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騎神伝  作者: 一一【ニノマエ ハジメ】
出会い
10/56

華麗なる一族4

 14時25分 

 

 翼は竜馬に引っ張られ生垣に身を隠す。

「大丈夫?」息を切らしながら翼に話しかける竜馬に翼は「はい」とだけ答え生垣の隙間からヒュウガマンの様子を伺う。

「竜馬!無事か?」そこに闘気が合流する。

「うん、でも海さんが・・・」心配そうに来た方を見る竜馬に翼が問いかける。

「あの水の騎神の人とあなた方は仲間なんですか?」翼の問いに二人が振り向く。

「うん・・・助けたいけど、どうすればいいのかな闘気・・・」困った表情で頭を掻きながら闘気を見る竜馬

藤堂アイツも言ったろ、トカゲの尻尾だ。そもそも最初からそういう契約で俺らは共闘してたに過ぎない。今使っちまうには惜しいが、仕方ないだろ・・・」やりきれないという表情でその場から離れようとする闘気

「そんな・・・」無慈悲な闘気の行動に納得いかない様子の竜馬

 

 そこに立ち去ろうとする闘気の手を掴む小さな手

「じゃあ、あの人を助けられるのは僕だけということですね。」翼のこの言葉を聞いて、闘気は立ち止まり顔を見られないようにほくそ笑んだ。

「どうするってんだ!」振り返り様に顔を強張らせ問う闘気

「ヒュウガマンと再交渉します。いざという時には協力を願えますか?」協力を求める翼に対し闘気は疑いの表情で詰め寄る。

「俺らは騎神、お互いが倒すべき敵だ。そんな俺らを助けてお前に何のメリットがある?」翼は闘気に対し真っ直ぐな瞳で言い放つ

「助けられる命を助けないのは、それだけで罪です!」

「行こう!」竜馬が翼の手を強く握り海救出に動き出す。

 

 海救出に向かう二人の背を見て闘気はタバコを一本取り出すと「思った以上に使えそうだな・・・(笑)」そう言ってタバコに火をつける。

 

 

 

 ーー9 心の訪問者 ーー

 

「闘気〜」海を支えながら歩く竜馬が闘気に手伝うよう求める。

 闘気はめんどくさそうにタバコを咥え海に肩を貸す。

「じゃあボクらは海さん送ってくから、今日はありがとね。」竜馬のこの言葉に翼はどこか感動を覚えた。

 

 

 

 僕がこれまで出会ってきた人々は皆一様に僕個人ではなく、北条院財閥の御曹司としてしか話してこなかった。

 そのためか全員謙った会話しかしてこず、相手が僕ではなく僕以外の何かと話をしている気がして、その度に孤独を感じてきましたが、白金さんの言葉はしっかり僕自身に向けられていた。

 

 白金さんの言葉には上下が無い

 相手を敬うでも見下すでもなく対等な目線で話す。

 そして左右も無い

 相手を自分の良いようにコントロールするような揺さぶりもなく、ただ僕に話しかけている。

 何より遠慮が無い

 相手が受け取りやすい言葉を選ぶでも、綺麗な言葉を選ぶでもない、思ったことをそのまま相手にぶつけている。

 

 今までこんな人はいなかった・・・・

 

 

 

 翼は今までに味わったことのない清々しさを感じ、慣れないこの感情に戸惑いながら、気付けば声が漏れていた。

 

「あの・・・僕も皆さんと一緒に戦いたいと言ったら・・・ご迷惑でしょうか?」先程まで堂々とヒュウガマンと交渉していた翼はどこへ行ったのか、恥ずかしそうにマゴマゴと話す翼に、竜馬は手を差し伸べる。

「ぜんぜん、大歓迎だよ!よろしくね。」

「・・・・はい!」翼は涙を浮かべながら嬉しそうに差し出された手を握りしめる。

 反対側で海を支える闘気は微かに笑い、二人に支えられている海は険しい表情のまま無言で目を逸らした。



「翼様!」そこへ脚を引き摺りながら橘が現れる。

「橘さん!大丈夫ですか!?」慌てて駆け寄る翼に橘は耳打ちする。

ヒュウガマン()から話しは聞きました。

 お下がりください!

