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交渉と勧誘

勇者流星のホワイト・エンドが、魔王達を光の中に飲み込んだ。

【過去・マテリアル・ヤンマッハの林】


魔王達を飲み込んだ光は、徐々に薄れていった。


「魔王様!」

「魔王様っ、ウルミラ!」

ローケンスとウルシアは叫び、ウルシアは魔王達の元へと走った。


先程まで凍っていた大地は溶けており、魔王達が居た場所には、大きなクレーターができていた。

魔王達4人は、クレーターの中で立ち尽くしていたが、魔王はジャンヌ達を庇い、ジャンヌ達を抱きしめていた腕の力がスッと抜け、魔王はジャンヌ達に凭れ掛かる様に倒れた。


「あなた!」

「お父様!」

「魔王様!」

泣き出しそうな声で、ミリーナ達は魔王に呼びかけて、ゆっくりと魔王をうつ伏せに寝かせた。

ウルシアは、駆けつける。


魔王の背中は、重度な火傷みたいになっており爛れていた。


「み、皆は無事か?」

左右の焦点がズレており、虚ろな眼差しで魔王は尋ねた。


「ええ、大丈夫よ。あなたのお陰で誰も怪我はしてないわ」

「そうか…それは良かった…うっ…」

「あなた!あとは、私達に任せて。あなたは心配せずに、ゆっくりしていて」

「ああ…すまぬが…あと…は任せた…ぞ…」

ミリーナは魔王の手を両手で握りしめながら約束を交わして、魔王は意識を手放し気絶した。



流星は、ミリーナ達が魔王との最後の別れを済むまで、その光景を眺めながら待っていた。


こういう別れは、特殊部隊の時から相手が標的でも、できる限り大切にしている。

もちろん、不意をついて攻撃する輩には容赦はしなかった。



「取り込み中すまないが、そろそろ続きを始めようか?エンチャント・ウィンド。烈風波」

流星は、両剣に風属性を寄与して横に振り、突風を巻き起こした。


突風は魔王に当たらず、ジャンヌ達だけを襲った。


「「きゃ」」

ジャンヌ達は、突風を受けて後方に飛ばされ倒れた。


「マテリアル・ストーンがあれば証拠になると思うが、他の奴らが難癖つけてくる可能性がある。悪いが確実な証拠が必要だ。だから、魔王は連れていく」

流星は両剣を肩に担ぎ、ゆっくりと魔王に歩み寄る。


「「うっ」」

ジャンヌとウルミラは、立ち上がろうするが、魔力を消耗し体に力が入らず、立ち上がることができなかった。


そんな2人に、ミリーナとウルシアは中腰になり、娘の肩に両手を置いた。


「「あとは、任せなさい」」

顔だけ振り向いた娘達に、ミリーナとウルシアの2人は笑顔で頷いた。


「お母様…。何もお役に立てず、ごめんなさい」

「お母様…。申し訳ありません」

涙を溢しながら、2人は謝った。


「何を言っているのよ。あなた達が助けに来なかったら、先程の光属魔法で、私達は死んでいたわ。助けてくれて、ありがとう。それに、ウルシア。これが、最後になるかもしれないのよ。だから、最後ぐらい敬語ではなく、昔みたいに親しく話して欲しいわ」

