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チャルダ国と銀狐のコーリア

獣王の依頼で、大成はオタクの変装をして彗星と名乗り、獣人の国の姫であるリリーの護衛のために獣人の国へ行った。


大成は獣王に案内され、リリーが通うレオ学園に行ってリリーと再開するが、学園の生徒であるヒツジの獣人ヒースとタヌキの獣人ダラスと決闘することになった。


大成は、警戒されない様に戦いの素人を演じながら2人を倒した。


その後、リリーと一緒にバニーシロップの名産地で有名なチャルダ国へと向かうことになった。


【獣人の国・ネーブルの森・チャルダ国付近・昼】


森の中を物凄いスピードで駆け抜ける複数の影があり、野生の動物達は逃げていく。


双剣を腰に掻けているリリーを先頭に、大きなリュックサックを背負っている大成とドルシャーが続き、大成達の場所からは見えないが、更に離れた後方に、同じく大きなリュックサックを背負った【セブンズ・ビースト】の各副隊長達が息を切らしながら駆け足で後を追いかけていた。


大成達は、パールシヴァ国から出国して一度も休まずに走っている。


なぜ、パールシヴァ国から休まずに走っているのかというと、リリーはチャルダ国にいる親戚のコーリアに少しでも早く会いたいがために走っており、獣王・レオラルドからリリーの護衛任務を任されている大成やドルシャー達も走らざるを得なかった。


「あっ、見えたわよ!彗星。あれがチャルダ国よ。綺麗でしょう?」

森の中からチャルダ国が見えたので、リリーは大成に教えた。


「おお、あれがバニーシロップの名産国で有名なチャルダ国…。花が咲いて、とても綺麗なのだよ」

大成は、右手を額に当てながらチャルダ国を見て感嘆する。


チャルダ国は広大な土地を保有しており、城も大きく立派だが、それよりも、大成を感動させたのは城壁内に白色の花を咲かせているバニーシロップの花畑が広がっていたことだった。


「でしょう」

嬉しそうに笑顔を見せるリリー。


「ねぇ、ドルシャー。私、先に行っているわね」

双剣しか持っていないリリーは、笑顔を浮かべて大きなリュックサックを背負っているドルシャーと大成に伝えて、更にスピードを上げる。


「ハァハァ…ま、待って下さい、リリー様。危険です!」

「大丈夫よ、ドルシャー。もうチャルダ国は目の前だから!」

息を切らしているドルシャーは、右手を前に出して止めようとしたがリリーは止まらず、あっという間にリリーの姿が見えなくなった。


「ハァハァ…。す、彗星殿、申し訳ありませんが、リリー様を追って頂けませんか?」

ドルシャーは申し訳なさそうな表情で、大成に依頼する。


「わかりました」

大成は、嫌な顔をせずに笑顔で了承して姿を消した。




【チャルダ国・チャルダ城】


「「お待ちしておりました、リリー様」」

チャルダ国の門番4人が一斉に頭を下げる。


「あなた達も、元気そうで良かったわ」


「あのリリー様、ところで…」


「ん?ええ、護衛役のドルシャー達は、後で来るわ」


「いえ、そうではなく、リリー様の後ろに居られる変な服装をしている方は、リリー様のお知り合いなのですか?」

大成の服装を見た門番達は槍を握り締め、大成を警戒をしながらリリーに尋ねた。


「えっ!?きゃっ、彗星。ど、どうして、あなたがここに居るのよ!」

後ろに振り返ったリリーは、置き去りにしたはずの大成がいたので驚いた。


「リリー様が一人で先に行くから、僕が追うことになったのだよ」


「追うことになったって、あなた、その大きなリュックを背負ったままの状態で私に追いついたというの!?しかも、パールシヴァから休まずに走って来たのに、どうして息が切れていないのよ!」


