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ルビナ姫の運転

☆前回のあらすじ☆ ナレーション:ジン


ガスの魔の手から逃れるため、僕とルビナ姫はパトロール隊のバンに逃げ込んだ。

僕は麻里亜が心配で麻里亜を助けようとするが、ルビナ姫に説得され止められる。

ガスが晴れるのを待っていると、ガスにやられた隊員がバンの窓を叩く。

ガスにやられ、変わり果てた隊員。僕はジョーの非情なやり方を許せなかった。

ガスが晴れ、ルビナ姫がバンを運転しようとしたが、登録外のため運転できなかった。


☆ルビナ姫の運転☆


 運転席のモニターの映像と音が消えて真っ暗になる。

「登録外のため、あなたは運転できません。スロットにIDカードを通してください」

 感情のない女性の機械音声が響き、警告音が車内に鳴り響く。


 ルビナ姫が両手でハンドルを叩く。

「どうなってんのよ! IDカードなんて持ってないわよ!」

 ルビナ姫はやるせなくなり、ハンドルに頬をくっつけてぶつぶつと文句を言っている。


 どうするんだよ。

 このままじゃ、ジョーに追いつかなくなる。

 僕は腕を組んで俯き、口を結んで唸った。


 ルビナ姫が気合を入れて頬を両手で二度叩いた。

「しっかりしなさい、ルビナ姫。私は王女でしょ。諦めないわよ。ジン、IDカードを探してちょうだい。車内にあるはずよ」

 ルビナ姫が運転席から身を乗り出して、助手席のダッシュボードを開けて書類を手探りしている。

 書類をダッシュボードに入れ過ぎたのか、ダッシュボードから書類が雪崩の様に落ちる。

 ルビナ姫が「ああもう」と文句を垂らし、頭を掻きながら座席の下に落ちた書類を拾い上げてゆく。


 僕は書類を拾い上げるルビナ姫を見て頷き、シートベルトをゆっくりと外した。

「僕もIDカード探すの手伝うよ」

 僕は後ろに振り向き、後部座席の上に雑に置いてあった黒いジャケットを手に取る。

 胸にパトロール隊のロゴがある。ジャケットの両ポケットを手探りしてみるけど、IDカードはない。

 あるのは丸めたレシートだけだった。

 黒いジャケットを丁寧に畳んで、後部座席の上に置く。


 ルビナ姫が乱暴にダッシュボードを閉める音が聞こえ、僕はルビナ姫に振り向く。

「もぉ、IDカードないじゃない! どこにあるのよ!」

 ルビナ姫が頭を掻きながらの文句が聞こえる。

 僕は運転席で茶封筒の中身の書類を取り出したり、茶封筒の中を見たり、IDカードを必死に探しているルビナ姫を見る。

 僕はルビナ姫を見て微笑む。ふと運転席にかけてある黒いジャケットに目がいき、僕は腕を組んで首を傾げた。

 意外とポケットにIDカードがありそうだな。運転席にジャケットがかけてあるし。

 僕は身を乗り出して、運転席にかけてある黒いジャケットの胸ポケットを手で探ってみる。

 何か写真の様な手触りがして、僕はジャケットからそれを抜き取った。

 それは、隊員の家の庭でバーベキューをした時の家族写真だった。

 息子と娘が笑顔で紙の小皿に盛られた肉を美味しそうにフォークでほおばっている。

 二人とも頬に小さなバーベキューソースが付き、息子はカメラから顔を背けている。

 娘は愛犬シェパードと頬擦りしてピースを決めている。

 夫が妻の背中に手を回して、二人ともカメラ目線で笑顔だ。

 写真を撮ったのは誰だろ? 家族の誰かだろうか?

