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ニーベル国と姉妹

リゲインを倒した大成は、リリーをドルシャー達に任せて、コーリアの頼みで反逆者のリゲイン達をパールシヴァ国へと移送した。


そして、パールシヴァ国に着いた大成は、獣王の提案により収穫祭があるニーベル国へと向かうことになった。

【獣人の国・ニーベル国・夕方】


獣王レオラルドと妃ネイに勧められて、大成はニーベル国に来ていた。


ニーベル国は、獣人の国の首都パールシヴァ国やバニーシロップの名産国のチャルダ国とは違い、城壁や城が一切なく、畑が広大に広がり所々に家が建っており、中央には家や店が密集して建ち並んでいた。

まるで、ちょっとした和な田舎の様な風景が広がっている。



「何というか、懐かしさを感じらせる風景だな」

懐かしい風景に大成は、嬉しそうに辺りを見渡しながら畑と畑の間の細い道を歩いていた。


大成は左を向いて風景を見ながら歩いていると、正面から知っている女の子の声がする。

「ねぇ、メリア。あれって、彗星君じゃない?」

「あ、本当だ」

大成と同じレオ学園で一緒のクラスの猫の獣人の姉妹メアリーとメリアがいた。


姉のメアリーは小さな紙袋を両手で持っており、妹のメリアは両手を挙げて後頭部に当てて大成に歩み寄る。


「これは、メアリー氏にメリア氏。なぜ、ここにいるのだよ?」

大成は、姉妹に振り向いて尋ねる。


「それは、僕達が聞きたいんだけど」

好奇心旺盛な瞳をしている妹のメリアは、ジト目で嫌そうな面持ちで大成を見る。


「ニーベルは、私達の実家なのよ」

笑顔で答えるメアリー。


「わかりやすく言えば、今、僕達は実家に帰省しているってことだよ」


「なら2人は、隣の国からレオ学園に通っていたのかな?」


「レオ学園には寮があるの。僕達は、その寮から通っているわけ」


「ところで、彗星君はリリー様達と一緒にチャルダ国に行ったとお聞きしましたが」


「アハハハ…それが……」

大成は、苦笑いをしながら説明をした。


「うぁ、命を懸けて守るとか格好良い台詞を言ったのに、爆睡して戦闘を寝過ごすなんて、最低以前に男としてどうなの?ねぇ、メアリーはどう思う?」

メリアは、軽蔑した目で大成を見て尋ねる。


「呆れ果てるわね。気まずくなったから、リリー様をチャルダ国に置いたまま先に帰国し、獣王様に気分転換にと言われてニーベルに来るそのヘタレ根性。メリア、こういう時は、男としてじゃなく、屑って言うのよ。どうしようもない屑。覚えておきなさい」

メアリーは、左手を頬に当てながら笑顔を浮かべた。


「メアリー氏、表情と言葉が合っていないのだよ。できれば、もう反省しているから、そんな目で見ないで欲しいのだよ。あと、もし良ければ、この国を案内して欲しいのだよ」


「誰が君みたいな人に、わざわざ案内なんてするもんか!シッシッ、僕達は君に構っている時間はないんだ」

メリアは、右手を軽く数度振りながら即答する。


「はぁ、仕方ないわね。わかったわ、彗星君。私が案内するわ」

「え~。メアリー、こんな奴ほっとこうよ」

仕方なしという感じにメアリーはため息を吐きながら了承したが、妹のメリアは猛反対した。


「メリア、獣王様も言っていたじゃない。彗星君は、どんなに救いようがない屑でも魔人の国との親睦を深めるために来ているのよ。最低限でも良いから、できる限り優しくしないといけないわ。例え、生理的に無理でもね」

