氷の龍と流星の強さ
流星の圧倒的な強さに、魔王達は追い込まれていき、ローケンスは重症を負った。
【ヤンマッハの林】
ジャンヌが立ち去ってから暫く経ち、ローケンスは、ようやくどうにか動けるようになり立ち上がった。
「うっ、早く魔王様の元へ行かねば」
大剣を杖代わりにして、フラつきながら、魔王達のもとへ向かう。
道中に、悲惨な光景が広がっていた。
仲間達の遺体が、道標のように倒れていたのだ。
「糞、何ということだ…。誰か生きている奴は居らんのか!」
「ロ…ローケンス様…」
ローケンスは叫びながら探していた時、ニールの僅かな声が聞こえた。
「どこだ!?ニール」
辺りを見渡しながら、ローケンスは声がした方向へと進むと、木に寄り掛かっているニールを発見した。
ニールの傍には、ハイポーションの空瓶が置かれていたので、ジャンヌが飲ませたのだとわかった。
「ニール、大丈夫か」
ローケンスはニールに駆けつけた。
ニールは、左肩から右脇腹にかけて、大きな切り傷があったが、傷は既に治りかけていた。
だが、出血が多かったのかニールの服と地面には、血が溜まっていた。
「ローケンス様…。私のことよりも…。早く…魔王様達の元へ…。そこにジャンヌ様も…」
ニールは出血した血が多く、意識が朦朧としていた。
「ああ、わかっている。あとは、俺に任せろ。ニール、お前は死ぬなよ」
「もちろんですとも…」
(痩せ我慢しおって)
冷や汗を流しながら、ニールは背一杯の笑顔でローケンスを見送り、ローケンスはニールの無事を祈りながら先へと進んだ。
(だいぶ、回復したな…)
痛みが引いたローケンスは、沼地帯の傍を駆け足で通っていたらシリーダを発見する。
「あれは…シリーダか!?」
沼の傍にある茂みにシリーダは、左手でお腹を押さえて倒れていた。
ローケンスは、シリーダに歩み寄り、首筋に手を当てて脈を見て、ホッとした。
「脈はあるな。あとは、任せろ」
(残りのヘルレウスメンバーは、俺を含めウルシアとウルミラの3人か…。どうか、俺が着くまで御無事でいてくれ)
気絶しているシリーダに声を掛け、先へと進む。
沼を抜け、ローケンスは林の中を走っていた時、正面から戦闘音が聞こえてきた。
「ウルミラは下がっておれ。ミリーナ、ウルシア一緒に戦うぞ」
「ええ、あなた。マジック・マスターと言われている私達が組めば倒せるわ」
「そうです。あと、ウルミラ。あなたは、ここから離れなさい」
「でも、お母様…」
いつもなら、すぐに従うウルミラだったが、今回のウルシアの指示に戸惑った。
「そうだぞ、ウルミラ。お前は心配するな。それに1つ希望が見えた。魔法が消されるなら、消されないほどの数を放ってやれば良い」
魔王はミリーナとウルシアの顔を見て、2人は頷いた。
(何か、他に奥の手もありそうだな。面白い)
「その考えは合っている」
普通は合っていても答えないか、見栄を張り嘘をつくのだが、流星は敢えて教えた。
その時、流星の右側の茂みからファイア・アローが唱えられ、炎の矢30発が流星を襲った。
「小賢しいな、エンチャント・シール」
流星は、両剣に封印効果を寄与して、片手で回して炎の矢全てを封印したが、茂みからジャンヌが双剣を握って飛び出した。
「「ジャンヌ!?」」
「ジャンヌ様!?」
「姫様!?」
魔王達は、今までジャンヌが居たことに全く気付かずにいたので驚き、反応が遅れる。
「ほう、そこの娘といい。なかなかの魔力と身体強化だな」
感心した流星は目を少し見開き、ウルミラとジャンヌを褒めた。
「やめろ!」
「ヤッ」
魔王は、必死に娘・ジャンヌにやめるよう叫んだが、ジャンヌは止まらずに右手の剣を振りかぶる。
「仕方ない。才能ある奴を殺すのは、忍びないが。歯向かって来たんだ」
流星は、両剣でジャンヌの首を狙い凪ぎ払った。
「えっ!?」
