流星と大成
とうと、大会に優勝し、正式に魔王になった大成は、大会が終わった後、流星に会いに行く。
【魔人の国・ボルダ国】
流星と大成の会話を聞いた者達は驚き、大きく目を見開いていた。
「た、大成。【時の勇者】が、あなたのお兄様って本当なの!?」
ジャンヌは、声を震わせながら大成に尋ねる。
「本当だよ、ジャンヌ。まぁ、義理だけどね」
大成は苦笑いを浮かべて答え、流星に歩み寄る。
「つれない言い方だな、大成。俺は、お前の命を救った命の恩人でもあるし、鍛えてやった恩師でもあるのにな」
苦笑いしながら流星も大成に近づき、お互いの距離が1mぐらいで立ち止まった。
「そのことは感謝はしている。前もお礼を言ったけど。流星義兄さんは、感謝しているなら早く強くなれって言っていただろ」
「まぁな」
流星は、頭を掻きながら嬉しそうに口元を緩める。
「それより、大成。お前は俺に話があって、ここに来たのだろ?」
「流星義兄さんこそ、僕に話があったから来たんじゃないの?しかも、遥々遠い人間の国からご苦労なことで」
流星と大成は、額に青筋を立てながら笑顔でお互いの額同士を押し当てながら言い合う。
「俺は、暇だった時に大会があると聞いて見に来ただけだ。しかし、せっかく戦いを見てやったのに、腑抜けた戦いをしやがって」
「腑抜けた戦いをしたのは、流星義兄さんのせいだろ。流星義兄さんが居たから、全力を見せないように戦ったんだ。まぁ、結果は流星義兄さんのシナリオ通りになってしまって気に入らないけど」
「「フフフ…アハハハ」」
大成と流星は、お互い笑い出した。
「「……。」」
ジャンヌ達を含め、周りは2人についていけず、ただ呆然と成行を眺めていた。
3年間、流星と一緒だったメルサも、初めて見る流星の子供じみた態度に呆然としていたが、次第に笑顔に変わる。
(まるで、本当の兄弟みたいね)
「クスクス…。それより、流星。義弟さんに会えて嬉しいのはわかるけど、話を進めましょう」
口元に手を当てながら、メルサは笑った。
「ああ、そうだな。メルサの言う通りだ。単刀直入に言うぞ、大成。お前達は、俺達の下に付け」
「「なっ!?」」
突然に流星がとんでもないことを言い出し、大成とメルサ以外の人達は驚いた。
なぜなら、戦いもせず、一方的に負けを認めろと言われたからである。
しかも、相手は流星とメルサの2人だけで、こちらは何千という騎士団達が控えている状態でだった。
「流星義兄さん。下に付けとは、平等な同盟などではないということ?」
大成は、殺気は出していないが身体を纏っている魔力が一気に膨れ上がり魔力の余波が辺りに吹き荒れる。
「「きゃ」」
「「うぉ」」
「「くっ」」
何事もなかった様に流星はやり過ごし、流星以外の人達は驚いたりして尻餅をつく人もいた。
「そうだ。いい提案だろ?無駄な血を流さないで済むからな」
あたり前のように、流星は答える。
(嘘…。大成のお兄様が、よりにもよって【時の勇者】だなんて…。私達のために、もし断ったら義兄弟で殺し合いになってしまうわ。でも、この話を呑んでしまうと…)
「た、大成…」
頭の中で色々と考えたジャンヌだったが答えが見つからず、すがるような表情で自然と大成に声をかけていた。
「「……。」」
周りも大成の返事次第で自分達の国の運命が決まるので、自然と視線が大成に集まる。
「……。それを、認めるわけにはいかない」
1度瞳を閉じていた大成は、ゆっくりと目を開き手を横に振りながらはっきりと宣言した。
「大成!」
「大成さん!」
「「大成君!」」
「「修羅様!」」
ジャンヌ達は、ホッと胸を撫で下ろしながら歓喜の声をあげる。
「なら、大成…。お前は、俺と戦うと言うのか?手合いで、1度も俺に勝ったことがない、お前が」
「「えっ!?」」
(あの大成が1度も!?)
