旅立つ俺!
グラビティホエールとの戦いはギルドマスターと、集められた六人のAランク冒険者によって激闘の末に討伐された。
傷をだんだんとつけていき、何度も攻撃を重ねることで、傷だらけのグラビティホエールは動かなくなった。
町は半壊という状況だ。
町の至る所には瓦礫が落ち、崩壊している。
グラビティホエールが目をやられたあと、滅茶苦茶に暴れたせいだ。
奇しくもそのおかげでグラビティホエールの体力が尽きて、倒されることになったのだが。
グラビティホエールの死体は重すぎて動かせないという事で、倒した位置に置き去りにされている。
「それにしてもでかすぎですよこいつ。どこに魔核があるかわかったもんじゃない」
「心臓辺りにあるだろ、といってもこれを解体できるのはAランクの方々でも難しいだろうなぁ」
ギルドの解体員がクジラを見に来ていた。
町の人たちは思い思いにグラビティホエールに思いのたけをぶつけている。
家族を失ったものも多く、石とかがグラビティホエールにぶつけられていた。
こっそり肉を取って行こうとするスラム街の連中などをギルド員が追い払い、グラビティホエールの死体は静かに鎮座していた。
そこにAランク冒険者達とギルドマスターがやってきた。
「しかし昨日のMVPはザリチュとシオンだよな」
「ああ、二人がいなかったら俺たちも危なかった」
ザリチュは神速のレイピア使いと言われている女でシオンは重力使いの女だ。
「うへへへ、そんなこと……ありますよ!」
シオンが照れながら答える。
「私が狙われた時は驚きで動きが止まってしまった。それをカバーしてくれたシオンには感謝している」
「俺達もお前に感謝してるぜ。ザリチュ。お前がいなきゃ、目をやれなかっただろうからな。戦いが長引いたことは必至だ」
と、言った会話を俺は死んだふりをしながら聞いていた。
俺は大量の傷を付けられたが、致命傷にはならなかった。
だから、致命傷を付けられる前に死んだふりをすることにした。
勝ち目なかったからな。
ふんふん、そして今はレイピア使い。ザリチュが傍にいるのか。
俺は目を開けたまま死んだふりをしている。
目はすでに再生して見えるようになっている。
目ん玉の位置を変えずにザリチュの位置を確認する。
ふむ、もうちょい近づいてこい。
そうだ。あと半歩、こっちにこい。
いまだ!
俺は一気に口を開け重力場で辺りを引き寄せながら、舌を伸ばす。
「えっ」
あっさりとザリチュは俺の口の中に放り込まれた、嬉しいことにギルドマスターとシオンも一緒だ。
もぐもぐぅ!
「ボエエエエエエエエエエエエ(うまあああああああああああ!!)」
最高の味だ! どうやら人間は強いほどうまくなるらしい!
『レベルが上がりました』
『レベルが上がりました』
『レベルが上がりました』
『グラビティホールホエール
レベル15/15
高さ9.7メートル
横幅9.7メートル
長さ29.1メートル
強さB
進化が可能です』
「は!?」
人間が呆気にとられた声を出す。
俺はそのまま、辺り一帯を吸い込む。
うまし! 実にうまし!
Aランクの連中も全部吸い込めた。
これで俺に敵はいない。
「ボエエエエエエエエエエエエ(すべて食べ尽くしてやるぜぇええ!)」
その後、俺は町中の人という人を食べ尽くした。
瓦礫事吸い込んだから、残っている人は確実にいない。
町があった場所にはもう、何も残っていない。
更地になっていた。
よし、進化するか。
俺は進化したいと念じる。
すぐに眠気が襲ってきて、俺はそれに身を任せる。
目が覚めると夕方だった。
視界の端を見る。
『ブラックホールホエール
レベル1/20
高さ10メートル
横幅10メートル
長さ30メートル
強さA-』
きりがいい感じなったな。
そして嬉しいことに俺の体に黒い翼が生えている。
重力魔法を使うと、体がとても軽くなり、翼を羽ばたかせると宙に浮いた。
おっしゃぁ! 次の餌場に向かうぜ!
こうして俺は旅立った。