「体力だけなら、誰にも負けない自信があるのだよ」


「体力に自信があるって言ってもね、限度があるわよ…。一体、どんな体力しているのよ…。はぁ~、まぁ良いわ。それより、早速、入国しましょう」

呆れたリリーだったが、早く親戚のコーリアに会いたかったので、先に進むことにした。



大成とリリーはチャルダ城の門を潜ると、微かだったがバニーシロップの甘い香りが漂ってきた。


チャルダ国内は、門から遠く離れた城まで土と砂で固められた道が一直線に幅広く伸びており、左右には白色の花を咲かせているバニーシロップの花畑が一面に広がっていた。


その花畑を沿うように煉瓦でできた幅広い側溝が作られていて、水は透き通って緩やかに流れており、その水の中をメダカみたいな小さな魚が気持ち良さそうに泳いでいる。


側溝の所々に人が渡れる様に、木製のブリッジ状の形をした橋が架けられていた。



「凄いのだよ!やはり、これ全てがバニーシロップの花なのだよ」

大成は、大好物のバニーシロップの花畑を見てテンションが上がる。


「ええ、そうよ。そんなに喜んでくれるなら連れてきて良かったわ」

リリーは、大成の喜んでいる顔を見ていると嬉しくなり笑顔を浮かべた。


そして、大成とリリーはバニーシロップの花畑を見ながら幅広い道を通り、城へと向かう。




【チャルダ国・街】


大成とリリーは、城を目指して歩を進めていると花畑が終わり、代わりに左右には家や様々な店が建ち並んでいる。


進んで行くと、ピンクと白で強調された雑貨屋の前に、チャルダ国の獣人達が集まっており人だかりができていた。


「ん?何だか人だかりができているのだよ」

大成とリリーは人だかりに近付いていき、人だかりに視線を向けると、人だかりの中央に銀狐の女性がいた。


「あら、リリーちゃん。こんにちわ、待っていたわ」

銀狐の女性がリリーに気付いて、笑顔を浮かべながら手を小さく振る。


「こんにちわ、コーリアさん、皆さん」


「お、リリー様だ!」


「「こんにちわ!リリー様!」」

チャルダ国の獣人達も、リリーに気付いて挨拶をして囲む。


「ん?もしかして…リリーちゃんの隣にいるその子は、リリーちゃんの彼氏…なの…?」

コーリアは大成の顔を見て嬉しそうに話したが、大成のオタクの服装を見てドン引きした。


「そうなのだよ」

大成は、迷わずに大きな丸渕眼鏡を少し持ち上げながら自信満々に即答する。


「リリーちゃんの好みって、何ていうの…。その…そう、独特なのね…」

口元に手を当て気の毒そうな表情をするコーリア。


「ち、違います!コーリアさん!誤解です!勘違いしないで下さい!ちょっと彗星、あなたは黙っていて、あなたが変なことを言うから誤解されたじゃない!本当に違うんです。えっと、彗星は、私達獣人と友好関係を深めるために魔人の国から来ているだけです。連れてきたのは、バニーシロップで有名なこの国に一度、行ってみたいと言っていたからで」


「そうなの?魔人の国の代表みたいだけど、その子は人間でしょう?それに、見た目はアレだけど、相当の実力者だわ。というよりも、獣王様やネイ様。ううん、それどころか、信じられないかもしれないけど、伝説に名高い【漆黒の魔女】って言われているリーエ様よりも強いわよ。完全に化け物染みているわ」

コーリアは、大成をジッと見つめて魔力感知をして警戒を強める。



「コーリアさん、流石にそれはないですよ。彗星の実力は魔力値2で戦闘技術も未熟で殆ど素人と変わらないです」

笑いながら否定するリリー。


「酷い言われようのだよ」

(凄いな、魔力は勿論抑えているし、動作も一般人と変わらない様に演じているのに気付くなんて…。本で読んだことあるけど、銀狐は九尾と同じく幻の種族で、九尾より魔力はないけど魔力感知能力が他の種族よりも高いと記載されていたけど、高いというよりもずば抜けているな)