メアリーは、笑顔を浮かべていてが威圧感が漂っていた。


「案内して貰えるから助かったのだが、それ以上にとても傷付いたのだよ」


「あら?何か不満でも?」


「いや、何もないのだよ」


「う~、メアリーが言うなら仕方ないか…。で、君は何処に行きたいの?」


「先ずは宿を案内して欲しいのだよ。お勧めとかは…」

「ないわ」

「ないね」

メアリーとメリアは、悩むことなく即答で答えた。


「え!?どういうことなのだよ?」


「はぁ~、君は獣王様から話を聞いているよね?ニーベルは明日から収穫祭が始まるんだよ?収穫祭を楽しみして来ているのは君だけじゃないんだよ。だから、毎年、宿屋で泊まるなら最低でも1ヶ月前に予約しないと無理なんだ」


「ということは、野宿決定なのか…」


「君に、お似合いだね」


「はぁ、この際だから仕方ないわ。ニーベルにいる間、私達の家に泊まって」


「え~!メアリー。考え直そうよ。だって、同い年で男の子だよ!一緒の家で暮らすなんて、僕は嫌だよ」


「仕方ないじゃない、彗星君を野宿させる訳にはいかないわ」


「う~」

頬を膨らませるメリア。


「彗星君、ついて来て私達の実家に案内するわ。ちょうど私達も帰るところだったの」


「本当に助かったのだよ」

こうして、大成はメアリーとメリアと一緒に2人の家に行くことになった。




【ニーベル国・姉妹の実家】


「「お帰りなさいませ、メアリー様、メリア様」」

姉妹に続くように大成が玄関に入ると、玄関で待機していたメイド3人が一斉に頭を下げた。


「ただいま戻りました」

「ただいま!」

「お邪魔します」

メアリーは礼儀正しく挨拶するが、妹のメリアは手を挙げて大きな声で挨拶し、大成は会釈した。


「メアリー様、メリア様。失礼ですが、そちらのお方は?」


「最近魔人の国から来たクラスメイトで、わざわざパールシヴァから収穫祭を見に来たみたいなんだけど、泊まる宿屋がなくて困っていたから、メアリーが可哀想ということで泊めることにしたんだよ」

