パーティの始まりだぁ!
俺は人間を食べたい。
しかし焦りは禁物だ。
森から出ると辺りは草原、すぐに見つかってしまう。
作戦を考えるのだ。
やはり夜に襲うのがいいだろう。
それも遠回りして見張りがいないところを狙った方がいいな。
森の方角には門があり見張りが立っている。
夜中なら俺の黒い皮がいい具合で隠れていけるはずだ。
月が雲に隠れたときに町に近づくのだ。
俺は森で時を待つ。
すると一時間ほどで、夜になり、分厚い雲に月は覆われた。
いまだ。
俺は重力魔法で俺の体を軽くする。
すると一センチぐらい体が浮く。
俺はヒレで地面を掻く、すると前に進む。
カヌーでオールでこいでいるような感じだ。
ガンガン進む。
結構早いスピードが出る。
俺はわざと遠回りして、見張りがいない方から町に近づいた。
さあ襲撃だ。
冒険者の一人であるエルクは、ギルドマスターに報告をしに行っていた。
報告内容は森でクジラの化け物にパーティの二人が喰われたという報告だ。
Cランクパーティのエルクたちは一人前と呼ばれるほどの実力がある。
本来はCランクパーティとしてゴブリンの巣を退治しに来たのだが、クジラに会って逃げ帰ってきたことをギルドマスターに伝えた。
Cランクを軽くあしらったことからBランクにクジラの魔物は指定された。
重力魔法を使ったことから、グラビティホエールと予測されたが、グラビティホエールがいるのは本来海である。
謎の現象にギルドマスターは悪い予感がして早急に手を打つことに決めた。
Aランクの冒険者を集めて、パーティを組ませ翌日に森に行かせることを決めたのだ。
Aランクパーティは集まり、その夜エルクは仲間の三人と酒場に浸っていた。
「くそお、バルカもメリーもいい奴だった。俺があの時説得できていればバルカは助かったかも知れないのに」
エルクは後悔の念に押しつぶされそうになっていた。それを酒で誤魔化す。
仲間の炎の魔法使い、シーラがぼやく。
「それにしても、私を集中的に狙ってきたり、重力魔法で盾を狙ったり、まるで知能を持っているようだったわ」
「そうだな。しかし魔物が知能を持つことなんてあるのか?」
エルクは後悔の念から逃げるようにシーラの話題に乗る。
「ありえない話じゃないわ。高年齢の竜は言葉を喋るというし」
「でもそれは竜の話だろ? しゃべるクジラなんて聞いたことないぜ」
弓使いのボーグが話題に乗った。
その時である。巨大な地震が起きた。
揺れはすぐ収まったが、被害は甚大だ。
机は倒れ、人が倒れ、料理が地面に落ちる。
「何だ!? でかい地震か!?」
その言葉はすぐに否定されることになる。
さらにもう一回地震が起きたのだ。
追加と言わんばかりに何回も起きる地震。
誰かが起こしているは間違いなかった。
十回ほど地震が起きた後の事だ。
それは破壊音とともにやって来た。
「!? まさか昨日の夜のクジラか!」
俺は石壁辺りにつくとまず跳ねた。
地震が起きる。
さらに跳ねる地震が起きる。
楽しくなって結構跳ねた。
さて、これで攪乱はある程度出来ただろう。
俺は石壁に頭から突っ込む。
突っ込んだ先は酒場だった。
おや、逃がした獲物がいるじゃいか。
俺は建物を崩壊させながら、しゃちほこみたいに上を向く。
「ボエエエエエエエエエエエエ(パーティの始まりだぁああアアアア!)」
俺の食べ放題パーティの始まりが幕を開けた。
それは同時に人間たちの恐怖の夜の始まりでもあった。
まず俺は一気に重力場を口の中に発生させて吸い込む。
一気に辺りから物がなくなった。
人間は35人ほど吸い込んだ。
ぐしゃぐしゃ、うまーーーー!
『レベルが上がりました』
『レベルが上がりました』
『レベルが上がりました』
『レベルが上がりました』
『レベルが上がりました』
『グラビティホールホエール
レベル7/15
高さ7.4メートル
横幅7.4メートル
長さ22.2メートル
強さB』