真実の愛 特徴の無い顔の小男
普段なら、こんな踊り場で座っているようなちんちくりんの不審者なんて、大声でも上げて社会的に終わらせてやろうかという所だったが、異質な雰囲気と発した言葉の不思議につられ彼女は言葉を投げる。
「何いってんの? 真実の愛?」
年齢不詳の顔を上げ、男は言う。
「はい、真実の愛を貴女様は知っておられますか?」
誰かに説明しようと思ってもできないような特徴の無い顔、でも異様な不快感だけ残る顔。
無視しても構わないハズの相手なのに、狐に包まれたように素直に続けてしまう。
「真実も何も、私はずっと愛されて生きてきてる。 ずーっと好きだ好きだって言われてきてる。私が真実の愛を知らないわけがない!」
「いいえ、貴女は真実の愛を知りませんな」
「何さっきから意味不明な事言ってるの? じゃあアンタは知ってるっていうの?」
美姫は小男を嘲笑する。
小男は嬉しそうに真っ黄色の歯を見せて微笑む。
「いいえ、しかし貴女様に教えて差し上げる事はできます」
「――――はは、じゃあ教えてくれる?」
到底女性に相手にされるとは思えない小男が何を知ってるというのか?
こんな小男に貴重な人生の時間を使ってしまったと目線を切った次の瞬間、彼女は自室のベッドの上で目が覚めた。