不満な顔でメリアは、大雑把に説明した。


「ねぇ、メアリー。一応、お父様とお母様に報告する?」


「そうね、ところで、お父様とお母様は?」


「寝室で安静になされておられます」


「わかったわ、ありがとう。彗星君、ついて来て」

大成は、メアリーとメリアについて行く。




【姉妹の両親の寝室】


部屋の前に辿り着いた大成達。

メアリーは、ドアをノックする。


「メアリーです」


「入って良いわよ」


「失礼します」

女性の声が聞こえたので、メアリーはドアを開けた。


1つのベッドにメアリーとメリアの両親は濡れタオルを額に当てた状態で横になっていた。

その両サイドに2人のメイドが看病している。


「お父様、お母様、薬を持って参りました」

メアリーは、紙袋をメイドに渡した。


「ありがとう、メアリー、メリア。2人共、せっかく帰って来たのだから、お使いをしなくっても良かったのよ」


「いえ、お母様。私達が手伝いたかったので気にしないで下さい」


「そうだよ!この薬で、早く元気になってね」

メアリーは笑顔を浮かべ、メリアは母側のベッドに両手をついて身を乗り上げる。


「ところで、お前達の後ろにいる少年は誰だ?まさかとは思うが…」

姉妹の父親は、大成の姿に気付いて怪訝な表情になった。


「ウフフ…。あなた達の彼氏なの?」

父親とは真逆に、母は嬉しいそうにメアリーとメリアに尋ねる。


「違います!」

「違うよ!」

メアリーとメリアは、大きな声で否定する。


「……ということで、家に招待することにしましたが…」

メアリーは説明した。


「もちろん、良いわよ。メアリーの判断は間違ってないわ。優しく育ってくれて、母さんとても嬉しいわ」

笑顔で話す母の言葉で、気まずい表情だったメアリーの表情が笑顔が溢れた。


「良いな、メアリー。ねぇ、お母様。僕は?」


「メリアは、いつも明るく元気に育ってくれて嬉しいわ」


「エヘヘ…」

メリアは、左右の手を両頬に当てて笑顔を浮かべた。


「ゴッホン。だが、1つ条件がある。その少年は、お前達とは違う部屋に泊まらせなさい。ちょうど、今、客室が空いているはずだ」

父は、わざと大きな咳をして条件を出す。


「何を言っているのですか!?お父様。勿論です」

「当たり前だよ!お父様は、一体何を考えているんだよ」

凄みのある笑顔で答えるメアリーと軽蔑した目で見るメリア。


「わ、わかれば良い」

娘達の威圧感を前にした父は言い淀む。


「ありがとうございます、助かりました。あと、代金は払いますので、おいくらでしょうか?」


「いらないわ。あなたは、娘達の大切なお友達なのだから、気にしないで」


「しかし…」


「少年よ、何度も言わせるな。妻がいらんと言っているのだから気にするな」


「ありがとうございます」

大成は、深く頭を下げて感謝した。


「彗星君、部屋に案内するからついて来て」

メアリーとメリアは、大成を客室へ案内する。




【1階・客室】


「この部屋を自由に使って」

姉妹から案内された客室は広く、畳はないが奥側に大きな窓があり、その窓際付近には庵があって和風な感じがする部屋だった。


「ありがとうなのだよ」


「夕御飯は、何か要望とかある?」


「いや、お礼といってはなんだが僕が作るのだよ」


「え!?君、料理できるの?」


「多少はだけど、できるのだよ。メアリー氏は料理ができそうだが、メリア氏はどうなのだよ?」


「失礼な!も、もちろん!ぼ、僕だってできるよ!いつも、メアリーの作った料理を味見しているもん!」


「メリア氏、味見するだけなら誰でもできるのだよ。それは、料理ができるとは言えないのだよ」


「なっ!」


「フフフ…」


「あっ!メアリーも笑わないでよ!」


「ごめんね、メリア。あと彗星君、お客のあなたに任せっきりにはできないから私も手伝うわ」


「それは、とても助かるのだよ」


「メアリーが手伝うなら大丈夫だね」


「それは、どういう意味なのだよ」


「もちろん、言葉通りだよ。それより、早く買い物に行かないと明日から収穫祭が始まるから食材がなくなっちゃうよ!」

メリアは慌てながら、メアリーと大成の手を取る。


こうして、大成達は買い物に行くことにした。




【商店街】