苦笑いを浮かべた大成だったが、内心では冷や汗を流すと共にコーリアの魔力感知に感嘆していた。


「事実でしょう」


「ハハハ…」

愛想笑いで誤魔化す大成。


「そうなのね…」

コーリアは、リリーの言葉を信じずに疑う様な目で大成を見つめていた。



その時、リリーと大成の後を追っていたドルシャーが追い付いた。


「ハァハァ…。ここに居られましたか、リリー様。身勝手な行動は慎んでもらいたい。ん?これは、コーリア様。今回も宜しくお願いします」


「ええ、別に構わないわ。ところでドルシャー、この子のことを教えなさい」

ドルシャーが話し掛けても、コーリアは大成から視線を外さずに、ドルシャーが誤魔化さない様に威圧感と魔力を醸し出した。


コーリアが放つ威圧感と魔力によって、周囲の大気がビリビリと圧迫し、周りの獣人達は息を呑みながらたじろぐ。


(流石、コーリア様だ。既に彗星殿の実力を見抜いておられる)

「リリー様、せっかくの機会ですので皆さんに挨拶をされて来てはどうですか?」

ドルシャーは、内心で感嘆しながら提案した。


「そ、そうね。せっかくの機会だし、そうさせて貰うわ」

気まずい雰囲気を変えるためにドルシャーの提案を賛同することにしたリリーは、心配な面持ちで大成を見ながら獣人達とその場から離れる。


「お前達は、リリー様の護衛を頼む」

「「ハッ!」」

ドルシャーは、後から遅れて来た副隊長達にリリーの護衛する様に指示を出し、副隊長達は了承して姿を消した。



「彗星殿、ここはコーリア様には真実を伝えた方が宜しいかと」

ドルシャーは、リリーの姿が見えなくなったことを確認して大成に話し掛けた。


「そうですね、今までのご無礼、大変、申し訳ありません、コーリア様」


「何か、複雑な事情があるみたいわね。ここで話を聞くよりも城で聞きましょうか」


「助かります」

コーリアと一緒に大成とドルシャーは、チャルダ城へと向かった。




【チャルダ城・玉座の間・夕方】


大成、ドルシャー、コーリア、それに玉座の間に向かう途中でザニックと出会い、話に参加して貰うことにした。


「あの、今も信じられないのですが彗星殿は、この前、ネーブルの森で私とリリー様を助けて下さった命の恩人なのですよね?」

大成の服装を見たザニックは、確かめる様に尋ねる。


「ええ、合っています。グリモア・ブック、アクア」

大成は苦笑いを浮かべながら、グリモア・ブックを召喚して水魔法アクアを唱え、目の前に大きな水の塊を作り顔を突っ込んで頭を洗い、髪をラナミで青色に染めていた塗料を流し本来の黒髪に戻し、大きなリュックサックからローブを取り出して羽織り、フードを深く被った。


「これで、信じて貰えますか?」


「ええ、ですが、どうしてそんな格好をなさっておられるのですか?」


「これには色々と深い事情がありまして、まずは自己紹介からしましょうか…」

乾いた笑顔を浮かべた大成は、自分が魔王修羅だということや獣人の国へ来た理由、そして変装をしている訳などを説明した。



「信じられません。あなたが、いえ、あなた様が、あの魔王修羅様なのですか!?ですが、魔王修羅様はシルバー・スカイ事件で死んだはずです」


「……なるほどね。あなたが魔王修羅なのね。それなら、納得できるわ」


「コーリア様は、信じるのですか?」


「ええ、彗星君の瞳を見ればわかるわ。真っ直ぐで全く濁っていないわ。それに、信じるのも何も、彗星君は今も完璧に魔力を制御して自身の強さを隠しているから、あなた達にはわからないと思うけど、誰よりも魔力感知能力が優れている私にはわかるの。内に秘められた彗星君の魔力は禍々しく、とても冷たい、そして、闇の様に底が見えないほど膨大で、それどころか、魔力感知しているこっちが飲み込まれそうになって正直恐いわ。こんなこと、初めての経験よ」