ジャンヌは、驚愕した。
先に自分が攻撃したはずだが、後から攻撃に転じたはずの流星の攻撃が先に自分の首に迫ったからだ。
(何で、私の方が先に攻撃したのに…ごめんなさい。お父様、お母様…。そして、ウルミラ、皆…)
走馬灯の様に、周りがスローモーションになり、ゆっくりと流星の両剣が首もとに迫ってくるが、体が動かなかった。
ただ、疑問と謝罪で、頭の中が一杯になった。
茂みからローケンスが飛び出した。
「ジャンヌ様っ!」
「きゃっ」
ローケンスは、ファイア・アローが放たれたと同時に邪魔になる大剣を捨てて駆けつけていた。
そして、ジャンヌに飛び付き庇った。
だが、両剣がローケンスの背中を斬りつけた。
「ぐぁ」
ローケンスは勢いよく飛び付いたので、2人は共に転がりながら、流星から大きく距離が取れた。
「ローケンス!?」
倒れたままのローケンスの肩を、ジャンヌは揺さぶりながら声を掛ける。
「ジャンヌ様。俺は大丈夫です」
立ち上がることはできないローケンスは、心配させないようにできるだけ普段通りの声で答えた。
「しかし、凄いな。死んでも、おかしくないほどの怪我だったはずだが…。よく、そこまで動ける様になったもんだな」
感心した流星は、丸腰のローケンスが飛び出していたことに気付いていたが、ローケンスは重症を負っていたので、間に合うとは思ってもみなかった。
「ローケンス、ジャンヌ、ウルミラ。後は私達に任せなさい。雪花翠月」
ウルシアは言いながら、握っている剣に膨大な魔力を込めた。
次第に剣が凍っていき、矛へと変わった。
「ジャンヌとウルミラは、ローケンスを頼むわよ。2人とも待たせたわね。準備はできたわ。オール・エレメント・オーロラ」
ジャンヌとウルミラに指示をしたミリーナは、杖を掲げて複合魔法の禁術エレメント・オーロラを唱え発動した。
オーロラが空を埋め尽くし、様々な色に変わっていく。
オール・エレメント・オーロラは、全ての属性の複合魔法で、効果は術者が認識した者だけを強化できる広範囲強化魔法。
発動に必要な光属性は、自然エネルギーを集めて使用したので、発動するのに時間が掛かったのだ。
「なるほど。味方を強化する効果か。いや、大幅にと付け加えた方が良いな。面白い」
流星は、魔王達の魔力が急増したことに気付き、目を見開いて満面の笑みを浮かべた。
「その余裕と笑みを消してやるぞ。ウォーター・カッター」
魔王は、水魔法ウォーター・カッターを唱え発動し、両手の双剣を振り回した。
双剣から水の刃を放った。
複数の水の刃は、地面を切り裂きながら流星を襲う。
「アイス・ミサイル・ニードル」
ウルシアは、氷魔法アイス・ミサイル・ニードルを唱え発動し、自分の周りに45発の氷の矢を召喚した。
そして、矛を振り氷の矢を放つ。
「サンダー・スパーク」
ミリーナは、杖を地面に突き刺して、雷魔法サンダー・スパークを唱え発動した。
杖から発生した電撃が地面に伝わり、バチバチと青白くスパークしながら、流星を襲う。
「残念だが、それでも数が足らないな」
流星は、最初に迫ってくるウォーター・カッターを封印効果を持続させている両剣で、次々と封印していく。
ウルシアのアイス・ミサイル・ニードルは、大きく流星の左右に外れた。
「ん?なるほど」
わざと外した理由に気付いた流星は、納得し頷いた瞬間、氷の矢は地面や木々に着弾して、針の様に鋭く尖った氷柱が流星を襲う。
流星は、氷柱も迎撃しようとしたら、ミリーナのサンダー・スパークが氷柱を通電し、氷柱の先から光線の如く電撃が放たれた。
「おっと」
流星は、慌てて大きく首を傾け回避したが、周りは複数の氷柱があり、それらから光線が放たれそうになっている。
唯一、氷柱と光線が襲ってこない場所には、双剣を持った魔王と氷の矛を持ったウルシアが、迫ってきていた。
「チッ」
