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騎神伝  作者: 一一【ニノマエ ハジメ】
出会い
11/56

偶然にも最悪な少年1

 22時00分 夜の繁華街

 

 様々な色のネオンライトに照らされる街並

 大通りには酔っ払いや客引き、夜遊びに興じる若者で賑わい、人気の少ない裏通りには何やら危ない物を売り歩く怪しい連中とそれを買う挙動のおかしな連中もいる。

 路地裏では遊ぶ金欲しさに恐喝・親父狩り・カツアゲが横行、犯罪の温床になっている。

 

 そしてまた一人、一人のサラリーマンが若者数人の餌食になろうとしている。

 

「おい、おっさん!金あんだろ?寄こせよ」

「まっ待ってくださいよ!いきなり何なんですか!?」怯えるサラリーマンに若者の一人が言う「おっさん、騎神って知ってる?」サラリーマンは怯えながら素早くうなずく

「コイツ、その騎神なのよ!だからさぁ殺されたくなかったらとっとと金出せよ!」それを聞いて恐怖で大量の汗を噴き出しながら急いで財布を取り出すサラリーマン、そこへ一人の若者が声をかけてくる。

「今の話し・・・本当か?」ジャージ姿の若者がゆっくりと近づいてくる。

「あ?何だテメェヤんのか?」若者の一人が前に出て騎神化【水蛇双剣】双剣を手に取り構える。

 騎進化を確認しジャージの若者はそのまま向かっていく。

「は?馬鹿じゃねぇの騎神でも無い奴がマーちゃん相手にタイマンして勝てるわけねぇだろ!」

「全くだ!まぁいいや死にたいんなら仕方ねぇよ!」能力と武器を持つ騎神相手に普通の人間が挑む、それは傍から見れば自殺行為のように見える。

 だが、それは違った。

 

 余裕の表情の騎神は接近する若者に斬りかかると、若者は刃を捌くと同時に自分の腕を騎神の腕に絡ませ巻き取る。

 透かさず騎神は反対の手に持つ剣で斬りかかるが、冷静にそれも捌き、同時に騎神の顔面に肘鉄を喰らわせ怯んだ隙にもう片腕も巻き取り、そのまま両腕の骨を圧し折った。

 断末魔の叫びをあげる騎神に対し若者は表情ひとつ変えず『黙れよ』と言わんばかりに頭突きを喰らわせ、倒れる途中の騎神の頭を掴み壁に叩きつける。

 後頭部に強い衝撃を受け意識が混濁した状態で壁にもたれ掛かる騎神に追い討ちで今度は側頭部を強烈な回し蹴りで薙ぎ払う。

 騎神の首は真横に曲がり、横たわる体は小刻みに痙攣している。

 

 目の前で起こっている凄惨な光景に恐怖する騎神の仲間たち、気付けば股間のあたりが生暖かくなっていた。

 

 しかし若者はまだ止まらなかった。

 最後にうつ伏せ状態の騎神の首を踏みつけゆっくりと体重をかけていく。

 徐々に重みが加わり喉が閉まり頚椎も限界を迎える頃、騎神は人とは思えない声を出しながら『グキッ』という音と共にオーブとなった。

 しかしオーブは行き場を失いそのまま天高く飛んで行ってしまった。





 ーー1 変化した日常 ーー

 8時00分 白金家リビング

 

 いつも通りの朝、ジャムをぬったトーストとハムエッグと牛乳、寝癖頭のボクと闘気、そしてボクらの弁当箱におかずを詰める母さん

 

 前と何も変わらない朝の風景

 でも前と明らかに違うのは、静かすぎることだ。

 いつもなら母さんの話す声や笑い声でテレビの音もよく聞き取れなかったけど、今はよく聞こえる。

 しかも騎神のことが公表されてからはてレビでも騎神のニュースばかり、今日は騎神がこんな事件を起こしてこれだけの被害が出ましたとか、騎神によって被害を受けた人のインタビューとかそんなんばっか、まるでボクら騎神を悪者のようにあつかってくる。