あまりにもの恐怖で体の芯から震えるコーリアは、大成の魔力を感知するのをやめた。


「それほどなのですか?」


「ええ、おそらく、彗星君の実力なら1人でも私達獣人の国を制圧できると思うわ」


「それほどに…」

息を呑むザニック。


「でも、本当に彗星君が味方で良かったわ。心強いし、彗星君にならリリーちゃんの護衛を安心して任せられるから」


「信じて頂けて嬉しいです。そこで、コーリア様、ザニックさん、お二人にお願いがあるのですが…」


「わかっているわ。このことは皆に内緒にして、あなたを呼ぶときは彗星君って呼べばいいのでしょう?」


「はい、話が早くって助かります」


「ですが、なぜ皆に秘密なのですか?秘密にするのは、リリー様だけで良いのでわ?」


「はぁ~、ザニック、あなた馬鹿ね。信じたくはないけど、裏切り者が居るかも知れないからよ」


「~っ、わかりました」

裏切り者がいると信じたくはなかったザニックだったが、1度襲われたことがあったので納得した。


「感謝します」

大成は、目を瞑りながら会釈する。



「では、これからのことなのですが…」

「ドルシャーさん、話は後にしましょう」

2人に理解して貰えてホッとしたドルシャーは、話を進めようとしたが、大成から止められた。


「なぜですか?彗星殿」

「そうです、ドルシャー様が正しいと思います。今のうちに話し合った方が良いかと思いますが」


「フフフ…。この部屋は、防音なのに良く気付いたわね。流石、彗星君。それに比べ、ドルシャーとザニックはまだまだね」


「何のことですか?」

頭を傾げながらドルシャーが尋ね、ザニックも頭を傾げる。


「こちらに、リリー様が向かって来られています」

大成の言葉と同時にドアをノックする音が聞こえた。


「リリーです」


「入って来て良いわよ。リリーちゃん」


「失礼します」

リリーはドアを開け、1度会釈して部屋に入る。


「リリーちゃん、前から言っているけど、わざわざ確認や会釈しないで良いわよ」


「いえ、それはできません」


「まぁ良いわ。そうだ!リリーちゃんに渡したい物があるの。リリーちゃんは、もう13歳になっているでしょう?」


「はい」

確認したコーリアは、中央の壁に飾られている自分の似顔絵が描かれている絵に歩み寄る。


「リリーちゃんも許嫁を決める年頃になったから、これを渡したかったの」

コーリアは、絵の額を持上げて壁に埋め込まれている魔石に手を当て魔力を流すと壁が動いて小さな小窓ぐらいの大きさの空間が現れた。


そこから、小さな木製の古びた長方形の箱を取り出してリリーに渡した。


「こ、これは…」

話を聞いて察しがついていたリリーだったが、確認のためにゆっくりと箱を開ける。

箱の中には、紅い宝石がついた金と銀の指輪が入っていた。



「リリーちゃんは、もう知っていると思うけど、私達、銀狐族に代々伝わる秘宝エンゲージ・リングよ」


「本当に頂いて、宜しいのですか!?」

リリーは驚愕しながら尋ねる。


「フフフ…ええ、良いわよ」

笑みを浮かべて頷くコーリア。


「エンゲージ・リング?」

大成は、頭を傾げながら尋ねた。


「銀狐族では、このエンゲージ・リングをつけた2人は、永遠の愛を手に入れると言い伝えられているのよ。今のリリーちゃんに必要な物よ」


「その、とても嬉しいのですが、今は相手がいないので遠慮させて貰います。それに、今、許嫁を決めてしまうと、その…妄想が激しい【アルティメット・バロン】か自己中心的なアルンガになりますので」


「リリー様、大切な人を忘れているのだよ」


「誰よ」

ジト目で彗星を見るリリー。


「ほら、目の前にいる僕なのだよ。僕とリリー様が、このエンゲージ・リングをつけたら、お互いに幸せになって良いと思うのだよ」


「ねぇ、彗星。誰が幸せになるって?幸せになるのは、あなただけでしょう?そもそも、私と結婚できるのは獣人の国で一番強い人って掟があるの。だから、あなたは無理よ。それに、そもそも、何故あなたに渡さないといけないのよ!も、もし、もし仮によ、エンゲージ・リングを渡すなら、あの人に…」

