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ジョーの暴走

☆前回のあらすじ☆ ナレーション:ジン


ジョーを追うため、僕たちは港町キリカをバンで走っていた。

無線で隊員から連絡が入るが、隊員は僕たちの前でジョーの手下に殺された。

安全運転で追いつけないと判断したバンはスピードを上げてジョーを追う。

まるで僕たちを嘲笑うかのように黒いジープの装甲車が現れ、僕たちの行く手を阻む。

バンは黒いジープの装甲車を避けるため路地裏に入るが、ジョーの手下に挟み撃ちにされてしまった。


☆ジョーの暴走☆


 僕とルビナ姫はシートに凭れた。僕は後頭部で手を組む。

 それにしても、長い路地裏だな。

 その時、前から二台の黒いバイクが猛スピードで僕たちのバンに近づいてくる。

 黒いバイクに跨った奴は黒いヘルメットを被り、黒いライダースーツを着て黒い革手袋を嵌めて黒いブーツを履いている。

 後ろからもバイクのエンジン音が近づき、僕は後ろを振り向く。

 後ろからも二台の黒いバイクが猛スピードで僕たちのバンに近づいてくる。

 後ろの黒いバイクに跨った奴も、やっぱり黒いヘルメットを被り、黒いライダースーツを着て黒い革手袋を嵌めて黒いブーツを履いている。

 一台のバイクが前輪を浮かせてウイリー走行でパフォーマンスをして僕たちを威嚇した。

 こいつら、隊員を殺した奴らだ。

 このままじゃ挟み撃ちだ、どうすればいい。


 僕は前と後ろを振り向く。

 屋根を仰ぐと、金属ベルトで固定されたサブマシンガンが目に入る。

 僕は緊張で生唾を飲み込んで喉を鳴らし、動悸が激しくなる。銃でなんとかしないと。

 僕は金属ベルトに固定されたサブマシンガンを取ろうと金属ベルトのロック解除するスイッチを探す。

 金属ベルトを両手で触るがロック解除するスイッチが見当たらない。

 無理やりサブマシンガンを取ろうとサブマシンガンを両手で引っ張る。

「警告。悪用防止のため、現在銃器類はロックしています」

 感情のない女性の機械音声が車内に響き、僕は金属ベルトを拳で叩く。


 僕は運転席のモニターを睨む。

「そんな場合じゃないだろ!」

 運転席から身を乗り出して僕に振り向くルビナ姫は首を傾げて肩を竦めた。

「大人しくしてれば? スパイ映画みたいに車に搭載武器があるのかもよ? 少しは信じなさいよ」

 ルビナ姫は運転席に振り向いて暢気に運転席のモニターを弄って音楽を掛けた。


 車内にノリノリの音楽が流れ、ルビナ姫が踊っている。

 なんでそんな冷静でいられるんだよ。僕は運転席で踊っているルビナ姫を睨む。

 僕はそっぽを向いて、大人しくシートに凭れ腕を組んだ。

 落ち着かなくて、左足と腕を組んだ右手の人差指が小さく上下に動いている。


 窓の外を見るのをやめて横目で運転席のモニターを覗いた。

 運転席のモニターの映像が切り替わり、フロントの屋根から映した鮮明な映像に切り替わる。

 バンに接近する黒いバイクに跨ったライダーが映る。一台のバイクがウイリー走行した。

 もう一台のバイクが太腿に挿したマシンガンを片手で構えて撃ってくる。

 後ろを振り向くと、二人のライダーが片手でマシンガンを構えて撃ってくる。

「車体損傷率30パーセント。前後に障害物接近中。これよりウェポンによる障害物除去を行います」

 感情のない女性の機械音声が車内に響き、バンのフロントとバンパーの下から機械的な音が鳴る。

 僕は思わず下を見る。次の瞬間、ひゅっと何かが放たれる音がした。


 顔を上げると、前方の二台の黒いバイクが同時に爆発してバイクの後輪が跳ね上がり空中回転している。

 黒いバイクが後ろに飛んでゆき、僕たちのバンが空中回転するバイクの下を通る。

 ライダーがバンの屋根に落ちて振り落された。

 後ろを振り向くともう一人のライダーはバイクから落とされまいと、グリップに必死に掴まりぶら下がっているのが間抜けだった。

 後ろの二台のバイクは地面に倒れて滑り、二人のライダーが地面を回転しながら転がっている。


 僕は深く息を吐いて胸を撫で下ろす。

 ルビナ姫が運転席から身を乗り出して、満足そうに口を結んで首を横に振って肩を竦める。

「言ったでしょ? 一生体験できないわよ。カメラ持って来ればよかったかしら」

 ルビナ姫は残念そうに瞼を閉じて額に手を当てて首を横に振り、大人しく運転席に戻る。

 僕は屋根の手摺を掴みながら、鼻と喉を鳴らして笑った。