「フフフ、それもそうね。わかったわミリーナ。それと、私からもお礼を言うわ。2人とも魔王様とミリーナを守ってくれて、ありがとう。行くわよミリーナ」

「ええ、ウルシア」

ウルシアとミリーナは、笑顔のまま娘達の頭を撫で、立ち上がり一歩前に出た。


「久しぶりね。ウルシア」

「そうね。ミリーナ」

ミリーナとウルシアは横に並び、ミリーナは左手を出し、ウルシアは右手をミリーナの左手に添え重ねた。


2人は、残りの魔力を振り絞り、体を纏う魔力が一気に膨れ上がり、別々だった2人の魔力が1つになり始め、共鳴をして更に一気に増大した。


「「凄い…」」

「凄いな…。ユニゾン魔法が、1日に何度も見られるとはな…」

ジャンヌとウルミラは、自分達の母親を見て唖然となり呟き、一方、流星も驚愕していたが、次第に口元が笑っていた。



「広範囲魔法でも、あの先程の鷹みたいな魔法で防げるのかしら」

「それに、倒すことは出来なくても、あなたを封印して無力化すれば良いのよ」

「「極寒の牢獄、アイス・エッジ」」

ユニゾン、氷と風属性の複合封印魔法アイス・エッジを唱え発動した。


2人の重なり合っている手から、吹雪が発生し広範囲に広がる。

吹雪の雪が地面に着弾した場所は、一瞬で凍りつき、吹雪は流星を襲う。



「お前達の言う通り。その技は、先程のファルコンでは防げないな。だが、エンチャント・シール、永遠(とわ)の牢獄、シール・クリスタル・レイン」

再び、流星は両剣に封印効果を寄与し、魔力を込めて横に振り抜いた。


両剣から、数え切れないほどの無数の小さな紫色のクリスタルが、広範囲に放たれた。


こちらも、クリスタルが地面に着弾した瞬間、クリスタルの結晶に覆われていく。


そして、吹雪と無数のクリスタルが衝突した。

吹雪はクリスタルに覆われたり、クリスタルの表面を凍らせることもあり、ほぼ互角だった。


「勇者。あなたは、もう、そろそろ魔力が限界のはずよ」

「そうね。いくら化け物でも、魔力が無限な訳がないわね。いつ尽きても、おかしくないわ」

「……」

ミリーナとウルシアの質問に、流星は無言を通した。

2人が言う通り、流星は残りの魔力量が、あまり余裕がなかった。


そして、氷の結晶とクリスタルが地面に落ち貯まり、それに当たっていき、とうと中央に、大きな半分が凍ったクリスタルができた。


しかし、互いに攻撃をやめず、さらに大きくなっていく。

そして、お互いの姿が見えなくなった瞬間、拮抗状態は崩れた。


突如、ミリーナとウルシアの上空からクリスタルが降り注いだのだ。


「「きゃ!?」」

2人は驚き、慌てて吹雪を上空に向けた。

だが、この対応は悪手だった。


凍ったクリスタルや、雪を覆ったクリスタルが、真上から、落下してきたのだった。


急いで立ち位置を変えようとした時、一瞬だったが吹雪の威力や勢いが落ちた。

その瞬間、流星は一気に魔力を込め、放出しているクリスタルの勢いが増幅させ、2人を襲った。


「ジャンヌ、ウルミラ。お母さん達、約束を守れそうにないわ。ごめんね」

「あなた達は、ローケンスを連れて、早くここから逃げなさい。1度、撤退して態勢を整えるのよ。そして、魔人の国を守って欲しいの。あなた達なら、きっとできるわ」

「そうね、ウルシア。2人とも、その歳でユニゾン魔法が使えることは、本当にとても凄いことなのよ。それに、私達の自慢の娘達だもの、きっと私達を超えることができるわ。自分達を信じなさい」

もう、無理だと理解していてもミリーナとウルシアは諦めず、必死に魔力を放ちながら、少しでも残りわずかな時間を作り、娘のジャンヌとウルミラに伝えた。


「残念だが、終わりだ」

冷酷な声音で流星は宣言し、残り僅かな魔力を振り絞り、更に魔力を込めた。


「「うっ」」

勢いに押され、持ち堪えることができなくなり、クリスタルが迫ってくる。


「ジャンヌ」

「ウルミラ」

ミリーナとウルシアは、自分達の娘に振り返り、名前を呼んだ。


そして…

「「愛しているわ」」

涙を溢しながら、自分達の娘に笑顔で伝え、クリスタルの雨に打たれた。



「「お母様~!!」」

ジャンヌとウルミラは、泣きながら叫んだ。

そして、2人の目の前には涙を溢しながら笑顔のままの状態で、クリスタルに覆われ封印された自分達の母親の姿があった。


「「お、お母様…」」

魔力を消費し過ぎて、まともに動けないジャンヌとウルミラは、這いずりながらクリスタルに閉じ込められ封印された母親に近づき、しがみついて泣く。


「その封印を解くには俺を倒すか、もしくは俺と同等の力を持つ者が光魔法で解除するかしかない。今度、いつなるか知らないが、召喚できる日が訪れたなら、異世界から俺と同等か、それ以上の強さをもった者を召喚することを勧める」