 写真の裏には撮影日が手書きで書かれ、『これが僕たちの家族だ』と、メッセが添えられている。

 男性の顔を見つめる。彼はジョーの父親に似ているという理由で、ジョーに殺された。

 隊員の家族写真を見ているうちに、ジョーの非情なやり方に心がいたたまれなくなった。

 僕は拳を握り締め、瞼を閉じて首を横に振る。がくっと肩を落とし、瞼を閉じたまま俯く。

 この家族写真を見て、彼は仕事していたのだろうか。 

 僕はそっと胸ポケットに写真を戻そうとしたら、ルビナ姫の手が写真に伸びた。


 ルビナ姫の指先が震えている。

「その写真……」

 ルビナ姫が写真を手に取り、隊員の家族写真を見つめる。

 数秒後にルビナ姫は洟をすすり、口許を手で押さえて嗚咽する。

 ルビナ姫が無言で瞼を閉じて首を横に振り、口許を手で押さえたまま嗚咽して、写真から顔を逸らして僕に写真を返す。

 僕は写真をジャケットの胸ポケットにそっと入れる。

 泣いているルビナ姫を放っておき、僕は運転席にかけてあるジャケットの右ポケットを手探りする。

 IDカードはなく小銭と飴玉が幾らか入っていて、僕は俯いてポケットに小銭と飴玉を戻す。

 今度はジャケットの左ポケットを探る。頭の中でさっきの家族写真の映像が流れる。

 何かカード状の手触りがして僕は顔を上げてそれをゆっくりと抜き取る。

 それはIDカードではなく、隊員の免許書だった。エドワードアーヴィング巡査35歳。

 彼がジャケットのポケットに免許書を入れて、そのまま忘れたのだろうか。

 これが彼の最期の任務になるとは知らずに……僕は瞼を閉じて首を横に振る。


 僕は免許書に写った彼の笑顔を見て俯き、泣いているルビナ姫に免許書を差し出す。

「ねぇ……IDカードはなかったけど、隊員の免許書がジャケットのポケットに入ってた……」

 僕はゆっくりと顔を上げて、ルビナ姫を静かに見つめる。


 ルビナ姫が涙を指で拭い、僕から免許書を受け取って免許書に目を落とす。

 数秒後に口許を押さえて嗚咽した。

「……彼は、ジョーの父親に似ているだけで、ジョーに殺された……なんてジョーは非情なのかしら……残酷で、冷酷な男。それがジョーよ……残された家族のためにも、私は彼の家族に会うわ……そうね。運転できるかどうかわからないけど、スロットに彼の免許書を通してみましょう」

 ルビナ姫が滲んだ涙を指で拭い、僕から免許書を受け取り頷く。

 ルビナ姫は運転席のモニターのカードスロットに免許書を通してみる。


 僕たちの祈りが通じたのか、機械的な音が鳴った。

「登録者確認、エドワードアーヴィング巡査。彼は現在IDカード更新手続き中のため、免許書での運転を許可します」

 感情のない女性の機械音声が車内に響く。


 僕たちは顔を見合わせて片手で叩き合う。

 僕は胸を撫で下ろす。なんだか複雑な気持ちだ。


「本人確認のため、声紋と指紋を確認します。ハンドルに手を掛け喋ってください」

 感情のない女性の機械音声が響き、ルビナ姫をテストするみたいだ。


 ルビナ姫が運転席のモニターに振り向く。

 僕は運転席に肘をかけて頬杖を突く。

 ここまでシステムが厳しいのに、西のアルガスタは無法地帯だからな。

 こんなシステム、ジョーが居る限り無意味だ。


 ルビナ姫がハンドルを両手で乱暴に叩く。

「なんでよ! 私は王都ガランの王女、ルビナ姫よ! 犯罪者じゃないんだから! 非常時なのに! 頑固な機械ね! 少しはお利口になりなさいよ!」

 先ほどの哀愁が吹っ飛んで、怒りで運転席のモニターを睨んで舌を出している。


「……声紋と指紋を確認した結果、エドワードアーヴィング本人ではありませんでした。ですが、先ほどの声紋と指紋を検索した結果、王都ガラン王女ルビナ姫と一致したため、特別に運転を許可します。データを本部に送信します」

