ジョーの計画
☆前回のあらすじ☆
麻里亜の空間移動でなんとかジンたちは監禁室から脱出することができた。
ジョーが麻里亜のコアを破壊しようとするが、ルビナ姫が剣で立ち向かうが返り討ちにされる。
そして、ジョーはポンプアクションショットガンで麻里亜のコアを破壊。
ジンは麻里亜を失い絶望に駆られる中、何故かパトロール隊がやってくる。
☆ジョーの計画☆
その時、正門をぶち破って車やバイクのエンジン音が近づき、やがて僕たちの前で急停止する。
僕は驚いて顔を上げる。なんだ?
パトロール隊のレスキュー車のバンだ。エアバイクまである。
エアバイクはタイヤがなくて、エンジンが掛かると宙に浮く近未来バイク。水上も走れるから便利だ。
でもエアバイクはパトロール隊の乗り物なんだよね。カッコイイけど。
パトロール隊が来たってことは、僕たちは助かったのか?
僕は緊張で生唾を飲み込み喉を鳴らし、固唾を呑んで見守る。
エアバイクに跨って黒い制服を着た隊員が次々にエアバイクから降りて、ヘルメットを脱ぎヘルメットをシートの上に置く。
隊員はジョーの元へと駆け寄り、ジョーを取り囲む。
隊員は一斉に腰のホルスターからオートマチック銃を抜いて、オートマチック銃をジョーに構える。
その時、レスキュー車の運転席のドアからヘルメットを被ったオレンジ色の制服を着た隊員が下りてくる。
ヘルメットを弄りながら、レスキュー隊員が僕に駆け寄ってくる。
レスキュー車の車内で無線が入り、男性の声で何か喋っている。
「ルビナ姫から緊急発信があった。お前はジョーだな。ここで何している!?」
一人の隊員が声を張り上げ、ジョーに訊く。隊長だろうか。
ジョーは不気味に喉の奥で笑い、ポンプアクションショットガンを肩に担いで隊長を睨む。
「姫がパトロール隊を呼んだか。オレの計画が狂ったな、まあいい」
ジョーは左右に首を振り、隊員たちを見回す。
計画? なんのことだ?
僕が物思いに耽っていると足音が近づいてきた。
レスキュー隊員が僕の両肩に手を置いて身体を軽く揺らす。
「君、大丈夫か?」
レスキュー隊員は僕の顔を覗き込む。
僕は声を掛けたレスキュー隊員の顔を見て頷く。
「は、はいっ」
僕はジョーが気になって、ジョーに視線を戻す。
レスキュー隊員が僕に微笑んで、僕の肩に手を回す。
「もう大丈夫だ。歩けるかい?」
レスキュー隊員が立ち上がって歩き始める。
僕は数歩歩いてルビナ姫に振り向いて俯く。
「あ、あの……僕はまだここにいます。ルビナ姫が心配で、僕にも責任があるんです……」
レスキュー隊員は「そうか」と言って、それ以上何も言わなかった。
レスキュー隊員は噴水で気絶しているルビナ姫の元に僕を連れて行ってくれた。
「キミはここで休んでなさい。私は救急箱を取ってくる。傷の手当てをしよう」
レスキュー隊員が噴水で気絶しているルビナ姫の隣に僕を座らせて、レスキュー隊員はレスキュー車に向かって走った。
僕は隣のルビナ姫に振り向いて微笑む。助けに来たよ。
僕は噴水に凭れて、ジョーをぼんやりと眺める。
ジョーはポンプアクションショットガンを肩に担いだまま、挑発するように片手で肩を竦めて首を傾げて隊長に近づく。
ジョーが隊長の傍に来ると、ジョーは隊長の頭を掌で子犬のようにくちゃくしゃに撫で回した。
「どうした? オレを逮捕しないのか? それとも、令状がないのかな? 上に許可取ってこい。その間にオレは逃げるぞ?」
ジョーは調子に乗って頭を撫で回した隊長の顎にポンプアクションショットガンの銃口を突きつける。
そのまま隊長の顎をくいっと上げて、隊長の顔の前で指を鳴らして挑発する。
「隊長、今がチャンスです。ジョーを逮捕しましょう。このまま見逃すんですか?」
隊長の隣に立っていた隊員がジョーにオートマチック銃を構えたまま、隊長の顔を覗き込む。
ジョーは首を傾げて、ポンプアクションショットガンを隊長の隣の部下に銃口を向ける。
部下の顔が引きつって小さい悲鳴を上げ、ジョーから顔を逸らす。ジョーにオートマチック銃を構えたまま。
隊長は瞼を閉じて首を横に振る。
「できない……上の命令が出ないんだ。上の連中は裏でジョーと繋がってる。私にはどうすることもできない……」
そして、隊長は悔しそうに俯き、震える手でオートマチック銃を下ろす。
部下が隊長に振り向く。
「で、ですが……」
部下の震えた小さな声が聞こえる。
隊長は隣の部下にオートマチック銃の銃口を顔に向ける。
「私は上に脅されているんだ! これも家族を守るためだ。お前にも大事な人がいるだろ!? お前たち銃を下ろせ!」
隊長は隊員たちの顔を見回しながらオートマチック銃の銃口を隊員たちの顔に向けてゆく。
隊員たちは顔を見合わせながら、オートマチック銃を下ろす。
ジョーは高見の見物が終わって不気味に喉の奥で笑う。ポンプアクションショットガンを肩に担ぎ、僕に背を向けて隊長の肩に肘を置く。
隊長は魂の抜けた人形の様に俯いている。隊員たちは心配そうに隊長を見ている。
ジョー隊員たちを見回して、ポンプアクションショットガンの銃口を隊員たちに向けてゆく。
「お前たちの正義はちっぽけなもんだ。逆らうこともできず、従順で犬のように尻尾を振っていればいい。お小遣いを減らされたくなければ、オレに逆らわないことだ。法など、偽りに過ぎん。そうだろ? 闇も光なのだ」
ジョーは親指で自分を差して、「西のアルガスタを支配しているのはオレだ」、言葉を吐いて隊員たちに言い聞かせる。
そして、ポンプアクションショットガンを肩に担ぎ、隊長の肩に手を回して空を仰いで不気味に喉の奥で笑う。
僕はジョーの背中を睨み据え、歯を食いしばり、拳を握り締める。
僕は黙って見ているのか? 僕じゃ何も出来ない。
ジョーに逆らえず、ただ支配される。そんなの国じゃない。
どうすることもできないのか?
