目を覚ました大成と希望
流星と大成が、異世界で会った。
流星は大成を誘ったが、大成は平等な同盟ではないので、拒否した。
最後に流星は、これからの自分達の動きを大成に教え、流星とメルサは立ち去った。
【魔人の国・ボルダ国】
呆然と流星とメルサの姿が見えなくなるまで、ジャンヌ達は呆然と立ち尽くしていた。
「うっ…」
大成は、流星達の姿が見えなくなると共に、身体の限界が訪れて前に倒れる。
「大成!」
「大成さん!」
慌ててジャンヌとウルミラは、大成の前に出て倒れる大成の身体を体で受け止めた。
「ごめん。もう…立っていられないや…」
大成は、身体の力が抜けて2人に体を預けた。
ジャンヌとウルミラは、大成の体に触れて初めて気付いた。
大成の身体は、体温は冷たくなり呼吸も浅く弱くなっていた。
「大丈夫!?大成!」
「大成さん!」
異変に気付いたジャンヌとウルミラは、悲鳴に似た声を出した。
「お兄ちゃん!」
「ダーリン!」
「大成君!」
「修羅様!」
ジャンヌとウルミラの声を聞いたエターヌ、マキネ、イシリア、ユピアの4人は、慌てて大成達に振り返り深刻な表情でジャンヌ達に駆けつける。
大成は、ジャンヌ達の叫び声を聞きながら意識を手放した。
【ラーバス国・屋敷】
大会が終わってから6日が経ったが、大成は目を覚ますことはなかった。
そして、7日目に大成は目を覚ました。
「う、ぅ~ん。ここは…?あれ?体が動かない…何だ?何かプニプニした物に、しがみつかれているような…」
両腕が動かせなかった大成は気になり、左を振り向く。
左には、エターヌが間近にしがみついており、誤ってキスしてしまった。
「ん…?」
エターヌは、目を擦りながら眠たそうに目を覚ました。
「「……。」」
大成とエターヌは、キスしたまま固まった。
「ご、ごめん。えっ…」
慌てた大成は、謝罪しながら反対側に顔を向ける。
反対側にはユピアが、エターヌ同様にしがみついており、ユピアにもキスをしてしまった。
だが、ユピアの場合はエターヌと違った…。
ユピアは始めから起きており、両手で大成の頭を押さえて逃がさないように固定して舌を忍ばせた。
所謂、ディープキスだ。
「ん…ん…」
引き離そうとした大成だったが、ここで断ったらユピアの心を傷つけそうなので、されるがままになった。
「あ~。ユピアちゃん、ズルい。エターヌも」
エターヌは負けじと、大成の頭に両手を伸ばして頭を抱き抱えるように抱きしめ、ユピアから引き離そうとする。
「ユピア、負けないもん!」
引き離されそうになったユピアは1度キスをやめ、こちらも負けじと大成の頭を抱き抱えるようにギュッと抱きしめる。
(この展開は、ヤバイ気がする)
「ちょ、ちょっと…2人とも…」
顔と後頭部に、2人の慎ましい胸を押しつけられている大成は、今の状況に危機感を感じた。
そんな時、部屋のドアが静かに開き、大成は恐る恐る視線だけをドアに向ける。
そこには、ジャンヌ、ウルミラ、マキネ、イシリアの4人がおり、笑顔で部屋に入ってきた。
大成は4人を見た瞬間、冷や汗を掻きながらたじろぐ。
4人は笑顔なのだが、その背後に阿修羅が見えていた。
「ねぇ、大成。人が心配しているのに。あなたは、いつも目を覚ましたら、すぐにこういうことをするのね…。良い御身分ねぇ…。」
うっすらと目を開けたジャンヌ。
その声は、ドスがきいており目が居座っていた。
「いや、あの…こ、これは、その、自ら望んだことではなくてですね…」
大成は、必死に頭をフル回転させながら言い訳を考えていた最中…。
「ほ、本当に心配したんだから…」
「そうです」
「そうだよ」
「そうよ」
4人は先程まで発していた威圧感が嘘のように消え、答えようとした大成に抱きついた。