流星は、ジャンヌとウルミラに助言をしながら魔王に近づき、魔王を肩に担いだ。

そして、流星はその場を後にした。


流石の流星も、魔力が尽く寸前だったので、ジャンヌ達を見逃したのだ。


流星の姿が見えなくなり、ローケンスは安心し、そこで意識を失った。

マテリアル・ストーンは、使用者の意識がなくなったことで輝きを失い、そこで録画が終り映像が消えた。




【隠し部屋】


部屋は、静まり返っていた。


「見た通りです。今は、ここにいるヘルレウスメンバー以外は亡くなりました。戦力増強のために修羅様達を召喚を致しました。何かわかりましたか?」

自分の泣いている姿を見られ、ジャンヌは少し頬を赤く染めながら、大成に尋ねる。


「ん?それより、普段通り言葉使いで構わない。あと、わかったのは2人とも、やはり可愛いなって改めて思ったことだ」

大成は、ニヤっと口元をつり上げて答えた。


「な、な、な、何を言っているのよっ!も、もうっ!」

「ふえぇぇ…」

赤く染めていたジャンヌとウルミラの顔が更に真っ赤に染まり、ジャンヌは大きな声だし、ウルミラは恥ずかしさのあまり俯いた。


皆は、そんな2人を見て笑顔になり、張り詰めていた緊張が和んだ。


「ゴッホン、修羅様。お戯れは、それぐらいにして、本当のことを教えて下さい。何か気づいたのでしょう?」

ローケンスは、わざと咳をして大成に尋ねた。


「気付いていたか、流石ローケンス。いや皆も気付いていたみたいだな。おそらく、俺が勇者と一騎打ちで戦った場合、勇者が愛用の武器を使用してない場合は、勝率4割ぐらいだ」

「愛用の武器とは?先程の両剣のことですか?」

「残念だが違う、ニール。勇者の愛用の武器は2丁拳銃だ」

「2丁拳銃とは何ですか?」

ニールは首を傾げながら、初めて聞く武器の2丁拳銃を尋ねた。


この世界には銃という武器が存在しないので、ニール以外の他の皆も、首を傾げながら大成を見た。


「確か、鉛の玉を目に映らない速さで飛ばし、当たり所が悪ければ、即死する強力な武器のことだったわよね?」

ジャンヌは、3年前、ウルミラと一緒に大成を召喚した時に、銃のことを聞いたことを思い出した。


「そうだ、ジャンヌ。正確に言えば、弾丸を目に映らない速さで飛ばすことが可能だ。弾丸の素材は、前方に少量の鉛、後方に鋼棒と言ってスチール・コアを…あ、すまん。今は、そんなことは、どうでも良いことだな。2丁拳銃とは、わかりやすく言えば、双剣と同じだ。銃を左右の手に持って戦うスタイルと言えばわかるか?」

「大成さん、ごめんなさい。武器はどんな形をしていたか忘れました」

ジャンヌの質問の後に、ウルミラも質問した。


「ウルミラ、それは仕方ない。3年前のことだだたからな。第一この世界にはない武器だ。勇者が愛用している銃は、SIG226といって、射撃性能や機械的な強度は無論、信頼性は文句なしの銃だ。そして、もう片方はFN Five-seveNと言い、5.7mm弾を使用するから撃った時の反動が小さく、他の拳銃の9mm弾よりは貫通性能に優れていて、装弾数も多めに装填できる銃だ。あと一般のと違い、銃にナイフぐらいの刃がついている。こんな風にだ」

