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魔王決定と義兄弟の再開

魔王決定戦で、押されている大成は、もう一段階強さを上げると宣言した。

【魔王決定戦・ボルダ国・ボルダ城内・リング・昼】


会場の観客達の視線は、大成とエヴィンに集まっていた。


大成は、観客達の視線を気にせずに周囲にいる人形達を見渡して不敵に笑う。

(8割まで上げるか…)

今まで、7割の魔力しか出していなかった大成は、魔力を8割まで上げたことにより、解き放れた魔力が衝撃波として会場を襲った。


「「きゃっ」」

「「うっ」」

「何だ?」

驚いた観客と選手達は、手を前に出し余波を凌ぎながら大成を見る。


大成は先程と比べ、纏う魔力や雰囲気、そして威圧感が跳ね上がった。



「くっ、な、何だと!?たかだか人間が。しかも、子供だぞ…。これほどの魔力を…ありえない…。化け物めっ!」

先程まで余裕の笑みを浮かべていたエヴィンだったが、今は左手を目元の前に出して魔力の余波を受け止めたままの状態で、驚愕しており身体中から冷や汗を掻きながら青ざめていた。


エヴィンは、失明していて目が見えない代わりに感知能力がズバ抜けており、非常識な大成の強さを誰よりも感じとっていた。


人形達と流星以外の人達は唖然として無言のまま、ただ大成を見つめるのであった。




【観客席・正門側】


「ハハハ…、良いぞ大成。心地良い魔力だ。しかも、まだ余裕がありそうだな」

流星は顎に手を当てたまま、大成の強さの片鱗を知り嬉しくなって笑った。


「う、嘘…。し、信じられないわ。流星、あなた程ではないけど。子供が、これほどの魔力を秘めているなんて…あり得ないわ…」

メルサは、信じられないものを見た様な面持ちで呟く。


「いや、メルサ。少し違うぞ。さっきも言ったが、まだ大成は本気を出してはいない」

「えっ!?じゃあ、まだ魔力が上がるっていうの!?」

「ああ、おそらくな。俺の予想だと、大成は俺と同等の魔力を保有しているかもしれない」

「~っ!!」

流星の言葉を聞いたメルサは目を大きく開き、息が詰まりそうになるほど驚いた。


なぜなら、流星の魔力値は、この世界で最上位のランク10なのだ。


ランク10とは、達人や英雄が一生懸けても到達できない者が殆どで、本当に極一握りの者しか到達できないランクであった。

そのランクに、まだ子供の大成は、既に到達していると流星は断言したからだ。



「エヴィン、もっと頑張ってくれよ。そして、大成を追い詰めて本気にさせろ」

流星は不敵に笑った。




【観客席・プレミアム席】


大成の魔力を感じたジャンヌ達は圧倒されたが、次第に我に返った。

「これが、大成君の…。いや、修羅様の本気なの…」

「す、凄すぎるぜ。これが、修羅様の実力なのか!父さんの言う通りだったぜ。この試合、勝てる!勝てるぞ!」

大成の強さを目の前にしたイシリアは驚愕して呟き、マーケンスは拳を挙げて嬉しくなり盛り上がる。


「そうね、それにしても凄い魔力だわ…。まさか、お父様と同じぐらいの魔力を秘めていたなんて…」

「そうですね、姫様。私も驚きました。まるで、魔王様が激怒した時を思い出します」

「「ええ…」」

「そうですな」

ジャンヌとウルミラは先代の魔王を思い出し、シリーダ、マリーナ、ニールも肯定した。


だが、その中で、ただ一人、ローケンスは違った。

「いや、まだ、修羅様は本気ではないのかもしれん…」

(もし、そうだとしたら…。そして…。)

