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大成の作戦と美咲の切り札

美咲が裏切り、ジャンヌ達を襲った。

一度、美咲から逃げるため、大成はジャンヌとウルミラを抱え、窓から飛び降りた。

【過去・魔人の国・ラーバス国・屋敷の外】


「「きゃ~っ!!」」

ジャンヌとウルミラの2人は叫んだ。


2人は、大成に抱えられたまま2階の窓から飛び降りていた。

現在、大成達は空中にいる。

いや、正確に言うと落ちていた…。

そして、次第に地面が間近まで近づいてきている。



「「エ、エアクッション」」

ジャンヌとウルミラは、慌てて同時に風魔法・エアクッションを唱えると自分達の足元とその真下の地面の上に圧縮した空気の層を2箇所作った。


足元にできた一層目に足が触れたが、そこまで激しい衝撃はなく触れた瞬間に下から少し強めの風が吹き上がり体全体を少し持ち上げるような感じがして落下速度が弱まる。


そして、次に地面の上にできた2層目に触れると先程と同じ現象が起き更に落下速度が弱まり大成は2人を抱えたままトンっと地面に着地した。



「ふぅ~」

(いや~、本当に危なかった。予定では、もっと遠くへ跳べて木の上に落下して衝撃を緩めるはずと思ったが、まさか跳んだ直後に真下に落ちるとは思わなかったな。流石に、2人を抱えたままでは無理だったか。2人の魔法があって本当に助かった。死ぬかと思った)

冷や汗を流していた大成は、頭の中で反省して一息つく。



「ふぅ~、じゃないわよ大成!あなた本当に信じらんない!危うく大怪我していたわ。いえ、もし打ち所が悪かったら、死んでいたかもしれないのよ!わかっているの!?」

「そうですよ!大成さん、本当に危なかったのですよ!」

「ごめん、ごめん。ああするしか、思いつかなかったから」

ジャンヌとウルミラは、大成から離れて怒る。


後頭部を擦りながら苦笑いして謝る大成は、先程2人が絶望して呆然としているよりはマシだなと思った。



「それより先にジャンヌとウルミラは、レゾナンスとかいう魔法で屋敷内のウルシアさんとメイドさん達にこの事を知らせて避難させた方が良いと思う」

「ええ、そうね」

「そ、そうですね」

大成の意見に、ジャンヌとウルミラは賛同した。



その時、屋敷一階の壁が崩壊して、全長5mぐらいある巨大な氷の剣が飛んできた。


「何あれ?」

大成は氷の剣を指差して、2人に顔を向け尋ねる。


「ウルシアだわ!」

「お母様です!」

ウルシアの魔法を見て、ジャンヌとウルミラは笑顔になる。


(確かに凄い人だと感じたけど)

