神には何らかの知的障害があり、騎神は二人の言いなりに動いていたと、それに漬け込み騎神の能力を利用した今回の計画を実行したとか・・・今後また同様の犯罪に巻き込まれない保証はありませんが、自分から何か問題を起こすことは無いでしょう・・・」正臣はいつもと変わらぬ様子で席につき書類仕事を始めた。


「納得いきません・・・」平然と仕事をする正臣に朱音は不満を漏らす。

「問題は隊長にあるんじゃない・・・今回の失敗は全部死神(コイツ)の所為じゃないですか!」朱音は死神を指差し正臣に訴える。

「SATの資料を見れば一目瞭然、明らかに死神が犯人を庇っていたし隊長を妨害していたそれは明らかです副隊長!人手不足を理由に死神を生かしてきましたが、今日みたいなことがあった以上、生かしておいても危険なだけです!!

 射殺許可を願います。」騎神化して銃口を死神に向ける朱音、それに対し正臣は仕事の手を止め沈黙する。

 今にも発泡しそうな朱音と射殺許可を出しそうな正臣に剛が割って入る。

「待てよ!また俺の意見は無視か?お前らも上層部の連中と一緒かよ!」剛の静止に朱音は不満そうにライフルを下げた。それを見て今度は剛が正臣に詰め寄る。


「室井ちゃん!今度は俺が室井ちゃんに聞きたいことがある。」剛の言葉に正臣は書類仕事を再開しながら聞く。「何です?」「死神のことだ・・・」剛のこの一言で正臣の手がまた止まった・・・

「今回死神が俺を妨害したことは事実だ。でもその時ヤツは確かに言った「あの子は殺らせない」と、そんで犯人が消えた途端、元通りの死神に戻りやがった。

 室井ちゃん死神の資料見たんだろ?ヤツはいったい何者だ?あの犯人との関係は?答えてくれ室井ちゃん!!」真剣な表情で詰め寄る剛に対し、正臣はしばらくの沈黙の後口を開く。


 

「資料の中身については極秘文章だったため、全てを見たわけではありません。

 名前は津田スケヒロ(28)

 中東の紛争地帯で傭兵として活動、様々な武装組織に属し、時にはゲリラ側組織に属していたこともあるようで、常に死と隣り合わせの生活をしていたようです。恐らくそんな生活を続ける内に精神を病み自我を失ったものと見られます。

 その後騎神に覚醒、血砂の死神と呼ばれるようになったものと推測されます・・・私が知っているのここまでです。内容は極秘扱いなので、今の話は聞かなかったことにしてください・・・」正臣の話に剛はソファーに座り込みしばらく考え込み口を開く。

「室井ちゃん!一緒に働く仲間として俺は室井ちゃんを信用してる。

 今の話が嘘だったとしても俺は室井ちゃんを信じてる。だから、いつか室井ちゃんが本当のことを話してくれる日まで・・・死神の件は保留にしてくれねぇか朱音ちゃん!?」途中まで真剣な顔で話していた剛だったが、最後にはいつものふざけた笑顔で朱音をなだめる。


 その顔に朱音はため息を漏らし、不服そうに騎神化を解き、自分の収納スペースからサブマシンガンを取り出し剛に顎で指示を出す。

 剛は「・・・はい」と騎神化して壁に手を付き朱音に背中を向ける。そこへ朱音が手慣れた手付きで銃をセッティングし構える。それを見て正臣は両耳を指で塞ぐ、次の瞬間剛の背中向け乱射、「「ダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッ」」と銃声が鳴り響き、一通り撃ち終わると朱音はスッキリした顔で戻っていく。

 残された剛は背中を押さえ「痛ぇ〜っ」と半泣き状態で悶絶する。


 前日の剛の覗き見以来、KCSでは朱音の怒りの捌け口として剛に向けて発泡しても良いというルールが設けられた。このルールは今後毎日のように行われKCSの日常になっていくことを、この時の剛は予想もしていなかった。


 


 翌日 警視庁本部庁舎エントランス


 正臣は前日の任務失敗に伴う対策案と現状報告に訪れた。

 そこにまた小綺麗なスーツを着た刑事が話しかけて来た。

「いや〜まさかお前ほどの男があの程度の立て籠もり犯相手に逃げられるとはねぇ〜ビックリしたよ。

 俺のライバルともあろうお前がその程度の犯人相手に失敗されちゃ同期の俺の評価も下がっちまうかもしれないからさ〜」正臣は以前同様この刑事の言葉を聞き流し真っ直ぐエントランスを進む。

「まぁ〜原因はお前じゃなく部下にあったってことにすればいいことか!