「わぁっ!?」
「心配したのよ。大成…」
「心配しました」
「流石の私も心配したんだよ。ダーリン」
「エターヌも」
「ユピアも」
「大成君。本当に皆、心配したのよ」
「……。心配させて、ごめん」
予想もしていない突然のことで、大成は驚いたが瞳を閉じて謝った。
だが…。
「許さない…」
「えっ!?」
ジャンヌの言葉を聞いた大成は意味がわからなかった。
「今度、試合の最後に見せた力を使用したら、絶対に許さないから」
「大丈夫。わかっているよ。皆が危なくなった時にしか、使わないから。まぁ、まだ自力で好きな時に出せないけどね」
「ダメよ!どんな時でも使用しないで、約束よ!」
苦笑いする大成を、ジャンヌは真剣な表情で見つめる。
「……。わかったよ。約束するよ」
ジャンヌだけでなく、ウルミラ達も真剣な眼差しで見ており、大成は1度目を閉じて一呼吸してから返事をした。
それから、大成達はそのままの状態で気付かないうちに寝ていた。
ジャンヌ達は、目を覚まさない大成のことが心配で眠れず、睡眠不足に陥っており、大成はまだ完全には回復できておらず、睡魔が襲ったのだった。
「おはよう」
大成が目を覚ました時には、もう既にジャンヌ達は起きていた。
「何が!おはようよ。大成」
「今、お昼ですよ。大成さん」
ジャンヌは呆れ、ウルミラは苦笑いを浮かべて訂正した。
「そうなんだ。それより、いつまでこうしているんだ?」
ジャンヌ達は未だに大成に寄りかかっていたので、大成は尋ねる。
「べ、別にいいでしょう」
頬を赤く染めながらイシリアは、ギュッと大成の右腕にしがみついた。
「イシリアの言う通りだよ。ダーリン」
反対側にいるマキネも、笑顔を浮かべて大成の左腕にしがみついた。
「それとも、お兄ちゃんはエターヌ達のことが嫌いなの?」
「そうなの?修羅様」
「いや、そうじゃなくて…。僕は、どれくらい寝込んでいたのかな?」
不安そうな表情になるエターヌとユピアを見た大成は、慌てて尋ねる。
「6日よ。だけど、大丈夫よ。勇者達、人間達は、まだ攻めて来ていないわ」
「そうか。6日間もか…。あのさ、その間は僕は、お風呂入ってないんだけど臭わない?」
ジャンヌから大まかに教えて貰った大成は、理由を分かりやすく説明した。
「それなら大丈夫だよ。ダーリン」
マキネは、口元に人差し指を当て不敵な笑みを浮かべていた。
マキネの言葉で、ジャンヌ、ウルミラ、イシリアの3人は頬を赤く染め、エターヌとユピアは笑顔を浮かべていた。
そんな、ジャンヌ達を見た大成は、気になり首を傾げる。
「ん?」
「お兄ちゃんの体は、エターヌ達が順番で拭いたの」
「本当は修羅様の専属メイドのユピアが、責任持って、するつもりだったの。だけど、皆ですることになったの」
「まぁ、上半身だけだったけどね」
エターヌ、ユピア、マキネ3人の会話で、ジャンヌ、ウルミラ、イシリア3人の真っ赤だった顔が更に赤く染まった。
【過去・ラーバス国・キノル病院】
大成が倒れた時、ジャンヌ達は、慌てて大成を有名な診療所へと運んだ。
昔からある小さな病院だが、魔人の国では有名な病院で知られている。
だが、やはり小さな病院なので、他の病人の人達に迷惑がかかるとのことで全員は入れなかった。
そこで、代表としてジャンヌ1人が選ばれた。
(大丈夫よね…。こんなことで大成が、死ぬなんてことないわ…。そうよね…大成…)
ジャンヌは、病院の待合室で目を瞑り、祈るように両手を握りしめて大成の診断結果を待っていた。
診察室から80代の看護師キノルが出てきた。
「キノル先生!大成は!?」
すぐに、ジャンヌは立ち上がり、幼い頃からお世話になっているキノルに駆けつける。