ジョーは一人の隊員を指さして首を傾げる。
「お前、似ているな。オレが嫌いだった親父に」
ジョーが隊長の肩から離れて、指を差した隊員の元に向かい、ポンプアクションショットガンの銃口を隊員の顎に突きつける。
そのまま隊員の顎をくいっと上げる。
隊員の顔が引きつり、小さく悲鳴を上げて気まずそうに視線をジョーから逸らす。
ジョーは隊員の顔を覗き込んで、不気味に喉の奥で笑う。
「オレの親父は、生体兵器のために実の息子であるオレを実験台にしたのだ。その結果、オレは化け物になった。オレは親父を憎み、この手で親父を殺した。オレの中で殺意が芽生え、母親も兄も殺した。オレは化け物になったのだ。フハハハハッ。お前を見ていると思い出す。親父をな」
隊員がジョーから顔を背けたので、ジョーは口許を押さえて、自分に顔を向けさせる。
隊員の顔が引きつり、「こ、殺さないでくれ」と、生唾を飲み込み喉仏が動く。
ジョーは隊長に顎をしゃくり、喉の奥で楽しそうに笑う。
「お前が殺せ。自分の部下を殺すか、それともお前が死ぬか」
ジョーはポンプアクションショットガンを肩に担ぎ、肩を竦めて首を傾げて後退った。
ポンプアクションショットガンを肩に担いだまま、腰に手を当てて、楽しそうに二人の高見の見物をしている。
隊長はジョーが指さした部下にオートマチック銃の銃口を静かに構え、震える手で部下にオートマチック銃の銃口を向ける。
「……できない。自分の部下を殺すなんて、私にはできない。職を辞めた方がマシだ……」
隊長は泣きながらオートマチック銃を下ろし、俯いて胸のバッチを取って地面に落とす。
部下も静かに俯き、拳を握り締める。
「隊長……僕も職を汚すなら、ここでバッチを捨てます」
部下は胸のバッチを取って地面に放り投げ、オートマチック銃も放り投げる。
ジョーは瞼を閉じて片手で肩を竦め、残念そうに首を横に振る。
「ショーを見れなくて残念だよ。お前たちの敬意を込めて、オレがお前たちの正義を散らしてやる」
ジョーはポンプアクションショットガンを構えて、隊長と自分の父親似だと指さした隊員を撃つ。
二人は抵抗することなく、ジョーに撃たれて仰向けに倒れた。
そ、そんな。
僕は目の前で起きたことを、黙って見ているしかなかった。
僕が無力だから? 僕は瞼を閉じて首を横に振る。違う、そうじゃない。
僕が立ち上がろうとしたら、横からルビナ姫の手が伸びてきて僕を制する。
ジョーは喉の奥で不気味に笑いながら、ポンプアクションショットガンを下げて倒れた隊長の元に向かう。
隊長の傍でポンプアクションショットガンを肩に担いで、片膝を地面に突いて膝の上に腕を載せて屈み込み、ジョーは隊長の顔を覗き込む。
隊長の開いた瞼をジョーは片手で閉じ、ジョーは瞼を閉じて胸の前で静かに十字を切る。
「戦士よ、安らかに眠りたまえ」
ジョーが立ち上がり、何故かポンプアクションショットガンを投げ捨てる。
「降参だ。好きにするがいい」
ジョーは隊員を見回しながら、その場でゆっくりと両膝を地面に突き、両手を高く上げた。
どういうことだ?
意図的に降参したのか?
