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騎神伝  作者: 一一【ニノマエ ハジメ】
出会い
17/56

その男、凶暴につき3

 血塗られた大広間

 床の至る所にできた血溜まりと壁にこべりついた血飛沫

 それはここで起きたことが現実であることの証明


 ・数分前・


 混乱する会場で奮戦する二人の男女

 男は【氷牛盾】女は【火鮫銃】二人は背中を合わせ互いに協力して戦っていた。

 女は冷静にライフルを構え一人一人確実に撃ち抜くスナイパー

 男は盾の高い防御力と素早い格闘を駆使した白兵戦で戦う。


 男が敵の攻撃を盾で受け止めれば女が武器のライフルで仕留め、女が敵の接近を許せば男が接近戦で仕留め女が男の背後から来る敵を迎撃する。

 二人の息のあった戦闘に他の騎神達は手も足も出なかった。周囲の敵を一掃すると同時に残る敵は血砂の死神ただ一人

 数的有利な状況にも関わらず死神はかまいたちや風の能力を駆使し、ジリジリと二人を追い詰める。


 最終的に女のライフルを弾き飛ばし女に大鎌を降り下ろすが、男が割って入り盾で受け止める。

 だが、受け止めた瞬間かまいたちが男の背中を襲った・・・衝撃で一瞬無防備になった男は女に振り向き「・・・朱音あかね、俺、、、」


 次の瞬間、男の腹部を大鎌が貫く。

 飛び散る血飛沫が女に降り注ぎ、血塗れの鎌がそのまま男のはらわたを切り裂いた。


 


 ーー5 狙撃手スナイパー ーー


 剛と正臣の視線の先にはライフルを死神に向け構える女

「どいて!あんた達が殺らないなら私が殺る。どかないならあんた達ごと撃つ!!」ただならぬ雰囲気の女に対し、正臣は死神の前に立ち塞がり説得を試みる。

「あなたは警視庁特殊部隊SAT所属一条朱音(いちじょうあかね)(26)警部補ですね。

 争いは終わりました・・・武器を下げ、騎神化を解いてください。もうあなたを傷つける者はいません。安心してください。」相手を落ち着かせるように、ゆっくりと聞き取り易いテンポで話す正臣


 その様子を注意深く見守る剛が何かを悟り正臣に耳打ちする。

「違う、朱音アイツは錯乱してるんじゃない、あれは明確な殺意だ!」「えっ?」その瞬間朱音は発泡、真っ直ぐ死神目掛け発射される炎を纏った弾丸、それを目視で確認した剛は騎神化【土獅子(カイ(トンファー))】前に出て素早く弾丸を叩き落とす。


 

 その姿は丈の長い胴着に石がはめられたベルトを巻き、筋骨隆々な腕の肘から手首まで覆う手甲を身に付けた大男

「悪いが、これから一緒に働く仲間を殺らせるわけにはいかねぇな。それにあんたともお近づきになりてぇしな!」力強く構えるも、剛の目は朱音を舐める様に見ていた。


 何故なら朱音が騎神化した姿はグラマーなプロポーションとあいまって少々扇情的だった。

 胸元と背中が大きく開いた黒のラバースーツに石が装飾されたマガジンベルト

 肩を覆う肩当て、高いヒールのニーハイブーツに指抜きグローブ

 武器は大型のスナイパーライフルで、グリップからバレルの先まで接近戦用のブレードが取り付けられている。


 

「仲間!?ふざけないで、私は死神そいつに相棒を目の前で殺されたんだ!」朱音は涙を流しながら頬についた血を拭い二人に見せつけ言い放つ

「これは相棒の血!私はこの血に誓う・・・その男を必ずこの手で殺すと!!」決意と共に引き金を引く朱音の思いに剛は共感するも、やりきれない思いを噛み殺しつつ弾丸を叩き落す。そこへ正臣が再度説得を試みる。

「我々警察が、公事と私事を混同してはならない!あなたは誇り高きSAT隊員

 解るはずだ!あなたがすべきことも、亡くなった相棒の思いも・・・」正臣の説得に奥歯を噛み締める朱音

 そこに剛が正臣の肩に手をやり、服を握り絞めながらそれまでに無い真剣な面持ちで言う。


「それでも・・・やりきれない思いはある。

 生き残った奴にできることなんて、たかが知れてる。それでも、先に逝っちまった奴らに何かしてやりたいなら、先に俺を殺せ・・・俺らは騎神、互いに殺し合うのが普通だ。」そう言って朱音に背を向け武器を捨てる剛、その後ろ姿に相棒を重ね合わせた朱音は大粒の涙をこぼす。