「特番に映像を売ろうとかそんなんだろ? そのお金でお洒落するんだろ?」

 僕は不敵に笑って肩を竦めた。

 ルビナ姫が顔を僕に向けて、瞼を閉じで舌を出す。図星だったみたいだ。


 その時、後ろからエンジン音が聞こえ、僕は思わず後ろを振り向く。

 レンガの壁を突き破って黒いジープの装甲車が飛び出してきた。

 レンガの壁に大穴が開き、レンガの瓦礫が積もっている。

 黒いジープの装甲車は左に右に車体を擦りながら火花を散らし、猛スピードバンを追いかける。

 黒いジープの装甲車がバンに思いっきり衝突して、バンが大きく前に揺れる。


 僕はシートから飛び出してお腹がシートベルトに締め付けられ、お腹が苦して顔をしかめる。

「ちょっと! もっとスピード出ないの!?」

 ルビナ姫が黒いジープの装甲車に振り向きながら、助手席のシートを叩いて怒鳴る。

 もう一度黒いジープの装甲車が思いっきりバンに衝突して、またバンが大きく前に揺れる。

 僕とルビナ姫が固唾を飲んで、運転席のモニターを見守る。


「車体損傷率50パーセント。周囲の安全確認完了。ナイトラスオキサイドシステムを使用し一気に加速します。シートベルトを着用してください」

 感情のない女性の機械音声が車内に響き、僕とルビナ姫は顔を見合わせて慌ててシートに凭れた。

 数秒後にバンが機械的な音を鳴らし、マフラーから火を噴出した様な音が聞こえた。 

 バンは一気に加速して、僕はシートに引っ張られた。景色が高速で駆け抜けてゆく。

 前にキリカの遊園地で乗ったジェットコースターよりも迫力があった。

 とにかく身体に掛かる重力が凄まじい。

 パトロール隊のバンって、ジョー好みに改造されたのかも。

 ナイトラスオキサイドシステムなんて必要あるのか?

 路地裏に落ちている新聞紙や空き缶や段ボール箱を蹴散らしながら、路地裏を一気に抜けた。


 ジェットコースターが戻って来て急に停まるように、がくっと前に引っ張られた。

 お腹がシートベルトに締め付けられて気分が悪くなり、思わず吐きそうになり口許を両手で押さえる。

「ナイトラスオキサイドシステムの燃料切れのため、通常スピードに戻ります」

 感情のない女性の機械音声が車内に響き、一気にスピードが落ちる。

 路地裏を抜けた先は大通りだった。

 お腹を擦りながら後ろを振り向くと、黒いジープの装甲車が曲がり角を左に曲がった。

 また突っ込んでくるかもしれないな。そう思いながら、僕は顔を戻した。

 目に映るのは何台もの車がひっくり返って燃えていたり、車が正面衝突していたり、店に車が突っ込んだり、車が前の車に衝突していたり、大通りは大参事だった。

 吸い寄せられるように窓の外を見た。ルビナ姫が音楽を切る。

 この大通りをジョーの車が通ったに違いない。

 担架でレスキュー車に運ばれてゆく頭に包帯を巻いた男性の怪我人。

 すがる様に担架に寄り添い、泣き叫ぶ女性。彼の母親だろうか。

 人が何人も血だらけであちこちに倒れ、火だるまの男が叫びながら走っている。

 衝突で車内に閉じ込められ、窓を叩く子供が泣き叫ぶ悲鳴が聞こえる。

 ひっくり返った車が爆発し、車の窓ガラスが飛び散った。

 サイレンが鳴り響き、何台ものパトロール車やレスキュー車がバンの横を通り過ぎる。


 ルビナ姫の泣き声が聞こえる。

「見るの止めなさい。見世物じゃないのよ……」

 洟をすすり嗚咽するルビナ姫。


 僕は悔しくて歯を食いしばり拳を握り締める。

「ご、ごめん……」

 僕は胸の前で十字を切り俯いて手を組んだ。


 警告音のような機械的な音が鳴る。

「この先、通行止めになっています。別ルート検索中……」

 場を和ます様に感情のない女性の機械音声が車内に響く。


 僕は顔を上げると数メートル先にバリケードが設置され、消防車やレスキュー車で道路が通せんぼにされていた。バリケードの前で、オレン色の制服を着たレスキュー隊員が向こうを指さして怒鳴り、黒い制服を着たパトロール隊員が両手を腰に当てて何やら話し込んでいる。

 消防車やレスキュー車の向こうで大きなビルの火災が見える。

 十字道路の真ん中でバンが静かに停まった。

 警告音のような機械的な音が鳴る。

「別ルート検索時間を要します。しばらくお待ちください」

 感情のない女性の機械音声が車内に響く。


 その時、レスキュー隊員と話し込んでいたパトロール隊員がバンに振り向き、パトロール隊員が黒い帽子を被り直して黒い制服を着た小太りの中年男がズボンを持ち上げてバンに近づいてきた。

