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騎神伝  作者: 一一【ニノマエ ハジメ】
出会い
12/56

偶然にも最悪な少年2

 18時00分 繁華街

 

 飲み屋街にちらほらと客が入り始める時間、大きな衝突音と共に路地裏の暗がりから空の酒瓶と若者が飛び出す。

 そこへ路地裏の暗がりから現れたのは鎖に繋がった鉄球を持った騎神【毒獅子鉄球】

 飛び出してきた若者は三叉槍に総髪の目の据わった男・・・海だった。

 

 賑わい出した飲み屋街は騒然

 騎神の存在が公表されてからというもの騎神の戦いが始まるたび人々は逃げ惑い周囲は一時混乱する。

 

 当初は騎神の戦闘を盗撮しようとする者もいたが、顔がバレることを恐れた騎神が盗撮していたYouTuberを惨殺したニュースが流れ、それ以来騎神=殺人鬼というイメージが定着し、騎神に対する風当たりはより一層厳しいものとなっていった。

 当然、騎神による被害を避けるための工夫もされている。

 目撃情報から今どこで騎神の戦いが行われているか知らせるスマホアプリが配信され多くの人々が利用している。

 しかし、同時にそれは騎神にとっては敵情報を教え、漁夫の利を得る便利なツールとしても使用されている・・・もちろん闘気のスマホにも・・・

 

 

 

 ーー3 介入者 ーー

 

 瘴気を帯びた鉄球が建物の壁を抉りアスファルトにめり込む。

 鎖を引っ張り上げ鉄球を手元に戻し構える騎神

 そこに槍を突き立てる海だったが騎神は鉄球でガード、海の突進を受け流し背後に回り込み鎖で首を絞めようとするが、海は姿勢を下げて回避しつつ槍の柄で騎神の足をはらって転ばせ槍を突き立てる。

 騎神は間一髪転げ回って回避、体勢を立て直し対峙する。

 

 客の逃げた飲み屋街で聞こえてくるのは店から流れる微かなBGMと二人の荒い息・・・そして迫りくる足音!

 

 次の瞬間、対峙する騎神の側頭部を何者かの飛び膝蹴りが穿った。

 突然の出来事によろけて側の建物にもたれかかる騎神、そこに間髪入れず容赦ない拳・肘・膝・の連撃、騎神の頭は徐々にもたれかかる建物の壁にめり込んでいき、騎神の口や鼻から血が吹き出す。

 最後にはオーブとなって空に消え、建物の壁に真っ赤な染みだけが残った。

 

 騎神を葬った男は顔に付いた騎神の血を拭うと、海に狙いを定め襲いかかる。

 それはまさに【騎神狩り】


 だが、ホームレスの海は巷を賑わす騎神狩りの存在を知らなかった。

「おい、危ないだろ!騎神ならともかく、なんで騎神でも無いあんたが騎神(俺ら)に挑む必要がある?」海の問いかけに対し無言のまま襲いかかる男

 海は男を傷つけないよう防御に徹するが、男は攻撃をやめる気配は無く、執拗な攻めに海は防御を崩し、男の放つ重たい一撃を喰らってしまう。

「や・・・止めろっ・・・!」海はたまらず槍を振るうが、男は冷静に避けて海の横腹に一発拳を叩き込み、怯んだ海の顎を強烈なアッパーが貫き、その勢いで海の体は宙を舞いその場に倒れ込む。

 しかし騎神狩りの攻撃はまだ終わらない。飛び上がり落下速度を乗せた一撃を海の胸部目掛けて振り下ろすが、間一髪海は回避し一命を取り留めた。

 

 騎神狩りの男はアスファルトを削った一撃を振り上げ海を見ると少し笑った。

 男のまるで戦いを楽しんでいるかのような振る舞いに海は恐怖した。

『コイツ・・・戦いを楽しんでんのか?人殺しを・・・

 騎神を殺しても罪にならない、しかも騎神は死んだらオーブになるから死体も残らない

 快楽殺人鬼にはもってこいの獲物ってことか!?・・・イカれてやがる。』海は連戦による疲労で騎神狩りの猛攻を受け槍を構えるのがやっとの状態

 荒い呼吸を繰り返す度、腹部に鈍い痛みが走り表情が苦悶に歪む。

 

 そんな隙を騎神狩りが見逃すはずがなかった。

 

 動き出す騎神狩りにあわてて槍を突き出すが、その動きに鋭さはなくヒラリと躱され胸部に掌底を撃ち込まれる。

 衝撃で呼吸困難になった海はその場に膝を着き蹲る。そこに騎神狩りが止めを刺そうと近づいたその瞬間、「うおぉぉぉーーー!」と海の背後から掛け声と共に接近してくる者が居た。

 

 助走をつけ飛び出した人影は海を飛び越え騎神狩りに飛び蹴りを喰らわせた。

 後ずさる騎神狩りに対し、鉄パイプを突きつけ言い放つ「ボクが相手だ!かかってこい!!」鉄パイプ片手に勇む竜馬に騎神狩りは不服そうに竜馬を睨みつける。

「止せ白金!そいつ只者じゃねぇ・・・」竜馬に警告する海だが、そこに遅れて駆けつけた闘気と翼が現れる。

「騎神狩りだろ?よりによって、あんたも厄介なのに絡まれたもんだな・・・」タバコを吸いながら現れる闘気

「大丈夫ですか?お怪我はありませんか?」

「・・・・・お前ら、なんで?」心配する翼をよそに助けに来たことに驚く海

「あんたの勤務先はオッチャンから聞いてるし、騎神の戦いがどこで起こってるかもスマホで分かる。

 あんたの勤務先近辺で戦いが始まりゃあんたと合流して数の暴力でちゃちゃっと騎神を倒す気でいたが・・・こんなことになるとは、あんたつくづく運がねぇな。」

 