説明をしながら、大成は2つの銃の絵を細かく描いた。


「ねぇ、大成」

「ん?どうした?ジャンヌ」

ジャンヌに声を掛けられ、大成は静まり返っている周りを見渡した。

皆の表情を見てわかった。

誰も話についていけずに、皆は苦笑いしていたのだ。


「あっ、すまない。まぁ、こんな形の武器だ。今回は弾丸を飛ばすだけでなく、弾丸の代わりに魔力を飛ばすかもしれない。おそらくだが、勇者の能力は、好きな効果を与えることができると思われる」

「なるほどね。その可能性が高いね。流石、ダーリン。飛ばす魔力弾に、氷属性、炎属性などの効果が付くってわけだね」


「やっかいなことに、マキネの言う通りになる可能性が高い。そして、おそらくだが効果は武器だけでなく、自分の体にも能力を寄与ができるかもしれない。一番の問題は弾を回避することだ。回避のコツは、目線と銃口の向き、引き金を引く指の動きなどがあるが、判断が困難と思ったら適当に動き回れ。今回は、必要ないと思うが」

あの大成の話を聞いた皆は、流星の強さを想像したら、鳥肌が立ち息を呑んだ。


「修羅様、勇者が愛用の武器を使用した場合の勝率は?」

「「……」」

ローケンスの質問で、周りは緊張し息を呑んだ。


「…正直に言うと2割だ。いや、2割あれば良い方だと思ってくれ」

「「~っ!?」」

絶望的な数値に皆は驚愕し、再び場が静まり返った。



「確かに絶望的な数値だと思う。だが、今回は勇者は出て来ない。まぁ、本当かどうか怪しいが。一応、俺と戦うまで死ぬなよっと、言っていた。信用は出来ると思う。それに、もし攻めて来たとしても、一騎打ちで駄目なら、皆で迎え撃てば良いだけのことだ」

