先代の魔王と魔王修羅
先代の魔王と決着をつけるため、ジャンヌ達と別れた大成は、一人で先代の魔王と戦うことを決断する。
周りから指摘にされましたので、流星の部隊名を日の丸隊→レッド・ナイツに変えてます。
ご指摘ありがとうございました。
大変、申し訳ありませんでした。
【パルシアの森・中央・夜】
魔力感知で大軍が来ると知った大成は、太い木の枝に立ち止まり、追ってくる魔王と一騎打ちすることにした。
後を追っていた魔王は警戒し、間隔をとり立ち止まった。
「もう逃げないのか?それとも観念したか?」
魔王は、魔力感知を鋭くしながら尋ねた。
「いや、そろそろ決着をつけないとな。ここに、あんたの大部隊が押し寄せてくるんだろ?」
大成は、懐からマテリアル・ストーンを取り出した。
取り出したマテリアル・ストーンは、大成が改良した物で、形は出回っている物を半分にした形状と大きさだった。
大成は、魔力を込めて発動させ、マテリアル・ストーンは上空に浮かんだ。
「知っていたのか。ならば、なぜ1人で私に挑む?普通は全員で戦い、早期決着を試みると思うのだが?まさかとは思うが、一人で私に勝てるとでも思っているのか?小僧」
「ああ」
「嘗めるな、小僧!エア・スラッシュ」
激怒した魔王は、身体強化を高め、その場で剣を振って風の刃を8発放った。
「こちらも、あまり時間がない。悪いが一気に決めさせて貰う。グリモア・ブック」
大成はグリモアを出したが、サンライズ分の魔力を残したまま戦わないといけない。
そのため、できるだけ魔力温存のために魔法は唱えず、一直線に魔王に向かって走った。
グリモアを出したのは、突破的な危機があった場合、すぐに対応ができるようにするためだった。
魔王が作り出した風の刃が、目の前まで迫ってきたが、大成はスピードを落とさず、そのまま突っ込んだ。
大成は、身体を横に向けたり、首を傾けたりして、最小限の動きで避けながら、ポシェットの中からスロー・ダガーを取り出し、次々に魔王に向けて投擲していく。
「ライトニング…」
遠距離から魔法で追い打ちしようとしていた魔王は、慌てて剣でダガーを弾いていく。
「くっ、小癪な!」
魔王は、皮肉を込めながら大成の方を見たが、そこに大成の姿がなく見失っていた。
魔王は間近に違和感がしたので、少し視線を下に向けた。
大成は懐近くにいた。
「~っ!?」
息を呑み、目を大きく開くほど驚いた魔王だったが身体は硬直せず、自然と左手で大成を殴りにかかっていた。
「へぇ。硬直せずに、これに反応できるのか。流石、魔王だな。だが…」
大成は感心しながら、右手で魔王の左手首を掴み、軌道をずらしながら捻り、魔王の左腕を後ろに回して関節技を決め押し倒した。
「何だと!?」
魔王は何が起きたかわらず、気がついたら倒されていた。
大成は、すぐに魔王の背中に馬乗りし、右足で魔王の右腕を押さえつけて完全に動きを封じた。
「ぐっ、不覚っ」
必死に足掻く魔王だったが、大成に押さえつけられ、何も抵抗できない。
「足掻いても無駄だ。正気に戻って貰うぞ。サンライ…」
大成は、左手で魔王の後頭部に触れ、サンライズを唱えようとした。
「ぐっ、私ごと攻撃しろ!ワルキューレ!」
魔王が大きな声で命令した瞬間、上空から巨大な魔力を感知した大成は、空を見上げた。
上空には、ワルキューレの複数の羽で配列を組んで舞っているのが2組あり、1つの組は大きく円を描いていき、もう1組はその円の中でさらに4つの組に別れ、物凄いスピードで複雑な魔法陣を描き始める。
「おいおい、冗談だろ…。あの魔法陣は、禁術のホーリー・メテオ・ノヴァ・バースト…」
魔法陣を見た大成は、すぐにどんな魔法なのかを知り、慌てて魔王から離れた。
「こ、こんなはでは…」
魔王も驚きながら、急いでその場から離れる。
魔法陣が完成し、白く輝く魔法陣から真っ白い光が地上に放たれた。
光は大地にめり込み、大きな地震と共に轟音を鳴り響きかせ、火山が噴火したように大地は内側から大爆発し、光は天に立ち上った。
地上にあった物は、何もかも関係なく、消滅または空に吹き飛ばされた。
夜空を照らしている光は天に立ち上りながら、徐々に範囲を拡大して広がっていく。
そして、衝撃波が大成と魔王の2人に迫る。
「うぉ」
