遊離する自尊
眼前。
潮汐が如く零れ浸した夢の残滓を、ただ諦観していた。
欲することの是非を問うことはなく。
一途な邁進こそが至るに相応しいと信じ切っていた。
自若なるは己が能才と近間の声。
それをひたすらに否する内なる声。
続く賛辞。
声の多大に溺れる謙遜。
波打つ外界の感情に麻痺してゆく理想。
そうして壊された完成品は、完熟する。
自己の理想と人々の理想を渾然とした体を持ち。
はたしてそれは、見事なまでに裏切られる。
賛辞を与えたものからの暴悪なまでの批判。
取り巻く周囲からの奇異の眼差し。
ましてや自身を顧みるに至る。
傾いだ一途。
矮小な謙虚。
歪んだ理想。
全てに遠い今を見て、自失の極みにただ心身を浸すのみ。
己を尊ぶ心は、遊び散らかすように離する。
塵芥に等しき夢の残滓を、ただ諦観していた。