流星の言葉に皆は驚いた。
「そうだ。流星義兄さん」
大成は鋭い眼光で流星を睨みつけたが、流星は気にせずに挑発するように不敵に笑う。
「「っ!!」」
場の空気が一触即発になり、時が凍りついたように周囲の気温が下がったような感じがし、ほんの一秒がとても長く感じた。
周りにいるジャンヌ達は皆、いつの間にか身体中から冷や汗がでていた。
「はぁ、わからんな。人間であるお前が、何故そこまで魔人に肩入れをする?姫様やそこの娘達が欲しいのなら、支配下にした後、好きにすればいいだろう?もう1度、良く考えてみろ。前の世界で手を組んでいた頃と同じように、この世界で俺とお前が手を組めばこの世界を支配できるのだぞ」
1度、溜め息をした流星は、右手掌を上にして前に出して話の最後に強く握りしめる。
「僕の覚悟は揺るがないよ、流星義兄さん。この世界に召喚してくれた恩があるから、その恩を返したい。それに、こうなることは流星義兄さんのシナリオ通りだろ?」
大成は、真剣な表情で首を横に振り最後の勧誘も断った。
「「……。」」
ジャンヌ達は、驚いていた。
なぜなら、流星は義弟の大成が欲しいと思っていたのだが、大成はそうではないと言っているからだ。
「ククク、アハハハ…」
流星は真面目な表情から一転、右手を口元に当て小さく笑い、そして、すぐに頭を上げながら右手を額に当てて大きな声を出して笑いだす。
ジャンヌ達は、流星の笑いが収まるまで呆然と見つめていた。
「ふー、すまない。それにしても、流石だな大成。俺の心の中を読むとは…。いやいや参った参った。そう、お前の言う通りだ。俺は、お前と戦いたい。いや、正確に言うと、お前と死闘がしたいと言った方が正しいな。だがな、大成。3割ほどは、昔みたいにお前と組みたいとも思っている」
ひといっきり笑った流星は、息を整えて話を進める。
「僕も、流星義兄さんに聞きたいことがある」
「何だ?言ってみろ。答えてやってもいい質問なら答えてやるぞ」
「なら、聞くけど。昔は僕のことを最高傑作で最大の失敗作と言っていた流星義兄さんが、何故今更、僕と死闘がしたいと思ったんだ?」
「「えっ!?」」
大成の質問に、ジャンヌ達は驚愕した。
大成は強く頭も切れるので、優秀どころか、とても優秀だ。
失礼だが、言い方を作品で例えて言うなら最高傑作なのはわかる。
だが、最大の失敗作というところがわからなかった。
「最大の失敗作と言われるのは、流石に嫌か?」
「そうじゃない。僕は、最大の失敗作なのだから興味がないと思っていただけだ」
「そういうことか。それなら、特別に答えてやろう。先程の腑抜けた試合の最後に見せたゾーンを超えたあの強さ、オーバー・ロードを見たからだ。まぁ、昔から時折、見ていたがな」
大成が終盤に見せた強さを思い出した流星は、自然と笑みが溢れる。
流星の背後の建物の影に、大会に出る前に大成を襲い、返り討ちに合ったケテフル、ノーラン、ヌドフの3人が隠れていた。
3人は、賭博屋で大金を受け取る流星を見て、跡をつけて隙ができるのを窺っており襲う予定だった。
「ついてきたが…。まさか、あついがあの噂高い【時の勇者】みたいだぜ」
「そうみたいだな」
ケテフルとノーランの2人は、嬉しそうに笑う。
「おいおい…。もしかして、俺達だけで討ち取ろうと思っているんじゃないだろうな。俺達じゃあ、たぶん勝てねぇよ」
そんな2人を見たヌドフは、嫌な予感がして話を聞く前にやめさせようとする。
「ヌドフ、怯える気持ちはわかるが落ち着いて考えてみろ。今、修羅と会話中だ。隙ができている今なら、背後から襲えば殺れるはずだ」
「そうだぜ。絶好のカモだ」
「……。わかった」
少し考えたヌドフは了承して、3人は作戦を練り決行することにした。
そして、未だ背中を見せたまま、話をしている流星を見た3人は無言で頷き合い、得意な魔法を発動する。
