第1章 第12話 彼女達と王都デート?
今まである程度の文章量を決めて書いてきましたが、だんだんときつく感じてきました。
最低は今までぐらいで、最高はもっと長くても大丈夫ですかね?
え、2話に分ければいい?ハハッ
次の目的を決める間に昼食を取ろうと言うことで、冒険者ギルドの近くにあった食事処に入った。サクラいわく、冒険者ギルド内の酒場と比べて、おしゃれできれいなところを選んだそうだ。ちなみに、選ぶまでに結構迷っていた。
とりあえず皆が決めるのを待つことにする。
時間にして20分ほどだろうか、注文する料理が決まったようだ。
サクラはキラーシザーのパスタ、ワカナはツイストボアのパイ、サーシャはホワイトホーンのステーキをそれぞれ注文する。俺は特に優先的に食べたいものがなかったため、シェフのお勧めを選択した。
金は王都へ向かう前にサクラの父親から小遣いとして受け取っており、昼食を食べる分には問題ない額を持っている。
「それで、これからどこを見に行こうかしら?」
「そうですね、食事を終えるまでには決めたいですが、どこか行きたい場所はありますか?」
それから料理が運ばれてくるまでの間、彼女達は行きたい場所を列挙していき、服飾屋、薬屋、本屋、武具屋に行くことまでは決定した。だが、どこに何があるのかや店の名前はわからないため、どの順番で見て回るかは未定だ。
それに対して、俺が案内できることを告げる前に料理が運ばれてきた。
「おー!きたきたー!」
「うーん、いい香り。とても美味しそうです!」
「さっそく頂きましょ!」
全員の料理がそろったところで食事を開始する。
里では付近に魔物が出現しないため、全員魔物を使った料理を食べたことがない。今回選択した料理も、普段食べることができないという理由からのようだ。
俺は料理を口にしながら、いつもとは異なる味を感じつつ、彼女達が挙げた内容に合った店の名前を位置と共に教えていく。同じ種類の店でも複数存在するため、それについても同時にどうするかを聞いておいた。
そうして話し合った結果、料理を全て平らげるまでに一応の予定が出来上がった。
服飾屋以外の店については、最も規模が大きかった建物だけを見て回り、服飾屋だけはいくつか見て回る。また、冒険者ギルドから近い、武具屋、薬屋、本屋の順に見ていき、最後に服飾屋を巡ることに決まった。
「はー、食べた食べた。あたしは満足だよ」
「うーん、さすが王都ね。とっても美味しかったわ」
「美味しいものも食べられましたし、ノアくんのおかげで行く場所も決まりましたし、順調な出だしですね!」
料理を食べるまでにそれなりの時間が経過していたが、彼女にとっては順調の範疇に入っているらしい。
会計を済ませ、皆で外に出る。これから最初に向かうのは武具屋だが、これはサクラが行きたいと言っていた。冒険者ギルドでの出来事で、武術に興味を持ったため、どんな武器があるのか見てみたいのだそうだ。
「でもサクラ、武器見たところでどうやって練習するの?」
「えっと、それは…そう、あれよ!本とかで勉強するのよ!」
「つまりは無計画なんですね…?」
武器の扱い方を本で学ぶのは難しいと思うのだが、今は違うのだろうか。それとも、記憶に直接動きを刻み込むタイプの魔道具を用いるのだろうか。
「どの武器を使うにせよ、本で学ぶのは難しいと思うが、魔道具でも使うのか?」
「え、そんな魔道具があるの?」
どうやらサクラはこのタイプの魔道具を知らないようだ。ということは、本当に本を読むだけで勉強するつもりだったのか。
ひとまず、魔道具について知らないとのことなので、どういった魔道具であるかを説明しておく。
「使用することで、使用者の記憶に直接動きを刻み込むというものだな。これを使えば、記憶に刻んだ型をなぞるだけで練習ができる。ただし、あくまで記憶しているだけで、身体が動くようになるわけではない。その後の練習は必須だ」
「へー、そんな魔道具があるんですね…でもその魔道具って危険じゃないですか?記憶に刻み込むって、記憶にいろいろできるってことですよね?」
ふむ、そう言えば現代では精神や記憶、思考に干渉するタイプの魔法は使用に制限がかかっていたな。とすると、このタイプの魔道具は特定危険魔道具になるのか。