魔法を知らない大成でも、ウルシアを一目見ただけで納得するほどの威圧感を感じていた。



穴が開いた壁からメイドや執事達が次々に出てきて、ウルシアと騎士団達が最後に出てきた。


「アイス・ウォール」

ウルシアは歯を食い縛りながら氷魔法アイス・ウォールを唱えて壁の穴を分厚い氷で覆う。


「うっ…」

ウルシアは背中に大怪我をしており、その場に倒れた。


「ウルシアっ!」

「お母様~っ!」

「大丈夫ですか?」

大成達は、ウルシアを心配して傍に駆け寄る。



「も、申し訳ありません。私を庇って…。それで、ウルシア様が怪我を負ったのです。すみません、すみません…」

ウルシアの隣にいるメイドは、泣きながらメイド服のスカートを両手で握りしめて何度も謝罪をする。


「ハァハァ…。あれ程、気にしないでって言ったでしょう」

甲冑に背中を斬られたウルシアは、額に大量の汗を掻いており顔色が悪く背中の傷は深く出血が酷かった。


「ハァハァ…。コッホ、ひ、姫様、大丈夫ですか?」

「私は大丈夫だけど。ウルシア、あなた大怪我しているじゃない!本当に大丈夫なの?」

ウルシアは自分のことよりも、ジャンヌの心配をした。


「こ、これくらいの傷。何ともありません…。ウ、ウルミラ、私の代わりに姫様を守るのよ」

「はい、わかりました。お母様っ…」

ボロボロの母を見て涙を流しているウルミラは、母を心配する言葉が出そうになったが堪える。



「まず、ウルシアさんの怪我の手当てをしないと…。それと、これからどうする?戦う?逃げる?」

大成は、この場にいる皆に尋ねる。


ポーションは屋敷の中なので、ウルミラは庭に植えている薬草と包帯でウルシアを手当てをしながらジャンヌに振り向き、他の皆もジャンヌに視線を向けていた。


「……」

ジャンヌは、目を閉じて必死に考える。

あてにしていたウルシアが、戦えない状態。

今日は、紫の月で美咲は格段に強くなっている。

自分の判断で運命が大きく変わることに、まだ幼いジャンヌは答えを出せずにいた。


そんな中…。

「あのさ、僕は戦える人だけでも戦った方が良いと思う。もちろん理由がある。予想以上に甲冑の動きが速かったから、怪我人や非戦闘員、国民達は逃げても追いつかれる可能性が高い。だから、戦える人が時間を稼ぎ、国民や戦えない人は避難したり魔王に連絡する。どうかな?」

ジャンヌとウルミラに、斬りかかってきた甲冑の動きを見ていた大成は提案をした。


ジャンヌは、暫く考えて決断する。

「そうね。大成、良い提案だわ」

「ですね」

「い、良いわね、私も残るわ…。姫様は避難して下さい」

「ダメよ!ウルシアは重傷じゃない、お願いだからあなたは避難して。私は、ここに残って戦うわ。大丈夫よ、心配はいらないわ」

「いえ、ジャンヌ様とお母様は、お願いですから避難して下さい。ここは、私が…」

結局、誰も退かず全員が参加することになった。



「ま、魔王様に任されましたけど、私にとって皆は家族のように思っているの…。ハァハァ…。それに、私は負けず嫌いなのよ」

ウルシアは意識を保つのが難しい中、無理やり笑顔を作り微笑んだ。


そんなウルシアの姿を見て、皆は心配した表情になる。


「わかったわ」

ジャンヌは頷く。


「あの、作戦とか急ぎたいことがあるので僕が指揮を取ってもいいですか?」

大成は、嫌な予感がしていたので手を挙げて自ら立候補する。


「……ええ、良いわよ」


「良いのですか!?姫様!」

あっさりと承諾したジャンヌに、ウルミラは驚きの声をあげた。


「構わないわ。何かあるのでしょう?大成」

ジャンヌは、大成に視線を向けて尋ねる。


「もちろん」

不敵な笑みを浮かべながら大成は力強く頷く。


「そういうことなら、わかりました」

ウルミラも大成を信じることにした。


「コッホ、コッホ…。そうね、ジャンヌ様とウルミラを命懸けで、守ってくれた貴方なら信用できるわ」

ウルシアが肯定し、大成が指揮を取ることが決定した。



「ジャンヌ、ウルミラ、ウルシアさん、あと騎士団の各団長さんが各部の隊長になって貰います。ところで、暗部と騎士団は何人いますか?」


「戦えるのは【ヘル・レウス】直属暗部80人、騎士団200人ぐらいだと思うわ」


「なるほど。なら、綺麗に分れるね。余った人はウルシアさんの隊に入って欲しい。それで、ウルシアさんとジャンヌは…」


「待って大成!私は、この国の姫よ。これほど好き勝手にされて、黙っていられないわ。私は屋敷に突入するわよ」

ジャンヌは、大成の話を中断し怒った。


「わかったよ。じゃあ…」

大成は、ウルミラの方を向いたが…。


「すみません、私もです。お母様をこんな目に合わせた美咲さんは絶対に許せないです!」

普段大人しいウルミラもジャンヌと同様、いや、それ以上に怒っていた。


「あの…、すみません。団長さん、良いですか?」

恐る恐る大成は、騎士団の団長に振り向き依頼する。


「別に構わないが、こういう場合はウルシア様以外の隊全員で攻めるのではないのか?あと、俺の名はギランだ」

腕を組んだままギランは質問する。


ギランは、町の騎士団の団長でギヌルの兄だった。



「そうですね。ですが、美咲さんが内部から大ダメージを与えるのが私の役目と言っていましたので、戦力を削るために、【ヘル・レウス】メンバーであるウルシアさんを倒すことを優先するかもしれません。それに、僕の予想では一階の部屋にある僕を召喚した【召喚の間】を狙っていると考えられます。なぜなら、強い人を召喚させないために破壊すると思います」