「シャドウ・ボール」
ケテフルは、闇魔法シャドウ・ボールを唱え、23個の真っ黒なサッカーボールの大きさの玉を召喚した。
シャドウ・ボールは、当たっても、全く威力はないが、当てた箇所の身体の感覚を無くす、もしくは鈍らせる効果がある。
所謂、状態異常やデバブと言われる。
「サンダー・ガトリング」
ノーランは、雷魔法サンダー・ガトリングを唱え、バスケットボールぐらいの大きさの雷球28個を召喚した。
「フレイム・キャノン」
ヌドフは両手を前に出して、炎大魔法フレイム・キャノンを唱えた。
両手から、RBLアームストロング20ポンド砲の弾、95ミリぐらいの大きさの炎の弾が銃弾の様な回転をしながら発射した。
炎の弾は、手元から離れるにつれて空気を貪りながら、どんどん大きくなっていった。
闇、雷、炎の魔法が流星だけでなく、大成達をも襲った。
3人は、大会前に大成を襲った時、確実に当てれる距離で放った魔法を避けられ、驚いたところを狙われて敗戦した。
それを踏まえて、今回は自分達から接近戦に持ち込むため、流星に突撃をした。
「ああ、そうだったな。オーバー・ロードを見せて貰ったお礼に、俺の能力を見せてやろう」
「流星!」
急に流星が自ら自分の能力を明かすと言い出したので、メルサは慌てて止めようと声を荒げる。
「別に構わないだろ?どうせ、そこにいるローケンスや姫様、ヘルレウスが教えるとはずだ。だが、実際に見た方が良いだろ?なぁ、大成。百聞一見って言うしな。エンチャント・シール」
笑いながら腰の剣を抜いた流星は、エンチャント・シールを発動させて剣に封印の能力を付与した。
剣は紫色に染まり、流星は飛んできた魔法を剣で斬っていく。
斬られた魔法は紫色に染まり、異空間に飛ばされたかのように次々に封印され消えていった。
「何だ、あの魔法は!?」
ヌドフは、流星の得体の知れない能力に驚きと不気味さを感じた。
「き、気にせず突っ込むぞ。3人同時に攻撃すれば倒せるはずだ」
3人なら大丈夫だと思ったケテフルは、撤退をせずに戦うこと決意する。
「……。ああ」
「……。そうだな」
危険だと本能が感じていたノーランとヌドフの2人だったが、もう既に魔法攻撃を撃ってしまったため後に退けず、続行するしか選択肢はなかった。
ケテフルは両方にナイフを持ち、ノーランは大剣、ヌドフは斧を持って流星に接戦する。
「やめろ!」
ケテフル達3人の姿を見た大成は、慌てて大きな声で警告した。
「「えっ!?」」
大成の対応に、ジャンヌ達は驚いた。
なぜなら、初めの3人の魔法攻撃は、流星の能力を知るために、わざと警告せずにいたとしても、いつもの大成なら既に3人を感知しており、3人が動く気配があれば事前に動く前に警告を出しているはずなのだ。
今の大成の対応で、いつもの大成ではないとジャンヌ達は気付いた。
「「死ねぇ~っ!」」
大成から警告を受けたケテフル達3人だったが、警告を無視して流星を襲い掛かる。
「やはりな。エンチャント・ディバイダー」
流星は、今度は剣に区切るという能力を付与した。
剣の色が紫色から黄色に変わり、流星は襲ってくるケテフル達を迎え撃つ。
両手にナイフを持った先頭のケテフルに向かって、流星は口元に笑みを浮かべて剣を振り下ろす。
「ぐぁ」
ケテフルは両手のナイフをクロスにし、流星の剣を防ごうとしたがナイフごと真2つに斬られた。
ノーランとヌドフは、武器が重量の大剣と斧なので、少し出遅れて流星に襲い掛かる。
2人は互いに頷き、左右に別れて攻撃をする。
ノーランは大剣を振り下ろし、ヌドフは斧で流星の首を狙い定めて横から振りはらう。
「よくも!ケテフルを!な、何だ…と!?」
流星はノーランに振り向き、左手に魔力を集中させて振り下ろされた大剣を受け止めると同時に剣でノーランの首をはねた。
