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壊れた英雄は世界を護る  作者: 江藤直哉
第1章 隠れ里の住人
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プロローグ 壊れた英雄の起床

 初めての作品投稿になります。

 それゆえ、誤字・脱字・衍字・誤用や気になる表現などありましたら、指摘していただければと思います。

 最低でも週に1回の更新を目標に、のんびりこつこつと執筆する予定です。

 宜しくお願いします。

 さらさらと水の流れる音が聞こえる。

 同時に、少女たちの元気な声が響き渡る。


 そこから少し離れた木陰で、1人の少年が眠っていた。

 いつからそこで眠っていたのか、その少年ですらわからない。


 やがて響き渡る声が、少々疲れの混る話し声に変わった。

 その3人の少女達が帰路に着こうとしたとき、その中の1人、黒い髪と黒い眼をした利発そうな少女が木陰で眠る少年を見つける。


「あら?あそこに誰かいるわ」


 他の2人も言われて気付いたようだ。


「ほんとーだ!」


 と、金の髪と茶色の眼をした元気そうな少女が答える。


「いつからいらしたのでしょうか?」


 緑の髪に緑の眼をした落ちついた様子の少女が疑問を口にする。

 ここで彼女達は相談を始めた。このような場所で眠っている人をはじめて見たのだから当然だろう。


「どーするの?ていうか誰?」

「私は見たことがありませんね」

「わたしもないわ。と言うかいつからいたのかしら?」

「遊びに来たときはいなかった気がする」

「では、私たちが遊び始めてからここに来たのでしょうか」


 少女たちはしばらく話し合ったが、いっこうに答えが出てこなかったため直接本人に聞くことにしたようだ。


「ねえあんた」


 と、木陰で眠る少年の肩をゆするものの、まったく反応が返ってくる気配はない。


「どうしましょうか」

「うーん、このままにしておくわけにもいかないと思う」

「そうね、もうすぐ暗くなるし…いくら危険が少ないこの里でも、女の子1人をこんな場所に放って置くのはまずいわね…連れて帰るわ」

「で、どーやって連れて帰るの?」

「皆で運ぶに決まってるでしょ!」

「ではお手伝いしますね」

「うえーやっぱりかぁ…なんかいい方法はないのー?」

「わたしが負ぶって、2人が横から支えればいいでしょ。さ、行くわよ」


 こうして、彼女達は少女と勘違いしたまま少年を家まで運ぶのであった。



 それから3日後、ようやく少年が目を覚ました。

 少年はあたりをきょろきょろと見渡した後、自分の体に目を落としぺたぺたと確認していく。

 ちょうどそのとき、彼を連れ帰った少女達が部屋に入ってきた。


「さーて、今日はどうしてるかなーっと」

「別に今目を覚ますかはわからないでしょ…あら?」


 どうやら彼が目を覚ましたことに気がついたようだ。


「どうやら気がついたみたいね。あんたどうしてあんな所にいたの?」


 少年はその質問に対して首を捻る。そもそもあんな所と言われてもその場所が思い浮かばないのだ。


「憶えてないのでしょうか?」


 少年はこくりと頷く。


「どーいうこと?どこにいたか憶えていないの?あんたは川のそばの木陰で寝ていたんだよ?」


 ここで、少年は初めて言葉を発した。言葉遣いとは裏腹に、優しく人を安心させるような口調だ。


「俺はもともと人目につかない場所で眠っていたはずなんだが…ここは何と言う場所かな?」

「ここはフーリアンの里ですよ。」

「と言うか女の子が『俺』って珍しいわね」

「フーリアン…聞いたことがないな。それに女の子?俺は男に分類されているはずだが…違うのか?」

「「「…えっ!?」」」


 彼女達が驚くのも無理はない。彼は、黒い長髪に少女と見間違えるほどに可愛らしい顔、と言うよりも美少女と呼ぶに相応しい容貌をしているのだ。さらに色白で線が細く、動かなければまるで人形のようである。