「なんで?なんでそこまで・・・?」朱音の問いに剛は少し笑う。

「俺も大事な奴に先に逝かれてね・・・それに、騎神として生き残っても俺には大層な願いも何も無いし、あんたみたいないい女に殺られるなら本望だ!」あっけらかんと命を差し出そうとする剛に、朱音も正臣も言葉を失う。


 

「あっそうだ!殺られる前におっぱい揉ませてくれよ。減るもんじゃないし!冥土の土産に!!ねっ!」振り返り両手をワキワキさせながら言う剛に朱音は吹き出し大笑いする。

「おっ、良い顔すんじゃないの!女はやっぱ笑った顔が一番良い・・・そんじゃぁ失礼して一揉み・・・」と剛がいやらしい手つきで朱音の胸に手を伸ばすと、剛の足元ギリギリを撃ち抜いた。


「殺さないでやるから揉むな!!」先程までの鬼気迫る表情から、一気に解れた朱音の表情を見てニカッと笑う剛

「やっと頭が冷えたか?」

「あなたと真剣に話すのがバカバカしくなっただけです。」そう言って騎神化を解く朱音

 剛も騎神化を解き、朱音と硬い握手をする。

「ですが、相棒の仇を討ちたい気持ちが消えたわけではありません。

 騎神犯罪が収束し次第、あの死神は私が殺します。よろしいですね。」剛は「ま〜騎神だからね〜、いいんじゃねっ」と首を掻きながら適当に許可を出す。


 そこに凶悪犯用の拘束具を取り付け終えた死神が移送のため拘束状態で縦に起こされる。その瞬間、朱音は携帯していたベレッタを素早く引き抜き発泡した。

 弾丸は死神の額のど真ん中に命中、衝撃で首が大きく仰け反ったが、額に小さな火傷ができる程度だった。

 朱音の行動と射撃能力に驚く一同

「今日のところはこれで我慢します・・・」銃をガンホルスターに戻し、朱音はどこかスッキリした表情で広間を後にする。


 そして剛と正臣はここで初めて知る。騎神に銃が効かないことを・・・


 


 ーー6 騎神対策部隊 ーー


 かくして、室井正臣警視正・一条朱音警部補・工藤剛巡査・・・そして、血砂の死神の4人が騎神犯罪特別対策班所属騎神対策部隊に正式決定した。

 決定までに起こった凄惨な事件とその犠牲については隠匿・隠蔽され、不慮の事故又は他の騎神との戦闘による殉職と遺族には伝えられた。


 

 そして数日後、改めて4人は警視庁本部庁舎に招集された。

 警視総監の前で横並びに敬礼する3人、もちろん死神は拘束され、警備の者数名で取り囲む厳戒態勢で行われた。


 そこで正臣が隊長就任と同時に提案する。

「騎神犯罪特別対策班所属騎神対策部隊という名称は少々長過ぎます。構成人数も4人のみなので名称を騎神対策部隊のみとし、呼称も分かり易くKCS(Kisin(騎神) Counter()measures() Squad(部隊))にしましょう。」名称変更は警視総監含め幹部らもすんなり受け入れられたが、問題はもう一つの提案だった。

「それと、隊長には私より工藤剛巡査が適任と思われます。」正臣のこの発言に幹部連中は激怒した。

「ナニ!?なぜ巡査風情を隊長にする必要がある!階級的にも資質的にも室井警視正の方が適任だ!!

 何より巡査では事件捜査の経験も無く、出来ることといえば交通整理くらいのものだろう。何を馬鹿げたことを・・・」幹部の言葉を鼻で笑い正臣は冷静に答える。

「そうですか?あなた方にはその簡単な交通整理すらまともにできないと思いますよ?

