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一日の出逢いと事件

3年前にジャンヌとウルミラに会ったことを思い出した大成。

ジャンヌは、その頃を思い出した。

【過去・魔人の国・ラーバス国・屋敷一階・召喚部屋】


「ジャンヌ、ウルミラ大丈夫か!?」

「「いったい、何事ですか!?」」

「何だ?あの子供は…。人間か?」

魔王と【ヘル・レウス】メンバー達は、慌てながらジャンヌとウルミラがいる【召喚の間】の部屋に押し掛けた。


魔王達は、とてつもない魔力を感じたことや眩しいほどの光で照されたことで会議中だったが驚きと不安を抱き、会議を中断して魔王は【ヘル・レウス】メンバー達を連れてジャンヌ達の【召喚の間】の部屋に向かったのだ。




ジャンヌとウルミラの2人は、自分達が起こした問題の大きさを認識してすぐには言葉が出なかった。


「た、大変、申し訳ありません。私がついておきながら…」

涙目でウルミラは謝罪をした。


「ち、違うの…。お父様、ごめんなさい。私が異世界の人を召喚しました。異世界の人と…。その、お友達になりたかったので…。だから、ウルミラは悪くないの。ウルミラは反対していたのだけど、私が1人でもするって言ったから心配して手伝っただけなの。信じて下さい…お父様…」

ジャンヌも泣きながら真実を告げた。



「魔王様、如何します?とりあえず、召喚した人間を始末しますか?」

腕を組んだままローケンスは、大成を睨みつける。


「お、お父様。それだけは、やめて下さい。私達が勝手に召喚したので、大成に罪はないです!お願いします…。殺さないで…。お、お父様なら、大成をもとの世界に帰還させることができるはずです…」

「わ、私からも、お願いします」

ジャンヌとウルミラは、頭を深く下げた。



皆は無言のまま魔王に視線を向けて判断を待ち、暫くの間、静寂が訪れる。


「ふむ…。皆の想いはわかった。結論を言おう。私は、せっかくジャンヌとウルミラが、大魔法を成功させ召喚したのだ。ジャンヌ、ウルミラよ。そこの人間と一日だけ遊んでも構わない。だが、その代わり一日だけだぞ!月が紫色の間だけだ。そうしないと流石の私でも、その人間をもとの世界に帰還させれなくなる。良いな?」

魔王は髭を触りながら、ジャンヌとウルミラにウィンクをした。


「「あ、ありがとうございます!」」

「お父様、大好き!」

ジャンヌとウルミラは笑顔を浮かべて感謝し、ジャンヌは魔王に抱き付いた。


魔王は、左右の手でジャンヌとウルミラの頭を優しく撫でながら笑顔になったジャンヌとウルミラを見て微笑んだ。


【ヘル・レウス】メンバーは溜め息をする者、笑う者、首を左右に振りヤレヤレと仕草する者、それぞれだったが1つだけ共通したことがあった。

((相変わらずの親バカだな))

