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各国の動きと親子の絆

銀河の(シルバー・スカイ)と言われる様になった事件は、大成の敗北で幕を閉じた。

銀河の(シルバー・スカイ)と言われるようになった人間との戦いが終わり、1ヶ月が過ぎようとしていた。



各国から魔王修羅は、時の勇者に討伐され戦死したと認識され騒ぎたつ。

現在は、先代の魔王が魔王として君臨しているが、魔人の国の情勢は未だに混乱していた。


そして、その余波は魔人の国や人間の国だけに留まらず、他の各国にも及んだ。




【獣人の国・パールシヴァ・パールシヴァ城内】


「どういうことだ!兄貴!」

城内では、大きな男の声が響き渡る。


激怒しているのは、獣王の弟・アレックス・パールシヴァというライオンの獣人。


「なぜだ!兄貴!魔人の国が滅びかけている。攻めるなら、今がチャンスだろ?せっかく、国の武力を上げたのによ!」

アレックスは、丸太の様な太い右腕を大きく内側から外側に振るい、背中のマントが靡く。


「アレックス。お前、自分で何を言っているのかわかっているのか?魔人の国とは同盟関係だぞ」

「3年間、何も連絡を寄越さなかった国を同盟国というのか?」


「確かにそうだが。だが、国のトップの魔王が敗れたのだ。そのことで国の復興で手一杯になり、此方に連絡できなかったのだろう。だからこそ、今回は此方から手を差し伸べるのだ」

弟・アレックスの目を見ながら真剣に答える獣王。


「勇者一人に、国のトップ達が負ける程度の国と同盟を組む価値はあるのか?」


「国の価値とは、武力だけではないぞ。アレックス」


「理解に苦しむな、兄貴。武力がないならば、なおのことだ。衰弱している今、攻め落として俺らの国に取り込めばいいだろ?」


「本当に、そう思っているのか?アレックス」

「ああ」


「「……。」」

獣王とアレックスは、お互い目を逸らさずに睨み付ける。

殺気は出ていないが、魔力を高めて威圧感を醸し出しており、ぶつかり合う。

逃げ場がなくなった圧力によって、周囲の窓ガラスや壁にヒビが入る。


「~っ」

周りにいる騎士団は、圧力に必死に堪えながら緊張した面持ちで固唾を飲む。



暫くの間、お互い譲らなかったが、先にアレックスが溜め息をして魔力と威圧感を消した。


「はぁ~、そうかよ!なら、俺は出ていくぜ」

「おい、何処へ行くのだ?」

アレックスは、顔だけ兄・獣王に振り向いたが質問には答えず部屋から出ていった。


この後、このことがきっかけで獣人の国は東西に分裂することになる。



他にも似たようなことで、各種族国では、内乱や分裂が激化し情勢が不安定になっていった。




【魔人の国・ラーバス学園・教室】


銀河の(シルバー・スカイ)以降、教室は未だに気まずい雰囲気が漂っており、静まり返っていた。


そんな中、イシリアは後ろを振り返り、ジャンヌとウルミラの空席を見て溜め息をして愚痴る。

「はぁ~。いつまで落ち込んでいるのよ…」



あの事件から、2人は1度も学園に登校していなかった。


イシリアとマーケンスも、一週間前まで学園に登校していなかったが、母・マリーナに慰められてからは登校している。


だが、イシリアは隣の大成の席を見るたび、毎回悲しい表情に変わり、涙が込み上がってくる。


イシリアは大成と出会い、初めて恋をしたと実感するほど大成のことが大好きなっていた。


悲しみを振り払う様に、イシリアは頭を左右に振り、再び溜め息を吐く。



イシリアの近くの席にいるマーケンスは、そんなイシリアの姿を見ていた。


(俺がもっと強ければ、大和は死なずに済んだかもしれない)

