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デスゲーム

☆前回のあらすじ☆


麻里亜の攻撃で吹っ飛んだ謎の大男。しかし、謎の大男は生きていた。

謎の大男が吹っ飛んで開いた穴からミサイルが飛んできて、ミサイルは出口の階段の方へ飛んだ。


☆デスゲーム☆


 麻里亜が蹴飛ばした鉄扉の傍の壁に、麻里亜は掌を突いた。

 麻里亜が肩で息をしている。相当、エネルギーを消費しているらしい。

 その時、壁に空いた穴からミサイルの様な飛来音が聞こえ、僕は壁に空いた穴を睨む。

 壁に開いた穴からミサイルが飛び出し、ミサイルが曲がって出口の階段の方に飛んでゆく。

 続いて爆発音が聞こえ、壁が崩れる様な嫌な音が聞こえた。

 まさか、あの男、生きていたのか?

 あの男、何をしたんだ?

 僕は嫌な予感がした。


その時、爆風が部屋に押し寄せるのが僕の視界に映る。

「ジン様!」

 初めて麻里亜の悲しみを剥き出した声が聞こえた。

「うわっ」

 爆風で僕は吹っ飛び、僕の背中が壁に激突して背骨が軋む。

 僕は口から血を吐き、床に両膝を突きうつ伏せに倒れた。

 痛みで顔をしかめ、拳を握り締め、意識が朦朧とする。

 僕は肩膝を床に突いて、身体をゆっくりと起こす。

 血が混じった唾を吐き、口許を手で拭うと視界に麻里亜が映る。


 麻里亜は片手で僕を支えてくれて、僕は身体を捻じって背中を麻里亜に預ける。

 だいぶ楽になり、僕は麻里亜に大丈夫だと言わんばかりに、麻里亜に微笑む。

 その時、麻里亜の両眼から赤いレーザーが伸びて機械的な音を鳴らし、僕の身体を上半身から下半身へとスキャンしてゆく。

「スキャン完了。ジン様の人体損傷七〇パーセント。脇腹の傷及び、壁に激突した衝撃で左腕の骨が折れています」

 映像が切れた様な機械的な音を鳴らし、麻里亜の両眼から赤いレーザーが消えた。


 僕は脇腹を手で押さえ、腕の痛みで顔をしかめる。

「そっか。どうりで、腕の感覚がないわけだ。やっぱり、麻里亜は人間じゃないんだ……」

 僕は麻里亜が人間じゃないという現実を受け止められず、悲しみで麻里亜の胸で俯く。


「ワタシはリアン様の研究で生み出されたアンドロイドです。ワタシは試作機で様々なデータを採り、今後の研究に役立て、未来のアンドロイドを創るためにワタシは役立っています」

 麻里亜の冷たい声が聞こえる。


 僕は瞼を閉じて首を横に振る。

「そっか……父上が麻里亜を造ったんだ。麻里亜がアンドロイドでも、麻里亜は麻里亜だよ。これからもよろしく、麻里亜。僕は麻里亜を知って嬉しいよ」

 僕は瞼を開けて顔を上げ、麻里亜に微笑んだ。滲んだ嬉し涙を拭って。


 麻里亜の頬が火照る。

「ワタシの正体を隠して、申し訳ありません。いつかワタシの事をジン様に話そうと思っていました。ジン様、大丈夫ですか? 先ほどの爆発で出口の天井が崩れ、閉じ込められた模様」

 麻里亜が真紅の冷たい眼で僕を見下ろす。


 麻里亜の最期?

 どういうこと?

 それよりも、閉じ込められたことが悔しくて、僕は拳を握り締めた

「くそっ」

 やっぱり、さっきの爆発は僕たちを閉じ込めるためにやったんだ。

 あいつは死んでなかったんだ。あの男、何者なんだ。

 悔しくて歯を食いしばり、涙が滲む。

 どうすればいいんだ。何か脱出する方法はないのか?


 その時、大きな銀色の筒状の物が回転しながら部屋に転がってくる。

 筒には小さな穴がいくつも空いており、穴から緑のガスが噴出された。


「ジン様、毒ガスです! 息を止めてください! シールドを張ります!」

 麻里亜が声を上げ、僕を片手で支えたまま、麻里亜の両眼から青白いレーザが飛び出す。

 麻里亜は緑の毒ガスを噴出している銀色の筒状の物を睨み据える。


「!? わ、わかった!」

 僕は脱出方法を考えるのをやめて、慌てて口許を両手で覆う。

 手が臭いけど我慢した。

 脇腹や腕が痛むのも我慢だ。僕は生きる。これくらいなんともない。


 僕は麻里亜の横顔を見る。さっきの攻撃で、麻里亜はエネルギー消費している。

 麻里亜の眼から発せられる青白いレーザーが球形を形作る。

 僕と麻里亜の身体を、青白い障壁が展開してゆく。

 僕はその間に息を止めた。そんなに長く息を止められない。

 一分くらい息を止めると、慣れない息止めに急に息苦しくなった。

 思わず口許から両手を離し、息を吸おうとした時、麻里亜の唇が僕の唇に重なった。

 麻里亜がゆっくりと瞼を閉じる。


「!?」

 僕は驚いて、眼がさざ波の様に揺れている。

 ま、麻里亜?