「そうだな、現代では危険物になるものだ」
「それじゃあさすがに使えないわね…」
「やっぱちゃんと教えてもらうしかないねー」
そうこう話しているうちに、目的の武具屋に到着した。冒険者ギルドのそばにあるため利用者も多く、その大きさは近辺の施設と比較しても相当大きい。
皆で中に入ると、さっそくサクラとサーシャはあれはなんだろうと見に行った。武器に関してはワカナがよく知っていて、2人の質問に答えている。以前も、珍しいと言いつつ刀について知っていたな。
一通り見て周り、ワカナからの説明を受けたサクラは満足したようだ。次の場所に行こうかと俺とサーシャを呼びに来た。
サーシャは最初こそ珍しそうにしていたが、途中からは飽きたと言って俺と一緒に杖を見ていたのだ。俺はサーシャに、杖に使われている素材から、他との違いについての解説をしていた。
「さーて、次は薬屋だっけ?」
「そうですよ。いろいろな魔法薬を知っておくのは、冒険者としても大切ですからね」
薬屋に行くことを提案したのはワカナだ。冒険者としての備えだけでなく、回復魔法を使うにあたっての補助となる魔法薬に興味があるとも言っていた。
これもそれなりに冒険者ギルドから近い場所にある。魔法薬の類もまた冒険者になじみの深いものだそうだ。俺はどちらかと言えば実験のための道具という認識だが、皆にとっては怪我の治療や魔力の回復など、医療用の道具という認識だと聞いた。
薬屋に到着すると、中から様々な薬品のにおいが漂ってきた。今のところ嗅いだことのないにおいはせず、身体に悪影響を及ぼす類のにおいも感じられない。これなら入っても問題はないな。
前回は安全だったとしても今回が安全とは限らないため、一応の警戒をしていたが、彼女達はすぐに俺を連れて中に入っていった。
「おー、なんだかカラフルだねー!」
「ポーションは里でも見かけるけど、こんなにたくさん並んでるのは初めて見るわ」
サクラとサーシャは、2人でどんな魔法薬があるのかを見て回るといって離れていった。対して、ワカナは薬の名前や色合い、効果などを1つずつ確認している。勉強のためと言っていたし、それを実行しているのだろう。俺はワカナを1人にしないようそばについている。
「ノアくん、このポーションラベルがないのですが、何のポーションかわかりますか?」
他の薬品の容器にはラベルがあるらしいが、彼女が今見ているらしい薬品にはそれらしいものがなく、一体どんなものかわからず困っているようだ。
俺は彼女にどのような色か尋ね、同時に薬品の容器を手に取りにおいを嗅ぐ。
「色は濃い赤色ですね。においは密封されているのでしないと思いますよ?」
密封されているとは言え、においが完全にしないわけではない。
ふむ、このにおいと色からすると、身体強化用の魔法薬の1つ瞬反射薬だな。反応速度を向上させ、通常よりも高速な思考を可能にするものだ。肉体の速度を向上させるわけではないため、思考速度とのギャップから他の魔法薬や魔法との併用が推奨されている。
「これは瞬反射薬だ。反射と名はついているが、実際には反応速度を向上させるものだ。簡単に言うと、周囲の動きが遅く感じるようになる魔法薬だな」
「へぇ、これが瞬反射薬ですか。ありがとうございます、助かりました」
その後も、彼女の質問に答えながら様々な薬品を見て回る。サクラとサーシャは魔法薬を見て回るのに飽きたのか、魔法薬の作成を見学しているとワカナが教えてくれた。
それなりの数の薬品を見て、ワカナは満足したようだ。俺に再度礼を言うと、サクラたちを呼びに行こうと提案してきた。俺はそれに返事をして一緒にサクラたちを迎えに行く。サクラたちのほうもちょうど一段落ついたところだったのか、こちらに近づいてきた。
「ワカナは満足したのかしら?」
「はい!とても勉強になりました!」
「相変わらず勉強熱心だねー。あんまり勉強してると頭から煙が出るかもよ?」
ほう、勉強を多くこなすと頭から煙が出ることがあるのか。人間とは不思議な生き物だな、と思っているとワカナから訂正された。実際に煙が出ることはなく、表現の一種だそうだ。