マーケンスは、拳を強く握り締めながら歯を食い縛った。


イシリアとマーケンスの姿を見ていたクラスメイト達は、どんな言葉を掛ければ良いのかわからず見守るしかなかった。




【屋敷・ジャンヌの部屋】


部屋にはジャンヌとウルミラが、マテリアル・ストーンの映像を繰り返し見ており、その瞳から涙を溢していた。


マテリアル・ストーンが映し出しているのは銀河の(シルバー・スカイ)と言われるようになった大成の戦いだった。


一週間前までは、マキネ、イシリア、エターヌ、ユピアも一緒に見ていたが、エターヌとユピアは自国に戻り、イシリアは学園に、マキネは大成の捜索に行っており、今ではジャンヌとウルミラの2人だけで鑑賞していた。




【過去・ラーバス国・夜】


あの日、銀河の(シルバー・スカイ)と言われるようになった事件の日、マルコシアスの親子と一緒にラーバスへと撤退したジャンヌ達は、大成から渡されたマテリアル・ストーンを使って、大成の戦いを見守っていた。



ジャンヌ達は、大成とワルキューレの激しい激闘を見て、手を強く握り締めていた。


騎士団の中には、こちらの声は大成に届かないと知りつつも、つい大声をあげるほど熱が入る。

「「後ろです!修羅様!」」

「今度は右上です!」



そして、大成がワルキューレを倒し、ウルミラは嬉しさのあまり、勢い良くジャンヌに抱きついた。

「や、やりました。大成さん!やりましたよ。姫様!」


「そ、そうね」

こんなに嬉しがるウルミラを初めて見るジャンヌは、少し驚いていた。


「あっ、すみません。姫様」

慌てて離れるウルミラ。


「気にしないで良いわよ」

ジャンヌは、笑顔で優しく答えた。



「ダーリン、やったね。イシリア!」

「ええ!」

その隣ではマキネとイシリアが、笑顔を浮かべて両手でハイタッチした。



「「うぉぉぉ!」」

「流石、修羅様だ」

「ああ、そうだな!」

ボロボロになっている騎士団は、持っていた武器を掲げたり、お互い肩を組んで雄叫びを上げたりする。



そんな中、ローケンス達は、改めて大成の異常な強さに驚愕して呟く。


「あの伝説のガーディアンを一人で倒すなんて凄いわね…」

「ええ、私達が苦戦を強いられたのに、あの子は重傷を負っているにも関わらず、意図も簡単に倒すなんて…」

「ああ…」

ウルシアに肯定するマリーナとローケンス。


「……。」

ローケンス達の近くにいるミリーナだけは、大成の魔力がもうないと感じており、一人だけ心配そうな表情で見守っていた。



マテリアル・ストーンは、大成とレッド・ナイツとの戦いを映し出しているが、大成は徐々に追い込まれていく。


「大成…」

傷ついていく大成の姿を見たジャンヌは、大成を援護するために、再び森の中へと向かおうとする。


ジャンヌに続く様にウルミラ、マキネ、イシリア、マーケンスも森の方へと振り向く。


「ダメよ。あなた達」

ミリーナの声が響き渡った。


「お母様、お願いです。行かせて下さい。このままだと、大成が、大成が死んでしまいます」

涙を浮かべて懇願するジャンヌ。


「わかっているわ。でも、行かせるわけにはいかないの。もし、ここであなた達が戻ったら、大成君の頑張りが水の泡となってしまうから。今は悔しくて苦しいでしょうけど、無事を祈るのよ」