 

 闘気は気にせずスマホ見ながらコーヒー飲んでるけど、静かすぎる朝にまだ違和感を感じてるはずだ・・・

 最近ではウチでタバコ吸いづらくて外に出てから吸うようになったし・・・




 そこにテレビから新たなニュースが流れる

『最近話題の騎神について、驚きの情報が入りました。

 先日、夜の繁華街にて暴れていた騎神に対し、ジャージ姿の男性が応戦し騎神を殺害したとのことです。

 目撃者によると、この男性は暴れる騎神に対し単身向かって行ったとのことで、偶発的に起こった事故では無く、明確な殺意を持った犯行であったと思われます。』このニュースに対しコメンテーター達の意見は

『騎神みたいな化け物相手に危険すぎる』

『行い自体は危険な自殺行為と言えるが、やった事については()()と言うよりは()()に近い気がする。』

『社会を乱しているのは彼ではなく騎神の方ですからねぇ』

 と圧倒的に騎神の方が悪いという意見が大半だった。

 

 このニュースにネットでも『GJ』『ざまぁwwwwww』『普通の人に頃されるとか草』『騎神なんてみんな居なくなればいい』『俺も騎神狩り行ってくる』などのコメントが広まり、【騎神狩り】と言う言葉がトレンド入りした。

 

 

 

 ・週末 11時00分

 白金家前に一台の高級リムジンが停車する。

 

 この日、俺と竜馬は新しく仲間になった翼に北条院邸に招待されていた。

 当初は藤堂を入れた三人が招待されていたが、藤堂は翼を認めておらず「仕事がある」と断ってきた。

 それで仕方無く竜馬と北条院邸に向かうことになったが、まさかリムジンで迎えに来るとは・・・

 

 だが車内に乗り込んだ瞬間、何故リムジンなのか理解した。

 座席に座る翼を数人の黒服のSPが取り囲むように座りグラサン越しに俺らを睨みつけている。

 確かに、この人数が乗ってんならリムジンでなきゃなぁ・・・

 しかもわざわざ2席だけ空けて、リムジンなのにほとんど鮨詰め状態じゃねぇか・・・

「申し訳ありません・・・屋敷の者は全員僕が騎神であることも、お二人が騎神であることも知っているもので、こうでもしないと車は出せないと言われまして・・・・息苦しいかもしれませんが、どうか我慢していただいて・・・」当然だ、大財閥の御曹司を俺らみたいな得体の知れない連中と一緒に居させられるわけがねぇ、それは理解できる。理解できるが、こんなにいらねぇだろ!

 

 チキショウ、なんかこの後のことを考えたら胃が痛くなってきた。

 しかも竜馬の野郎、この状況で平気でSPイジってんじゃねぇよ!

「へぇ〜ホントに耳の裏にイヤホンジャック通してんですね!映画と一緒だ!」笑ってんじゃねぇよ!SP無反応じゃねぇか!

 あ〜帰りたい・・・隣はむさいおっさんだらけ、竜馬バカは初めて見るSPに興味津々、招待した(本人)は申し訳なさそうにお通夜状態ときてる。

 俺は落ち着くためにタバコを取り出すが、そこへSPが言いやがった。

「車内禁煙です。」・・・・・帰りたい。

 

 

 そんなお通夜状態の車内とは裏腹に、車は北条院所有の敷地内に入る。

 自然豊かな山間を抜け、小高い丘を登った先に見えたものは目を疑う光景だった。

 

『北条院財閥は日本屈指の大財閥だ、大金持ちが広大な土地を持っているのは分かる。』

 広い敷地内にはテニスコートや大型プール、体育館などの娯楽施設が散見する。

『自然豊かで風光明媚な場所に家を持つのも分かる。』家畜小屋やビニールハウス、畑に放牧のための牧草地帯も見える。

『だが・・・町一つ持ってるのはおかしいだろ!』マンション数棟、一軒家数棟、何故かコンビニ・スーパー・外食店まで立ち並ぶ始末

 