もし、人間の国が大成を召喚していたらと想像したローケンスは、冷や汗を流しながら皆と違う意見を言った。


「「えっ!?」」

皆は、一斉にローケンスを見る。


「関係のないのかもしれないが、修羅様から全く殺気が感じれないない。それに、あの修羅様が、そう簡単に実力を見せるだろうか?」

「「……。」」

ローケンスの話しにジャンヌ達は、そうかもしれないと思った。


「まさか…ね…」

ジャンヌは恐る恐る呟き、少し離れた場所ではエターヌ、マキネ、ユピアの3人は大成を応援していた。




【リング】


「なぁ、一応、念のために最後に聞くが降参してくれないか?」

頭を掻きながら大成はエヴィンや他の選手達に尋ねる。


「「~っ!?」」

エヴィンと人形達を除く出場選手達は、戸惑っている者や未だに唖然としてフリーズしている者しかおらず誰も返答しなかった。


「ふ、ふん。調子に乗るな!どれだけ魔力が高かろうが、このメンバーに勝てるとは思えん。行け、人形達よ。修羅を殺せ!サモン・ソウル・ゲート」

エヴィンは、杖を握っている右手を前に出し、人形達に命令を下す。


人形を破壊されても、すぐに復活が出来るようにエヴィンは左手には土人形を持ち、再び石の扉を召喚した。



エヴィンの命令で人形達が、一斉に大成に襲いかかる。

「そうか…。それは、残念だ」

言葉と裏腹に大成の口元は緩んでいた。


人形達の中で、一番素早い獣人ガブドが先頭をきって大成に接近する。


大成は動かず、その場に立ったまま来るのを待つ。


ガブドは、大成に接近しながら両手に魔力を込めて両手を鋭い爪に変化させ攻撃モーションに入り両腕を引いた。


先程のガブドとの戦いで、初撃は両腕を引くガブドの癖を見抜いた大成は、ガブドが両腕を引くタイミングを見はかり、ガブドに向かってダッシュして一気に距離を詰める。



「なっ!?」

懐に潜られたガブドは、慌てて攻撃しようとするが自然と引いていた両手を急に前に出そうとしても動かせず、逆に硬直して隙ができた。


その僅かにできた隙に、大成はガブドの鳩尾に肘打ちを決め、ガブドの体が「く」の字になった。


他の人形達が来る前に、大成は怯んでいるガブドの手首と胸ぐらを掴み1本背負いをして投げた瞬間、ガブドの頭を蹴り飛ばす。


ガブドの頭は、陶器みたいにヒビが入り粉々に粉砕した。


そして、胴体はヒビが入りながら他の人形達の方へと飛んでいった。

大成は、飛んでいったガブドの胴体の後ろをついって走る。


すぐさま、エヴィンは土人形を投げて再び石の扉を開き、ガブドの魂を召喚する。


その間に、大成は人形達に迫っていた。


「グガ」

人形達は飛んできたガブドの体を避けたが、人形のゴブリン・ロードは立ち止まって大きな右手を振り上げ、そのまま振り下ろして飛んできたガブドの体を地面に叩きつけ粉々にした。


大成の次のターゲットは、今、ガブドの胴体を攻撃して隙ができているゴブリン・ロードだった。


大成はゴブリン・ロードの懐に潜ろうとたしが、大成の前を塞ぐようにモルアが前に出る。


「オラッ」

モルアが、大成に向かって魔力剣を横に凪ぎはらう。


大成は、しゃがんで回避し、下からモルアの顎を目掛けてアッパーで撃ち抜いてモルアの頭を粉砕し、続けてモルアを横に蹴り飛ばして襲いかかっていた女性の人形に当ててバランスを崩す。


その場で大成は回転し、バランスを崩している女性の人形の頭に回し蹴りを入れて粉砕した。


粉砕した時、背後からゴブリン・ロードが走りながらタックルをしてきたので、大成はバク宙して回避しながら空中でゴブリン・ロードの頭部を両手で掴んだ。


「グガッ…」

ゴブリン・ロードは大成を掴もうとしたが、大成は逆立ちした体勢で頭部を掴んだまま身体をひねってゴブリン・ロードの頭をもぎ取り、着地と同時にゴブリン・ロードの胴体を蹴り飛ばした。


今度はゴブリン・ロードの体は巨体なので、人形達は今までより大きく回避する。


「やはり、作り物か」

真上にジャンプして回避した男性の人形に向かって、大成はもぎ取ったゴブリン・ロードの頭部を思いっきり投げつけた。


男性の人形は、空中なので方向を変えることができず、魔法で迎撃しようとしたが飛んでくる頭部が猛スピードだったため、間に合わず腹に直撃した。


当たった場所からヒビが入り、頭部と同時に砕けた。


エヴィンがガブドを復活させる間に、大成は人形4体を撃退していた。

大成の勢いは、劣れるどころか叙々に増していく。


「糞っ!」

破壊された4体を召喚をした時には今度は5体撃退され、しかも、少しずつだが先程よりも大成が近づいていた。


(先代の魔王の時より、明かにメンバーは強化されいる。それなのに、何故、あの時よりも撃退される速度が早いんだ!?しかも、この俺が、子供に接近されているだと…。こんな屈辱を!!)