リリーは笑顔を浮かべて大成を見たが目は笑っておらず、その後に頬を赤く染めて左右の人差し指をつけたり離したりしてモジモジしながら小声で呟いた。


「フフフ…。リリーちゃんも、一応好きな人はいるみたいね。その人って、この前、助けて貰った人なの?」

口元に手を当て嬉しそうに尋ねるコーリア。


「あ、そ、それは…その…はい…。ですが、その人とは、あれ以降一度も逢っていませんし、名前も知りません。それどころか、今、何処にいるのかもわかりませんので…」

リリーは恥ずかしそうに顔を真っ赤に染めて小声で話し、そして、最後に落ち込んだ。


「フフフ…。もしかしたら、その人はリリーちゃんのすぐ傍にいるかもね」

コーリアは、悪戯っぽい表情を浮かべて大成を一瞥する。


「~っ!?」

「えっ!?それは、どういう意味ですか?」

大成は言葉を失ったが、リリーは気になって勢い良く顔を上げて尋ねた。


「特に意味はないわ。ただ、運命って、そういうものよ。リリーちゃんも、そう思いたいでしょう?」


「それは、その…はい…」


「神様は、きっと、リリーちゃんの想いを叶えてくれるわ。私の予感だと、すぐ近いうちにまた会えると思うわ。だって、リリーちゃんの王子様だもの。だから、今度、会った時は絶対に逃がさないようにしなさいね」

コーリアは、リリーに向かってウィンクした。


「はい」

恥ずかしそうに頬を赤く染めたままリリーは、満面な笑顔を浮かべて頷いた。



(これは、一体どういうことだ?何故、マキネが言っていた通りになっているんだ。それに、コーリア様、何てことを言うんだ…)