 この光景に闘気は改めて北条院財閥の大きさに驚愕し、その御曹司たる翼を見るがSPたちで闘気の視界は塞がれてしまった。

 竜馬はというと放牧されている牛や馬を見て「乗ってみた〜い」と呟き

「では、後ほどご一緒にいかがですか?」と翼と乗馬する約束をしていた。

「この町は屋敷で働く使用人や敷地内で働く農夫・庭師たちのための町です。

 主人と同じ屋敷に住み込みで働いていると気が休まらないと思うんです。

 だから皆さんが働きやすい環境づくりのため、あえて屋敷から離れた場所に居住区を設けました。」この言葉からこの町づくりも翼の一存によって作られたことがわかり闘気は絶句、竜馬は「すごーーーい」と立ち上がろうとしたところをSPに取り押さえられ座らされた。

 

 そうこうしてるうちに車は一際大きく煌びやかな建物の前を通る。

 闘気はその建物が北条院屋敷と思ったが、通り過ぎたことで『違うのか・・・』と目で追うだけだった。

 ただ使用人たちの居住区については詳しく話した翼が、この建物には触れなかったことに少し違和感を覚えたが深くは考えなかった。

 

 

 そしてようやく目的地に辿り着く。

 そこは古く趣のある洋館、先程の煌びやかな屋敷とは異なりどちらかというとこじんまりとしたシックで重厚感のあるレンガ造りの古風な建物、それでも大きさは体育館ほどあり、見るからに部屋数も相当数あり『ザ・金持ち』と言った印象だ。

 車から降りて離れたところに見える先程の煌びやかな建物を眺め闘気はどうしても気になり問いかける。

「あの建物は迎賓館的な物なのか?」

「いえ、あれは両親の住む本邸で、僕の屋敷は別邸になってるんです。」さらっと言った翼を二人は目を見開き二度見する。

「え?ドユコト?」驚愕のあまり語尾がおかしくなる竜馬

「教育のため両親とは離れて暮らす決まりがあるんです。それに僕も本邸には滅多に上る事はありません。」

「一人で寂しくない?」心配そうに問いかける竜馬

「ええ、この屋敷には24時間僕の身の回りのお世話をしてくれる方々がいますから。」

 

「むしろ、お一人になれる瞬間が無い状況です。」大きな扉の前で待機する橘が冷たい目で出迎える。

「本日はようこそいらっしゃいました白金竜馬様・山城闘気様

 本日いらっしゃるとのことで、屋敷の者一同スタンガン・テイザー銃・麻酔銃・刺股サスマタその他諸々準備してお待ちしておりました。」物騒な文言を並べつつ深くお辞儀する橘に二人は冷や汗が止まらない。

「橘さん、冗談はよしてください。」そう言って笑いながら屋敷に入る。

 そこで二人が目の当たりにしたのは入ってすぐのホールに並ぶメイドと執事たち、その全てが片手にスタンガンかテイザー銃、警棒を持ち、扉の外には庭師たちが刺股を持って並ぶ。

 この光景を前に闘気は心の底から思った。『帰りたい!!』

 

 

 使用人たちのあからさま且つ行き過ぎた警戒体制に翼は自身の頭を深々と下げ必死に弁明し謝罪する。

「本っ当に申し訳ございません。彼らの行動でお二人に不快な思いをさせてしまいました。ですが、これは僕のことを想ってしてしまったことですので、全ての責任は僕にあります。彼らを責めないでください・・・」本当に申し訳なさそうな顔で謝罪する翼に二人は「大丈夫・仕方ない」と宥めた。

 

 

 

 ーー2 建もの探訪 ーー

 

 古いながらもシックで趣のあるホールを抜け、部屋に向かう廊下には所々に彫像品や壁には絵画が飾られている。

 床に敷かれた埃一つないフカフカの真紅の絨毯を進み、翼のお気に入りの部屋へ案内された。

 扉を開けるとそこは高い天井に届きそうなほど大きな本棚が所狭しと並ぶ書斎

 本棚の群を抜けた先には大きなガラス戸、日の光を浴びながら本が読めるよう数脚のソファーが置かれている。

 その先に見える中庭には色とりどりの季節の花々が植えられ、一部に真新しいテラス席が設けられている。

 