 感情のない女性の機械音声が響き、静かにエンジンが掛かる。


「や、やったっ! やったわよ! ジン!」

 ルビナ姫が顔を輝かせて僕に振り向く。

 僕たちは互いに手を取り合って、踊って喜び合い、両手を高く叩き合わせる。

 お互いに抱き付き、お互い身体から離れると顔が近くにあったので互いに顔が火照り慌てて二人は顔を背ける。

 僕は気まずくなり人差指で頬を掻いている。


「視界、良好。天気、良好。交通状況、一台の暴走車在り。警告、ルビナ姫の運転歴が短いです。安全ドライブのため、ワタシがアシストします。ブレーキペダルを踏んだままハンドブレーキを下げ、シフトをドライブにシフトチェンジしてください」


 僕はハンドブレーキとシフトを指さしてルビナ姫に教えた。

 これくらい本で読んだことあるから知ってる。


 ルビナ姫が袖を捲って首を傾げながら、ハンドブレーキを下げたり、シフトをチェンジしたりしている。

 すると、急なアクセル音とともに、バンが後ろに急発進し始めた。


 ルビナ姫がパニックになりクラクションを鳴らす。

「な、なんでぇぇぇぇぇ!」

 ルビナ姫が絶叫して慌ててハンドルを切る。

 車が左へ右へと後進暴走が続く。

 バンは停めてあったエアバイクに接触したり、レスキュー車に接触したりしていた。


「警告。現在、車が暴走中……ルビナ姫の運転適性率20%。事故率100%。そのため、緊急停止します」

 感情のない女性の機械音声が響き、警告音が車内に鳴り、急ブレーキが掛かって噴水に激突する。

 僕は座席から飛び出して、後ろに引っ張られて背中をシートに打ち付ける。

 後ろを振り向くと、麻里亜が倒れていた所に何故か麻里亜の姿が消えていた。

 顔を戻して、僕は瞼を閉じて首を横に振る。

 そうだよ。もう麻里亜は逝ったんだ。僕は前を見て歩くんだ。


 ルビナ姫が両手の拳でぽかぽかと頭を叩いている。

「私の運転がそんなに信じられないの! もう、どうなってんのよ!」

 ルビナ姫が両手で頭を掻きむしっている。


「後部に破損確認。ルビナ姫のドライブは危険です。これよりオートドライブに切り替えます。ルビナ姫は後部座席に移動してください。命令は受けつけます」

 勝手にシフトがドライブにチェンジされて、アクセル音とともにバンがゆっくりと動き出す。

 僕は後ろを振り向く。

 ルビナ姫が遺体を踏まなくて良かった。僕は胸の前で十字を切ってため息を零す。


 バンが突き破った門を踏んだのか、がくんと小さく跳ねる。

 フロントガラスから眺める海沿いの街並みが宝石の様に綺麗だ。

 向こうに青い海が広がっている。

 ジョーの屋敷は丘の上に建っていた。

 バンが左にハンドルを切って、エンジンブレーキを効かせながらゆっくりと丘を下る。

☆続く☆ ルビナ姫の運転終了後の雑談 ゲスト:ジョー


作者:ジョーさんは少女趣味ですか?

ジョー:いきなりだな。何故だ?

作者:だって、シェリアさんって少女じゃないですか。

ジョー:可愛い女の子は正義だろ?

作者:それ、ジョーさんが言う台詞じゃないっす。僕の中のジョーさんのイメージがどんどん下がってる。

ジョー:可愛い女の子のフィギアとか集めてるぞ。エロゲーとか集めてるな。

作者:っちょ。それ、思いっきりヲタク趣味じゃねぇかー!? ジョーといえば悪だろー!?

ジョー:……後でオレの部屋に来い。いい物を見せてやろう。レアなメイドのフィギアだ。

作者:てっきり殺されるかと思ったわー! って、あの姿で買ったのか? ガクブル・・・ ☆END☆

ジョーのイメージがぁ・・・なんてこったい。


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