ルビナ姫に手で制されたまま、僕の眼が動揺でさざ波の様に揺れている。
その時、ルビナ姫がおもむろに起き上がり、よろけながらジョーの元に向かう。
僕はルビナ姫を眼で追う。
「お、おい」
僕はルビナ姫の背中に手を伸ばす。
キミが行ったところで、どうなるっていうんだ。
僕はどうなっても知らないぞ。
僕はルビナ姫の背中に手を伸ばしたまま、ルビナ姫を静かに見守る。
ルビナ姫が鬱陶しそうに髪を掻き上げる。
「あなたたち、何してるの? 突っ立ってないで、さっさとジョーを拘束しなさい。それでも国を守る人間なの? ジョーを逃がすつもりかしら? 答えは目の前に出ているでしょ?」
ルビナ姫が隊員の間を割って入り、ジョーの前まで歩み寄る。
ルビナ姫はスカートを捲って太ももに巻き付けて装着したホルスターからオートマチック銃を抜いて、ジョーにオートマチック銃を構える。
隊員の一人がルビナ姫に驚いて振り向き、死人でも見るようにまじまじとルビナ姫の顔を見る。
「ひ、姫様……気絶してたんじゃ……」
隊員たちが顔を見合わせている。
ルビナ姫はオートマチック銃をジョーに構えたまま、ジョーを睨み据える。
「目の前で人が死んだのよ!? 私は暢気に寝てられない。もう甘えてる私じゃないの。ジョー、動かないで。あなたの身柄を拘束し、ゾット刑務所に連行します。そこで罪を償いなさい。時間が罪深さを教えてくれるわ。少しでも動いたら撃つわよ?」
ルビナ姫がよろけて、傍の隊員が慌ててルビナ姫の肩を両手で支える。
ジョーはルビナ姫に振り向いて、ルビナ姫を睨んで不気味に喉の奥で笑う。
「まだ立てるか、姫よ。オレを逮捕するのか? 面白い。お前になにができる?」
ジョーが喉の奥で笑い、挑発するようにルビナ姫を指さし、人差指を突き出して人差指を小さく左右に振る。
ジョーは人差指をルビナ姫に向けて、人差指の指先から赤いレーザーを放つ。
赤いレーザーはルビナ姫の肩を貫く。
「うっ」
ルビナ姫は顔をしかめてオートマチック銃を地面に落とし、怪我を負った肩を押さえる、
ほらみろ。足手まといになっただけじゃないか。
僕は拳を握り締める。
王女のくせに、自分で何も出来ないのに無茶して。
僕は歯を食いしばる。もう我慢できない、黙って見ているのは嫌だ。ルビナ姫を助けないと。
僕は噴水から立ち上がって、よろけながらルビナ姫の元へと向かう。
ジョーは両膝を地面に突いたまま緑のシャツの袖を捲って、デジタル腕時計を見て空を仰ぐ。
「時間だ。オレはこれからズール砂漠に新型ミサイルのテストに向かう。ミサイル一つで街が吹っ飛ぶ。会場には悪どもが集まっているのでな。さて、幾らでミサイルが売れるかな?」
ジョーは挑発する様に人差指を突き出し小さく左右に振り、両手首をクロスさせて爆発のジェスチャーをして、不気味に喉の奥で笑う。
ジョーが立ち上がろうとすると、ルビナ姫が地面に落としたオートマチック銃を素早く拾い上げて、片手でジョーを撃った。
ジョーはそのままの態勢で首を傾げ、不気味に喉の奥で笑う。不気味な呼吸音が響く。
街が吹っ飛ぶ新型ミサイル?
そんなことさせない。
僕は拳を握り締める。
ルビナ姫が自分を支えてくれている隊員の脇腹を乱暴に肘で小突く。
「なにしてるの!? さっさとジョーを拘束しなさい!」
ルビナが顔をしかめて両膝を地面に突き、怪我をした肩を手で押さえたままジョーに顎をしゃくり大声で叫ぶ。
隊員たちが驚いて顔を見合わす。
「は、はっ!」
隊員がジョーの元に駆け寄り、制服のポケットから銀色の輪っかを取り出し、ジョーの両手首に銀色の輪っかをかける。
すると、銀色の輪っかはぴっと機械的な音が鳴ってジョーの両手首に締まる。
ジョーが隊員に連行されてゆく。
ジョーが連行されてパトロール隊のバンに乗り込もうとしたとき、ジョーが空を仰ぎ人差指で空を指さす。
その時、噴水の傍の石畳に影が現れ、少しずつ影が大きくなる。
隊員たちが不思議そうに空を見上げる。
ルビナ姫が額に手を当てて空を見上げ、僕も空を見上げる。
空から四つのパラシュートをつけたジープの装甲車が風に揺られながらゆっくりと落ちてくる。
ジープの屋根にはミサイルが二発積まれて固定されてある。
ジープの装甲車が地面に近づく時、運転席の窓から銀色の筒が落ちてきた。
地面に落下した銀色の筒は転がりながら、筒の穴から白いガスが噴出された。
今回は複雑な心理描写が書けたかな?下手ですが・・・