大成は、思ったことを伝える。


「なるほど。確かにその可能性は高いな」

頷くギラン、他の皆も頷いた。


一緒に聞いていたギランが、すぐに隊を分ける。

あと、大成は気付いたことやこれからの作戦を細かく伝えた。



「僕からは以上です。他に何か意見はありますか?」

大成は、皆を見渡す。


「いえ、何もないわ」

ジャンヌが答え、周りの皆も無言で頷く。


「では、そういうことで。ウルシアさん、突撃するので覆っている氷の壁を解除して欲しいのですが」


「わ、わかったわ。くっ…。姫様、美咲は想像以上に強くなっているはず、お気を付けて下さい。ウルミラも気を付けるのよ、姫様のことを任せたわ」


「わかったわ」


「わかりました、お母様。姫様のことはお任せ下さい。お母様も無理はしないで下さい。では、行ってきます」

ウルシアは指を鳴らして、壁の穴を塞いでいた氷の壁を解除する。


氷の壁は、ウルシアが指を鳴らした瞬間、全体に無数のヒビが入り細かく砕けた。



「全員、突撃~!!」

「「ウォォ~!」」

大成の掛け声とともに、各隊は作戦を開始する。


「ん?あいつは、何処へ行った?」

「わかりません」

大成の姿が見えないことにギランが気付き、部下は首を振り答えた。


「コッホ…。ま、まさか…」

ウルシアは不安になり、屋敷を見つめた。




【過去・魔人の国・ラーバス国・屋敷一階・廊下】


ジャンヌとウルミラ達は、幅が8mある屋敷の廊下を走っていた。

日頃、見慣れているはずの廊下だったが、両サイドの甲冑がなくなっており驚くほど広く感じる。



「ウルミラ、急いで一階の【召喚の間】に向かいましょう。私も大成の考えが正しいと思うわ」


「はい、わかりました」

ジャンヌの指示にウルミラは肯定し、ジャンヌ達は一直線に【召喚の間】に向かう。


普通に騎士団と暗部の実力がある甲冑で一対一で勝負したら騎士団が負けてしまう。

そこで、大成の作戦で所々の部屋にいる甲冑の数よりも多くの暗部と騎士団を突入させて数でものを言わせて優勢に進行させて行く。


スピード勝負なので、ジャンヌとウルミラは立ち止まらずに順調に先に進んだ。


そして、やっと一階の【召喚の間】が見えてきた。



【過去・魔人の国・ラーバス国・屋敷1階・召喚の間の廊下】


【召喚の間】の扉は結界が施されており、極一部の人しか開けれない場所だったため、甲冑は部屋に入れずに扉の前に沢山の甲冑が集まって扉を攻撃していたが全て弾かれていた。


「間に合ったわ、突撃!」

「「ウォォ~!」」

ジャンヌは右手に握っている剣を振り下ろして剣先を前に出しながら指示を出すと、騎士団や暗部の皆は遠くから魔法で攻撃する。


気付いた甲冑は飛んで来る魔法に怯まずに盾を持っている甲冑が先頭になって防ぎながら前へ進み、後ろから剣や斧などの武器を握った甲冑達がジャンヌ達に接近する。


接近してきた甲冑を迎撃するために、ジャンヌ達も接近して激しい戦いが始まった。


「ハッ!」

「えいっ!」

ジャンヌは双剣で次々に甲冑を撃退していき、すぐ傍ではウルミラが矛で甲冑を凪ぎ払っていく。


だが、今回は今までよりも甲冑の数が多く、今いるジャンヌ達を上回っており騎士団は次々と倒され暗部も押されて劣勢に追い込まれていく。


誰が見ても、全滅は時間の問題なのは明らかだった。


(このままじゃあ、後続の部隊が来るまで持ち堪えることが厳しいわ)