 それに、我々KCSの役割はあくまで対騎神犯罪への制圧及び鎮圧です。捜査は必要ありません。

 逆を言えば、私には血砂の死神を制圧する力はありませんが、工藤巡査にはそれがあります、しかも工藤巡査はあの時騎神化せず生身で死神を取り押さえた。

 つまり、自衛官や特殊部隊員の騎神が束になっても殺せなかった死神を工藤巡査は騎神化すらせず素手のみでいとも簡単に制圧した。

 KCS隊長に必要なのは階級でも捜査経験でもない・・・確固たる実力それだけです。」正臣のこの意見に警視総監が朱音に意見を求める。

「私はあくまで一隊員、上官の指示に従います。」この言葉に総監と幹部連中はため息を吐き考え込むが、そこへ忘れられていた張本人の剛が口を開く。


「えっ俺の意見は聞いてくれないんすか?」剛の言葉に幹部たちは『巡査風情が黙ってろ』といった表情で剛を見る。


 そこへ正臣が剛へ耳打ちする。

「隊長に就任すれば様々な手当が付いて、給料が今とは比べ物にならないくらい・・・」正臣の『給料』の言葉に目の色が変わった剛は、正臣が言い終わるより早く前に出て敬礼

「私にお任せ下さい!必ずや騎神による凶悪犯罪を撲滅し、市民の健やかで安全な日常を取り戻すべく日々邁進してまいります。」態度が急変した剛に朱音は顔を背けて笑いを堪え、正臣は満足そうにニヤついている。


 幹部達は渋々剛の隊長就任を許可し、正臣は副隊長に就任した。


 


 ーー7 翼の人事 ーー


 ある日の名楠町中央公園

 グランドのある区画に一台の高級車が止まり、中から翼と橘が現れる。

 橘が駐車スペースから心配そうに見つめる中、翼は竜馬と闘気に教えられた場所に出向き、一人のホームレスを訪ねる。


「すいません・・・藤堂海さんのお家がこの公園の近くにあると聞いたのですが、ご存知ありませんか?」翼に道を聞かれた年老いたホームレスはワンカップ酒を手に答える。

「あんたみたいなお金持ちのおぼっちゃんがあいつに何の用だい?」そう言ってワンカップをチビチビ飲む汚いホームレスに、翼は嫌な顔一つすることなく答える。

「藤堂さんに僕の元で働いてもらえないか交渉しにきました北条院翼と申します。」翼はホームレスに名刺を渡す。

 ホームレスはその名刺を見て小刻みに震えながら「ほっ本気かい!?」と驚き、翼を海のプレハブまで案内した。


 

「おい、起きろ!お客さんだ!しかもとんでもねぇ人が来たぞ!!」プレハブを震える手で叩きながら海を呼ぶホームレス

「何だよおやっさん、今日の分の酒なら渡したろ、!」ホームレスに文句を言いながら出てきた海は目の前に立つ翼に言葉を失った。

「この人がな、お前を雇いたいって言ってんだ!それもそんじょそこらの会社じゃねぇぞ

 北条院ざいば・・・」

「北条院財閥だろ。」海の翼を見る表情から何かを察したオッチャンは、無言で少し離れたベンチに座り、しけもくにマッチで火をつけ吸い始める。


「何の用だ?あんたはこんなとこに来るような身分じゃないだろ。」少し不機嫌そうに話す海に、翼は怯むこと無く真っ直ぐ海の目を見て話す。

「単刀直入に言います。

 藤堂さんに僕のボディーガードになっていただきたいんです。」突拍子の無い翼の提案に困惑する海


 

 騎神に護衛させることの意味がわからないのか?

 本来騎神同士は敵対関係にあるはず、そんな相手を自分の側近くに置けば、必ずいつか命を狙われることはわかっているはずだ。しかも俺とコイツは以前命のやり取りをしたばかり、自分の命を狙う者に護衛を頼むなんて・・・理解に苦しむ。



「以前おっしゃいましたよね「戦う覚悟も無い奴が何しに来た?」と、おっしゃる通り僕には戦う覚悟も勇気も無い、平和ボケした温室育ちのおぼっちゃんです。・・・藤堂さんに言われて初めて気付きました。

 自分がいかに甘い考えで生きてきたのか、その考え方にどれだけの人を巻き込み振り回してきたのか・・・そして・・・・・それでも自分の信念を貫きたいと願う、わがままな自分にも!」翼の正直な告白を海は鼻で笑う。



「悪いが、俺とアンタじゃ住む世界が違いすぎる・・・それに、俺はまだおやっさんに借りを返せてないからな・・・」海の返答に少し残念そうに立ち去る翼


 二人の様子を見ていたオッチャンは、感慨深げに煙を吐き出す。

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