「大丈夫だよ、ジャンヌちゃん。心配ないから落ち着きな。もう、ピークは過ぎていて、今は心拍数も安定してるから、そのうち目を覚ますはずだよ。それと、修羅様が倒れた原因は、極度の疲労が原因だね」
「そう…。大したことがないで、良かったわ」
安堵したジャンヌは、肩の力だけでなく体全体の力が抜け、その場にへたりこんだ。
だが、キノルの話には続きがあった。
「だがね、ジャンヌちゃん。修羅様の疲労は、他の人が陥る極度な疲労よりも、比べ物にならないほど酷かったよ。この私が、初めて見るほどにね。今回の様なことを続けていると、寿命が縮むのは避けれないよ。というよりも、いつ死んでもおかしくないほどだよ。だから、ジャンヌちゃんが説得しな。私から忠告しても、修羅様は聞かないと思うからね」
溜め息しながら、キノルは説明した。
「えっ!?わ、わかりました。私から説得してみます。キノル先生。大成を、いえ、修羅様を助けて頂き、ありがとうございます」
(嘘、大成の寿命が…。止めさせないと。でも、大成のことだから、自分のことよりも他人のためにだったら、また…)
ジャンヌはキノルにお礼を言い、どうやって大成に止めさせるか考えた。
だが、結局一人よりも、皆で説得した方が良いと判断したジャンヌは、ウルミラ達にもこのことを説明をする。
ウルミラ達は、迷わずにジャンヌに賛同したのだった。
【過去・ラーバス国・屋敷】
ニールは、未だ目を覚まさない大成をラーバス国の屋敷まで運んだ。
大成の看病は、ジャンヌ達がすることにした。
ここまでは、特に問題はなかった。
しかし、マキネの一言で問題が勃発した。
「ダーリンの体温低いよ。私が温めてあげる」
そう言いながら服を脱ぎ始めたマキネは、大成のベットに潜り込もうとした。
「マキネっ!あなた何をしているのよ!」
ジャンヌは、マキネの腕を掴みながら止め叫んだ。
「ん?ダーリンの体温が低いから、くっついて温めてあげようとしているけど」
当たり前のように答えたマキネは、何がダメなのか訳がわからず首を傾げた。
「マキネさん。だからと言って、ふ、服を脱ぐ必要はないですよ」
「そうよ。ウルミラの言う通りよ、マキネ。それに何を勝手に、決めているの!大成君と…い、一緒のふ、布団で、ね、ね、寝るなんて…」
ウルミラとイシリアは、顔を真っ赤にし狼狽えた。
「あ~、なるほど。わかったよ。なら、順番は平等にジャンケンで決めようか。ダーリンの左右が空いているから2人だね」
「「……。」」
「「そ、そうね」」
「そ、そうですね」
「「うん!」」
納得したマキネが提案し、暫く間を置いて皆が納得して、問題が解決に向かっていたが…。
チラッと大成を見たエターヌが、異変に気付いた。
「大変だよ!お兄ちゃん、凄い汗をかいてるよ」
「「え!?」」
今度はエターヌの言葉で、皆は大成に振り向いた。
「ユピアに任せて!エターヌちゃん」
ユピアは、迷うことなく大成の服を脱がそうとする。
「ユピア!?あなた、いったい何をしているの!?」
「修羅様が汗をかいているから、拭いてあげるの。このままだと風邪を引いちゃうよ」
焦っているジャンヌに、ユピアは首を傾げた。
「良いな。私もダーリンの身体を拭く」
マキネは、大成に飛びつき上着を脱がした。
「流石、ダーリン。引き締まった身体をしているね」
「わぁ~。お兄ちゃん、凄~い」
「そうだね。クラスの男子達よりも、比べ物にならないぐらい引き締まっているね」
頬を赤く染めながらマキネ、エターヌ、ユピアは、大成の体を触ったり揉んだりしている。
ジャンヌ達も大成の身体を見て、頬を赤く染めていたが、身体に刻まれている刺し傷、斬り傷、この世界では見ない銃痕、火傷などの無数の傷を見て、大会を観戦している時、ローケンスの会話を思い出して悲しい表情に変わった。