 それにお前のとこの隊長って巡査なんだって?上司が高卒の巡査とかたまったもんじゃないよっ・・・・」刑事は正臣に胸ぐらを掴まれ力任せに引き寄せられる。

 刑事の剛と朱音を侮辱するような言葉に堪忍袋の緒が切れたのか正臣は怒りに任せ刑事に言い放つ。

「どこの誰だか知らんが、金魚のフン程度の価値も無い無能があの人を語るな!階級でしか人を判断することのできない前時代の遺物共が、お前らと同じ空気を吸っていると思うと反吐が出る。」正臣の迫力に刑事は震え上がりその場にへたり込み泣いてしまう。

 正臣は刑事を放置したままエレベーターに乗り上へ向かう。


 以後、この刑事が正臣の前に現れることは無かった。


 


 ーー7 カムイ ーー

 数日後、北条院財閥保有の大学病院


 翼は犯人Cの救出以来、放課後必ず病院を訪れるようになった。


 

 彼の名はカムイ(推定年齢14〜15歳)詳しくはまだ不明ですが現代文明に触れることの無い隔絶された島に住むアテム族という先住民族で、アテム族独自の文化で育ったらしく、現代人の常識や文化・化学について何も知らない状態でした。


 最初に意識を取り戻した時は暴れて手の付けようがありませんでしたが、長い時間を掛け説得し、徐々にではありますが彼との対話に成功

 その中でアテム族の文化やこれまでの経緯について聞くことができ、対話の中で彼も徐々に心を開き始め、医師による治療に並行して様々な検査にも協力してくれるようになりました。


 彼曰く、アテム族は日々の糧を狩りによって獲る狩猟民族で、右肩に刻まれた焼印はアテム族の儀式によるもの、アテムの男は幼い頃に焼印をされ成長とともに大きくなった焼印のサイズで一族の長を決める風習があり、彼にとってこの焼印はアテムの誇りであると語っていました。

 独自の文化の中で話す言葉も変化したようで、彼は日本語を話しますがその文章には助詞が無く、例えば「今日は〇〇を食べました。」は「今日、〇〇、食べた」となり、独特な文体ではありますが会話には支障はありませんでした。


 問題はこれまでの経緯です。

 彼曰く、子供の頃に海で漂流し気付いたら本州に流れ着いていたと・・・なぜ漂流することとなったかは幼なかったが故に覚えておらず、覚えているのはアテム族の生活の中で培った狩猟本能と天性の勘勘のみ

 そしてそこから数年間山奥で一人狩りをして生活、そのうち騎神に覚醒し戦いに巻き込まれる形で山を出るが、都会に近付くにつれ糧となる野生動物が減り、食べ物を失った彼が行き倒れているところに彼を利用する者が現れたとの事・・・


 騎神による犯罪のニュースは毎日のように放送されてますから彼が銀行強盗犯の一人であることはすぐにわかりました。

 ですが、彼の出生やこれまでの経緯を知って、彼を犯罪者として警察に引き渡す事に僕は抵抗を覚えました。

 彼に罪の意識は無く、悪い人たちに利用されていただけ、彼はただ生きていたいだけなのに・・・それに騎神である彼を警察に引き渡せば確実に殺されてしまう。

 そんな理不尽僕は認めたくありませんでした。


 

「カムイさん、僕があなたの故郷を探します。あなたの故郷が見つかるまでの間、僕と一緒に暮らしませんか?」翼の提案にカムイは俯き少し考えてから一言「森、帰りたい、ここ、イヤ」翼はカムイのこれまでの経緯を思い出し微笑む。

「でしたら安心してください!敷地内の山に住めばいいんです。そしてたまに僕の家に遊びにきてください!僕とお友達になりましょう!」翼は目を輝かせカムイの手をとる。カムイはそんな翼を見てニカッと笑い「わかった、カムイ、行く!、翼、友達!!」と翼の手を握りしめ承諾した。


 そんな二人のやり取りを病室の外から聞いていた橘は不機嫌そうにため息を吐いた。


 


 


 数日後、北条院邸に海が訪れた。

「前の話、引き受ける!いやっ雇ってください!!」


 

 

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