【ヘル・レウス】メンバーは、心の中で同意したのだった。



「大成、ウルミラ、早く行きましょう!時間が勿体無いわ」

ジャンヌは、大成とウルミラの手を引っ張りながら駆け足で部屋を出ていく。



「な、何だと!あの人間、ジャンヌの手を握っただと許さん!今すぐ殺してやる!」

「お、落ち着いて下さい。魔王様」

ローケンスは慌てて止めに入り、他の【ヘル・レウス】メンバー数人もローケンスを手伝い、どうにか魔王の暴走を阻止した。



「はぁ、はぁ…」

落ち着きを取り戻した魔王は、1度深呼吸して気持ちを落ち着かせる。


「フン…。まぁ、良い。それより誰でも良い、ジャンヌとウルミラを遠くから護衛をせよ」

「「えっ!」」

魔王の発言に皆が戸惑う。


「魔王様、お言葉ですが…。魔力がない、ただの人間の子供ですよ。流石に、ジャンヌ様やウルミラが人質になったり傷を負うことなどないかと思いますが…」

魔王に質問したニールと、ニールに同意した【ヘル・レウス】メンバーは無言で頷く。


「確かにニール、お前の言う通りだ。普通は、そう思うだろう。だが、あの人間の子供を見た時、私の直感があの子供はただ者ではないと警告しているのだ」

トントンっと、魔王は自分の頭を人差し指で突いた。


「ローケンス様は、どう思いますか?」

「俺も魔王様に賛成だ。あの子供は、普通ではないと俺も感じた。油断は禁物だ」

ニールの質問に、ローケンスは顎に手を当て答える。


「そうだな…。ウルシア、すまないがジャンヌとウルミラの護衛を頼むぞ」

「はい、お任せ下さい」

魔王はウルミラの母であるウルシアに護衛を頼み、ウルシアは笑顔で了承して部屋を退出した。



「これで、ひとまず安心ですな。それにしても、あのウルシア様がいつの間にか子供を授かっていたことに私も含め皆は驚きましたね」

フッと思い出したニールは口にする。


「そうだな。いったい、誰が相手なのかも謎だ。気になって、娘のウルミラに聞いてもわからないと言っていたからな。ウルシア、本人に聞いてはみたが助けて頂いた男性の方です。とか言って誤魔化されたからな。それ依然に、あの【氷の女王】と呼ばれるウルシアがピンチになるとは思えんし、その状況を覆すほどの実力者とは一体何者なのだ?」

ローケンスの疑問は、皆の疑問でもあった。


「~っ!」

会話を聞いていた魔王はビクッと少し動揺したが、皆は気付かなかった。


「そろそろ、町のナイディカに向かわないと遅れるぞ」

魔王達は皆を促して用事で町に向かった。



【過去・魔人の国・ラーバス国・屋敷2階・廊下】


ジャンヌ達は、屋敷の広い廊下を駆け走っていた。

廊下の左右には、沢山の立派な甲冑が並んでいる。


「す、凄いな!!ジャンヌは、お金持ちなんだね」

「そうです!何たって姫様は、この国の姫様なのですから」

「そんなこと、どうでも良いわ。それより、ここよ!」

大成の質問にウルミラは嬉しそうに自慢気に答え、先頭を走っているジャンヌは2人の手を引っ張って行き目的の部屋の前に辿り着いた。


「あ、あの姫様。この部屋は、姫様の部屋ですけど…」

「何言っているのウルミラ?当たり前でしょう」

「えっ?いや、知り合ったばかりの僕が、お姫様の部屋に入って良いのかな?」

「別に構わないわ、どうぞ。あと、大成。あなたは私のことジャンヌと呼びなさい。あなたは、この国以前にこの世界の住人じゃないから良いわよ」

「え!?でも、流石に…。わかったよ、ジャンヌ」

戸惑った大成だったが、ジャンヌに睨まれ了承した。



【過去・魔人の国・ラーバス国・屋敷2階・ジャンヌの部屋】


お洒落な立派なドアを開けたジャンヌは、先に自分の部屋に入る。

「お邪魔します…。うぁ~!豪華な部屋だね」

「失礼します」

大成とウルミラは、ジャンヌに続くように軽く御辞儀して恐る恐る部屋に入った。


「あっ、すみません。今すぐに、お茶を用意してきます」

メイドとしての仕事を思い出したウルミラは、すぐに部屋から出ようとする。


「ウルミラは、行かなくって良いわよ。お茶は、部屋に向かう途中にレゾナンスで美咲に頼んだから大丈夫だから。それよりも、2人共、好きなところに座って良いわよ。あっ、でもベットはダメよ」

ジャンヌはウルミラを止め、2人を座らせた。


「わかりました」

「わかったけど、ところでレゾナンスって何?」

「精神干渉魔法です。えっと、遠くの方とお話が出来ます」

「ま、ま、魔法!?」

「そうよ。何をそんなに驚いているの?」

ジャンヌの話によるとレゾナンスは、テレパシーと同じで離れていても会話したい人と会話ができるという魔法だそうだ。


「いやいや、普通じゃないよ!」

大成は、顔の前で右手を左右に振りながら驚く。


「ん?それよりも、大成、あなたの世界の話が聞きたいわ」

「わ、私もです。興味があります」

ジャンヌとウルミラは、目を輝かせて大成を見る。


「別にいいけど。この世界より面白くないと思うよ。だって、僕の世界は魔法がない世界だから」

「「えっ!?魔法がない!?」」

この世界では魔法は当たり前なほど常識なので、大成の言葉に2人は衝撃を受けた。


「ん?そうだけど?」

大成は、当たり前みたいに答えながら首を傾げる。


「戦争とか対立、争い事はないの?」

「悲しいけど、あるよ」

「魔法がないなら、主に剣や弓とかで戦うのですか?」

「いや…剣はたまに使うけど、弓はあまり使わないかな。剣や弓より拳銃を使うよ。でも、爆弾とかミサイルの方が破壊力あって主に使うかな」

「拳銃?爆弾?ミサイル?って何?」

「え?!この世界にはないの?」

「聞いたこともないし、そんな物はないわ」

「ないです」

「そうか…。なら、まず拳銃から説明するよ…」

こうして、大成は武器について説明を始める。


(私達の世界は魔法があるから、遠距離武器や兵器の文明が遅れているかもしれないわね)