「こいつはすごい!」闘気は本棚の群れとそこに並ぶ本を見ながら思わず呟く。

「気に入っていただけましたか?」

「ああ、量もさることながら、一冊一冊の内容の濃さが段違いだ!そんじょそこらじゃ読めない本がそこら中にある。」翼と竜馬そっちのけで本を漁る闘気

 まるで童心に帰ったような闘気に驚く竜馬

「闘気があんなに夢中になってるとこ初めて見たよ!」

「山城さんも本が好きなんですね・・・」

「うん、闘気の部屋にも本がいっぱいあるんだけど・・・ここまでじゃないなぁ〜」竜馬は呆れたように本棚の群れを見回す。

「一緒にお食事にと思ったんですが・・・もう少し時間がかかりそうですね。」翼の「お食事」の言葉に竜馬は反応

「いいよ、どうせあーなったら闘気ここから動かないし、先に食べよ!」時刻も正午を回っていることもあり、竜馬は自分の空腹を優先させた。

「あはは・・・山城さん!選び終わったらテラスの方に来てください。」

「あと中でタバコ吸っちゃダメだよ!火事になったら弁償できないからね!」

「フフフッ・・・大丈夫ですよ白金さん、そんなことしませんよ。」仲良くテラスへ向かう二人をよそに闘気はそっとタバコの箱をポケットにしまった。

 

 その後、翼の専属シェフによるフルコースが振る舞われた。

 見たことも聞いたこともない料理の数々に二人は舌鼓を打ち、翼との会話も盛り上がり徐々に二人の緊張もほぐれていった。

 昼食を食べ終わり満腹の中、闘気は癖でタバコに火をつけ、選んだ本を開く。

 読みながら癖で手元にあった皿に灰を落とす闘気、再びタバコを口に咥え直した瞬間闘気は気付く。

 今灰を落とした皿が食後に出されたコーヒーのソーサーであることに・・・そして闘気は今自分がしたことについて一瞬の間に分析する。

 

 

 落ち着け俺!

 ここは北条院財閥の御曹司の家だぞ、コーヒーカップ一つにしたってそこらの一般人の買える代物じゃねぇことは確実だ!

 しかもここの使用人達は俺らから主人を守るために厳戒態勢、いつ背後から刺されてもおかしくない状況だ。

 でも考えろ。

 ここは北条院財閥の御曹司の家、たとえ超高級食器だったとしても、そこまで気にしていないかもしれない・・・そーだ、きっとそーだ!それに俺らみたいな一般人に「そんな高級食器なんて勿体無い」とか言って100均のカップで出したのかもしれないしな。

 そーだ!きっとそーだ!!そーに違いない!!

 

 

 一瞬の内に脳内で導き出した答えを信じ視線を上げる闘気

 その視界に入り込んだのは、少し離れた場所で怒りの形相で小刻みにプルプルと震えるメイド、そしてその背後で耳元で何か呟いている橘・・・よく見ると橘がメイドの腕を掴んでいた。

 恐らくカップを選んだメイドが闘気の行動に怒り心頭の中、手を出さないように橘が諫めるが、やりようのない怒りに身を震わせているのだろう。そう察した闘気は静かに携帯灰皿にタバコを捨てソーサーの灰も摘んで捨てた。

 そこに橘が汚れたソーサーを代わりのソーサーにスッと取り替え、闘気に耳内する。

「ここで働く使用人は皆それぞれプライドを持って働いております。

 ご存知の通り、我々から見てあなた方騎神は招かれざる客、主人を守るためならどんなこともいたします。

 ちなみに狩猟用の猟銃を持った使用人も複数忍ばせてありますので行動には十分ご注意を・・・」そう言い残し立ち去る橘に顔面蒼白の闘気は思った。

『タバコ、やめよっかな!?』

 

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