「ああ、修羅様は、魔力だけでなく武術も達人の域だ。年端も行かぬ子供が、あの強さを得るのに、いったい日常どれだけ辛く、苛酷な環境で育ったのか、想像すらできないほどだ…。強さ以上に悲しいな…」
ローケンスが言ったことは、納得できることだった。
自分達が、幼い頃は、無邪気で楽しく過ごしていた。
その頃、大成はいったい何をしていたのかを考えただけで、感情が込み上げてくる。
ジャンヌ、ウルミラ、イシリアの3人は、そっと大成の傷を優しく撫でた。
そんな時…。
「そろそろ、下半身も拭いてあげないとね」
目を輝かせながら、マキネは大成のズボンに手をかけた。
「ちょ、ちょっと、待ちなさい。マキネ」
「そ、そうです。待ってください」
「流石にダメよ、マキネ」
感傷に浸っていたジャンヌ達は、顔を真っ赤にして慌ててマキネを止めた。
「そうだね。ユピアは、修羅様の専属メイドなの。下半身の世話は、ユピアがするの」
ウンウンと何度も頷きながら、ユピアは意見を述べる。
「え~、ズルいよユピアちゃん。エターヌも世話をするの」
エターヌは、ユピアの体を揺さぶった。
「2人とも、か、下半身の、せ、世話するとか、女の子が言ってはいけません。はしたないです」
顔を真っ赤にしながらウルミラは、2人に注意をした。
結局、1番目ジャンヌ、ウルミラ。2番目マキネ、イシリア。3番目エターヌとユピア。
大成に添い寝と上半身を拭く順番が決まり、大成の着替えや身体を拭く役割は、他のメイドに任せることにしたのだった。
【屋敷】
そのことを思い出したジャンヌ達は、頬を赤く染めていた。
(あれ?何で頬を赤く染めているんだ?僕の傷だらけの体を見たら、普通は気持ち悪いと感じると思うんだけど…。そういえば、奈々子も頬を赤く染めていたような…)
「それより、お腹が減ったから、ご飯が食べたいかな」
いろいろ思ったが気にしないことにした大成は、話題を変えた。
「それも、そうね」
ジャンヌ達は、大成から離れベットから下り立ち上がった。
「おっと…」
大成も立ち上がろうとしたが、6日も寝込んでいたので、筋肉が固まっておりふらつく。
「「大丈夫!?」」
「大丈夫ですか!?」
ジャンヌ達は駆けつけようとしたが、大成は右手を前に出して停止させた。
「心配はいらないよ。体をほぐせば、良いだけだから」
大成は、言いながらストレッチをし始めた。
30分間、大成はストレッチを入念にした。
「これで、大丈夫かな。感覚もほぼ戻った」
腕を伸ばしたり、手を握りしめたり、軽く跳んでみたりして、感覚を確認した。
大広間へ向かう前に、ウルミラは先に精神干渉魔法レゾナンスで、大成が目を醒ましたことをローケンス達とシェフに伝え、大成達は食事をとるため大広間へと向かった。
【大広間・食堂】
大広間には、大きな長方形のテーブルに数々の料理が並べられており、ヘルレウスメンバーと騎士団が入り口に集まっていた。
大成が大広間に入った瞬間、片膝をつき敬礼をする。
「お目覚めは如何ですか?修羅様」
敬礼したままのローケンスは、顔を上げ尋ねた。
「すまない、迷惑をかけた。聞きたいことは…山程あるよな。今から、説明をしようか…」
大成のお腹の音が鳴った。
「いえ、食後で構いませんわ。お先に料理が冷える前に、お召し上がって下さい」
説明をしようとした大成を、シリーダが口元に手を当ててクスクス笑いながら止めた。
「ああ、すまない。そうさせて貰おう」
大成は、テーブルにつき食事をとった。
食後、大成達は話をするため食堂を後にし、【玉座の間】へ移動した。
【玉座の間】