ジャンヌは、大成から拳銃と爆弾についてのおおまかな説明を聞いて思った。



「それにしても、大魔法や禁術クラスの破壊力を持つ兵器が簡単に量産できるなんて…。大成の世界は恐ろしいわね…」

「そうですね…」

ジャンヌとウルミラは、大成の世界は魔法がないので平和な世界かと思っていたが実際はむしろ恐ろしかった。


「今度は、この世界のことを教えてよ」

雰囲気を変えるため、大成は話題の方向を変える。


「そうね。でも、大成の世界と大して変わらないわ。兵器の代わりに魔法があるだけよ。あとは、色んな種族、魔物が存在していることぐらいかしら?」


「魔物!?ねぇ、どんな種族と魔物がいるの?」

魔物、種族の言葉を聞いた大成は、興味が出て目を輝かせて尋ねる。


「種族は、主に私達魔人、獣人、エルフ、竜人、人魚、人間、巨人がいるわ。もっと、細かく言うともっと沢山増えるわね」

ジャンヌは、右手の指を折りながら数えて説明した。


その時、コンコンとドアを軽く叩くノックが聞こえた。

「姫様、お飲み物お持ち致しました」

ドアの向こう側から、女性の声がした。


「美咲、入って良いわよ」

「失礼します」

【ヘル・レウス】メンバーの美咲が、飲み物を持ってきた。


「こちらに置いておきますね」

「ええ、ありがとう」

「「ありがとうございます」」

ジャンヌに続いて、大成とウルミラがお礼を言った。


「丁度、喉が乾いていたところだったの」

ジャンヌは、カップを手に取り飲もうとした時…。


「ちょっと待って!ジャンヌ」

慌てて大成は右手を伸ばして、コップを持っているジャンヌの右手を掴んで止める。


「えっ?何?」

手を止めたジャンヌは、大成が言っている意味がわからず頭を傾げる。


「ジャンヌ、ちょっとそのカップ貸して」

「えっ!?」

ジャンヌは訳がわからないまま、大成にカップを取られた。


大成は近くにあった花瓶を手に取ってカップを傾けて中の液体を花瓶に注いだ瞬間、花は枯れるというよりも薄い氷が砕けたように一瞬でバラバラになった。


「「~っ!!」」

ジャンヌとウルミラは、花を見て驚愕した。


「あらあら。なぜ、わかったのかしら?」

美咲は、自分がしたことを隠す気もない態度で威圧感と殺気を放ちながら大成を睨む。



「それは、美咲さんの仕草でわかりました。一瞬だったけど目を細めて笑っていましたので。もしかしたらと思って、確かめさせて貰いました」

大成は、気付いたことを教える。


「なるほど、殺気は出してなかったのだけどね。次から気を付けるわ。ありがとう、確か大成君だったかしら?」

自分の頬に手を当てた美咲は、笑みを浮かべながら大成にお礼を言った。


「そ、そんな…。何かの冗談でしょう?美咲」

「そうです。美咲さんは、そんなことしないはずです」

大成は未だに信じられずにいるジャンヌとウルミラの様子をチラッと見たが、今は危険な美咲を優先に警戒する。


「美咲さん、疑問があります。なぜ次はあると思ってるのですか?失礼ですが、あの部屋では貴女の強さは中間辺りが関の山のはず。もし、あなたと同じ裏切る人が1~2人居ても勝てるとは思いませんが」

大成は、浮かんだ疑問と本能で感じたことを説明しながら指摘した。


「へぇ~、すごいわね。頭が回るだけでなく、魔力がないのに相手の強さもわかるなんて。魔王とローケンスが警戒するだけのことはある訳ね。ねぇ、大成君。あなたは私と同じ人間だから一緒に来ない?あなたなら少し鍛えれば、すぐに私の片腕になれるわよ」

