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孤独な魔法使い  作者: マシュー
1/6

プロローグ

処女作となります。

よろしくお願いします。

 幾度となく彼女の死を見た。

彼女の持つ圧倒的なまでの生への欲求。そしてそれすら霞む暴力。彼女はその前に屈し続けた。

終わることのない地獄。輪廻する魂。再生する肉体。未来永劫消えることのない惨劇の記憶。

それでも尚、彼女は立ち上がった。

誰か救ってくれと、聞こえない程小さな声で、圧倒的な熱量で、蚊が羽音よりも小さな声で叫んだ。


それが聞こえただけ。それを知ってしまっただけ。それを理解しようとしただけ。

そして不相応にも救ってしまいたいと思っただけ。


 彼女は言った。


「世界は私が観測した姿で成り立っている」


 それはあまりにも傲慢な考えで。


「私が死ねば、世界は消える」


 それはあまりにも残酷な思考で。


「世界はそれを許してくれない」


 それはあまりにも醜悪な願望で。


「だから私は世界を観測し続ける」


 それはあまりにも強靭な意思で。


「そんな私をあなたは救ってくれる?」


 それはあまりにも絶望に満ちていて。


 初めは逃げた。彼女の背負う枷の大きさに恐れをなして。

 次はそばにいようと思った。彼女の日常がせめて安らかであればいいと思い。

 次は離れないと誓った。笑っている彼女がとても綺麗だったから。

 次は諦めた。もうどうしようもないと。せめて苦しまず、刻限の間際己の手で。

 次は諦めたくない。死に瀕する彼女がそう囁いたから。


 ―――ああ。そうだ。次は必ず。必ず君を救う。


 その先に己の幸せなどなくとも、君の笑顔を胸に留め、忘れないように大事にして。


 ―――それだけで俺は幸せだ。



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