舌打ちしながら流星は、2人に向かう。
「やはり、そうなると向かって来るしかないよな。勇者よ」
魔王は、左の剣を振り下ろす。
流星は両剣を横に傾け、ローケンスの時と同じことをしようとした。
「それは、さっき見たぞ。はああ」
魔王は、もう片方の右手の剣で、両剣の反対側に叩きつけ、流星にカウンターをさせない様にする。
「くっ」
両剣の両刃に攻撃してくると判断した流星は、両剣を両手で握り防いだが、強化された魔王の一撃は重く、押されて後ろにずり下がる。
「そこよ!」
接近していたウルシアは、矛を振り下ろして追撃をする。
「ぐっ」
距離をとるため、わざと逆らわずにずり下がっていた流星だったが、ウルシアが攻撃モーションに入った瞬間、両足で踏ん張りながら、両剣を地面に突き刺して急ブレーキをかけ、ウルシアの攻撃範囲の外で止まった。
「え!?」
ウルシアは、矛を振り下ろしている最中に、流星が範囲の外で止まるとは思いもよらなかったため、慌てて矛の軌道を修正する。
そのせいで、フォームが崩れて振り下ろす速度が鈍った。
「アース・ニードル」
タイミングをずらされたとわかったミリーナは、杖を地面に突き刺して、土魔法アース・ニードルを唱えウルシアを援護する。
流星は、振り下ろす速度が鈍ったウルシアの手首を左手で受け止め、反撃しようとしたが、左右の足元から巨大な土の針が襲ってきた。
「ちっ」
突き刺さる前に、流星は後ろに大きくジャンプして回避した。
「良いチームワークだな。まるで、俺が所属していた特殊部隊並みだな。だが…」
褒めた流星は、魔王に視線を向ける。
「ぐっ、ゴホッ…」
魔王は、双剣を地面に刺して片膝をつき、右手で左横腹を押さえながら左手で口を塞いだが口から血を吐いた。
「あなた!?」
「魔王様!?」
ミリーナとウルシアは、魔王が吐血したことに驚き、すぐに魔王の傍に駆けつけた。
流星は、魔王に攻撃をされる瞬間に、右足で魔王の横腹に蹴りを入れていたのだ。
「脊髄ごと折るつもりで蹴ったのだが、妃の強化魔法のお陰で、あばら骨が数本折れただけで済んだか。だが、これで一人脱落だな」
この戦いが終わったと悟った流星は、残念な表情で告げた。
「な、嘗めるなよ…勇者。私は魔王だ…。この…魔人の国…の王だ…」
魔王は、身体を震わせながら双剣を杖代わりにて、ゆっくりと立ち上がる。
「あなた…」
「魔王様…」
ミリーナとウルシアは、ふらつきながら倒れそうになった魔王を左右から支える。
「ありがとう、2人とも…。勇者よ…1つ聞く…。私は最高峰のランク10だ…。しかも強化もしている…。だが、何故これほどのダメージを…ゴホッ」
魔王は、流星を睨み付けながら尋ねる。
「ほぉ、その強い意思は気に入った。だから、特別に教えてやろう。生物は攻撃に転じた場合、微弱ではあるが、無意識に攻撃に必要な肉体の部分を強化し、他の部分が疎かになってしまう。そこを狙ったからだ。それと、もう1つ理由がある。俺も、お前と同じのランク10だ。だが、同じ10でも天と地の差があるみたいだな。この世界の計測は上限が10が限界であるということだ。わかりやすく言えば、俺はおそらくは10を超えている。だから、お前が強化しても…」
「なるほど…。悔しいが、その可能性が…高そうだな…。だが…」
「アース・ウォール」
「アイス・ウォール」
流星の話を魔王は中断したと同時に、ミリーナとウルシアは流星を取り囲むように土の壁と氷の壁をドーム状に覆った。
「「「アース・ニードル」」」
魔王達3人は、土魔法アース・ニードルを唱え発動する。
「分厚いな」
ドームの中に閉じ込められた流星は、壁を触り厚みを確かめた。
「ん?」
すぐに周りから魔力を感知した流星は、両剣を握りしめ壁から離れた瞬間、周囲の壁や地面から土の針が飛び出してきた。
「エンチャント・デストリュクシオン」