「では、早速話そうか…。というより、どう説明したら良いのやら…。いや、それより、俺が皆の質問に答えた方が早く終わるか。俺に、聞きたいことがあるのだろ?まずは、質問してくれ」
大成は、集まったジャンヌ達を見渡して話す。
「では、俺から質問させて頂きます。修羅様、もう1度確かめたいのですが、【時の勇者】は、あなた様の義兄なのは本当なのですか?」
「そうだ。【時の勇者】は、俺の義兄だ」
ローケンスの質問に大成は頷きながら肯定し、騎士団達に動揺が走った。
今度は、ニールが手を上げた。
「次は、ニールだな」
「ありがとうございます、修羅様。私から1つ尋ねたいのですが、【時の勇者】達は1ヶ月以内に攻めて来られますが。こう言っては失礼ですが、このままだと義兄上様と命懸けの戦いは避けられません。それでも修羅様は戦うつもりなのですか?」
1度会釈したニールは、真剣な面持ちで大成を窺う。
その目は、嘘かどうか見破ろうとしている目だった。
「ああ、この国のために命を懸けて戦う。召喚してくれたお礼もあるが約束は守る。1つ間違っているから、訂正するが。1ヶ月以内はあっているが、正確に言えば俺がミリーナとウルシアの封印を解いた時、弱ったところを攻めてくるだろう」
大成は、そんな目で見てくるニールの目を逸らさずに目を見て答えた。
ちなみに約束とは、ラーバスの復興と他国との同盟を結ぶことだ。
「「えっ!?」」
大成の答えに、騎士団達に疑問が湧いた。
なぜなら、大成の言う通りならば、普通、流星達は大成が寝込んでいるうちに攻めてくるはずなのだから。
そんな、騎士団達の反応を見た大成は溜め息をする。
「疑問に思っている者が多いから説明をしようか。俺が寝込んでいるうちに、人間が攻め込まなかったのは、人間の国は1枚岩ではないからだ。勇者と話した時、自分以外にも手柄を上げたい奴がいると言っていた。おそらく、今度は誰が攻めるかで揉めていると考えられるというわけだ」
大成の説明で、やっと納得した騎士団達は小さな声で「流石、修羅様」など呟く。
「では、修羅様は勇者の封印が解けるということですか?」
シリーダは確認をする。
「直接、その封印を見ないとわからないが、おそらく解除できるだろう。だが、封印を解除したら俺は衰弱する。1人ずつ封印を解除していけば、2人纏めて解除するより衰弱を抑えられるが、もし、人間が攻めてきて俺が死んだ場合は、どちらか1人は封印されたままになる。そうならないためにも、2人同時に封印を解除するつもりだ。異論は認めん!」
大成は、最後に魔力と威圧感を放って威圧した。
「~っ。ですが…。い、いえ、何でもありません…」
威圧されている中、騎士団長のギヌルが口を挟もうとしたが、大成に睨まれ黙る。
「では、ミリーナとウルシアが封印をされている場所に案内してくれ」
「はい、わかりました。では、ついてきて下さい」
皆の前なので、ジャンヌは日頃の言葉使いではなく、目上に対する態度で対応し、お辞儀をして、大成を案内した。
皆も、ジャンヌと大成について行く。
【召喚の間の廊下・隠し通路】
1階にある召喚の間の部屋の奥の突き当たりの壁に、ジャンヌは優しく触れて魔力を込める。
すると、床が音をたてながらスライドして開き、地下へと続く隠し通路が現れた。
この隠し通路は、ヘルレウスは知っているが騎士団達は誰も知らない。
通路を通る時、ジャンヌが壁に六角型の窪みに魔力を流すと、通路の壁際に配置されている複数のランプが自動的に明かりを灯した。
真っ暗だった通路は、まるで朝日が射し込んだように明るくなった。
通路の幅は、2人がすれ違うことができるぐらいの幅だった。
チラッと大成は、明かり灯しているランプの中を覗いた。