激怒したエヴィンは、杖を握っている右手に力が入る。


その間でも大成は、近づいてくる。



(……。認めたくないが、認めざる得んな。一度、離れるか…。いや、まだ大丈夫だ。もし、ここで離れたら押しきられそうだ)

大成の撃破速度が召喚を上回って押されている中、エヴィンは深呼吸して大成を認めて冷静に考える。


ユニーク・スキル、シャーマンには、他にもデメリットがあった。

1、固定魔法で移動できない。

2、移動させる場合は、1度解除して再び石の扉を召喚させないといけない。

3、石の扉を召喚している間は扉を中心に魔法陣が展開され、その魔法陣からエヴィンが離れた場合は強制的に解除される。

4、魔法陣の展開は早いが扉の召喚が遅い。

5、扉を破壊されると魔力が一気に消費する。

6、魔法陣が描かれた人型の人形が必要。

7、人形は、生前の8割の強さしか再現できない。


デメリットが多いが、それを上回る恩恵がある。

1、召喚する魂の強さは関係なく魔力消費は同じ。

2、自分より強い人物も召喚できる。

3、召喚に成功した人形は魔力量は無限。

要するに禁術が使える人形だと、禁術が撃ち放題ということだ。


だが、禁術や他の魔法を唱えようとすると隙ができるので、動きが素早い大成の餌食となるので使用させなかった。


そして、召喚したメンバーで接近戦が一番強いガブドと2番目に強いモルアは、大成に動きを読まれたり、大成の動きについていけず、他の人形達と変わらない速度で撃破されていく。


ガブドは、自分の癖を狙われていることに途中で気付き、癖を修正しているが逆にぎこちない動きとなり、大成に簡単に倒されていた。


モルアは他の人形達と同じで、大成のスピードについていけず、勘で魔力剣を振っての攻撃しかできず、どうしようもなかった。




【観客席・正門側】


その戦いを流星は、顔をしかめて観戦していた。


「おいおい。エヴィンの奴、もう少し出来る奴と思っていたがダメだな。このままだと押しきられるのも時間の問題だな…。」

「えっ!?大成君が押しているのに不満なの?」

メルサは、てっきり流星は大成を応援しているのかと思っていた。


「ああ、俺が見たいのは大成の本気だからな。最後に別れてから、どれくらい強くなったか。そして、前に時々見せた…あの強さは、今は自力で出せるかをな…。」

「あの強さ?」

最後独り言みたいに言った流星の言葉に、メルサは頭を傾げながら尋ねる。


「いや、何でもない。気にするな。それより、メルサ。頼みがあるレゾナンスを使ってくれ」

流星はメルサから質問されたが誤魔化し、精神干渉魔法レゾナンスを頼んだ。


「わかったわ。大成君に繋げれば良いの?」

「いや、エヴィンの方だ。あいつに大成の弱点を教える」

「えっ!?」

流星は、大成に挨拶するとメルサは思っていたので驚きの声をあげる。



(このままだと、あと数分で大成に接近され、エヴィンは負けるな。所詮は、魔王になれなかった落ちこぼれか)

状況を見た流星は、溜め息して判断した。




【リング】


「く、糞っ…」

(一旦、門を解除して距離をとるしかないか)

門を解除しようと決断したエヴィンの周りに、メルサの魔力が集まった。



「お忙しいところ、ごめんなさい。でも、貴方に良い情報をあげるわ」

「誰だ!?」

「あら、私としたことが。私はメルサ姫。だけど、あなたに用があるのは私じゃないわ」

「何!?メルサ姫だと!?」

メルサは、エヴィンが自分の名前を聞いて驚いた声を出したのでクスクスと笑った。


「よぉ、苦戦しているみたいだな。俺は、大和流星だ。そうだな…。【時の勇者】と言えばわかるか?」

「な、何だと!?なぜ、【時の勇者】と人間の国の姫がここにいる。偽者か?いや、待てよ。入場式の時のあのプレッシャーは、お前だったのか勇者…。なるほど、それだと納得できるな。それで、その勇者が俺に何のようだ?」

勇者の名前を聞いたエヴィンは驚いたが、入場式に放たれたプレッシャーで納得したが相手が勇者なので警戒する。


「そう、警戒するな。まぁ、そう言っても警戒するよな。だが、今は時間がないだろ?だから、単刀直入に言うぞ。俺が、お前を勝たせてやる」

「……。どういう風の吹き回しだ?なぜ俺に協力する。先に、その理由を教えろ」

流星の話しを聞いたエヴィンは怪しむ。


「賭博屋で、誰が魔王になるかで賭けをしているんだ。俺が賭けたのは、お前なんだ。そういうことで、勝って貰わないと困るんでな。だから、大成の弱点を教えてやる」

最もらしい理由を言った流星だったが、もちろん嘘だ。

なぜなら、流星が賭けているのは大成なのだから。


「なぜ、お前が弱点を知っている?」

「ん?ああ…。そいつは俺の義弟だからな」

「お、弟だと!?尚更、理解に苦しむ。自分の弟が死ぬのかもしれないのだぞ?」

「弟でも、義理だからな。だから、そんなに慣れ親しい間柄じゃない。で、どうする?このままだと、お前は確実に負けるぞ。それで良いのか?お前は魔王になりたんじゃないのか?」