ニーベル国の中央にある商店街に着いた大成とメアリーとメリアの3人は、会話しながら歩いていた。


「う~、やっぱり明日から収穫祭だから殆ど食材が売り切れになっているね」

唇を尖らせるメリア。


「そうね…」

メアリーは深刻な表情で店の品を見ていた。


「仕方ないのだよ。でも、やはり魔人の国では見たこともない食材が多いのだよ」

大成は表情が暗くなっている2人とは違い、初めて見る食材に興味が湧いて目を輝かせている。



「おっ!メアリーちゃん、メリアちゃん。こんばんわ」

肉屋の店主は、姉妹に声を掛けた。


「「こんばんわ」」


「おっ!初めて見る少年だな。もしかして、メアリーちゃんとメリアちゃんの彼氏かな?」


「「なっ!?」」


「アハハハ、冗…」


「流石、店主。見る目があるのだよ」


「え!?」

店の店主は冗談で言ったつもりだったが、大成の言葉を聞いて驚き、慌てた表情ですぐにメアリーとメリアに視線を向けた。


「違います!」

「違うよ!」

姉妹は慌てて否定した。


「君は、突然、何を言うんだよ!おじさんが信じてしまうだろ!」


「ウフフフ…、本気にしないで下さい。屑の戯言なので」

メリアは大成の頬を思いきり引っ張り、メアリーは口元に手を当てて笑顔を浮かべたまま大成の足の甲を踵で踏んだままグリグリする。


「じょ、冗談だったのだよ」

涙目で答える大成。


「冗談でも、言って良いことと悪いことがあるんだよ!」


「フフフ…」


「あの、お2人さん。自分は冗談ってわかったから、その少年を許してやってくれないかな?な?」

大成の姿を見た店主は、あまりにも気の毒そうだったので慌てて止める。


「ところで、ねぇ、おじさん。美味しい肉とか、まだ残っていない?」


「ごめんよ、メリアちゃん。明日から収穫祭が始まるから、めぼしい肉は全て完売してしまっているんだ。残っているのは、この筋が多い安い肉しかないんだ」


「そっか…」


「仕方ないわね。肉料理はやめて魚にしましょう」


「え~、昨日も魚だったよ」


「仕方ないじゃない」

メリアを宥めるメアリー。



「申し訳ないのだが、その肉を2kg売って欲しいのだよ」


「良いのか?少年」


「「ちょっと…」」


「大丈夫、問題ないのだよ」

慌てる姉妹だったが、大成は気にしないで注文した。


「売れ残りだからサービスだ。全部持っていけ」


「それは、とても助かるのだよ」


「毎度!また、来いよ少年」

店主は、大成に肉が入った紙袋を渡した。



「本当に大丈夫なの?その肉、筋が多いから噛みきれないよ。メアリーも何か言いなよ」


「そうね、今から煮込んでやわらかくするとしても夕御飯には間に合わないわよ」


「大丈夫なのだよ。それより、他にも欲しい食材があるから見て行くのだよ」

大成は笑顔を浮かべて頷き、大成達は次々に店を回り食材を購入していった。



「ここにも置いてなかったのだよ」


「ねぇ、あと何を探しているの?」


「肝心のワインが何処にも売っていないのだよ」


「君は何を考えているんだ。ワインは大人じゃないと飲んだらいけないんだよ!」


「メリア、料理に使うのよ」


「え!?」


「メアリー氏の言う通りなのだよ。アルコールは加熱すると蒸発するのだよ。まぁ、料理の場合はすぐに蒸発はしないが煮込み料理の場合、時間掛けるから蒸発するのだが」


「そ、そんなこと、も、もちろん知っていたし!」


「ワインなら、家庭で作ったのがありますよ」


「フフフ…。しかも、それがただのワインじゃなんだ!僕達の家系は、あのワインで有名なブランド、【キャッツ・ナイト・フォール】なんだ!」

両腰に手を当てたまま胸を張って自慢するメリア。


「それは凄いのだよ!では、早速、帰って料理を始めるのだよ」

大成達は、家に戻ることにした。




【姉妹の実家・キッチン】


商店街から帰って来た大成達は、買った食材とワインを持ってキッチンにいた。


「じゃあ、早速、始めるのだよ。まず、メアリーは芋を乱切りにして面取りして欲しいのだよ」


「わかったけど、何故わざわざ面取りするの?」


「先端部分は火が通ると崩れてしまうから、面取りは煮崩れ防止になるのだよ。あと、煮崩れ防止と言えば、おでんはコンニャクを始めに入れるのが鉄則なのだよ。コンニャクには、煮崩れ防止の成分があるのだよ」