「糞!だが、これは避けれまい」
流星がノーランを倒した後、背後からヌドフの斧が首を目掛け迫ってきていた。
「タイミングがワンテンポ遅い」
「何!?」
流星は回転しながら剣を振るい、ヌドフの斧が首に当たる前に流星の剣が斧に当たり斧は切断された。
流星の攻撃は止まらない。
ジャンヌ達は、次に繰り出される流星の攻撃に驚愕することになる。
流星は、流れる動作で左手をヌドフの心臓部に当てた。
「魔力発勁」
「く、苦し…」
流星が技名を言った瞬間、ヌドフの体は一気に膨れ上がり血を飛び散らせながら弾けとんだ。
流星はヌドフの体内に魔力を流し込み、ヌドフの体が耐えきれなかったのだ。
「あの技は、大成さんが使っていた技…。でも、威力が…」
「ほう」
流星の魔力発勁の威力を見たウルミラがつい呟いてしまい、流星は顎に手を当て頷く。
「あっ、大成さん。すみません」
「気にする必要ないよ、ウルミラ」
初歩的ミスを犯したウルミラはシュンとしたが、大成は苦笑いで庇った。
「そうだな、大成に発勁を教えたのは俺だからな。まぁ、技自体は外国、いや、この世界だと他国と言った方が分かりやすいか?それにしても、一連の流れで2つほどわかった。1つは、どうでもいいことだが。大成、お前は皆に自分の実力を見せてないのだな。まぁ、俺もそうだが。2つ目は、先のお前の反応と、俺との接触まで掛かった時間で気付いたことだ。大成、オーバー・ロードを使った代償として未だに体が軋み、体力や魔力が大幅に低下しているのだろ?」
剣を鞘に収めた流星は、指摘する度に左手の指を一本ずつ立てる。
「「えっ!?」」
流星の指摘に驚いたジャンヌ達は、大成に振り向いた。
「流星義兄さん、何のことだ?」
「とぼけても、無駄だ。もう、立っているのも限界なはずだぞ」
「……。」
沈黙した大成は、今まで平然と演技していたが限界が訪れ、もう我慢ができなくなっていた。
大成は、身体が小刻みに震えて汗が溢れていく。
「まぁ、仕方ない代償だ。己の限界を越えた力を出したんだからな。筋肉組織は、もうすでにズタズタになっているはずだ。なのに、よく、そんな状態でここまで来れたものだな」
流星は話ながら、大成の表情を窺うような視線で見る。
流星の言っていることは、あっていた。
大成は試合が終わり、流星に会いに行く時には、もう歩くのもやっとの状態だった。
そのせいで、予想以上に時間が掛かったのだ。
だが、時間が経っても、大成の容態は一向に回復する気配がないままだった。
流星は同じ会場に大成がいるのに、わざと先に離れている賭博屋へ行き大成との距離を取った。
そして、自分から積極に会いに行かなかったのは、大成の今の容態を知るためでもあったのだ。
ジャンヌ達は流星の話を聞いて、大成に居場所を聞いた時、なぜ断ったかの理由がわかった。
大成が今の自分の容態を知られたくなかったことを。
もし自分達が流星より、先に会っていたら絶対に止めていたと思ったからだ。
ジャンヌ達は、大成を庇うために武器を握りしめる。
「俺の用件は以上だ。そうえば、大成。お前の用件を、聞いていなかったな」
フッと思い出した流星は、剣を鞘に収めた。
「僕の用件は、平等な同盟を結びたかった。でも、こうなることは、魔王候補達の亡骸の近くに、この落ちていたカードを見たときから予想していた。流星義兄さんだろう?魔王候補達を殺したのは?」
懐からカードを取り出た大成は、流星にカードを見せて人差し指と中指でカードを挟み込んで手首にスナップを利かせてカードを流星に向かって飛ばす。
「ああ、このカードは懐かしいだろ?あの頃を思い出すだろ?」
流星は、右頬の横に右手を出して飛んできたカードを右手の人差し指と中指で挟んで止めた。
「確かに…」
懐かしい表情をした大成は、どこか切なさが混じっていた。