 彼らは翼様を利用するつもりで近づいたに過ぎません!決して信用してはいけません。さぁ、迎えの車も準備してあります。後は私が話しを付けておきますので、お早く。」素早く翼をこの場から立ち去らせようとする橘だったが、翼はそれを拒む。

 急かす橘の手を振り解き、翼は今までにない険しい顔で橘を見た。

 

「橘さん・・・

 僕の友人をそんなふうに言わないでください。」長年支えてきた橘ですら初めて見た翼の表情に驚き、一瞬言葉を失う

「何を言っているのですか!?あなたは未来の北条院財閥を背負って立つ身、こんな得体の知れない連中と・・・」橘が話している途中にもかかわらず翼は強い口調で言い放つ。

「財閥は関係ありません。僕は御曹子である前に一人の人間、北条院翼です。」翼の気迫に気圧される橘、その様子を見て我に帰った翼は元の優しい口調で言葉を直す。

「すいません・・・僕は橘さんが思っているよりずっと子供なんです。

 わがままかもしれませんが、これだけは譲れません。

 父や橘さんの求める立派な当主にはまだまだ程遠い、こんな未熟な僕をどうか許してください。」本来ならば主人であるはずの翼が執事である橘に深々と首を垂れる。

 その姿に言葉を失いショックを受け狼狽する橘だったが、同時に翼が本当に求めていたモノを得られたのだと思い、心配と喜びが混在するアンビバレンスに戸惑いつつも、自分を一喝した。

 

「わかりました。

 翼様のおっしゃる通りです。

 財閥は関係無い、私は翼様の執事、それ以上でも以下でもありません。ただ翼様のために従事する。

 それだけです。」先程まで狼狽していたのが嘘のように、いつも通りの冷静な表情に戻った橘に翼は澄み切った笑顔を見せる。

「橘さん・・・ありがとうございます!」

 

 

「そうだ!皆さんも車へどうぞ、お宅までお送りしますよ!」翼が提案すると、海がゆっくりと睨み付け言い放つ。

「必要ない、俺はホームレスだ。あんたらとは住む世界が違いすぎる。」そう言って翼の提案を突っぱねた海は、竜馬と闘気に支えられながらその場を後にする。

 その後ろ姿を呆然と見つめる翼の隣で、橘は顔を強張らせた。

 

 

 

 ・18時00分 白金家

 

 竜馬と闘気は海を送り届け帰宅するが、そこには以前のような母麻美の幼いスキンシップは無かった。

 竜馬が騎神に覚醒した日以来、母麻美は塞ぎ込みがちだった。

 以前のような麻美の話し声に包まれた賑やかな食卓とは打って変わり静まり返る食卓・・・

 喫煙しようとする闘気を優しく諌めていた麻美も今では「・・・やめなさい」そっと注意するだけ・・・

 あまりの変貌に闘気も吸う気も失せタバコをしまう始末・・・

 

 そこへ、テレビのニュースが流れる。

『昨今、発生していました怪事件の多くが『騎神』と呼ばれる特殊能力を持つ者同士による戦闘で発生する被害であることが本日未明、警察庁から発表がありました。

 この『騎神』と呼ばれる存在に関しては人為的なものではなく、超自然的現象として考え、政府としては静観せざるを得ない状況のため、騎神による被害に対し特別激甚災害と認定しそのための予算を国会で検討中とのことです。

 国民の皆様には騎神と思われる存在を確認し次第、速やかにその場から立ち去り身の安全を確保してください。

 なお、急増する騎神による犯罪抑止のため、警察庁警視庁防衛省合同で騎神犯罪特別捜査班の設立を決定しており近日中に対処させる方針だと言うことです。』

 

 このニュースを見た麻美はため息を吐き、二人を見つめる。

「あなたたち、そういうことだったのね・・・・・。」

 

 麻美の生気の無い悲しげな表情に二人は何も答えられなかった。

 

 

 

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