「本当に男なの?」

「そのはずだが…?」

「ふえぇ…信じらんない…」


 相当衝撃だったようだ。年齢的にも、多少男女の区別がつきづらい年頃ではあるが、ここまで美少女な男の子を見る機会などそうそうないだろう。


「で、結局なぜあんな場所で寝ていたかはわからないのね?」

「ああ、少なくとも人目につく場所で眠っていた記憶はないかな」

「どうしたものかしら」


 黒い髪の少女が「はぁ…」っとため息をつく。


「そうです!自己紹介でもしませんか?」

「そ-だね、名前も知らないままじゃすっきりしないし」

「それじゃあ…わたしから自己紹介するわ」


 少しでも話を進めるべく彼女達が提案する。

 まずは黒髪黒眼の少女から自己紹介を行うようだ。


「わたしは、サクラ・マイシロよ。サクラって呼んでね。見てのとおり森人族じゃなくて人族だけど、森人族の一家に拾われて育ったわ。あんたを見つけて運んだのは私なんだから、感謝しなさいよ」


 感謝しろとは言っているが、おそらく冗談だろう。森人族でないことをわざわざ明言したのは、種族によって名前の付け方にに特徴があり、人族は貴族でもなければ姓を持たないゆえか。

 次に、金髪茶眼の少女が口を開いた。


「あたしは、サンサーシャ。サーシャって呼んでちょーだい。見てのとーり人族。将来大魔導師になるから、今のうちに仲良くなっておくとお得だよ!」


 元気よく自己紹介する姿はいかにも活発そうだ。その真っ直ぐさは、なにかを極める上ではプラスに働くことことは間違いない。

 最後に、緑髪緑眼の少女がおっとりと話し始める。


「私は、ワカナ・コノエダと言います。ワカナとお呼びください。サクラちゃんと違ってちゃんと森人族ですよ。何か困ったことがあれば、お助けしますね。あ、年はおそろいで皆6歳なんです」


 いかにも優しい皆のお姉さんと言った感じだ。落ち着いた様子がそう見えさせているのだろうか。森人族は耳が長く尖っていることが人族との大きな違いであり、他にも平均身長が高い、運動能力よりも魔法能力への適性が高いと言った特徴がある。運動能力については、基本的に魔法でなんとでもなるため、そこまで欠点にはならないようだが。

 そして、黒髪黒眼の少年に順番が回ってきたようだ。


「俺はナンバーアルファ。アルファやファーストと呼称されていた。種族は人族に分類されている。戦争用に作られたから、殺し合いが得意だ。呼び方は好きにしてかまわない」


 彼女達の表情が凍った。それもそうだ。和やかにお話をするつもりが、戦争や殺し合いなどの言葉が聞こえてくれば当然の反応だろう。当の本人はなんでもなさそうな様子だが。


「戦争用に…作られた…?」

「ころし、あい…?」

「え、えぇっと…ナンバーアルファと言われましたが、それはお名前なのですか?」


 流れを少しでも変えるべく、ワカナが名前について質問する。


「名前と言うよりは番号だね。以前は13番と呼ばれていたけど、方針の変更時にアルファに改められたんだ。だからナンバーアルファだよ」


 彼はさも当然のように答えるが、彼女達にはさっぱりである。

 彼女達はどうしたものかと相談し、結局名前をどう書くのか聞くことにした。

 そうして書かれた名前は、


『No.α』


 であった。


「あら、そう書くのね」

「だったら、ナンバーアルファなんて長ったらしい呼び方じゃなくて、『ノア』でいーんじゃない?」

「そうですね、わかりやすくて読みやすいですし、いいのではないでしょうか?どうですか?」


 彼女達が彼に問いかけると、彼はあっさりと承諾した。


「うん、問題ないよ。これから俺は『ノア』だ、よろしく頼む」


 こうして、彼女達により『ノア』と言う存在が誕生したのであった。



 これは、常識知らずの『ノア』が、自分の「世界」を守るためにゆっくりと世界を歩む物語。

 壊れた彼が夢見るのは、決して壊れることのない「世界」である。

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