18. 雨
翌日、空は灰色の雲が覆っていた。
風はやや強く空気はやや湿っており、そのうち雨でも降り出すのではないかという雰囲気。降り出したら作業はどうなるのだろうか。
朝食が終わり各自作業場所へと移動、収穫作業を再開する。やはり雨が降ったら都合が悪いらしく慌ただしく作業が進む。ペース自体はそこまで早くなったと感じないが、どことなく焦りが感じられる。一言で言えば雑になっている。子供たちの作業は相変わらずで、籾が袋いっぱいになるまで詰め込んだら大人に運んでもらい次の袋へ、束ねた茎は自分たちか隣の作業場へ積む、これの繰り返し。時折燃えるような視線と冷たい視線、困ったような視線を感じるのも一緒だ。
午後になりとうとう雨が降り出す。
作業小屋の面々は早々に後片付けを始め、あっという間に蜘蛛の子を散らすよう去っていく。まだ籾が残った稲の山を見ながらこれでいいのか?と思う。あるいは他の作業でもあるのかと村を見渡してみたが皆家の中へと消えてしまいその判断はつかない。ふと遠く山の斜面へと続く道を、雨に濡れながら一人で歩くトソの子の姿を発見する。村の中心から離れた所に住んでいるのだろうか。
ツチメと別れツチオと連れ立って小屋へと戻る。カマオの姿は見えなかった。雨の日は特に仕事も無いのか日暮れまでぼんやりと過ごす。夜にはカマオは戻ったがツチメは帰ってこなかった。
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翌日も朝から雨。
カマオは朝から出掛けたが2人の子供は暇を持て余す。やることも無いと体が鈍る。これではイカンとストレッチを始めるとツチオが興味を示す。2人で体を押し合ったり曲げたり伸ばしたりしていると、小屋の外からどこか腫れ物でも見たかのような表情でこちらを見つめるツチメの視線と目が合う。慌てて居住まいを正すツチオを横目にストレッチを継続する。肩を竦めながら去っていくツチメを見送ると、また2人で体を押し合ってみた。
昼になる。ようやくウツメが小屋へと戻ってきた。ついでに持ってきた食料を軽く調理し食事を取る。
昼寝が終わり目を開けるとツチメが何かを織っているようだった。何かの植物を乾燥させたような細長いものを撚り合わせ、紐状のものを作っていく。今はまだ長い紐にしか見えないが、数日もすればちょっとした籠にでもなるんじゃないかと想像する。
日が暮れた頃、カマオが戻ってくる。ダラダラとした一日を過ごしてしまった結果、心が完全に死んでしまった。カマオとツチメが何やら話をしていたがまるで耳に入ってこなかった。雨の一日はこうして終わった。
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翌日は曇り。風は穏やか。
すっかり蝉の声は聞こえてこなくなった。
刈り入れが再開となり、また籾拾いの仕事が始まる。特筆することは何もなく、ツチメからのやや冷ややかな視線と、トソの子からの刺さるような重い視線、そんな事はまるで気にしていない呑気なツチオの笑顔を見ながら作業は続いていった。
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作業を始めて3日めの午後になりようやく収穫作業が終わる。隣の小屋に積まれた自分の背よりも高い茎の束を見て、少し達成感を感じる。皆で挨拶をするわけでもなく即時解散。窯の役の子らも小屋へと戻り、皆でクルミを食べながら労をねぎらう。どうやら田んぼ以外の所でも野菜等の収穫があったそうで芋や大根のような根菜が小屋の奥に保管されていた。
夜。
椀に入ったクルミを小脇に抱え囲炉裏の子の家へと向かう。家の中からは小さな炎の明りに照らされたあの子の姿が見える。「こんばんわ」と声を掛け少し驚いた囲炉裏の子に手を振りながら挨拶し囲炉裏の反対側へと腰を下ろす。
「おすそわけ。クルミは好き?」
返事が無いのは想定内。椀の中身を見せながらその場に並べる。4つ並べ5つ目を手に取り石を使って殻を割り、その中の大きめの実を指でつまみ上げ囲炉裏の子に差し出す。
「昼に食べたあまり。よかったら食べて」
ゆっくりと近づき傍らに座る。これだけでもかなり関係が深まったと感動していたら、摘んだ指ごと口にする囲炉裏の子。大変驚くが態度には出さない。軽く咀嚼しコクリと飲み込む姿がとても可愛い。親鳥の気分とはこういう事か。
3個めのクルミを割ろうとすると腕を掴み頭を左右に振られる。もう要らないのかなと思ったら、囲炉裏の子が石で殻を割り始め自分に実を差し出して来る。少し照れたが指ごと頂いた。なんだろ、甘酸っぱい。
2個を残し家を後にする。手を振り替えしてくれた姿を脳内で反芻しつつ、浮かれた気分で家路を急ぐ。
空には流れる雲。
時折見える月明かりが虹色に輝いて見えた。
補足
普通なら雨が降っても屋根の下でなら作業は続けます。
雨を理由にこの場を去りたかったという所でしょうか。