「おでんっていう料理は、どんな料理かは知らないけど。わかったわ」

了承したメアリーは、早速準備に掛かる。


「あのさ、僕は何をしたら良いの?」


「もちろん、メリアは味見だよ」


「君!僕を馬鹿にしているでしょう!僕だってやればできるんだから!」

メリアは激怒した。


大成は無言で姉のメアリーに視線を向けると、首を左右に振ってできないと伝える。



「なら、野菜を洗って茹でて欲しいのだよ。茹でる時は、塩を少々入れるのだよ。野菜が色鮮やかになるのだよ」


「何か、馬鹿にされている様な気がするけど、任せて!」

やる気を出したメリアは、袖を捲りあげた。



メアリーとメリアに指示を出した大成は、筋が多い肉を自家製のヨーグルトに浸す。


時間を置き、鍋に肉を入れて料理を始めた。


途中でメアリーの芋を入れ煮込み、最後にメリアの野菜を入れて少し煮込んでビーフシチューができた。


「できたのだよ!」


「う…。何か、茶色だよ?これ本当に食べれるの?」

メリアは、心配する。


「もちろんなのだよ。とても美味しいから味見をしてみるのだよ」

大成はお玉で少しビーフシチューのルーを掬い小皿に移しメリアに差し出す。


「え~!僕が味見するの!?…わ、わかったよ」

最初は嫌がっていたメリアだったが、大成の笑顔を見て小皿を受け取って渋々と味見する。


「大丈夫?メリア」


「う、嘘…。美味しい!メアリー!これ、とても美味しいよ!」

ルーを少し味見をしたメリアは、あまりにもの美味しさに目を輝かせた。


メアリーも大成からルーが入った小皿を貰って味見をした。

「本当だわ、とても美味しい。でも、あの筋が多い肉は大丈夫かしら?煮込む時間足りていないけど」


「食べてみるのだよ」

大成は、お玉で肉を掬い上げて爪楊枝で刺してメアリーに渡した。


メアリーは、右手で受け取って肉を食べる。


「し、信じられない、口の中で溶けていくようなほど、やわらかいわ」

メアリーは、左手を頬に手を当てて幸せそうに笑顔を見せる。


「でも、なぜ短時間でこんなにやわらかくなったの?」


「それは、これを使ったのだよ」

大成は、自家製のヨーグルトが入った瓶をメアリーに見せた。


「それは?」


「ヨーグルトと言って、牛乳を発酵させた物だよ」


「そんなものもあるのね」


「今回は酸味が合う料理だったからヨーグルトを使ったけど、他にも蜂蜜やパイナップルなどでも肉をやわらかくできるのだよ。ちなみに揚げ物は、ヨーグルトを使うと焦げるから、ヨーグルトの透明な液だけを使うと焦げ防止になるのだよ」


「そ、そんなことよりも、僕も食べたい!」


「わかったから、落ち着くのだよ」


「お・い・し・い~!」

肉を食べたメリアも、左右の手を頬に当てて幸せそうに笑顔を浮かべた。


「早速、皆に食べて貰おうよ!」


「ちょっと待つのだよ。1度冷まして寝かして味を深めて。再度、温めてから皆に食べて貰うのだよ」


「え~!もう十分に美味しいから良いじゃん」


「メリア、手間を掛けるのが料理なのよ」


「う~、メアリーが言うなら…」


「ところで、1つ聞きたいことがあるのだよ」


「美味しい料理作ってくれたから、答えられることなら教えてあげても良いよ。でも、ぼ、僕達の…その…」


「ん?」


「だから、そ、その僕達のス、スリーサイズは教えないからね」

顔を真っ赤に染めるメリア。


大成は、メリアの言葉で自分がリリーのスリーサイズの話題をしたのを思い出して慌てる。

「ち、違うのだよ。2人の両親の病は、いつからなのと、治るのかどうかを聞きたいのだよ」



「お父様とお母様は、僕達を守るために【アルティメット・バロン】と戦って毒を受けたんだ。お医者様達に診て貰ったけど、猛毒で手をつけられないと言われてたんだ。そこで、この国で1番の調合師に診て貰って、毒は調合して貰った薬で完治したんだけど。呪いの効果もあったみたいで、呪いの方は強力で薬で少し和らげる程度しかできなかったんだ」


「呪いなら、旅をしている人間に【サンライズ】が使えるかを聞いて、治して貰えれば良いのだよ」


「ええ、もちろん試したわ、3回。だけど、【アルティメット・バロン】の魔力が高いから【サンライズ】使える人なら誰でも良いという訳ではなかったの。【サンライズ】しても効果はなかったわ。唯一、治すことができるのは、敵対している人間の国の聖剣【慈愛の女神】だけだと思うの」