確実に自分のシナリオ通りなるように流星は誘導する。


「……。わかった。で、勿論。タダでは無いのだろ?お前は、何を望む」

エヴィンは悩んだが、流星の言う通りでこの戦いに負けるわけにはいかず流星に頼るしかなかった。


「いや、別にタダで良い。俺は賭けに勝ちたいだけだからな。勝てば大金が入る。それが報酬ってことで良い」

「ふん、あとから要求するなよ。サモン・ソウル・ゲート」

流星の話を詳しく聞くため、エヴィンは大雑把に土人形を投げて召喚条件の強さの設定を低くし数で時間稼ぎをすることにした。


「ああ、構わない。それに、あまり時間がないな。単刀直入に言うからよく聞け、大成の両親を召喚しろ。それで、終わる」

「!?本当に…。たった、それだけで良いのか?」

エヴィンは、半信半疑になった。


「ああ、信じられないのはわかる。だが、大成は幼い頃、両親を亡くしているからな。それで動きが止まる。そこを狙えば終わる」

「そういうことか…。やはり、子供と言うことか。わかった」

流星の理由は筋が通っていたので、納得したエヴィンはレゾナンスを切った。

いや、もうどうであれ信じるしか選択はなかった。




【観客席・正門側】


「流星、あなたの思惑通りに進んだけど。本当に、これで良かったの?」

メルサは、流星の考えが未だにわからなかった。


自分達は大成に賭けており、しかも、大成は流星の義弟なのに弱点を教えたのだ。

大成が本気になっても負けるのではないかと、メルサは思った。


「ああ。これで、もしかしたら面白いものが見られるかもな。ククク…」

自分のシナリオ通りに進み、流星は静かに不敵な笑顔を浮かべる。


「面白いもの?」

「ああ」

気になったメルサは、流星に尋ねながら大成を見詰めた。




【リング】


とうと、エヴィンは大成との距離は15mぐらいの所まで接近されていた。


(お前を信じるぞ。勇者)