遠くまで離れることができた大成は、岩の影に飛び込み、ギリギリ衝撃波を回避ができたが、一方、回避が遅れた魔王は間に合わず、光と衝撃波の両方が襲いかかった。
「シャドウ・ウォール」
魔王は地面に剣を突き刺し、闇魔法シャドウ・ウォールを唱え発動させ、自身を囲むように球状の闇の壁を作り出した。
闇の壁に触れた光と衝撃波は、闇に飲み込まれていく。
空に舞い上がり飛ばされた土砂や木などが次々に落下する。
避難していた大成の場所にも降りかかった。
「くっ」
大成は身体強化を高め、木や岩など大きいな物は、蹴る殴るなどをして破壊したり、いなしていった。
大爆発が起きた場所は、直径500mぐらいの巨大なクレーターが半円形状に出来ており、その付近は更地になっていた。
更地の端側に黒い闇の球体があり、闇は徐々に薄くなり消え、魔王が現れた。
「ふぅ、攻撃しろとは言ったが…まさか禁術を使うとは流石の私も思わなかった。これからは気を付けないとな…」
予想外のことだった魔王は、溜め息を溢した。
「それにしても、あの小僧…いや、魔王修羅だったか。あやつは、これぐらいのことでは死ぬまい」
先程のやり取りで大成の実力を認めた魔王は、大成が逃げた大体の方角を見渡し、魔力感知を最大まで高めて警戒を強める。
見渡す限り辺り一面、大成が居た場所がわからないほど、生い茂っていた木々は、上から土砂や吹っ飛ばされた木、岩などに押し潰されており、悲惨な状態になっていた。
「ん?」
「ウィンド」
魔王が大成の魔力を感知した時、1ヵ所に突風が半円形状に巻き起こり、覆い被さっている物を吹き飛んだ。
吹き飛んだ場所に大成が現れた。
「ふぅ~、危なかった。ん?」
一息した大成は、既にボロボロになっている服を叩いて埃を落とした。
その時、周囲に魔力が集束しレゾナンスが発動した。
相手はローケンスだった。
「申し訳ありません。修羅様、ご無事ですか?」
「ああ、問題ない。だが1つ頼みがある。ワルキューレを倒せとは言わないが、できれば、もう少し惹き付けてくれたら助かる。それか、せめて遠ざけて欲しい」
「ハッ、この命代え……」
「いや、死ぬことは許さない。無理なら、こちらに仕掛ける気配があれば教えて欲しい」
「了解です。では、御武運を」
「ああ、頼んだ」
レゾナンスは解除され、大成はジャンプをして魔王が見える場所に着地した。
「やはり、生きていたか魔王修羅よ。まずは、謝罪をしよう。侮っていたのは私の方だったみたいだ。そして、今からお主を強敵と認め、本気で挑むぞ。ガイア・ソード」
驚いた様子もなく、魔王は左手を前に出し、土大魔法、魔法剣、ガイア・ソードを唱え発動する。
翳している左手の真下の地面に魔法陣が展開され、剣が現れ握った。
「ん?何を笑っているのだ?魔王修羅よ」
魔王は、訝しげな表情で大成に尋ねた。
「いや、すまない。認められることよりも、本気を出してくれることの方が嬉しく思っている自分に気付き、そんな自分が可笑しく。つい」
大成は苦笑いしながら、スロー・ダガーを取り出し、クルクルと回しながら左右の手に持ち構える。
「なるほど。お主の気持ち、わからぬわけではない。強者と戦いたいという欲望や願望。だが、しかし……フフフ…まさしく、お主は修羅そのものだな」
大成と魔王は、これからお互い命を懸けて戦うことになるのだが、2人は笑みを浮かべていた。
そして、静寂が訪れ、辺りは静かになる。
夜風が吹き、積もった土砂が崩れて落下した音が響いた瞬間、2人は動いた。
「「いくぞ!」」
2人はダッシュし、お互い距離を縮める。
「ファイア・ボール」
走りながら魔王は、必要以上の魔力を込め、炎球を無数に放つ。
だが、皆が放つ火球とは違い、火球のサイズが大小あり、まばらだった。
(流石、魔王だ。他の奴らとは違い、魔法の使い方が巧いな。ただ、魔法を放つだけでなく、数とサイズ、さらに必要以上の魔力を込めることで陽炎が発生し、死角を作ると同時に、さらに陽炎と火球のサイズを変えることで遠近感を狂わせようとするとは)
大成は、右に走り攻撃を避けていく。
「アース・ウォール」
魔王は、左手の剣でファイア・ボールを維持し、右手の剣を地面に突き刺し、アース・ウォールを唱えた。
大成の行く手に地面が盛り上がり、L字型の壁がそり立だった。
大成の前方と奥への逃げ道を塞いだ魔王は、すかさず大成に接近する。
(どうする…村雨で迎撃したら、余熱をまともに浴びるな)