ジャンプしながら、流星は両剣に破壊の効果を寄与した。
橙色に染まった両剣が壁に触れた瞬間、壁は粉々になり、飛び出して脱出をする。
「待っていたわ。コールド・ギャチャーレ・アイス・ドラゴン」
ウルシアは、氷魔法禁術コールド・ギャチャーレ・アイス・ドラゴンを唱え発動する。
ウルシアの背後に巨大な氷の龍が召喚された。
氷の龍の周りは、白い冷気が充満し、ダイアモンド・ダストの現象で空気中の水分が凍りキラキラと光っており幻想的だが、冷気に触れた木々や大地を、容赦なく凍らしていく。
「行け~っ!」
ウルシアが矛を振った瞬間、氷の龍は1度上昇して流星に向かって低空飛行で襲いかかる。
氷の龍が触れたものや通った道、周囲は一瞬で凍り尽くし、木々や岩はガラスのように粉々に砕け、大地は分厚い氷に覆われた。
そして、氷の龍上昇して流星を下から襲った。
「絶対零度というやつか。凄い魔力を込めているな。だが、エンチャント・シール」
左手で両剣に触れて封印効果を寄与した流星。
「これは、シールでも封印しきれそうにないな…。ならば、シール・ファルコン」
流星も紫色に染まっている両剣に魔力を込めて振り下ろす。
両剣から封印効果を宿した巨大な紫色の鷹が、氷の龍に向かって羽ばたいた。
氷の龍と紫色の鷹は正面衝突して衝撃波が生まれ、周囲の木々吹っ飛ばされた。
「「うっ」」
ウルシア側は冷気が襲い掛かり周囲が凍る。
一方、流星側は何も変化はなかった。
そして、衝突した場所、中央は大きなクレーターができており、ウルシア側の半分が凍っている。
「良い魔法だったが、残念だったな」
まだ、空中にいる流星は、ウルシアを褒めた。
「悔しいけど。私の切り札(魔法)が効くとは、初めから思ってないわ」
「ああ、なるほど…」
ウルシアの言葉の意味を、流星は魔王とミリーナを見て理解する。
魔王とミリーナは、手を繋いでおり、魔力が共鳴して膨大な魔力を放っていた。
「ユニゾン魔法を発動させるための、時間稼ぎだったわけか」
「勇者、お前はユニークだから風魔法は使えまい。だから、今の空中では身動き出来ないだろう。そして、これで終わりだ」
「「これで、終わりよ」」
魔王達3人は、声を揃えて宣言した。
ミリーナは、オール・エレメント・オーロラを解除して、光エネルギーに変換した。
「「オール・エレメント・フォース」」
魔王とミリーナの2人は、お互いの剣と杖を交差させ、複合ユニゾン魔法オール・エレメント・フォースを唱え発動する。
交差した剣と杖から、幅5mの七色の光線が放たれた。
「エンチャント・シャイン」
流星は、両剣に光属性を寄与して光り輝いた。
「俺も全力で行かせて貰う。ホワイト・エンド」
両剣に流星は、膨大な魔力を込めて輝きが強くなり周囲を照らした。
両手で両剣を握りしめて横から凪ぎ払い、光線が放つ。
光線は、光の壁を言った方が正しいと思わせるほど巨大だった。
「あなた…」
「ああ…何という…大きさだ…。まるで光の壁が押し寄せてくる様だな…。だが」
魔王とミリーナの2人は、自分達と流星の絶望的な魔力の差を垣間見たが、その目は絶望はしていなかった。
そして、七色の光と光の壁が衝突した。
「「はぁぁぁ」」
「オォォォ」
魔王、ミリーナそして、流星の3人は、ありったけの魔力を放出した。
七色の光は、少しずつ光の壁に押されていき、ジリジリと魔王とミリーナに迫っていく。
そして、徐々に迫るスピードが速くなっていき、 とうと光の壁が間近に迫ってきた。
「すまんが、あとは頼んだぞ。ローケンス、ウルシア。2人で魔人の国を守ってくれ」
「ウルシア。ジャンヌを宜しくね」
魔王とミリーナは、口元に笑みを浮かべながらウルシアを見た。
そして、2人は間近にある互いの顔を見てキスをする。
「魔王様、ミリーナ…」