(奈々子か。確かに奈々子ならできるだろうな。しかし、あのロリコン伯爵は異世界に来てもあっちこっちで問題ばかり起こしているな)

姉妹の話を聞いた大成は、ため息を吐く。


「美味しい料理できたから、お父様とお母様がこれを食べて少しでも元気になると良いな」


「そうね…」


「もう1度、2人の両親に合わせて貰いたいのだよ。もしかしたら、僕が治せるかもしれないのだよ」


「「え!?」」

大成の言葉を聞いた姉妹は驚いた。


「その代わり、条件がある」

大成は、姉妹に条件を出した。




【姉妹の両親の寝室】


姉妹に案内されて大成は姉妹の両親の寝室におり、姉妹の両親は上半身を起こしていた。


「メアリー、メリア。とても美味しそうな匂いね」


「お母様、とても美味しいんだよ!だから、お父様もお母様も、これを食べて元気になってよ!」


「ええ」

「ああ」

両親は、笑顔を浮かべる。


「その料理は少年が作ったのか?」

姉妹の父親は、娘のメアリーとメリアの背後にいる大成に視線を向ける。


「いや、3人で作ったのだよ。こんなことしか、僕はできないのだよ」


「少年、十分だ」


「その前に、お父様、お母様。彗星君が2人の呪いを解除できるかもしれませんので、その…」


「わかったわ。良いでしょう?あなた」


「お前が言うならな。ん?どうした?メアリー」

父親がメアリーを見ると呆然としていた。


「いえ、前はもう治らないから、もういいと仰っていましたから、こんなにスムーズに了承してくれるとは思っていなかったので」


「ああ、そのことか。獣王様が魔人の国へ行って、わざわざ連れて来られたんだ。その少年は何か特別なのだろう」

父親は、言いながら妻側に移動した。


「では、失礼するのだよ」

大成は姉妹の両親に歩み寄り、左右の手を両親の額に当て、魔力流して容態を把握する。


「なるほど、毒は完全に治っているのだよ。あとは呪いだけなのだよ」

大成は、姉妹の両親から手を離した。


「先に約束して欲しいことがあるのだよ」


「何だ?」


「1つ、僕のことやこれから起こることは誰にも言わずに内緒にすることなのだよ」


「わかった」


「では、始める。グリモア・ブック」

大成は眼鏡を外して膨大な魔力を解き放ち、グリモア・ブックを唱えると手元に本が現れた。


大成の膨大な魔力を肌で感じたメアリー達は、呆然とする。


「なんて、魔力なの…?」

「でも、膨大な魔力なのに威圧感が全くないよ」

メアリーとメリアは、驚きながら呟く。


「サンライズ」

大成がサンライズを唱えた瞬間、本が輝き出して部屋を白い光で部屋を照らした。


「くっ、眩しい。今までのサンライズとは全く違う」

「そうね。だけど、優しい光だわ。とても暖かくて優しく包まれているみたい」

姉妹の父親は手を目元に当て、母親は光に身を任せた。


光は次第に終息していき、別の部屋にいたメイド達3人が慌ててやって来た。


「大丈夫ですか!?」


「ああ、大丈夫だ。問題ない」

姉妹の父親は、手を前に出してメイド達を止めた。


「これで、治ったはずだ」


「お父様、お母様、体調は如何ですか?」

メアリーは、不安な面持ちで両親に尋ねる。


「大丈夫よ。体が、嘘のように軽くなったわ」


「そうだな。感謝するぞ、少年」


「君は、一体何者なの?」


「メリア!」


「だって、気になるもん!メアリーだって、気になっているでしょう?」


「それは…」


「はぁ、秘密にしてくれるなら別に教えてやっても良いけど」


「大丈夫!僕は口が堅いから!」

左右の手を両腰に当てて胸を張るメリア。


「魔人の国では、魔王修羅と言われている」


「「え!?」」

メアリー達は驚きの声をあげ、大成はこれまでのことを話した。