「ウォーター・ウォール」
大成は、地面に両手を付き、迫ってくる火球の前に分厚い水の壁を作り上げ、顔と首を両腕で守った。
そして、火球は水の壁に激突し、水蒸気爆発が起こり、一瞬で辺り一体は白い蒸気に覆われた。
「ぐっ」
水の壁で、少し威力を減衰に成功した大成だったが、残りの魔力を考えて、最低限の身体強化しかしていなかったため、全身軽い火傷を負ったが痛みを気にしている場合はなかった。
突如、大成の正面に魔王の影が見えたと同時に、魔王の左手の剣が真上から迫ってきていた。
魔力感知を怠っていなかった大成は、気付いていたが視界が悪かったので少し反応が遅れた。
「くっ」
大成は、左手のダガーを前に出して防ごうとしたが、無惨にもダガーは切断された。
しかし、大成は切断されると予想していたので、右に移動して避けながら切断されたダガーを投擲した。
「あまい!貰った!」
首を傾げてダガーを避けた魔王は、右手の剣で凪ぎ払おうとした。
「それは、どうかな?」
「なっ!?」
大成は凪ぎ払われる前に、魔王が降り下ろした左肘を左手で押さえたことにより、魔王は剣を振り抜くことができなかった。
大成は、そのまま魔王の背後に回り、首を絞め意識を刈り取ろうとした。
「そうは、させんぞ!」
魔王は、右の剣で自分の左脇の隙間を通して、大成を串刺しにしようとする。
「ちっ」
止まらなければ串刺しになると判断した大成は踏み止まったが、完全には避けきれず、掠りを負い出血した。
だが、大成は気にせずに掴んでいる左腕に両足を使い、間接技をかけようとした。
「ヌォォ」
魔王は、強引に力ずくで大成を気にせず身体を捻り、大成を振り回しながら、右手の剣で大成を斬りかかろうとする。
振り回された大成は、すぐに関節技を解いて、魔王から離れ斬撃を回避した。
しかし、振り回された大成は、関節技を解いたことで空中に浮いた状態になり身動きがとれなくなる。
その隙を魔王は見逃さなかった。
魔王は、一気に接近して右手の剣を振り下ろす。
「逃がさん!」
まともに防いだ場合、ダガーごど切断されると判断した大成は、受け流すことにしたが、足が宙に浮いており、完全に受け流すことができず、どうにか武器の破損は回避できたが、自身は地面に叩き落とされた。
「ぐはっ」
受け身をとった大成だったが、呼吸が一瞬止まった。
しかし、すぐにばく転して大きく跳ね上がり、距離を取る。
その際、土を掴み、魔王へと投げつけた。
「ぐっ、小癪な。アース・ニードル」
魔王は接近しながら、左腕を顔の前に出して飛んできた土を防ぎ、魔法を唱えた。
大成が着地した瞬間、足元から土の針が飛び出す。
再びバク転して回避する大成。
次々と地面から土の針が襲いかかったので、連続でバク転して回避していく。
魔法が止んだ時、目の前に魔王が接近していた。
体勢が整ってない大成は、足元に傾いて落ちてあった剣を左足で踏みつけた。
剣はクルクルと回転しながら上に飛び、顔に当たりそうになった魔王は咄嗟に顔を引き、剣は魔王の前髪をかすめた。
「くっ」
(ここで決める!)
左手で剣をキャッチした大成は魔力を高め、剣を振り下ろす。
「ハッ」
「~っ!」
右手の剣で防いだ魔王は驚愕した。
今までと比べ物にならないほど、大成の斬撃は重く、力強さがあったからだ。
「「うぉぉぉ」」
2人は、お互いその場で連撃を繰り出した。
鋭く重い斬撃同士が、一撃一撃衝突するたび、衝撃波が生まれ、お互い地面に食い込んでいく。
「くっ」
「うっ」
衝撃波の間近にいる2人は、腕、肩、頬、太股など掠り傷を負っていく。
それでも、2人は歯を食い縛りながら、一太刀一太刀に全力で振るい斬り合い続けた。
応急処置をしていた大成だったが、魔王の斬撃は体の芯から響くほど重い斬撃で、その斬撃と打ち合ったことで傷口が開いた。
「ぐっ…くっ」
大成は、攻撃の手を緩めなかったが、傷口が開いたことで、斬撃に力強さが足りず、力負けをし弾かれた。
互角だった均衡が崩れた瞬間でもあった。
「傷口が開いたようだが、容赦はせん。オォォ!」
魔王は、手を休めることなく追い討ちをかける。
「ちっ」
大成は、徐々に攻撃が極端に減り、防ぐことしかできなくなっていき、力で押され斬撃が掠りだし始めた。
「くっ」
(このままだとジリ貧だな。それに、そろそろ来るはずだ。その時に、一か八か仕掛けるか)