ジャンヌとウルミラは、自分達が出来るだけ早く甲冑の数を減らさないといけないと判断して急ぐ。




そして、暫く戦いは続いた。


「「ハァハァ…」」

ジャンヌとウルミラは、オーバーペースで甲冑を倒せたが普段よりも体力を消費が激しかったため肩を大きく上下させるほど疲弊していた。


その結果、予想以上に疲労が溜まったが途中から後続の部隊も合流してジャンヌ達側の数が勝り優勢に転じてどうにか制圧できた。



「こ、これで、終わりね」

ジャンヌは最後の甲冑を倒し、騎士団と暗部は疲労で地べたに座り込んだ。



「ふ~、どうにか守れたわね。ねぇ、ウルミラ。あとは、残るのは美咲だけなのかしら?」


「ハァハァ…。わかりませんが、そうだと良いのですが…」


「ウルミラは、美咲は何処にいると思う?」


「私は、ここだと思っていましたが…」

ジャンヌもウルミラと同じ考えだったが、美咲の姿がなかった。

ジャンヌとウルミラは、美咲が何処にいるのか考える。



その時だった。

小さな足音が聞こえたジャンヌとウルミラは立ち上がり、足音がした方向に振り向いた。


「あら、姫様にウルミラ、それに皆さんお疲れ様です。そんなに疲弊していますが大丈夫かしら?これからが本番ですよ」

真っ暗な廊下の奥から美咲の声がし、徐々に近づいてくる足跡が大きくなる。



そして、現れたのは着物姿に着替えた美咲とその美咲を片腕で持ち上げている高さ2,5メートルほどある豪華な甲冑が現れた。


甲冑には腕が4本あり、全身が膨大な紫色の魔力で覆われている。


甲冑は膨大な魔力を纏っており、内包されている魔力も膨大であることに皆は気付き絶望した。


「この子は私の自慢の力作、名前はパールよ。強さは、そうね…。【ヘル・レウス】メンバーのナンバー1のローケンス様ぐらいかしら?この子が完成するのに時間が掛かってしまったの」

美咲は鎧の腕から降りて、腰に掛けていた大きな細い針の様なレイピアを握る。


「う、嘘だろ…。く、糞ぉ~!」

「ダメよ!待ちなさい!」

「待って下さい!」

パールは異様な威圧感放っており、その威圧感を受けた1人の暗部は恐怖を通り越して絶望に耐えきれず自暴自棄になりパールに立ち向かって行く。


「「ウォォ~」」

ジャンヌとウルミラは止めたが、その姿を見た騎士団達と他の暗部達もその後を追う。



「「ダメ~!」」

ジャンヌとウルミラは叫んだが、暗部と騎士団達は恐怖で我を忘れて止まらない。


明らかに力の差があると理解しているが、こちらは数で勝っているのでどうにかなると思っていた。

いや、思いたかったのだ。



パールは腰や背中に掛けていた武器を4本の手にそれぞれの手で持つ。

4本の手には剣、槍、斧、盾を持った。

初めに突撃した暗部は、斧で凪ぎ払われ上半身が吹っ飛び下半身だけが残り地面に倒れた。



「よくも!」

「死ねぇ~!」

「これで、どうだ!」

それでも、騎士団と暗部は止まらずに次々に突撃していく。


だが、騎士団と暗部達はパールの剣で両断されたり、槍で纏めて串刺しされたり、騎士団や暗部が魔法攻撃や接近して攻撃するが巨大な盾で塞がれ、そのまま盾に殴られたり、壁に押し付けられ潰れたりして、騎士団と暗部はパールにダメージを与えることができずに息絶えていく。


中には何人かは美咲を撃ち取ろうとする者もいたが、卓越した美咲の動きから放たれる高速のレイピアで刺されたり、着物の袖から沢山の小さな針に魔力を纏わせて貫通力を上げた美咲は飛ばして鎧を装着している騎士団と暗部の頭や喉、心臓など急所を的確に刺して倒していった。


前に一騎当千の実力がある者、他の誰にも負けないズバ抜けた才能がある者だけが【ヘル・レウス】メンバーに選ばれると魔王に教えて貰ったことがあるジャンヌとウルミラは今の現状で比喩ではないこと思い知ったのだった。