大成は、最後に口元をつり上げ、周りを見渡した。


「そうね。大成の言う通りだわ」

「「そうだ」」

ジャンヌが笑顔で肯定し、周りも笑顔で頷きながら肯定し指揮が上がる。


「これからのことを伝える。俺とローケンス、ジャンヌ、ウルミラは、学園に行く。他は部隊の準備をし、作戦を考えていてくれ。俺達が帰宅後、時間あれば皆で話し合おう」

大成は指示したが、周りは疑問が湧いた。


「申し訳ありません。1つ、疑問があります」

「何だ?ギヌル」

「なぜ、今更学園へ赴くのですか?それに、学園の付き添いにローケンス様が?」

皆はギヌルと同じ疑問を抱いていた。

代表としてギヌルは、一歩前に出て、右手を胸に当てて質問した。


「ああ、マミューラに協力して貰おうと思っている。あの人なら文句なしの即戦力になる」


「マミューラと言うと。あの…3年前までは、盗賊デビル・ソレイユの頭主で、悪魔の化身とも言われ、恐れられたダーク・エルフのマミューラのことですか?」

「そうだ。ローケンスと同期だから、ローケンスに勧誘を手伝って貰おうと思っている」

「「えっ!?」」

ギヌルの質問に、大成は当たり前の様に答えた。その話に、皆は驚いた。


「あのマミューラと、ローケンス様が同期!?」

「ホホホ…。それは、知りませんでしたね」

同じヘルレウスメンバーのシリーダとニールも知らなかった。


一方、ローケンスはというと顔を青く染めていた。

「あ、あの、修羅様。おそれ入りますが…。俺は辞退させて頂きたいのですが…」

「ん?どうした?ローケンス。今は、少しでも戦力を増やすのが最善手だと思うが?」

ローケンスは、体を震わせながら答えたが、声が段々と小さくなり、大成や他の皆には聞こえなかった。


普段見せない態度と曖昧な声で答えたので、皆に注目されたローケンス。

「いえ、特に何でもありません」

「?まぁ、そういうことだ。各自、それぞれ動いてくれ」

大成は、ローケンスの返事に疑問に思ったが、気にせずに指示を出した。


「「了解!」」

「了解…」

ローケンス以外はハッキリとした言葉で答えたが、ローケンスは元気のない声で答えた。


こうして、大成、ジャンヌ、ウルミラ、ローケンスの4人は、学園に行くことになった。




【ラーバス・住宅地】


大成達は、住宅地を歩いていた。

いつもの通る通学路だ。

周りの家は、馴染みのある形の家や、地球では見掛けない尖った家、丸い家など様々な形をした家が立ち並んでいる。


いつもは、生徒達と会うのだが、今は昼なので会うことなく進んでいた。


そんな中…

「はぁ…」

ローケンスは、溜め息をしながら大成達の後ろを歩いていた。


「ぅ~ん。皆の前だと、言葉使いを変えないといけないから疲れるな。それに、学園に行くのは何だか久しぶりな感じがするな」

大成は歩きながら、腕を伸ばして背伸びし、フッと思ったことを話題を出した。


「フフフ…。仕方ないわよ。だって、大成は6日間、寝ていたのだから」

「そうですね。それに、私達も大成さんが寝ている間は、学園に行ってないので久しぶりな感じがします」

ジャンヌの話で、そのことを思い出したウルミラは、思わず出来事を話した。


「ちょっ、ウルミラっ!」

「あっ!すみません。姫様」

ジャンヌが慌ててウルミラの名前を呼び、ウルミラは慌てて自分の口元を両手で押さえた。

2人は顔を赤く染め俯いた。


「2人とも、看病してくれてありがとう」

大成は笑顔で、2人にお礼を言いながら、左右の手で頭を撫でた。


「「~っ!!」」

2人は、赤く染まっていた顔を更に赤く染め俯いた。


「は、早く行くわよ!」

「はい、姫様」

すぐにジャンヌは声だし、先頭を歩いて進み、駆け足でウルミラが後を追った。


「わかったよ」

「はぁ…」

そんな2人を見て大成も笑顔で追い、ローケンスは未だに気が沈んだまま進んだ。




【ラーバス学園】


大成達は、学園に辿り着いた。

時間帯が授業中だったので、生徒達から気付かれず、すれ違うこともなく、校長の部屋に到着した。


「大和大成です。校長先生、居られますか?」

大成は、軽く3回ノックして話しかける。


「しゅ、修羅様!?」

大成の声が聞こえたので、学園長は慌てて走り、急いでドアを開けた。


「どうぞ、お入り下さい」

「お久しぶりです。学園長先生」

「修羅様。えっ、ローケンス様も!?な、何事ですか?何かご用ですか?」

校長は、大成の声がしたので、ジャンヌとウルミラも来ていることは予想できたが、開けたドアにはローケンスも居たので驚いた。



「おそらくですが、近日中に人間達が攻めて来ますので、マミューラ先生に協力をお願いしようと思っています。そういう訳で、マミューラ先生とお話したいのですが」

「そ、それは、一大事ではないですか!わかりました!レゾナンス」