凌ぐことしかできない大成は決断した。
「はぁぁ」
押しているが決定打にかけている魔王は、大成が握っている左手の剣に狙いをつけ、右手の剣で外側から内側に向けて凪ぎ払った。
「しまった!」
大成の左腕は、右肩側の方へと弾かれた。
「これで、終わりだ!」
魔王は、大成の頭目掛け、左手の剣を上から振り下ろした。
「フッ、これを待っていた。はぁぁ!」
大成は、弾かれた勢いに逆らわず、逆に身体のバネを使い、更に回転スピードを上げ、右手のスロー・ダガーで凪ぎ払いのカウンターを狙った。
「ぐっ」
魔王は、スロー・ダガーが胸元に触れる直前、歯を食い縛り、これから襲ってくる痛みに備えた。
スロー・ダガーは、魔王の胸元に食い込んだが、それと同時にスロー・ダガーは飴細工のように砕けた。
魔王との打ち合いで、既にスロー・ダガーは草臥れていたのだ。
魔王は一瞬だったが固まっていたが、大成は表情を変えず、次の手に移っていた。
「はぁぁぁ!」
大成は動揺せずに、そのまま回転を続けて左の剣で凪ぎ払う。
「ウォォォ」
硬直していた魔王は、雄叫びをあげながら、右手の剣を下から掬うように真上に振り上げ、ギリギリで大成の剣を弾き飛ばした。
弾き飛ばされた大成の左手は、大きく上に挙げられた状態になり、握っていた剣は、後ろに飛ばされ地面に深く突き刺さった。
「ハァハァ…。一瞬だがヒヤッとしたぞ。狙いは良かったが、怪我で動きが鈍くなったな。やはり、お主は侮れなかった」
魔王は呼吸を整えた。
「残念だが、ここまでのようだ。お主とは万全な状態で戦いたかった。だが、これは戦争だからな。やむ得まい。せめて一思に止めを刺してやろう」
「……」
俯いている大成に、魔王は振り上げていた右手の剣を振り下ろした。
だが、剣は大成に当たる直前に半ばで折れ、大成に触れることはなかった。
すぐさま左手の剣で攻撃しようと思った瞬間、左手の剣も折れ、折れた剣先が地面に落ちた。
「な、何!?」
魔王は驚愕した表情で大成を見つめた。
大成の瞳は冷酷で冷たく、全ての物を飲み込むような闇のように吸い込まれそうに感じた。
しかし、それに反するがごとく、瞳孔が大きくなったり小さくなったりしており、殺気というには生易しいほど、死を実感できるほどの威圧感を放っていた。
「~っ!!雷歩」
大成の瞳を見た魔王は、自分が殺される幻影を見てしまい息を飲み込み、意識的にではなく、本能が足に雷属性を纏わせ高速を超えた神速でバックステップで後ろに下がる。
魔王は、後ろに下がっている時、いつの間にか目の前にいたはずの大成の姿が消えていた。
背に誰かの手が当たり、魔王は後ろを振り返った。
そこに、大成の姿があり驚愕する。
「なっ!?」
鳩尾に大成の右フックがめり込み、周囲に衝撃波が発生した。
「ぐはっ。がっ……」
魔王は「く」の字になり呼吸ができず、両手で鳩尾を押さえながら、後ろにたどたどしい足取りで後ろにさがった。
大成は、魔王の頭を両手で掴み、両腕を引きながら右膝で魔王の顔を打ち抜いた。
「がはっ」
後ろに仰け反る魔王。
「ぐっ」
大成は右足で魔王の左ふくはらぎを蹴り、魔王の体勢を崩した。
大成は、その場で時計回りに回転し、遠心力をつけた回し蹴りで、体勢を崩している魔王の顔面を狙った。
魔王がよろめいたことで直撃はせず、大成の踵が魔王の後頭部を掠る。
一旦、離れようと思った魔王だったが、大成の回し蹴りは続きがあった。
大成の回し蹴りは軌道を下に変え、踵落としになり、前屈みになっていた魔王の後ろ首筋に直撃した。
「がはっ」
魔王は意識を手放し、スローモーションの様に膝から地面につき、ゆっくりとその場に倒れた。
「ハァハァ、うっ…。あった…」
傷口が完全に開き出血した大成は、魔王に歩み寄り、魔王の懐からハイ・ポーションとマジック・ポーションを拝借し飲んだ。
しかし、限界が訪れていたので、両方とも効果は著しかった。
大成は、サンライズを唱えれる状態ではなかったので、その場にゆっくりと腰を下ろし、足を広げて座った。
「はぁ、まいったな…。とりあえず、レゾナンスで報告だけでもするか」
大成は、後ろに両手を付き、真っ暗な夜空を見上げた。
軽い鬱になってしまい、投稿が遅れて申し訳ありません。
もし、宜しければ次回作もご覧ください。