涙を溢しながら、ウルシアは呟いた。
その時…
「お父様!」
「魔王様!」
魔王とミリーナの背後からジャンヌとウルミラが、走ってきて2人の前に出た。
「「ジャンヌ!?ウルミラ!?」」
魔王達は、避難させたはずのジャンヌとウルミラが目の前に出てきたので驚いた。
【過去・ヤンマッハの林】
少し時を遡る…。
ジャンヌとウルミラは、ローケンスを連れて避難していたが、すぐにジャンヌは足を止めた。
「ジャンヌ様?」
「姫様?」
ローケンスとウルミラは、ジャンヌが気になり振り向いた。
「ねぇ、2人とも。私、戻ろうと思うの」
「「えっ!?」」
「このままだと、私は後悔するわ。ううん。自分が許せなくなる」
「だ、駄目です、ジャンヌ様。お気持ちは、わかりますが…ぐっ…」
慌てて大声を出したローケンスは、体に力が入り傷の痛みが走った。
「ウルミラ、お前からも…」
「すみません、ローケンス様。私も姫様と同じ考えです」
ローケンスはウルミラに助力を求めたが、ウルミラはジャンヌと同じ考えだった。
「心配してくれるのは、嬉しいわ。でも、ごめんなさいローケンス。私達は行くわ。たとえ、死ぬとしても。あなたは、ここで休んでいて」
ジャンヌとウルミラは、ローケンスを近くの木に寄りかからせようとする。
「はぁ、仕方ありませんな。その代わり、条件があります。俺も戦いが見える場所の木に寄りかからせて下さい」
溜め息をしたローケンスは、条件を出して最後に苦笑いした。
ジャンヌとウルミラは、お互いの顔を見て笑った。
「わかったわ。ありがとう。ローケンス」
「はい、ありがとうごさいます。ローケンス様」
2人は、笑顔でローケンスに感謝した。
そして、ジャンヌとウルミラは、ローケンスを近くの木に寄りかからせて、魔王達の所へと向かったのだった。
【ヤンマッハの林】
迫ってくる光の壁を前にしたジャンヌとウルミラは、怖かったが身体は硬直はしていなかった。
「ウルミラっ!」
「はい!姫様」
2人は、お互いの呼び合いながら、手を強く握り魔力を共鳴させた。
「お前達…」
「あなた達…」
「まさか…」
魔王達は、驚愕した。
なぜなら、ユニゾン魔法はわかりやすく言えば絆の魔法。
長年を通して、お互いのことを知らないとできない。
それでも、できる者は極わずかなのだ。
だが、目の前の幼い2人は、魔力を共鳴し増幅していた。
そして…
「「ファイア・ストーム」」
ジャンヌとウルミラは、お互い握っている手を前に出して、炎と風の複合魔法ファイア・ストームを唱え発動した。
握っている手から、荒れ狂う炎の嵐を放った。
「「うううう」」
炎の嵐が光の壁と衝突して、迫ってきていた光の壁の勢いが止まった。
「正直に驚いたな。才能はあると思っていたが。まさか、ユニゾン魔法まで使えるとはな」
流星は、驚いた表情で話ながら魔力を込めた。
魔王達と流星の攻撃は、お互いに押したり押されたりし、均衡している。
「「ううっ」」
だが、魔力値は高いジャンヌとウルミラだが、まだ幼く魔力量は兵士より多いぐらいだった。
ファイア・ストームを使うには幼く、すぐにガス欠寸前になり、次第に押されていく。
そして、とうと魔力が底を尽き炎の嵐が消え、一気に光の壁が魔王達を飲み込もうとする。
咄嗟に魔王は、ジャンヌとウルミラの前に出て、光の壁を背にし、ミリーナを含め3人を強く抱きしめた。
「ミリーナ、ウルシア、ジャンヌ、ウルミラ。愛しているぞ~っ!」
魔王は、大声で伝えながら全魔力を背中に纏わせ、ジャンヌ達の壁となった。
そして、光の壁が魔王達を飲み込み、轟音とともに周囲を真っ白に照らした。
次回、決着です。
投稿が遅れ、しかも話が進まず、大変申し訳ありません。
急激な気温の変化で、風邪を引いて寝込んでしまいました。
皆さんも、お体に気を付けて下さい。
それでは、失礼します。