リリーの反応を見た大成は、どうすれば良いのかわからずに戸惑う。



そんな時、ドアをノックする音が聞こえた。


「入って良いわよ」

「「失礼します」」

コーリアの了承し、ドアからメイド2人が入って来てお辞儀をする。


「コーリア様、お食事の準備が整いましたので、いつでも召し上がれます」

1人のメイドが頭を下げたまま報告した。


「わかったわ。報告、ありがとう」

笑顔を浮かべてお礼を言うコーリア。


「「では、失礼します」」

報告を終えたメイド達は、再びお辞儀をして退出した。


「じゃあ、せっかくだし食事にしましょう。皆、一緒に大広間に行きましょう」

「はい」

コーリア達は、食事をするために大広間に向かった。




【大広間】


大広間には、大きな丸テーブルがあり、その上には煮魚やハム、煮物、野菜炒め、デザートなどの様々な料理が並べられおり、大成達は食事をしていた。


「どれも美味しいのだよ。それに、殆どの料理にバニーシロップが使われているのだよ」

あまりにも美味しい料理に大成は、頬を緩める。


「ええ、よくわかったわね。今日は初めて訪問した彗星君のために、是非この際、バニーシロップの良さをもっと知って貰うために料理長に腕を振舞って貰ったわ」


「美味しいです」

リリーも美味しそうに料理を食べる。



そこにメイド2人がやって来た。

「コーリア様、大浴場の準備が整いましたので、いつでもご利用できます」


「わかったわ。報告、ありがとう2人共。リリーちゃん、彗星君。せっかくだから、食事が終わったら入って来たらどうかしら?」


「こ、混浴!?これは、何という神の思し召し、是非ともリリー様と一緒に、ぐぉ…痛いのだよ…」

大成は、隣にいるリリーから鳩尾に肘打ちされて悶える。


「な、何を勝手に変な妄想をしているのよ!混浴なわけないでしょう!」

怒りと恥ずかしさから顔を真っ赤にしながら怒鳴るリリー。


「フフフ…。リリーちゃん、あなた達が混浴したいのなら混浴しても構わないわよ。その場合、ちゃんとメイド達に伝えてあげるから」


「うぅ…コーリアさんまで…。もう!彗星のせいだからね!さっさと行くわよ!」

リリーは、逃げるように大成の手を取り部屋から退出した。




【大浴場・脱衣場・夜】


「フ、フ~、フ、フフ~、フ~、フフ~、フ~、フ~フ~、フ~…」

リリーに案内されて別れた大成は、鼻歌を歌いながら脱衣場で服を脱いで肩にタオルを掛けて大浴場につながるドアを開いた。


ドアを開いた瞬間、少し甘いバニーシロップの香りが漂ってくる。


「おお~!」

大成は、目の前に広がる光景を見て感嘆した。


大浴場は露天風呂で、左側に光魔法の魔法陣を刻まれている魔石よって下から照らされている桜みたいな花を咲かせている大きな木があり、高い位置から花を咲かせている長い枝が、中央から右端に建てられている壁までに広がる露天風呂の半ばぐらいのところまで伸びて露天風呂の湯に花と月が映し出されていた。



大成は、風呂椅子に腰かけて掛け湯をし、体を洗い終えてから、水で冷やしたタオルを頭に乗せて入浴をした。


「ふぅ~。ん?これは、バニーシロップの花びらか」

湯に浸かっている大成は、湯の中に沈んでいるバニーシロップの花びらを摘まみ上げた。



壁の向こうから誰かが湯に浸かる音が聞こえた。

「彗星、入っている?」

壁の向こういるリリーから話し掛けられる。


「いるのだよ」


「驚いたでしょう?」


「本当に驚かせられたのだよ。そちらは、どうなっているか気になるだよ」


「そっちと同じよ。あと先に言っておくけど、覗こうとしたら殺すわよ」

明るい声で忠告するリリーだったが、殺気を放っていた。


「も、もちろん、そんなことはしないのだよ」

壁の向こう側からリリーの殺気を感じた大成は、寒気がして体が震えた。


「彗星、あなたに聞きたいことがあるの。あなた、本当はそこまで私のことを好きじゃないわよね?」


「そんなことないのだよ。だったら、その証明するために、今からそっちに行くのだよ」


「そ、そんなことしたら、本当に殺すわよ!」


「冗談なのだよ」


「はぁ~、もう良いわ。最後に聞くけど、あなた本当はコーリアさんが言う通り、私達より強いの?コーリアさんの魔力感知能力は獣人の国では一番なの。あの時は、ああ言って気まずい雰囲気を回避しようとして失敗に終わったけど気になっていたのよ。それに、あなたレオ学園でヒースとダラスを倒した時、アレは狙って倒したでしょう?」

リリーは立ち上がり、タオルを胸元に押し当てて壁側に移動して壁に背中をつけて尋ねる。


「前にも答えたけど、必死に戦っていたから、よくわからないのだよ。だけど、これだけは誓うのだよ。この命に変えてでもリリー様を守ってみせるのだよ」

大成も壁側に移動して壁に背中をつけて月を見上げて誓うように話した。


「フフフ…。何だかはぐらかされた気分だけど、期待しているわよ彗星」

リリーも月を見上げて嬉しそうに笑顔を浮かべた。


「ああ、任せるのだよ」

大成も夜空に浮かぶ月を見つめて誓う様に答えた。




【ネーブル森・チャルダ国付近・深夜】


森の木の影からチャルダ国を見下ろす巨体な影があった。


「フフフ…さぁ、始めるか…」

元【セブンズ・ビースト】のワニの獣人のリゲインは口元を歪ませて獰猛な笑みを浮かべると、リゲインの背後に複数の影が現れ鋭い瞳が光った。

投稿が遅れて、内容も思ったよりも進まず大変申し訳ありません。


少しずつ書いていたのですが、その度、書いた文章が消えるという現象が一週間以上に渡り、多発して何度も書き直していました。


結局、なぜ消えるのかがわからず、一昨日、休日だったので、友達に会いに行き相談したところ、新しくスマホのウィルスバスターをダウンロードしたのが原因で、プライバシーに驚異がありますと表示され解決ボタンを押すと、個人情報の漏洩防止のため押す度に自動的に削除するということが判明しました。


誠に、ご迷惑お掛けして申し訳ありません。


次回、やっと戦闘が始まります。


もし宜しければ、次回も御覧頂けたら幸いです。

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