大成の話を聞き、学園長は、すぐに精神干渉魔法レゾナンスで、マミューラに伝えた。


「マミューラに伝えましたので、授業が終わり次第、こちらに来ますので、すみませんが少々お待ち下さい」

「ありがとうございます。学園長先生」

大成は、学園長にお礼を言った。



大成達は待ち時間の間に、学園長に簡単な説明をしていたら、ドアからノックが2回聞こえた。


「おい!じいい、入るぞ」

マミューラの声が聞こえたと同時に、勢いよくドアが開いた。


「じいい、あの話は本当なんだよな?」

マミューラは険しい表情で、遠慮なしにズカズカと大股で部屋に入り、学園長に歩み寄る。


「そ、そうじゃ。く、詳しい話は修羅様に…」

マミューラの威圧感に怯んだ学園長は、少し背中を後ろに反り、大成の方を向いて助けを求めた。


「マミューラ先生。詳しく話しますので、一先ず落ち着いて下さい」

苦笑いしながら大成は、マミューラを落ち着かせた。


「すみませんが、校長先生。このことは、騎士団が発表する予定ですが、生徒や先生達に発表して下さい」

「了解致しました」

学園長は真剣な表情になり、部屋から退出した。



それから、大成は魔王決める大会が終わった後に起こったことや、今日のことを説明をした。


「そういうことか…。それで、私にその争いごとに参加して欲しいと?」

「はい。もし、宜しければヘルレウスメンバーに入って頂けませんか?」

怪訝な表情になったマミューラを見て、大成は苦笑いで答え提案した。


「はぁ、前にも言ったはずだが…。私はな。権力に興味がないし、面倒事は嫌いだ」

マミューラは、溜め息をして頭を掻いた。


「「マミューラ先生!お願いします」」

断られると思ったジャンヌとウルミラは、大きな声を出し頭を下げた。


「だがな。それ以上に、人間達に好き勝手にされるのは、我慢ならん!」

2人の姿を見たマミューラは、腕を組んで威圧感を出した。


「「マミューラ先生!」」

参戦してくれるとわかったジャンヌとウルミラは、祈るように胸元で手を握りしめ、明るい声を出し笑顔になった。


「ところで、気に食わないことがある」

マミューラは、大成に視線だけを向けた。


「何がです?マミューラ先生」

マミューラの視線を受けている大成は、首を傾げた。


「とぼけるな、大和。お前は、私が断らないと予想していて、話しを持ち込んだろ?」

「……。まぁ、そうですね」

とぼけようとしたが、マミューラの機嫌を損ねそうだったので、大成は正直に答えた。


「え!?大成、あなたは、どうしてわかったの?だって、3年前に勇者が攻めて来たときは、マミューラ先生は断り続け、結局参戦してないのよ?」

ジャンヌは、驚いた表情で尋ねた。


「だからさ。あの時、マミューラ先生は魔王が負けるとは思っていなかった。だって、どんなに勇者が化け物だとしても、相手はただ一人。こちらは魔王だけなく、ローケンスさんやヘルレウスメンバーが総戦力で迎え撃つという作戦を知っていたからだ。だから…」

「そこまで、わかっているなら話は早い。大和、先に忠告しとく、例え勇者がお前の兄貴でも、私は全力で殺しにいくからな。止めるなよ。もし、止めると言うなら、お前でも容赦しない」

大成が説明していたが、ミューラは言葉を被せて中断させ、殺気と魔力を放ち宣言した。


「「~っ!!」」

マミューラの殺気と魔力は、ローケンスが激怒した時と同等のプレッシャーがあり、ジャンヌとウルミラは息を呑んだ。


心ここにあらずだったローケンスも、マミューラのプレッシャーを感じてハッと我に返り、背中に背負っていた大剣に手を掛けた。


「マミューラ。お前が修羅様と戦うというならば、俺は黙っていないぞ」

ローケンスも殺気を出して警告する。


「学園時代、1度も私に勝てなかった。お前がか?」

「「えっ!?」」

ジャンヌとウルミラは、驚いた。


「くっ、あの時とは違い素手でなく、今回は大剣を使わせて貰う」

苦い虫を噛み潰したような表情になったローケンス。


「大剣を使えば、私に勝てるというのか?」

「ああ」

「そう言うことは、勝ってから言え」

マミューラとローケンスは、互いに睨めつけ一触即発になる。


少し遅れてジャンヌとウルミラも、武器を構えるが、それでもマミューラは殺気を収めず、大成の返答次第では、戦闘を始めるだろうと思わせるようなプレッシャーを醸し出していた。


そんな緊迫した中、大成は目の前に殺気を出しているマミューラがいる状態でも、特に武器を手に取らないだけでなく、構えすらとらず、普通に会話していた態度のままだった。


「とりあえず、皆さん落ち着いて下さい。今回は、流星義兄さんは参戦しないと思います。あと、生死は別に気にしてません。向こうの言い分は聞けないなので、どの道お互いの命を懸けて戦うことになりますので」