そんな大成の表情を見たジャンヌとウルミラは、自分達の身勝手な都合で召喚したことを申し訳ないという気持ちが込み上がり胸一杯になった。
「大成が万全だったら、あなたに負けないわ」
今は感情に浸っている場合ではないと判断したジャンヌは、頭を左右に振りながら流星に指差して宣言し、皆は頷いた。
「ほう…。それは、楽しみだな。なら、2つ良いこと教えてやろう。1つは、姫様とウルミラだったか?お前らの母親、ミリーナとウルシアの寿命があと1ヶ月もないぞ」
「「~っ」」
流星の宣言に、皆は息を呑んだ。
「どういうことだ?流星義兄さん」
訝しげな表情をしながら大成は、流星に尋ねる。
「知らされて、いなかったのか?まぁ、お前がここに来る前の話だからな。3年前に、俺が封印したんだ。普通だと1週間で生命が尽きるのだが、それほど強い魔力と生命力があったみたいだな。流石、妃にヘルレウスメンバーだな」
顎に手を当てながら、流星は関心した。
「その封印を解くには、流星義兄さんを倒さないと解除できないと言うこと?」
「いや、その方法もあるが。大成、お前ほどの魔力があれば、解けるかも知れん。まぁ、解除する魔法が使えればの話だけどな」
流星の話を聞いたジャンヌ達は、大成に視線が集まる。
「光魔法か…。魔人の人達には、絶対に無理な話だな」
魔人は光魔法が使えないのは常識で、どうしようもなかったんだなと大成は思ったが、それと同時に、ジャンヌ達から教えて貰いたかった。
「ああ、そうだ。なら、試しに今から殺し合ってみるか?今なら最大のチャンスだぞ。こちらは、俺とメルサ2人しか居ないからな。だが、一斉に襲って来ても良いが、そうなったら俺は全力を出させて貰う」
流星が提案した時、騎士団達は殺気を放つと共に流星は再び剣を抜刀して魔力を高める。
「「くっ」」
「「ひっ」」
流星の圧倒的な膨大な魔力を前にして、殺気を放っていた騎士団達は怯んだ。
「お前達、よせ!手を出すな!手を出すと本当に全滅するぞ!」
「修羅様…。ですが…」
「修羅様の言う通りですぞ」
「「ニール様」」
大成からやめるように命令を受けた騎士団達だが、今はヘルレウス・メンバーがいるので、命を懸ければミリーナとウルシアを救えると思っていたが、ニールも大成に肯定したので騎士団達はローケンスとシリーダに視線を向けると2人も頷き、騎士団達は放っていた殺気を消した。
「懸命な判断だ。まぁ、どちらでも良かったが」
流星は、剣を鞘に収めて魔力と威圧感を消した。
「ところで、流星義兄さん。もう、1つは?」
「ああ。2つ目は、1ヶ月しないうちに魔人の国を襲う予定だ」
「なるほど。もし、僕がミリーナさんとウルシアさんを助けて弱ったところを狙う予定なのか?それなら、今でも良んじゃあ…」
大成は、顎に手を当てながら考えて呟いた。
「大成、お前の考えはあっている。しかし、困ったことに俺以外にも召喚された奴や手柄をあげたい奴が多くいてな。今回は、俺は直接手を出さない。いや、出せないと言った方があっているか…。だが、戦のタイミングは俺が指示する予定だ」
頭を掻きながら、流星は溜め息をした。
「なるほど。封印解除したら、流星義兄さんは気付くのか…」
大成は、どうすれば流星に気付かれないように封印を解除できるか考える。
「そうだ。あと、更に助言をしてやろう。守るものを増やし過ぎると逆に身を滅ぼすぞ。話はここまでだ。じゃあな、大成。お前に会えて楽しかったぜ。俺と戦うまで生き残れよ。帰るぞ、メルサ」
「わかったわ。それに、満足したみたいで良かったわ」
メルサは、笑顔で流星の腕を組んだ。
「わかるか?」
「わかるわよ。だって、久しぶりだもの。あなたの、その嬉しそうな顔を見るの」
流星とメルサは大成達に背を向けてゆっくりと歩き出し、その場を立ち去った。
次回、ミリーナとウルシアの件です。
投稿遅れ、申し訳ありません。