なぜ考えていることがわかったのかと聞くと、どうやら考え事をすると俺は首をかしげているらしい。どうやら皆と過ごすうちに、その癖がうつっていたようだ。サクラと同じ癖だと、ワカナが言っていた。ただし、サクラとは違ってごくわずからしく、いつも一緒にいないと気づけない程度だそうだ。
「えーっと、じゃあ次は本屋でいーのかな?」
「本屋とは言っても、魔法関連の本が多いところだったかしら」
この提案はサーシャで、魔法に関する知識に関して彼女は非常に貪欲だ。皆で先ほどの薬屋について話しながら目的地へ向かう。戦闘関連の魔法や魔物に関する本が多く取り扱われている本屋だ。
図書館という選択肢もあったが、学園の運営する図書館が王都内では最大らしく、そっちは入学してから見に行くから今回はこっちにしたそうだ。こちらは冒険者が最も利用する本屋で、料金を支払えば本を借りて専用のスペースで読むことができるのだとか。
ちなみに、本に何かあった場合は弁償が必要なため、取り扱いには注意するようにと聞いている。それと、その本が借りられた回数によって、購入時の代金が割引されるらしい。
「ところで、サーシャちゃんも勉強が目的な気がしますが…違うんですか?」
「こ、これはあれよ…そー、趣味よ趣味!」
そう言うや否や、ちょうど到着した本屋の中にすぐさま入っていった。
サクラはやれやれと言うと、サーシャの後について入っていく。俺とワカナも遅れて2人の後を追った。
「魔法と言えばこれよね!」
サーシャがある一角にたどり着いて、楽しそうに話しているのは何の本だろうか。魔力を感じ取ることができるため、魔道書の一種かもしれない。
魔道書には様々な種類がある。代表的なものは、使い切りで魔法を使用者に覚えさせるもの、魔力を流すことで魔法の発動を行うもの、魔法の発動を手助けするものになるか。魔道具としての使用を考えるとそれこそ無数にある。
魔法を覚えさせるものは、身体のいずれかの位置に魔方陣が刻まれ、それを通して魔法を使えるようにするものだ。記憶に刻まないのは、特定危険魔道具に分類されてしまうためである。また、基本的に競合してしまうため、1人につき1つまでしか覚えられないようだ。魔法の難易度や希少性に応じて値段は高くなる。
魔法の発動を行うものは、そのままで魔力を流せば魔法を自動で発動できる。これは、使用者が自分で登録するタイプと、あらかじめ魔法が登録されている2種類があり、使用する際の原理は魔法を覚えさせるものと似ている。利点は複数の魔法が使用できること、欠点は道具として持っていなければならないことと、魔力を多く必要とすることか。
これらの2つは、適性属性が異なっていても魔法が使用できるという点で優れていると言えるだろう。当然、非常に高価であり数も多くはない。
発動の手助けになるものは、基本的に自身で魔法を登録することになる。これは、魔道書を介することで、擬似的に詠唱破棄や無詠唱を実現することができる。ただし、使用する魔力が本来より多くなること、使用者が扱える魔法しか発動できないことに気をつけなければならない。
これは他の2つと比較して安価であり、数もそれなりに存在するが、こんなものに頼る必要のない彼女達が興味を持つとは思えない。
「あ、ヒールの魔道書だ!えーっと、値段はーっと…金貨20枚!?」
「サーシャちゃん、すぐに棚に戻しましょう!」
「20年暮らせるだけの値段でようやくヒール…高ランクの魔法は、とてもじゃないけど怖くて見たくないわ…」
俺も金の使い方を憶えたおかげで、金貨20枚がどれほどのものかは理解できた。が、同時に魔物や植物などの売却価格についてもそれなりの知識を得たため、過去に討伐したものから考えてそれほど高いとは思わなかった。
「怖くて触りたくなくなっちゃった…でも、魔法に関する本は図書館でいいし、もう見るものはないかなー」
「すごいお値段でしたね」
「何かあったら、とてもじゃないけど弁償なんてできないわよ」
どうやらもう見るものはないようで、次の場所に向かうようだ。
次は服飾屋をいくつか見て回るのだったか。時間もそれなりに経過し、そろそろこの楽しい時間や王都とも別れなければならない。今日の思い出もまた、忘れぬように心に刻んでおくとしよう。
自己に対する評価など、結局は他者によってのみ決められる。
自身がどう考えているかは関係ないのだ。