「竜馬!藤堂回収するまで時間稼げ!」「うん!」騎神狩りを竜馬一人に任せ、海に肩を貸し立たせる闘気

「待て!白金一人じゃ殺されちまうぞ!」竜馬を案じて引き返そうとする海

 だがそこで目にしたものは騎神狩り相手に善戦する竜馬だった。

 

 

 

 ーー4 喧嘩の流儀 ーー

 

 鉄パイプ片手に向かっていく竜馬、振り抜いた鉄パイプを躱しカウンターの一撃を繰り出す騎神狩り、その一撃を返す鉄パイプで払いながらフックパンチを繰り出す竜馬

 そのフックパンチをもう片方の腕でガードする騎神狩り、だがパンチの勢いに圧され一瞬体勢を崩すも慣れた動きで姿勢を戻しつつ追撃を回避、反撃に出る。

 騎神狩りの放つ拳打に対し竜馬は鉄パイプで受け止めるが、一発一発の拳の威力に受け切るのがやっと、騎神狩りは鉄パイプをいくら殴っても平気な様子で拳を撃ち続け、渾身の一撃が鉄パイプごと竜馬を後退させる。

「痛ってぇぇぇっ!」連続で拳を受け切った竜馬は鉄パイプを持つ手を痺れさせ身を振るわせる。

 

 その様子を眺めながら海が呟く

「意外だな・・・白金はもっと争い事を嫌う平和主義者だと思っていたが・・・」

「とんでもない、竜馬はこの辺りじゃ名の知れた武闘派だ。一人で4〜5人相手に勝ったことだってあるし、大人だろうが先輩だろうがお構いなしさ。」闘気の話に目を丸くして驚く海と翼、そこに話を聞いていた竜馬が反論する。

「何言ってんの!大勢相手した時も、先輩達怒らせたのも全部闘気が原因じゃん!!

 あんな生意気な態度取ってたらそりゃ誰だって怒るよ!!!ボクが助けに行かなかったら闘気今ごろ死んでたよ。」竜馬の話を聞き闘気を軽蔑の目で見る海と翼に闘気は目を合わせようとしない。

 

「・・・おい」

「あっ!しゃべった。」騎神狩りが初めて言葉を発したことに驚く竜馬

「あんた何故あの騎神を守る?」騎神狩りのこの質問に闘気が止めようとするが、竜馬は答えてしまう。

「何故って・・・そりゃ仲間だからだよ!」竜馬の返答に闘気は頭を抱えこめかみに血管が浮き上がる。

「ほー、つまりあんたらは騎神の仲間であるそいつを助けに来たってことか?」

「うん、そうだよ。だからあんたに海さんは殺らせない」騎神狩りの目の色が変わった。


「バカ野郎!何考えてんだ!!」「へ?」闘気の怒号に驚く竜馬

騎神狩り(そいつ)は騎神以外は殺さない。だからお前が騎神化しなきゃ逃げ切れたものを!

 どうすんだ?そいつはもう俺らを見逃す気はねぇぞ。それに俺らがそいつを倒しても騎神が一般人をリンチしたことになる。」

 

「わかってるか?これから騎神(俺ら)を取り巻く環境は一変する。警察組織や国が動く、そうなった時、力を持つ者が弱い者をいたぶる行為を世界は決して許しはしない。」闘気の言葉の重みを知ってか知らずか、竜馬は鉄パイプを構え直し騎神狩りに向かって行く。

 

 騎神狩りは楽しそうに笑い迎え撃つ。

 竜馬の攻撃を避けつつカウンター、それを受け切り反撃の拳を突き出すが、騎神狩りは今まで手を抜いていたのか、流れるような動きで竜馬の腕を手玉に取り、合気道の容量で投げ飛ばして関節技を決める。

「痛ててててててっ」騎神狩りの関節技に動けない竜馬、そこに騎神狩りが耳打ちする。

「騎神化して戦え!今のお前じゃつまらん!」

 

「嫌だね!だって生身の人相手に騎神の力なんて使ったら卑怯じゃん!

 それにこれはただの喧嘩だから、絶対に騎神化なんてしない!だって喧嘩は正々堂々一対一でするもんだから!でもあんた強いから鉄パイプ(コレ)は使わせてもらうよ。」この言葉に騎神狩りは笑い、関節を解き、すぐさま構え直した竜馬に対し言い放つ

 

「なら・・・俺が騎神なら問題無い訳だ。」

「えっ!?」驚く竜馬の前で騎神狩りは凄みを増し騎神化【雷狼拳】

 

 袖無しの胴着に左上腕にパープラチアットを巻き付け、四肢の手甲と脛当てには稲妻が走る。

 

 そして空からこれまで倒してきたであろう行き場を失ったオーブ達が舞い降り、ベルトの石に吸収されていった・・・

 

「さぁ、始めようか・・・」

  

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