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第二話 しかも美少女たちは皆俺に一目惚れ。

 

 第二話


「目が覚めたか」


「ああ……いや、目が覚めたっていうか……」


 俺は池のほとりで頭を抱えていた。

 傍目には巨乳の美少女が麗しく悩んでいる姿に映っているであろう。

 ただし股間からは顔だけのおっさんがニョロリと飛び出しているオマケ付きだが。


「で、これからワイがお前のパートナーってわけや よろし」


「ちょ、ちょっと待って、ほんと待って」


 飲み込むどころか、噛み砕くのにも時間が要る。


「ええと、俺はね、日本から来たんだよ。 分かるかな、日本」


「NIHON」


 絶対分かっていない発音に頭が痛くなる。


「とにかく、こことは違う国だか世界から来た……というか、連れてこられた? いつの間にか、来てたの、ここに」


 元々のコミュ障に加えて焦りとパニックの上乗せだ。構うもんか。


「だから、その、俺は、男だし、ほんとは、こんなんじゃない。おっさんなんだ、45…あれ、今年46だっけ… とにかく」


 ひと息吸う。


「俺は……股間からおっさんが生えてる美少女なんかじゃ……ない」


「お前は股間からワイを生やした美少女や。 よろしくな」


 余韻のない絶望。何も言い返せない。ただ夢なら覚めてくれと頭を抱えるしかない。

 ああ、一言だけ、言えることがあった。


「……よろしく」


「よろしくなァ!!!!!」


 底抜けに明るい声が野っぱらに響いた。

 



 草原を風が吹き抜ける。

 草むらを歩く足音に混じり、少女の陰鬱とした可愛らしい声と、甲高いお調子者の声。


「で、お前は何で、誰なんだよ」


「ワイは妖精や。 股間から妖精が生えるなんてレアなんやでー ツイてるで君ィ!」


「何がどうツイてんだか……」


「この世界はなぁ、まず選ばれし者にだけ、妖精が宿る…! ほんで、妖精が宿る部位がまた、コカンっていうのはレア! つまり君ィはレア中のレアで…」


「確率が低いことが幸運と同義ではないだろ……」


「じゃあワイは何やっちゅーんや」


「……災難、だよ」


 俺は潤んだ瞳を悟られないように空を仰いだ。

 

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