マミューラとジャンヌ達の間にいた大成は、右手を横に出して真面目な表情で答えた。


暫くの間、マミューラは無言のまま、大成の瞳を鋭い眼光で睨みつける。


「ふん。嘘では無さそうだな。わかった。だが、条件がある」

「何ですか?」

「まず、1つは、ヘルレウスには入らない。2つ目、細かい指示は受けない。3つ目、自由に行動させて貰う。4つ目、争いが終わり、落ち着いたら本気で私と闘え」

マミューラは、指を1つ、2つと立てていきながら条件を出す。


「良いですけど。では、こちらも1つだけ条件を出させて貰います」

「何だ?」

「そう、警戒しないで下さい。ただ、ダビルドさん達と一緒に同行して貰います。もちろん、マミューラ先生は、好きなように行動して貰っても構いません。僕が知りたいのは、マミューラ先生と相手の居場所や状況などの情報です。マミューラ先生のことだから、一人の場合だと、始めは連絡くれると思いますが、徐々に面倒になって、音信不通になりそうなので。あと、ダビルドさん達を自由に命令しても構いません。どうですか?」


「…わかった。1つ確認したいことがある。お前は、私を子供だと思っているのか?流石に、私一人になっても、ちゃんと定期的に連絡はするぞ」

腰に腕を当て、マミューラは激怒したが、先程までの殺気やプレッシャーが消えていた。


「そんなことは、思っていませんよ」

大成は、首を左右に振った。


(しないと思うわ)

(すみません、しないと思います)

(せんな)

ジャンヌ、ウルミラ、ローケンスの3人は、心の中で意気投合した。


「お前達、その目は何だ??」

「いや…」

「「いえ…」」

マミューラからギロリっと睨めつけられ、ジャンヌ達は狼狽する。


「それより、大成。マミューラ先生が断らないと知っていたのなら、何故ローケンスを連れてきたの?」

「ああ。ただ、ローケンスとマミューラ先生は、同期だったから久しぶりに会わせてあげようと思ってね。あと、もう1つあるけど。それより、2人の関係が気になったかな」

「しゅ、修羅様…」

ローケンスの顔を見ただけで、勘弁して下さいと伝わる表情をしていた。



「フフフ…。久しぶりに昔話を話すのも良いかもな。知らないとは思うが、私とジャンヌの母ミリーナ、ウルミラの母ウルシア、ローケンスの妻マリーナは、モテていてな。男達の告白がしつこかったほどだった。だから、私達と闘い、勝った奴と付き合うという条件を出したんだ」

マミューラは、懐かしそうな面持ちになり空を見上げた。


「今を思えば、恐ろしい条件を自ら出したもんだな」

「そうね」

「そうですね」

ローケンス達は、苦笑いを浮かべた。



「ククク…。確かに、今、思い出したら、私も無茶苦茶な条件を考えて出したもんだなと思う。まぁ、私達に勝てる可能性がある奴は、4人いや、2人だけだったからな」

口元に手を当て、マミューラは苦笑いした。


「ローケンスと誰ですか?」

「お前の父、魔王だ。他の2人は骨があるくらいだったな。その2人は、ヘルレウスメンバーだったサガールとチドルだ。私達の代は、才能がある奴が多く、黄金世代と言われていたもんだ」