 僕は恥ずかしくなり、慌てて麻里亜の唇から離れようとする。

 麻里亜が僕を支える手と唇に力を入れる。

 麻里亜の口から新鮮な空気が送られ、僕の傷が癒える感じがして、脇腹の痛みが和らぐ。

 折れた腕も再生する感じがした。僕は心地良くなり、ゆっくりと瞼を閉じる。

 温かい。麻里亜の温もりを感じる。

 これが、麻里亜の力なんだ。


 麻里亜の唇が、僕の唇からゆっくりと離れる。

「ジン様。ワタシのエネルギーを消費して、ジン様を治療しました。シールド展開完了」

 麻里亜の冷たい声が聞こえる。


 僕はゆっくりと瞼を開けた。

「ありがとう、麻里亜……少し楽になったよ」

 僕は麻里亜の顔を見て微笑む。


 麻里亜の頬が火照る。

「ジン様。ワタシのエネルギーをチャージします。少し休ませてください」

 麻里亜が片膝を床に突いたまま俯いて瞼を閉じる。


 僕は麻里亜の肩に手を載せた。

「ゆっくり休んでいいから」

 麻里亜の横顔を覗き込んで、僕は麻里亜に微笑んだ。


 その時、麻里亜の背中から咳払いが聞こえた。

「私の前でキスしないでくれるかしら? 邪魔しちゃ悪いと思って邪魔しなかったけど」

 ルビナ姫が麻里亜の背中から降りて、顔をしかめて両手に腰を当てる。

 ルビナ姫を支えていた麻里亜の腕が垂れ下がる。


 僕は驚き、恥ずかしくなって麻里亜の腕から慌てて離れる。

「お、起きてたんだ。ご、ごめん。気付かなくて」

 気まずくなってルビナ姫に背中を向けて胡坐をかき、頭の後ろを掻いて僕の顔が火照る。

 まともにルビナ姫と顔を合わせられない。

 僕はルビナ姫が気になって、ルビナ姫に振り向いて横目でルビナ姫を一瞥する。

 胸の前で腕を組んだルビナ姫と目が合い、恥ずかしくなって、僕は慌てて顔を戻す。

 麻里亜とのキス、ルビナ姫に見られちゃったな。

 胡坐をかいたまま頭の後ろを掻きながら、僕はルビナ姫を横目で見る。


 ルビナ姫は不機嫌そうに胸の前で腕を組んだまま僕を睨んで肩を竦める

「起きてたら悪いのかしら? それともあのまま気絶してろと? それより、この臭いなに? あなたから臭ってくるみたいだけど。この臭い、なんとかしてよ」

 ルビナ姫は顔をしかめ、両手で鼻を摘まんで首を横に振る。


 僕はルビナ姫の傲慢な態度にやるせなくなり俯く。

「ご、ごめん……僕、拉致されてから、その、風呂とか入ってなくて……」

 ルビナ姫に嫌われちゃったな。僕の第一印象最悪だ。

 せっかく仲良くなれると思ったのに。


 ルビナ姫が壁を叩く様な音が聞こえる。

「ちょっと、出られないじゃないの! 出しなさいよ! 城に帰らないと。みんな心配してるわ……」

 ルビナ姫が諦めて床に両膝を突いたのか、コルセットドレスの擦れる音が聞こえた。


 僕は瞼を閉じて首を横に振る。

「僕たちは閉じ込められたんだ。ここから出れば、毒ガスを吸って死ぬ。どうしようもできない。麻里亜が目覚めるまで待つしかない」

 何も出来ない自分が悔しくて歯を食いしばり、両手の拳を握り締める。

 僕は顔を上げて身体を捻じり、心配になって麻里亜に振り向く。

 麻里亜は静かに眠っていた。気のせいか麻里亜が優しい顔をしている。


 ルビナ姫が立ち上がって、今にも泣きそうな顔で麻里亜の傍に屈み込んで、麻里亜の身体を必死に両手で揺すっている。

「ちょっとどういうこと!? あなたが麻里亜? 起きてなんとかしてよ! 私を助けたんでしょ!?」

 ルビナ姫は起きる気配のない麻里亜を揺するのを諦め、立ち上がって青白いシールド内を必死に拳で叩いている。

「ここから出してよ!」と、ルビナ姫は誰かに訴えている。僕は黙ってルビナ姫を見ていた。

 ルビナ姫に呆れて、僕は俯いて瞼を閉じ、額に手を当てて首を横に振る。

 やがて叩くのを諦めたのか、ルビナ姫は腕を組んだり腰に手を当てたりして、青白いシールド内を行ったり来たりしている。

 とうとうルビナ姫は両膝を床に突き、俯いて両手で顔を覆い泣き始めた。

 子供の様に泣き声を漏らし、涙を指で拭う。


 僕はそんなルビナ姫を見ていると何故か苛立ち、拳が怒りで震え、やがて拳で思いっきり床を叩いた

「黙って見てりゃなんだよ! いい加減にしろ! キミは自分のことばかり、王族はみんなそうなのか!? 麻里亜はキミを見捨てるつもりだったんだ。だけど、麻里亜はキミを助けた。少しは感謝したらどうだ!? 甘えるな! キミを見ているとイライラする。今までちやほやされて育ったんだろ? 少しは我慢しろ」

