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麻里亜の力

~前回のあらすじ~


出口の階段から手りゅう弾が転がり、麻里亜は咄嗟に音がした監禁室に飛び込む。

そこで、どこかの貴族の少女がロープで縛られていた。彼女の名はルビナ姫。

麻里亜はルビナ姫を助け、脱出を試みるが、謎の大男に邪魔されてしまう。


~麻里亜の力~


大男は麻里亜の答えを気に入ったかの様に掌を壁に突き、マシンガンを肩に担ぐ。

「フハハハハッ、頑固な女だ。いいだろう。お前を殺してでも、彼女を取り戻すぞ!」

 大男は不気味に笑いながらマシンガンをぶっ放す。


 僕はべっとりと身体に汗を掻いていた。手にも汗を掻いている。

 もうダメだ。僕は脇腹を手で押さえ、拳を握り締めたまま、瞼を閉じて首を横に振る。

 瞼に力を入れて、歯を食いしばる。僕は何も出来ないんだ……

 麻里亜、死なないでくれ。お願いだ。

 大男が不気味に笑いながらマシンガンをぶっ放す音が耳に痛かった。


 その時、麻里亜の方から静電気で痺れた様なバチバチという電気的な音が聞こえた。

「ジン様。ワタシのダメージが大きいため、これよりシールド展開します」

 麻里亜の冷たい声が聞こえる。


 僕はそっと片目を開けて、両目を開けた。

「麻里亜……?」

 僕は麻里亜に振り向いて、小さく呟いた。


 麻里亜の身体を青白い障壁が包み込んでいる。

 麻里亜の頬にマシンガンの弾が掠ったのか、血の筋がいくつか走っていた。

 血の筋から血が頬を伝い顎から血が滴る。

 麻里亜の足元には、マシンガンの薬莢が幾つも落ちている。

 麻里亜の黒いワンピースに血が滲み、凄惨を物語る。


 大男のマシンガンが弾切れになり、大男が可笑しいように不気味に笑っている。

「フハハハハッ。なるほど、オレの部下が役立たずな訳だ。面白い、気に入ったぞ。お前、人間じゃないな? アンドロイドか? オレも人間じゃない。お前もオレも化け物よ。フハハハハッ」

 大男は麻里亜と自分を指さした後、不気味に笑いながらマシンガンを乱暴に投げ捨てた。


 アンドロイド?

 意味深な大男の台詞で、僕は大男をまじまじと見る。

 この男、人間じゃないのか?

 麻里亜は人間じゃない?

 僕は改めて麻里亜を見る。


 麻里亜は片腕を真っ直ぐ伸ばし、掌を大男に向ける。

「これより、攻撃展開します。先ほどのお返しです」

 麻里亜の薄青い長い髪に青白い電気がバチバチと走りながら、麻里亜の薄青い長い髪がぶわっと逆立つ。

 機械的な高い音が鳴り、麻里亜の身体を包んだ青白い障壁が掌に急速に縮小され、やがて青白い電気の球となり、大男に向けて青白い電気の球が勢いよく放たれ、辺りに耳をつんざく轟音が響く。


 麻里亜?

 僕は声にもならず、ただ麻里亜を見ている。脇腹の痛みさえ忘れて。

 麻里亜の薄青い長い髪が垂れる。見たこともない麻里亜の姿。

 僕は麻里亜の攻撃を目で追っていた。


「馬鹿なッ!」

 大男が目を見開き、信じられないという様な悲鳴を上げる。

 大男は麻里亜の青白い電気の球に押され、大男の身体がくの字に派手に吹っ飛ぶ。

 麻里亜の攻撃で壁に穴が開き、大男は穴の奥の闇に消えている。


 僕は壁に空いた闇を見つめて、生唾を飲み込み喉を鳴らした

「す、すごい……」

 動揺で僕の眼がさざ波の様に揺れている。

 僕は脇腹を手で押さえ、顔をしかめて突っ立っていた。


「ジン様。今のうちに脱出しましょう」


 麻里亜の声が降り、僕は我に返った。

「!? そ、そうだね」

 僕は麻里亜を横目に、ゆっくりと歩き出す。

 麻里亜が数歩歩いたところで、麻里亜が片膝を床に突いた。

 麻里亜の身体から火花が散っている。明らかに麻里亜の身体が異常だった。


「ま、麻里亜!? ど、どうしたの!?」

 僕は麻里亜の隣で屈み込んで、麻里亜の肩に手を載せて、麻里亜の顔を覗き込む。

 脇腹を手で押さえたまま。


 麻里亜が無表情の顔を僕に向ける。

「ジン様。先ほどの攻撃により、ワタシのエネルギーを予想以上に消費しました」

 麻里亜が冷たく言い放つ。顔を戻し、瞼を閉じて首を横に振る。


 さっきの攻撃といい、やっぱり麻里亜は人間じゃないのか?

 僕は麻里亜の正体を訊いてみようと思い、緊張で生唾を飲み込んで喉を鳴らす。

 口まで出かかっているが、踏みとどまる。僕は瞼を閉じて首を横に振った。

 たとえ、麻里亜がアンドロイドでも、麻里亜は麻里亜だ。


「ジン様。どうかしましたか?」

 麻里亜の声が降ってくる。


 僕は瞼を開けて、麻里亜に微笑む。

「なんでもない。麻里亜、本当に大丈夫? 少し休んだ方が……」

 僕が言いかけて、麻里亜がおもむろに立ち上がる。

 麻里亜は背負っているルビナ姫を背負い直し、僕はふらつく麻里亜を見上げ思わず手を伸ばす。


「休んでいるわけにはいきません。ここにいては危険です。ジン様、先を急ぎましょう」

 麻里亜はふらつきながらも、歩を進める。身体から火花を散らしながら。


 僕は伸ばした掌を握り締め、そっと腕を下ろす。

「う、うん……」

 僕は麻里亜の背中を見つめ、おもむろに立ち上がる。

 脇腹の痛みに顔をしかめて。


 麻里亜が蹴飛ばした鉄扉の傍の壁に掌を突いた。

 麻里亜が肩で息をしている。相当、エネルギーを消費しているらしい。

 その時、壁に空いた穴からミサイルの様な飛来音が聞こえ、僕は壁に空いた穴を睨む。

 壁に開いた穴からミサイルが飛び出して、ミサイルが曲がって出口の階段の方に飛んでゆく。

 続いて爆発音が聞こえ、壁が崩れる様な嫌な音が聞こえた。

 まさか、あの男、生きていたのか?

 あの男、何をしたんだ?

 嫌な予感がした。

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