ミリーナも辛そうな表情を浮かべていた。


「……。わかりました」

ジャンヌ達は、ミリーナの表情を見て納得し、唇を噛んだ。


そして、再びマテリアル・ストーンに振り向き、胸元で両手を握り締めて大成の無事を祈る。

ヘルレウスも騎士団も、ジャンヌ達を見て祈りだす。


祈りが通じたのか、どうにか勝利した大成。

しかし、ワルキューレに勝利した時とは違い、ジャンヌ達は静まり返っていた。


なぜなら、大成はレッド・ナイツを全滅させたが、大成は満身創痍になっていたからだった。


ボロボロ姿の大成を見たジャンヌ達は、涙を流したり目元を赤く染めて必死に堪えるのだった。



そして、大成と流星の義兄弟の最後の戦いが始まる。


大成は、足を引きずりながら、時折倒れそうになるが必死に流星に立ち向かっていく。


「も…もう、やめて…。私達のことは良いから…。大成、お願いだから逃げて…」

ジャンヌは、涙を溢しながら口元を手で押さえた。


「大成さん…」

「ダーリン…」

「大成君…」

ウルミラ達も、涙を拭ったり、口元を手で押さえたりして呟く。


「「修羅様…」」

騎士団は、歯を食い縛り目を逸らす者もいたが、ローケンス達は、歯を食い縛りながら涙を堪えて大成の勇姿を最後まで見届ける。



大成の渾身の村雨の一撃が、流星の首元に直撃したが、剣をイメージした村雨は、粉々にヒビが入り、砕けて消滅した。


そして、大成は流星に右腕を切断された。

「「い、いや~!」」

ジャンヌ達の悲鳴が響き渡り、腰の力が抜け地面にへたり込んだ。



大成は諦めずに左拳で流星の鳩尾を殴ったが、もう既に限界が訪れており、ボスっと服の音を立てるだけだった。

そのまま大成は流星に凭れ掛かり、流星が体を反らしたことで大成は地面に倒れた。



ジャンヌは、駆け足で大成のもとに行こうとしたが、母・ミリーナに腕を掴まれた。


「お願いです、お母様。行かせて下さい」

「ダメよ」

ミリーナは、悲しい表情を浮かべながら左右に頭を振る。


その時、意外なことにマテリアル・ストーンを通して流星から声を掛けられる。


「大成、お前は師匠と同じく、昔から俺の予想を超えて楽しませてくれた。その褒美に、お前を始末した後は魔人の国へは行かず、自国へ帰還しよう。そして、最後に俺のとっておきを見せてやる。ローケンス達よ、大成に感謝し光栄に思え」


その直後、マテリアル・ストーンは、閃光の様に銀色に輝き、それと同時に月も星も雲で覆われ見えない漆黒の夜空が、銀色に照らされた。


「「……。」」

皆は驚愕し、唖然と銀色に輝く空を見上げている。


先に我に返ったジャンヌは、その隙にミリーナの手を払いのけて、騎士団の隙間を通り大成のもとへと走る。


「ジャ、ジャンヌ!」

慌ててジャンヌを追いかけようとしたミリーナだったが、未だに銀色の空を見上げている騎士団に塞がれた。



(お願い、間に合って…。無事でいて大成…)

