男って本当、単純ね
「で、相談ってなによ」山崎がラーメンのスープをすすりながら切り出した。
「つかさ、おかしくね?普通、注文して待つか?伸びちゃってんじゃん」
俺の前においてある豚骨ラーメンの麺はブヨブヨにふくれ、どんぶりから今にもあふれ出しそうだ。箸で持ち上げようにも麺が切れてしまう。
「で、相談って何よ」
「俺のラーメンはスルーかよ。まいいや、あのさ」
表情に少し深刻さを彩り、言うか否か迷っている風を装った。
山崎は、なんだよとじれったそうに訊く。
「俺、如月と付き合うことになったんだわ。で、これからどうすれーー」
「待って。如月?如月香織とお前が?ちょっと付いていけないんだけど。つか信じない、ありえない」
「俺がそんなすぐバレる嘘つくわけないだろ。」
五秒程の沈黙が流れた。
「メアド持ってる?」
「持ってる」
蓮華で伸びたラーメンを押し付け、スープだけをとる。
「とりあえず如月のメアドくれ。なんなら買ってもいい」
山崎が興奮しはじめ、顔を近づけてきた。
「やだよ、後で面倒になりそうだし。なんて送ればいいかだけ教えて」
必死な山崎にやだよと断った瞬間、気持ちのいい風が俺を包んだような気がした。
「お願いいいい、メアドおおおお!持ってるだけでステータスになるんだよぉ。だれにも教えないから!」
「うるっせーな、なおさら嫌だ」
結局相談らしい相談はできず、ラーメン屋をでた。
最後まで食い下がる山崎を振り切り、送るメールの内容を考えながら家路を歩いた。
そして家に着くころ一つの結論に達する。
「どうでもいいんじゃね?」
一度そう思うと、本当にくだらない事で悩んでいたような気がした。いや、恋愛は悩むものという先入観から、悩んでいる気になっていただけかもしれない。
部屋に戻り携帯を開け、文字を打った。
「佐藤です。遅くなってごめん!どう送るか迷っちゃって」そして送信ボタンを押す。
返信はすぐに来た。
「待ってたよー。もう寝ちゃったのかと思った!明日キノコ公園で待ってるから、一緒に登校しよ!何時ごろがいい?」
キノコ公園とは、きのこ森公園の略だ。夕方、如月に告白された場所でもある。
俺の家と学校、そしてその最寄り駅を結ぶ三角形のちょうど真ん中あたりに位置している。電車通学の如月と一緒に登校するならば最適の待ち合わせ場所だ。
「うん!じゃあ8時までにキノコで会おっか」自分でも自分がニヤけているのがわかる。
「ラジャー!そろそろ寝るね!おやすみ、佐藤くん」
もう寝るのか。もう少しニヤニヤしてたかったが、早寝早起きは感心だ。さすが如月。
「そうだね、俺も寝よっかな。おやすみなさい!」
今夜最後となるメールを送信して、携帯を放り投げた。
寝れるわけないだろ!こんなドキドキする夜は、中学の卒業旅行前夜以来だ。
多分好きだ。もう好きだ!俺、如月のこと大好きになっている。
いつか読んだ漫画に出てくるお色気キャラのセリフ「男って本当、単純ね」が頭を過る。
「いや、まったくだ。おっしゃる通りでございます」風呂に入ろうと立ち上がって、独り言をこぼした。