数分後、ジャンヌとウルミラ以外の者は全滅していた。


「あらあら、思っていたよりも随分と弱かったわね。想定していたよりも時間が余ったわ」

戦って多くの命を奪ったのに息一つ乱れてない美咲は、口元に袖を当てて口元を隠しているが目元が笑っている。


「う、うそ…」

「そ、そんな…」

全滅した仲間を見て、ジャンヌとウルミラは絶望した。


「姫様、ウルミラ。せっかくですので、私のパールの実験台になって下さいね。有象無象ばかりをいくら倒しても意味がないので」


「そんなガラクタで、私達を倒せると思っているの?美咲」


「姫様と私は負けません」


「私の可愛い人形をガラクタ呼ばわりするなんて酷いですわ。倒してからガラクタと言って下さい、姫様。まぁ、無理でしょうけどね」

ジャンヌとウルミラは笑っている美咲を睨んだが、美咲は余裕の表情を見せた。




「行くわよ、ウルミラ!」

「はい!」

「ファイヤー・ボール」

「アイス・ボール」

ジャンヌは炎魔法ファイヤー・ボールを唱え、ウルミラは氷魔法アイス・ボールを唱えた。


2人の周りに、サッカーボールぐらいの大きさの27個の炎と氷の玉が出現して放つ。


まず、ジャンヌはファイヤー・ボールで炎の玉を乱れ撃ちした。


パールは、巨大な盾で防ぐが数が多く全て防ぐことはできずに所々に被弾する。


だが、大したダメージがないように見えた。



次にウルミラのアイスボールも所々に被弾するが、こちらも同じでパールに大したダメージが見受けられなかった。



パールは物凄いスピードで2人に近づいてジャンヌに剣で攻撃し、ウルミラには槍で攻撃する。


ジャンヌとウルミラは、どうにか反応できたが…。


「くっ」

ジャンヌは降り下ろされたパールの剣を双剣でクロスでガードしたが、あまりにも重い一撃で吹き飛ばされて壁に背中を強打した。


「うっ」

横に凪ぎ払ってきたパールの槍をウルミラは矛で横に凪ぎ払って相対しようとしたが、力負けして地面を転びながら後ろに吹き飛ばされて地面を転がる。


2人はすぐに立ち上がり、距離を取りながら再びファイヤー・ボールとアイス・ボールを放つ。


そして、ジャンヌとウルミラはお互いの距離をある程度とりパールの攻撃を2人同時に攻撃を受けないようにし、どちらかが追い込まれたらもう片方がサポートするという作戦に移る。



接近は不利と判断したジャンヌとウルミラは、主に魔法で戦う戦法に変えた。


特に、パールの斧の攻撃は回避しないと防いでも力負けをして致命傷になる可能性があると判断した。


「あらあら、さきほどまで私のパールをガラクタ呼ばわりしていたのに随分とそのガラクタに苦戦していますね」

美咲は観戦しているだけで、口は出すが手は出さずにいる。


((まさか…))

ジャンヌとウルミラは、大成から聞いた仮説が正しいと思ったがすぐに頭を振り考えを振り払う。


なぜなら、思い込みは死を招くと2人は知っていたし大成からも言われたからである。



「でも、残念ね。まだ、パールの強さを確かめたかったけど。そろそろ終わりにしないと、魔王様達が戻って来るわね。まぁ、一度身を隠してから【ヘル・レウス】メンバーを1人ずつ確実に始末してあげるわ。その際に、再度パールの強さを確認するとしましょう」

ゆっくりと美咲は、前へ歩みパールの横に立った。


「やっと、参戦するみたいわね」

「ですね」

ジャンヌは余裕があるように装ったが、実際はパール1体だけでも厳しかった。

ウルミラも、ジャンヌの演技に賛同して笑みを浮かべる。



「ウフフフ…。その笑みは何なのかしら?でも、残念ね。わかっているのよ、何も手がないことをね。その強がりは、いつまで続くのか楽しみだわ」

美咲は笑みを浮かべながらジャンヌに、同時にパールはウルミラに向かって走る。


ジャンヌとウルミラは、同時に下がりながらファイヤー・ボールとアイス・ボールをパールに放った。


「あら、私は無視なのかしら?寂しいわね、姫様」

美咲は、そのままジャンヌに接近して持っていたレイピアで連続で突きを放つ。


「うっ」

的確に急所を突いてくる美咲の鋭い突き攻撃を、ジャンヌは双剣でどうにかギリギリで捌く。


そして、ジャンヌは右手の剣を上から振り下ろして反撃に出るが、美咲がバックステップで離れてジャンヌの攻撃は空振りに終わった。



「姫様!」

「こっちは大丈夫よ。私を心配するより、ウルミラは自分のことだけを心配しなさい」


「わ、わかりました」

ウルミラが返事をするとともに、パールはウルミラに接近して剣と斧を振り下ろす。


「くっ」

ウルミラは、バックステップで回避した。

だが、バックステップで回避した瞬間、パールは槍で突きを放ち追い討ちをする。




その光景を美咲は見て微笑んだ。

「まず、ウルミラが脱落ね」

「ウルミラ~!」

ジャンヌは叫んだ。




美咲とジャンヌの声が聞えたウルミラはパールの迫ってくる槍は見えているが、空中なので地面を蹴って方向も変えれず身体が硬直して動かない。


走馬灯の様にスローモーションで、少しずつ槍の先端が自分の胸に近づいてくる。

(姫様、お母様、申し訳ありません)

ウルミラは、涙を流しながら目を瞑って死を受け入れた。

申し訳ありません。

過去編完結できませんでした。

次回、美咲と決着します。

もし宜しければ、次回もご覧頂けたら幸いです。

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