何か強いの出てきた
「ボエエエエエエエエエエエエ(人間よ、俺の餌になるのだぁあああ!)」
俺は吠える。
鐘が鳴るたびにそれに合わせて吠える。
人間が門の近くで鐘を鳴らしている。
おそらく、俺がどこにいるかを知らせる鐘だ。
ぬけぬけと場所を明かすような真似はしない。
もっとも吠え声でばれてるかもしれないが。
俺の元に兵隊がやって来るが、大口を開けて吸いこむ。
それだけで勝負はついた。
『レベルが上がりました』
『グラビティホールホエール
レベル8/15
高さ7.7メートル
横幅7.7メートル
長さ23.1メートル
強さB』
俺は町を崩壊させながら、食事を続ける。
うまい、うまいぜ! 人間うまし! しかも!
『レベルが上がりました』
『レベルが上がりました』
『レベルが上がりました』
『レベルが上がりました』
『グラビティホールホエール
レベル12/15
高さ8.9メートル
横幅8.9メートル
長さ26.7メートル
強さB』
経験値も旨い! これは人間様様ですわ~。
俺のご飯となってくれー。
と思っていたら、俺に攻撃が降りかかって来た。
横からだ。
弓矢を持った奴が俺の目に向かって矢を放っている。
しかし、そんなちんまいのでは俺を傷つけることは出来んのですわ。
俺はそっち方面を向くと吸い込んだ。
一撃だ。
そして口に広がる肉の味。実にうまし。
そんなときだ。
「くそっ、町半壊じゃねぇか! このくそクジラが!」
ムキムキのお爺さんが俺に向かって罵声を浴びせた。
お爺さんは斧を持っている。
「元Aランクの実力見せてやるわ!」
「ボエエエエエエエエエエエエ(良く分からんがご飯になりな!)」
吠えて俺は吸い込む。んんー、お爺さんが吸い込めんな。
お爺さんの方を見るとお爺さんは消えていた。
あれ、どこいった?
その次の瞬間、俺の頭に痛みを感じる。
「ボエエエエエエエエエエエエ(痛い! やめろや!)」
ぶんぶんと頭を振るう。
お爺さんが、華麗に地面に着地した。
「ちっ、でかすぎる。これじゃ浅い傷しか与えられんわ」
「おい、ギルドマスター大丈夫か!」
「やっと来おったか、はようこの化け物を倒してくれ」
「まかせろAランクの力見せてやる!」
ギルドマスター? そして増援か。丁度六人だな。そしてAランクという言葉。
ランクは強さか? 何にせよ吸い込めないという事は、Aランクは強いのかも知れん。
取りあえず吸い込んでみる。
が、重力場が消された。
何!?
「強力な重力場ですね。ですが私も重力魔法使い。レジストして見せます。その隙に皆さんは攻撃を!」
眼鏡をかけた女がそんなことを言っている。
その間に他の奴らが攻撃を仕掛けてきた。
「ボエエエエエエエエエエエエ(痛い痛い痛い痛い!!)」
やばい、あっという間に片目潰された。
見えなかったぞ、どうなってんだこれ!
Aランク強すぎないか。
俺はもう片方の目の前に重力場を放つ。
こっちは吸い込むじゃなく引き離す方だ。
俺は同時に舌でメガネ女子を狙う。
だが、その前のギルドマスターの斧で舌は切られた。
すぱんと、先端がおさらばした。
「ボエエエエエエエエエエエエ(このやろぉおおおおおお!!)」
俺が騒いでいる間に俺の目の方に近づいてくる人物がいた。レイピアを持ったその女は重力場で吹き飛ばされるところだった。
こいつが一番やばい。
見えないほど速い攻撃でもう一つの目を潰されたら、俺は確実にこの世を生きていけなくなる。
俺はその場でジャンプする。
空中にいる間にレイピア女に舌を伸ばす。
「なっ!」
不意を突いた。
だがレイピア女が不規則な動きで俺の舌から離れていく。
眼鏡女子が重力魔法でレイピア女を俺の舌から離れさせているのか。
ならレジストするまでだ。
俺は消えろっと念じる。
するとレイピア女にかかっていた重力魔法が消えた。
だが、そのころにはレイピア女が平静を取り戻していた。
レイピア女が俺の視界から消える。
速い。俺が着地して地震が起こる。
それと同時に俺の視界が消えた。
「ボエエエエエエエエエエエエ(俺の目がァアアアア!!)」