躓いて転けそうになっても、地面や木に手を付きバランスを取りながら必死に走るジャンヌ。


だが、現実は無慈悲だった。

ジャンヌが大成のもとに着く前に、パレシアの森中に銀の閃光が走り、あとから衝撃波が襲う。


「きゃぁ」

衝撃波により、木々は弓の弦の様に反り、ジャンヌは前屈みになりながら両手で顔と首元を守り、踏ん張る。


衝撃波がおさまり、ジャンヌは再び走る。

そして、マテリアル・ストーンが映し出していた場所に辿り着いた。


もう既に流星達の姿はなく、衝撃波で周囲の木や岩などが吹き飛ばされ、更地になっており、近くには円柱状の大きな穴があいていた。



魔力感知をしても大成を感知することはできなかった。


「嘘…。大成…」

ジャンヌは、フラフラとした足取りで穴に歩み寄り覗き込んだが、そこが見えないほど深く、闇に飲み込まれているみたいだった。


ジャンヌは、足腰の力が抜けてへたり込み、側には薄らと大成の血の痕跡が残っていた。

ジャンヌは右手で優しく触れ、胸元で握り締め俯いて泣いた。



その後、ジャンヌ達はラーバスに帰還した。

その時には、もう既に朝日が昇っており、国民や同盟組んでいる魔人の国中に戦果報告をし、戦死者に哀悼する。


皆が悲しむ中、エターヌとユピアは、大きな声で泣いていた。

「うぁぁん、お兄ちゃん…」

「修羅様~」


その2人の隣にはジャンヌ、ウルミラ、マキネ、イシリアの瞳は生気を感じれないほど暗く、何もかもが終わったような絶望した表情をしており、まるで屍の様だった。




【屋敷・大広間・昼食】


ジャンヌ、ウルミラ、魔王、妃・ミリーナ、ウルシアの4人は、会話もなく重苦しい雰囲気の中で食事をしていた。


魔王の左右にミリーナとウルシアが座り、向かい側にジャンヌとウルミラが座っている。


銀河の(シルバー・スカイ)以降、ジャンヌとウルミラの表情は暗く、まるで屍の様だった。


「あなた達、そろそろ気持ちを切り替えなさい」

ミリーナは、向かい席にいるジャンヌとウルミラに声を掛けた。


「そうよ。このままだと体や精神が病むわ」

ウルシアも説得に試みる。


「「……。」」

ジャンヌとウルミラは、1度ミリーナとウルシアに視線を向けたが、無言のまま食事を再開した。


「2人共、ミリーナとウルシアの言う通りだぞ。正直、私はな。お前達が恋愛するのは、まだ早いと思っている。それに、食事の時ぐらいは武器を部屋に置いてきなさい。邪魔になるだろう?」