 小太りの中年男が咳払いしてバンの運転席の窓を拳で叩き、運転席のウィンドウが下がる。

「巡回か? ここは通行止めだ。迂回してくれ。あんた、顔が真っ赤だぞ。大丈夫か? どっかで見たことあるな……」

 小太りの中年男が運転席を覗き込んで肘を突いて手をひらひらさせ、首を傾げ目を細めた。


 ルビナ姫が洟をすすって運転席の窓から顔を出す。

「私はルビナ姫よ。何があったの?」

 ルビナ姫は涙を手で拭って運転席の窓の縁に手を突き、額に手を当てる。


 小太りの中年男は帽子を脱いで敬礼した。

「こ、これは、ルビナ姫でしたか! 失礼しました! 私にも何が起こったのかわかりません。ただ、突然ビルが爆発したという通報がありまして……中に人が閉じ込められてて、救助活動が困難な状態なんです」

 帽子を被って肩を竦め、心配そうに燃えているビルを見つめる。


 ルビナ姫って顔が広いな。

 僕はシートから身を乗り出して助手席に手を突き、横目でルビナ姫の後頭部を見て思う。

 ルビナ姫が顎に手を当てて口を結び、腕を組んで呻り考え込んでいる。

 もしかして、これはジョーの陽動作戦かもしれない。僕はシートに凭れ腕を組んで考え込んでいた。


「ねぇ。これって、ジョーの陽動作戦じゃないかしら。ここに人を集めて、ズール砂漠に行くには絶好のチャンスだわ」

 ルビナ姫が顔を上げて、閃いたように掌で拳を叩いて小太りの中年男を見る。


 僕はシートから身を乗り出して、運転席に手を突く。

「僕もそう思う。今、ジョーの追手は手薄といってもいい。キリカを出るにはもってこいだ」

 僕とルビナ姫が顔を見合わせて頷く。


 小太りの中年男の腰に下げた無線に無線が入るが雑音で聞こえない。

 小太りの中年男は無線を無視して、顎に手を当てて腕を組んで口をへの字に曲げて呻る。

「そうかもしれませんね。何台かジョーの追手に回してみます。ジョーを止めないと。私は現場で手一杯なんです。それじゃ、これで失礼します。朗報待ってますよ、ルビナ姫」

 小太りの中年男は腰に下げた無線を取って踵を返し、無線で連絡しながら振り向いて帽子を取って被る。

 僕たちは顔を見合わせ、互いに肩を竦めた。


 その時、左の曲がり角からさっきの黒いジープの装甲車が猛スピードで飛び出し、僕たちのバンに衝突してバンが勢いよく横に回転してひっくり返った。


 僕は窓ガラスに頭を強く打ち、頭を押さえて顔をしかめる。頭が痛い。

 焦げたような臭いと煙臭い。ガソリンが漏れてるんだ。早く出ないと。

 運転席のモニターの液晶画面に罅が入り、ばちばちと火花が散っている。

☆続く☆ ジョーの暴走終了後のおまけ ゲスト:ジンと?


ジン:えー、それじゃ、ゲストを紹介したいと思います。ってこれ、作者の仕事でしょ? なんで僕が?

スタッフ:作者様は一週間ほど海外旅行に出掛けられてますので。置き手紙に探さないでとありました。

ジン:それって仕事で?

スタッフ:いえ、プライベートです。現実逃避なんですかねぇ。最近、色々悩んでたみたいですし。

ジン:なんだよ、それ。僕に仕事を押し付ける気なのかなぁ。まあいいけど。

ゲスト(黒いヘルメットを被り黒いライダースーツを着て黒い革手袋に黒いブーツ):……

ジン:(なんかやりにくいなぁ。この人、誰なんだろ。挨拶の時も無言だったし)

スタップ:じゃ、ジンさん。お願いしますね!(カンペを持ってそそくさと退散。ドラクエ風)

ゲスト:……

ジン:えっ、えーと、好きな人いますか?(って、なに訊いてるんだ僕は!)

ゲスト:(腕をクロスさせる)

ジン:(クイズ番組みたいになってる。なんで喋らないんだろ。誰か気になってきた)

ゲスト:(いきなり席を立ち上がり、僕の頭を平手で思いっきりチョップする)

ジン:痛いじゃないか! なにするんだ!

ゲスト:(黒いヘルメットを取って頭を振って髪を掻き上げる)私よ! 気付きなさいよ! ほんと鈍いんだから! もぉ、信じられないわよ!

ジン:ルビナ姫!? 気付くわけないだろ!(なんだ、この夫婦漫才は。って、なに考えてるんだ)

☆END☆

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