値踏みする様な視線で大成を見た美咲は、大成を高く評価した。



「大成…」

「大成さん…」

ジャンヌとウルミラは、不安そうな表情で大成を見つめる。


「すみませんが、遠慮します」

「大成!」

「大成さん!」

大成は自分の返事で、明るくなったジャンヌとウルミラを見て微笑んだ。


「あら、残念ね。何故、断るの?あなた、ここで死にたいのかしら?先に言うけど、姫様の護衛でウルシアが一人だけ残っているだけで、他は隣の町に向かって、すぐには戻って来ないわよ。そうそう、いい忘れていたけど裏切った理由は、普通は教えれないのだけれど今回は特別に教えてあげるわ。というより、もう会議でバレているからね。私たち人間は、とても強い勇者の召喚に成功したのよ。それで、初めに潰す国は魔人の国に決まったわ。武器・防具・装飾など、装備に必要な魔鉱石が沢山採取できるという理由でね。魔人の国の内側から、大ダメージを与えるのが私の役目なの」

美咲は、頭を傾げながら頬に手を当てながら上機嫌にペラペラと説明した。



ジャンヌは、一度瞳を閉じ深呼吸して目を開く。


「そう、残念ね。せっかく家族のように思っていたのに…。とても悲しいわ…。だけど、あなたがその気なら仕方ないわ。私やウルミラじゃあ、あなたに敵わないかもしれないけど。こちらには、ウルシアがいるのよ」


「そうです。お母様は、美咲さんより強いです」

ジャンヌとウルミラは、美咲を敵視した。


「確かに、そうね。でも、今日は特別な日なのよ。今日だけ私は【ヘル・レウス】の中で一番強いわよ」

美咲は言いながら、左手を前に出した。


違和感を感じた大成は違和感がするドアに視線を向けた瞬間、ドアが破壊され部屋に廊下に並べてあった3体の甲冑が入ってきた。


そして、甲冑は3体だけでなく、ドアから次々と甲冑が部屋に入ってくる。


「「~っ!!」」

「これが…魔法!?」

「そうよ。これが、私の魔法。ユニーク・スキル【ドール・マスター】よ。普通は、甲冑一体一体が王国の騎士団ぐらいだけど。今日は、月が紫色に変色している特別な日だから、自然の魔力が満ちているわ。私の魔法は自然の魔力も利用しているは、姫様やウルミラも知っているでしょう?フフフ…。そう、今日だけ一体一体は暗部クラスの強さを持っているわよ」

ジャンヌとウルミラは美咲の説明を聞いていくうちに、美咲のスキルを思いだして絶望の表情に変わる。

そんな2人の表情を見て、美咲は高らかに笑いながら説明をした。


暗部とは、【ヘル・レウス】メンバーの直属の部隊のことだ。

【ヘル・レウス】メンバーは、時折、騎士団の中から優秀な者を自分の隊に率いれている。



「姫様とウルミラ、それと運が悪かったあなた。ここで、死になさい。さぁ、華麗に舞って姫様達を殺すのです!行きなさい!私の可愛い人形達!」

笑顔でジャンヌ達を見ながら、美咲は甲冑に命令し突撃させた。

この時、美咲は魔力のない大成は普通の子供と判断しており侮っていた。


大成は美咲が自分から視線を外していることに気付き、急いで近くにあった椅子を投げて窓ガラスを割る。


「2人とも逃げるよ。ん?なっ!」

返事がないので大成は振り向く。


2人は絶望したまま固まっており、目の前には5体の甲冑がジャンヌとウルミラに斬りかかっていた。


「うおぉ」

大成は、慌てて2人の襟首を掴んで思い切り引っ張った。


「「きゃ!コッホ、コッホ…。」」

突然、大成に襟首を引っ張られてむせるジャンヌとウルミラは我に返った。


ジャンヌとウルミラが今さっきまでいた場所に、甲冑が振り下ろした剣や槍や斧が突き刺さる。



大成は、すぐに2人を(たわら)を担ぐように持ち上げた。

「お、降ろして!離しなさい!」

「お、降ろして下さい!」

ジャンヌとウルミラは、異性に抱き寄せられて恥ずかしくなり顔を真っ赤にして叫ぶ。


そんな2人を無視して、大成は担いだまま窓ガラスを割った窓から飛び降りる。

次回は、反乱を起こした美咲と戦います。

もし宜しければ、次回もご覧頂けたら幸いです。

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