ランプの中は蝋燭ではなく魔鉱石が入っており、魔鉱石が魔力に反応して明かりを灯していた。
暫く、螺旋状になっている階段を下りて行き、最下層に大きな扉があった。
再び、扉の六角型の窪みに、ジャンヌが魔力を流すと扉は音をたてながら、ゆっくりと開いた。
「ここです」
ジャンヌは扉の端に移動して、大成にお辞儀をした。
【地下・隠し部屋】
部屋は、とても広く天井が高く、大きな宝石が飾られているシャンデリアがぶら下がっており、部屋を明るく照らしている。
その光景は、神秘的な空間を醸し出していた。
騎士団達は入ったことがない部屋なので、その神秘的な空間を目の前にして言葉を失ったまま感動に浸る。
そんな中、すぐに気付いた大成は目を大きく見開く。
奥にミリーナとウルシアの姿があったのだ。
ミリーナとウルシアは、紫色の半透明なクリスタルで覆われていた。
すぐに駆け寄った大成は、そっとクリスタルに触れてみる。
「凄い魔力だな。グリモア・ブック」
大成は、グリモアを召喚してページを捲っていく。
だが、グリモアには、流星の使用した魔法が記載されていなかった。
大成は、自分の後ろでジャンヌとヘルレウス・メンバーがグリモアを覗いており落胆する気配を感じた。
しかし、大成が見ていたのは、封印した魔法ではなかった。
もともと、ユニーク・スキルは、グリモアには記載されないのだ。
大成は、封印を解除できる魔法を探していたのだった。
皆が落胆している中、大成は立ち上がる。
「解除はできるな」
皆に振り向きながら、大成は笑顔を浮かべて教えた。
「「えっ!?」」
皆は、驚いていた表情をしたまま大成を見る。
「だから、封印を解除できる。あとは、いつ解除するかだが、まず、戦争が起きても大丈夫なように軍の配備と準備が整った後で解除をする。それで、良いな?」
笑みを浮かべながら、大成は説明をして話を進めていく。
「ねぇ、大成…。本当に、この強力な封印を解除できるの?」
「ああ、大丈夫だ。俺に任せろ」
恐る恐るジャンヌは大成に尋ねると、大成は自信満々に頷いた。
「「ウォォォ」」
騎士団達は喜びの声をあげ、ジャンヌとウルミラは嬉しさのあまり、その場に座り込んで両手で口元に当てて涙を溢していた。
ローケンスは顔を上げ両手の拳を握りしめ、シリーダは前で座りこみ泣いているジャンヌとウルミラの肩にそっと手を置き一緒に泣き、ニールは嬉しそうな面持ちでその場を眺めていた。
暫く、大成は待ったが場の雰囲気は静まらなかった。
(少しは、落ち着いて欲しいのだけど。まぁ、仕方ないか…)
「歓喜極まっている中、すまないが。それとだな。先代の魔王と勇者の戦いを、映像で保存しているマテリアル・ストーンとかはないのか?」
苦笑いしながら、大成は話を進める。
少しでも、義兄流星の戦いを見たかった。
「あります。今すぐに持って参ります」
「ああ、至急頼むよ。ローケンス」
「ハッ」
ローケンスは、マテリアル・ストーンを取りに部屋から退出した。
数分後、部屋に戻ってきたローケンスのその手にはマテリアル・ストーンが握られていた。
「修羅様、これです」
「ありがとう。ローケンス」
ローケンスは、大成の目の前で敬礼してマテリアル・ストーンを大成に渡す。
「マジック・ビジョン」
受け取った大成は、呪文を唱えながらマテリアル・ストーンに魔力を込める。
マテリアル・ストーンは、輝きながら空中へと浮かび部屋全体に映像を写すのであった。
御覧頂き、ありがとうございます。
次回、先代の魔王VS時の勇者です。
今回はバトルがなく、すみません。
次回はバトルシーンです。
もし、宜しければ次回も御覧ください。
では、失礼します。