魔王がミリーナに続く。


「あなた!」

「魔王様!」

魔王の隣の席にいるミリーナとウルシアは、慌てて止めようとしたが遅かった。


大成が作ってくれた武器を邪魔と言われたジャンヌとウルミラは、食事の手を止めて小さく唇を噛んだ。


「ん?何だ?」

魔王は妻2人に疑問に思い尋ねた瞬間、とてつもない威圧感を感じて、威圧感を発しているジャンヌとウルミラの方へと視線を向けた。


威圧感を出しているジャンヌとウルミラは、食事の手を止めており、少し俯いたままの状態で表情は見えなかったが、雰囲気で激怒していると近くにいる者はわかるほどだった。


「し、しかしだ。もし、大成のことが忘れられないなら…。そ、そうだ!マーケンスはどうだ?あの少年は、父・ローケンスにも迫るほど強くなっているぞ」

娘達の威圧感に怯んだ魔王は息を呑み、後先を考えずに思い付いたことを口走る。


その直後、両隣からも威圧感を感じ取った魔王は、隣にいるミリーナから横腹に肘打ちを入れられ、その反対側にいるウルシアからは足を踏みつけられた。


「ぐっ」

魔王は、悲鳴をあげながら前屈みになり、苦痛の表情を浮かべて横腹と足の甲を押さえる。


「……。」

まだ食事が終わっていないジャンヌだったが、そんなやり取りを無視して立ち上がり、後ろに振り返って出入口へと向かう。


ウルミラも立ち上がり、1度お辞儀をしてジャンヌの後を追った。



「ジャンヌ…。ウルミラ…」

魔王は、右手を娘達の方角に伸ばした状態で固まっていた。


ジャンヌ達が出ていった扉が閉まり、我に返った魔王は、恐る恐るゆっくりと立ち上がり、自分もその場から逃げようと試みる。


しかし、ミリーナとウルシアは、そんな魔王の左右の肩を掴んで逃がさなかった。


離脱に失敗した魔王は、顔を青く染めて後ろへ振り返る。


ミリーナとウルシアの2人は、笑顔だったが目が笑っていなかった。


「あなた、空気を読みなさい!」

「そうです!」

「ヒィッ…」

屋敷中に、魔王の悲鳴が屋敷に響き渡った。




【屋敷2階・ジャンヌの部屋】


ジャンヌは、ベッドの上で俯せになり、両手で枕を口元に当ててギュッと抱き締めていた。


「大成の馬鹿…嘘つき…。死なないって言ったのに…」

大成の最後の姿を思い出したジャンヌは、涙が混み上がり、口元に当てていた枕に顔全体を覆い隠しギュッと抱き締める。


気が付けば、そのまま眠りについていた。



深夜、目を覚ましたジャンヌは、眠りにつく前まで枕を握り締めて泣いていたことで目元がまだ赤く染まっていた。


「大成…」

ジャンヌは呟きながら起き上がり、双剣を抱き締めて部屋を出た。




【屋敷・大成の部屋の前・廊下】


ジャンヌは、大成の部屋の前まで来ていた。


「姫様…」

向かい側の廊下から、矛を大切そうに抱き締めているウルミラが現れた。


「ウルミラ、あなたも来たのね」

「はい…」

泣いていたのだと一目でわかるほどウルミラも目元が赤く染まっていた。


2人はドアを開き、大成の部屋に入る。




【屋敷・大成の部屋】


部屋の中は、真っ暗でひんやりとして生活感のない感じがしている。


ジャンヌは、左手で壁に埋まっているクリスタルに触り魔力を流した。


ジャンヌの魔力で、部屋のランプに光が灯び、部屋を照らし、見慣れた光景が広がった。


部屋中の壁には、あちらこちらに押しピンでメモ紙が貼られており、そのメモ紙には魔法陣や文字が書かれている。


しかし、その文字はこの世界の文字ではなく、日本語で殴り書きに書かれており、ジャンヌ達は誰も理解できないままだった。


そして、目の前には沢山の魔鉱石や変わった武器などが散らばっている。


ジャンヌとウルミラは、更に奥へと進む。


奥には、大きな窓とその前にはベッドがあり、そのベッドから大成が起き上がって此方を振り向く幻影を見た2人。

だが、すぐに現実に戻った2人は頬に涙が伝った。


「大成…」

「大成さん…」

2人は、大成の名を呟きながら大きな窓を開けてベランダへと出る。



「ウルミラ、今までありがとう」

「私も姫様と出会えて幸せでした」

お互い、泣きながら笑顔を見せた。


「大成…。ごめんなさい…」

「ごめんなさい…。大成さん…」

謝罪をした2人は手を繋ぎ、ベランダから飛び降りる。


2人は目を瞑り、片方の手で大成から作って貰った武器を強く抱き締めたまま、頭から落ちていく。




【屋敷・中庭】


「「エア・クッション」」

ミリーナとウルシアは、慌てて大成のベランダから風魔法エア・クッションを唱えた。


ジャンヌとウルミラは、地面すれすれで圧縮した空気によって、ゆっくりと横たわる様な姿勢で地面に着地した。



なぜ、ミリーナとウルシアがここにいるのかというと、娘を心配した2人は娘達の部屋へ行き、居ないことに気付き、おそらく大成の部屋に行ったのだと思い、急いで大成の部屋へと向かっていたのだ。



「「はぁ、はぁ…」」

「よかった…。どうにか間に合ったわね…」

「ええ…」

ミリーナとウルシアは、呼吸を整えた後、身体強化をしてベランダから飛び降りた。



「「……。」」

ゆっくりと立ち上がるジャンヌとウルミラ。



ミリーナとウルシアは、そんな娘達に歩み寄り、そして…。

「あなた達!いったい何をしようとしたか、わかっているの!?」

2人は、娘達の頬をビンタした。

真夜中の闇に、ビンタの甲高い音が響き渡る。


ビンタをされたジャンヌとウルミラは、顔が横に向いた。


「お母様、お願いです。死なせて下さい。身勝手に召喚した私達が生き延び、召喚された大成は、私達の身代わりに死んだんです。ですから、お母様。お願いです。死なせて下さい」

ジャンヌは、涙を潤ませながら懇願する。


今まで屍の様だった瞳には、力が戻っていた。


「お願いします」

ウルミラも涙を溢しながら懇願する。


そんな娘達をミリーナとウルシアは、涙を浮かべて優しく抱き寄せた。

「お願いだから、そんなこと言わないで。あなた達が居なくなったら、私達は正気を保てない。それに、大成君のお陰で私達が生き延びたのよ。なら、私達が代わりに、大成君の分まで生きて、大成君がやりたかったことや成し遂げたかったことをしてあげることが大切だと思わない?」


「「……。お母様…。ごめ…んなさい…うっ、うぁぁぁん」」

ジャンヌとウルミラは、母親を強く抱き締めて、張り積めた糸が切れたかの様に大泣きした。


その光景を遠くから優しい表情で見守る魔王。


魔王は、食後に中庭を散歩していたら、立ち入り禁止になっている大成の部屋に明かりが灯ったので気になって凝視していた。


そこに娘達がベランダに現れ、驚くことに飛び降りた。

魔王は、助けようと思ったが、ミリーナとウルシアが現れたので見守ることにしたのだ。



次の日から、ジャンヌとウルミラも学園に登校するのだった。

次回、人間の国の話になります。

もし、宜しければ次回もご覧下さい。


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