 僕はくるりとルビナ姫に背を向け、麻里亜の隣で胡坐をかいて頬杖を突き、片方の掌を太ももの上に載せた。

 ルビナ姫が気になって尻目で見る。


 ルビナ姫が両手の掌を床に突き、拳で床を叩く。意表を突かれて泣きじゃくっている。

「な、なによ。なんなのよ! ご、ごめんなさい。ごめんなさい……私は自分のことばかり。王女だからって、みんなからちやほやされて、甘えていたんだわ。私、もう十六なのにね。あなたに言われて、私は初めて気付いた……ありがとう、少し楽になったわ」

 ルビナ姫は俯いて、泣きながら悔しくて床を何度も叩き、洟をすすり嗚咽し、涙を両手で拭う。


 僕は何も言わなかった。

 キミは自分で気付けたんだ。それでいいんだ。

 僕はルビナ姫の背中に微笑んだ。


「フハハハハッ。さっきのは痛かったぞ! オレを怒らせたのはお前が初めてだ! 気に入ったぞ!」

 その時、麻里亜が鉄扉を蹴飛ばした方から大男の悪魔の様な声が降って来た。 


 ルビナ姫の泣き声が止んだ。「今の声、なに?」とルビナ姫が僕に振り向いて訊いてくる。

 僕は寒気がして両腕を両手で擦る。

 あの男、まだ生きてたのか。僕は歯を食いしばって毒ガスの向こうを睨む。

 毒ガスが充満する中で大男の影が揺らぎ、大男が僕たちの前に姿を現す。

 大男の背中の機械から火花が散っている。

 どうやら、麻里亜の攻撃は効いたみたいだ。


「なんてことなの。あ、悪夢だわ……」

 ルビナ姫は大男を見て口許を手で覆い気絶してうつ伏せに倒れた。

 僕は気絶したルビナ姫を見る。キミは気絶してた方が都合いい。

 それにしても、キミはあの男を知ってるのか?


 大男はルビナ姫が気絶したのを見て不気味に笑った。

 大男は首を傾げ、人たち指を突き立てて左右に小さく振り挑発する。そして、両手を大きく横に広げる。

「ショータイムはこれからだ! 今からデスゲームを始める。オレが屋敷に仕掛けた爆弾の爆破スイッチを押す。制限時間は三分だ。その間に逃げれば、お前たちの勝ちだ。出口はオレが塞いだ。この絶望を味わうがいい! フハハハハッ」

 大男は両手の手首をクロスさせ爆破のジェスチャーをした。

 大男は不気味に笑いながら後退して、空間が揺らいで大男は毒ガスの中に消えた。


 爆破だって?

 なんて残酷なんだ。

 僕は床を拳で叩き、大男が消えた方を睨んだ。

 背中には嫌な汗をべっとりと掻いている。

 麻里亜の治療で少し楽になったが、絶望感で今にも意識が吹っ飛びそうだ。

 僕は麻里亜を見る。麻里亜は僕の期待に応える様にゆっくりと瞼を開けた。


「チャージ完了。ジン様。三分後にワタシのシールドは強制解除され、ワタシのエネルギーが限界に近づきます。どうしますか?」

 麻里亜が片膝を突いたまま、僕に振り向いて冷たく言い放つ。 


 僕は床に手を突いて、麻里亜の傍に寄る。

「麻里亜、無茶させてごめん。僕がしっかりしていれば、こんなことにはならなかったのに……」

 僕は麻里亜の傍で片膝を床に突き、麻里亜の肩にそっと手を載せる。

 麻里亜と顔を合わせられず、僕は俯き瞼を閉じて首を横に振る。


「警告。爆破まで三分です。組員は速やかに退避してください。繰り返します……」

 その時、感情のない女性の機械音声が監禁室のスピーカーから聞こえる。


 僕は絶望に駆られ、両手の掌を床に突き、拳で思いっきり床を叩く。

 くそっ。どうすればいいんだ。

 考えろ、なにか策があるはずだ。

 嫌な汗が頬を伝い顎から滴る。


今回、ジンくんと麻里亜の淡いシーンがありました。人間的なアンドロイドである麻里亜を書きたかったんです。ジンの幼い頃から麻里亜はジンの面倒を見てきました。ジンに好意を抱いてもおかしくはないなと。作者は思いました。結果的に、いい話が書けたと思います。

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