「そうだったな…」

マミューラの話で、ローケンスも昔を思い出す。


「あれ?でも…あの、ローケンス様は、マリーナ様と結婚してますが…」

フッと思ったウルミラは、申し訳なさそうに尋ねた。


「ウルミラ、勘違いするでない!俺はマリーナ一筋だ」

慌てて、宣言するローケンスだったが、マミューラ以外は、疑っている視線でローケンスを見ていた。


「フフフ…。詳しく話すとだな。ローケンスがマリーナにギリギリだったが勝利し、次に私に挑んできたのだ」

「ローケンス。あなた、勝てば無条件で付き合うことができるからといって、手当たり次第…」

ジャンヌは呟きながら、ウルミラと一緒に軽蔑な目でローケンスを見た。


「ご、誤解です!ジャンヌ様。俺はマリーナ一筋です!信じて下さい」

ローケンスはジャンヌの両肩に手を置き必死に訴えたが、ジャンヌは信じていない表情で顔を横に逸らした。


「お、俺は学園最強になりたかったのです。だから、強者と戦う必要があったのです」

慌てて、ローケンスは理由を話した。


「ん?でも、大剣を使えばとか言ってましたが、その時は、なぜ大剣を使用しなかったのですか?」

大成は、会話を思い出し尋ねた。


「誤解されているので、始めから説明をします。俺はマリーナに一目惚れしたので、一番にマリーナと戦ったのです。その時、マリーナは短剣を使用していたので、俺も大剣を使用したのです。ですが、2番目に挑んだマミューラは、ご存知の通り素手なので、自分だけ大剣などの武器を使うことに気が引けてしまい。素手で相手したのですが、結局最後まで勝てず、ウルシアやミリーナ様とは闘うことなく卒業しました。あの頃の俺は、闘いを嘗めていました」

思い出したローケンスは、悔しそうな表情で奥歯を食い縛った。


ローケンスの世代は、男女別のランクキング・マッチだったため、女子ではミリーナとウルシアの2人とは戦えず、魔王とは勝負したが敗北した。


魔王は、私闘でマミューラ達に挑み、全て勝利を収めた。

だからといって、試合に勝った時は、誰とも付き合うことはなかった。

それから、暫くしミリーナから告白され、付き合うことになったのだ。



「128戦128敗だったな」

「「えっ!?」」

大成達は、マミューラが言った数に驚いた。


「くっ、ですが…。本当にマミューラと付き合うために挑んだ訳ではないのです。信じて下さい。それと、マリーナやイシリア、マーケンスには内緒にして下さい。お願いします」

地面に両膝をつき、両手で大成の服を掴んで涙目で、ローケンスは懇願した。


(可愛い女の子なら、いざ知らず。おっさんに、しがみつかれてもな…)

「わかりました。ジャンヌもウルミラも、内緒ということで」

苦笑いしながら大成は了承し、2人に頼んだ。


「はぁ、わかったわ」

「わかりました」

ジャンヌは溜め息をし、ウルミラは初めて見るローケンスの姿を見て、苦笑いしながら了承した。

ローケンスは、ホッと胸を撫で下ろす。


「これから、移動しようと思いますが、マミューラ先生も一緒に来て欲しいのですが、良いですか?」

「面倒で嫌だが。今は国の一大事だからな仕方ないな」

頭を掻きながら、マミューラは溜め息をして賛同した。


「ところで大成。これから何処へ行くの?」

首を傾げながらジャンヌは尋ねた。


「ナドムの森へ行く」

「ナドムの森ですか?…あっ、もしかして…」

ウルミラも疑問に思っており、首を傾げていたが、大成の答えにハッと気付いた。


「そう、マルコシアスにも、助力を頼もうと思っている」

「なるほど。それは、良い提案ですね」

「だが、あのマルコシアスが、ナドムの森から出るとは思えないな」

ローケンスは納得し肯定したが、マミューラは、不可能だと否定した。


なぜなら、マルコシアスは魔王からナドムの森を任されているからだ。


「とりあえず、ナドムの森に行って、マルコシアスに会いに行きましょう」

学園長に事情を話し、マミューラと一緒に大成達は、ナドムの森へと向かった。

次回は人間達が動きます。

投稿が遅れ申し訳ありません。

平熱まで下がったので、今週中にもう1話投稿したいと思います。

もし、宜しければ、次回も御覧ください。


年末で忙しいとは思いますが、皆さんもお体に気を付けて下さい。

では、失礼します。

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