「ハハハ…。修羅様も大変だね」

メリアは、大成の頭を撫でる。


「こら、メリア。修羅様に対して馴れ馴れしいわよ」


「別に良いと思うけどな。だって、ここは獣人の国だよ。それに、修羅様は今は魔王様じゃないよ」


「それでもよ」


「メアリー、気にしないで良いよ。僕は気にしないから。それに、気を使われるのは苦手だし、普段通りに接して欲しい」


「そうですか?あ、あの、その本当にすみません」


「ん?何が?」


「私ったら、その…彗星君のことを、屑とか言ってしまって」

メアリーは、恥ずかしそうに顔を赤く染めて謝罪した。


「き、気にしていないよ」

頬をひきずりながら笑顔で答える大成。


「それより、皆に1つ聞きたいことがあるのだけど。獣王様からラルドムとメリーゼって人がいたら助けてやって欲しいと頼まれたのだけど」


「ククク…」

「フフフ…」

姉妹の両親が小さく笑う。


「ん?」

頭を傾げる大成。


「ハハハ…。君は本当に面白いね。目の前に居るじゃない。君が言ったラルドムとメリーゼは、お父様とお母様のことだよ」


「え!?」

大成は、姉妹の両親に視線を向ける。


「そういえば、自己紹介がまだだったな。俺はラルドム。隣にいる妻がメリーゼだ」

「よろしくね」

ラルドムは笑いながら自己紹介し、メリーゼは笑顔を浮かべた。



「ねぇ、それより、料理が冷めないうちに食べよう」


「そうね、メリアの言う通りだわ。せっかく作ってくれたのだから、温かいうちに食べましょう」

メリーゼは両手を合わせて笑顔を浮かべ、大成達はリビングへと向かった。




【リビング】


リビングには大きな長方形のテーブルがあり、大成やラルドム達が席につき、メイド達は大成達が作ったビーフシチューを運んでいる。


「せっかくだから、あなた達も一緒に食べましょう」


「「え!?」」

メリーゼの提案に、メイド達は驚きの声をあげる。


「妻がそう言っているんだ。さぁ、テーブルにつきなさい。娘達が作った料理が冷めてしまうぞ」


「「は、はい!」」

メイド達は大きな声を出し、自分達で料理を持ってきて席についた。


「準備できたみたいわね。彗星君、お願いしても良い?」


「……わかりました。では、ラルドムさんとメリーゼさんが健康になったことを祝杯し乾杯!」


「「乾杯!」」」

大成は乾杯の挨拶し、皆は大きな声で乾杯した。


「ん!?これは…」

「とても美味しいわ!」

ラルドムはスプーンで1口食べて1度手を止めて感嘆し、メリーゼは左手を頬に当てて笑顔を浮かべた。


「「お、美味しいです!」」

メイド達も、笑顔を浮かべて食べる。


「でしょ?僕達が作ったんだよ!」

胸を張るメリア。


「はぁ、メリア。殆ど彗星君が1人で作っていたでしょう」


「そんなことないもん!今回、僕は味見以外に野菜を洗って茹でたんだよ」


「頑張ったわね」


「流石、俺の自慢の娘達だ」

メリーゼとラルドムは、メアリーとメリアを褒めた。


「ええ、とても助かりました」

大成も肯定する。


「あの、明日の収穫祭に、この料理を追加で出してみては如何でしょうか?」

メイドの1人が提案した。


「まぁ~。それは、とても良い提案ね。あ、でも、一応、許可を取らないといけないわ。彗星君、良いかしら?」


「ええ、もちろん良いですよ。材料もまだ沢山ありますし、皆さんに作り方を教えますよ」


「ありがとう、彗星君。きっと、国の皆も喜ぶわ」

メリーゼは、両手を合わせて左頬に当てた。

話が進まず申し訳ありません。

次回、収穫祭です。


もし良ければ、次回作も御覧下さい。

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