「サモン・ソウル・ゲート」

エヴィンは数多くの土人形をばらまき、殆どの魔力を消費して数多くの魂を召喚する。


その中には、流星の言う通りに大成の両親も召喚した。

数多くの人形を召喚したのは、流星が大成の動きが止まると聞いたので、止まったところを一気に襲って確実にしとめるためだった。



「ハッ!」

大成は構い無しに人形達の群れの中に突っ込み、人形を破壊していく。


そして、大成の目の前に自身の両親が現れた。

大成は目を大きく見開き、すぐに大きく後方にジャンプして距離をとった。


せっかく、あと一息でエヴィンに接近でき、倒せたはずだった大成が後ろに下がったことで会場は疑問に満ち、膨大だった大成の魔力が微弱になった。




【観客席・プレミアム席】


「大成、どうしたのかしら?」

「大成さん?」

「大成君?」

ジャンヌ、ウルミラ、イシリアは、嫌な予感が頭を過り不安になる。


いや、エターヌ、マキネ、ユピアやヘルレウス・メンバー達も不安になっていた。




【観客席・正門側】


「え!?」

「フッ、さぁ、どうする?大成」

大成が動きを止めたことでメルサは動揺していたが、隣にいる流星は口元が笑っていた。




【リング】


「お父さん…。お母さん…。」

大成の態度が急変し、静まり返った会場に大成の呟きが響いた。


「大成、大きくなったわね」

「ああ、見間違えるほど立派になったな」

大成の両親は笑顔で大成に歩み寄る。


「再開はとても嬉しいのだけど、残念だわ大成。あなたを殺さないといけないのだから」

「ああ、エヴィン様の命令だからな。だが、大成。安心すると良い。死んだら、これからずっと一緒に居られるのだからな」

大成の目の前まで近づいた両親は、大成に抱きついて裾の内側に隠していたナイフを取り出す。


「……。」

大成は、俯いたまま動かなかった。




【観客席・プレミアム席】


動かない大成を見て、ジャンヌ達は勢い良く立ち上がった。

「大成!」

「大成さん!」

「お兄ちゃん!」

「ダーリン!」

「大成君!」

「修羅様!」

ジャンヌ達の悲鳴に似た声が会場に響く。




【リング】


「な、何ということでしょう。エヴィン選手が召喚したのは、修羅様のご両親だ~」

ミクは、力強く実況する。



「あやつの言う通りだったか。やはり、まだ子供だな。フフフ、アハハハ…。殺れ、人形達よ。これで終わりだ!魔王修羅!ハハハ…。」

勝利を確信したエヴィンは、確実にしとめるために人形達に一斉に攻撃するように命令をした。


「魔王修羅の首は、俺が貰うぞ!」

「いや、俺だ!」

今まで、大成に怯えていた他の選手達だったが、大成は沈黙したまま身動きすらしなかったので、人形達と一緒に大成に向かって走り出す。




【観客席・正門側】


「来たか…。メルサ、大成をよーく見とけよ。面白いものが見られるぞ」

「面白いもの?」

「ああ、集中して大成を見てろ。滅多にお目にかけない光景が見れるからな」

「?ええ、わかったわ」

メルサは訳がわからなかったが、流星の言う通りに大成に意識を集中させた。




【リング】


両親は大成を抱きしめたまま、ナイフを逆手に持って背後から突き刺そうとした時…。


「おい、お父さんとお母さんを侮辱するな…。」

冷たい声で大成は呟き、そして村雨を発動して両親を粉々に粉砕する。



流星以外は大成の動きが見えず、なぜ大成の両親が粉々になったのかがわからなかった。


そして、すぐに、その場から大成の姿が消えたと思った瞬間、選手達の悲鳴が会場に響く。

「ぎゃぁ」

「うぁ」

「がはっ」


だが、誰も何が起きているのかわからない。


ただリングの上では大成の姿は見えず、次々に選手達は頭や首、心臓など急所から血を流し飛び散り、人形達は粉々になって倒れていく。


観客達は呆然とその光景を眺め、会場は選手達の悲鳴が響いた。




【観客席・プレミアム席】


ジャンヌ達も目を凝らして見ているが、大成の姿を捉えるどころか気配すら感じることができずにいた。


「こ、これほどとは…」

「こ、これが…本気の大成…」

「大成さんの姿どころか…。気配すらわかりません…」

「「……」」

ニールは驚嘆し、ジャンヌとウルミラは呟く。


他のシリーダ達は、口を開いたまま呆然とリングを眺めていた。



「やはり…。だが、まさかこれほどとは…。」

(もし仮に俺が出場していても、他の者達と同じで何もできずに殺られていただろう…。)

少し前に大成は本気を出していないと皆に話していたローケンスだが、予想を超える大成の実力を目の当たりにした背筋がゾッと凍りついて呟いた。




【観客席・正門側】


「う、嘘、信じられないわ。集中して見ていたのに、一瞬で見失ったわ…。それにしても…」

「アハハハ…。良いぞ大成、俺の予想通り。いや、予想を超えているな」

「りゅ、流星!あなたが言っていたことは、このことなの?」

「ああ、凄いだろ?己の限界を超えた力。要するにゾーンを超えた力、オーバー・ロードだ」

流星は上機嫌になり笑っていたが、メルサは不安だった。


今まで流星は絶対負けないと信じていたが、大成の実力を垣間見て、その心が揺らぐほど衝撃だった。

もし、流星が大成と戦ったらと思うと心配になった。




【リング】


「ぐぁ」

唯一少し前まで、かろうじて大成のスピードについていっていたガブドも完全についていけず、何もできずにあっという間に撃退された。


「い、いったい何が起こっているんだ!?」

目が見えない代わりに感知能力が優れているエヴィンだが、大成の気配も殺気もなく、魔力感知で探ろうにも大成は身体強化を必要な時に、ほんの一瞬しか使用していないので感知するのが困難だった。


感知してわかるのは異常な速さで、他の選手達と人形達の魔力と気配が消えていくことだけ。



そんな中、降参しようとする選手達が続々現れるが…。

「こ、降…ぐぁ」

「リタ…ぎゃ~」

大成は最後まで言うことを許さず、言いかけた者から殺していく。


「は、話が違うぞ。サモン・ソウル・ゲー…」

魔力を殆ど消費しているエヴィンは、石扉を開けて再び魂を召喚しようとしたが、その前に大成が村雨で石扉を切り刻んだ。


石扉は無数に切り裂かれ、轟音をたてながら地面に崩れ落ちていった。



「ぎゃぁ」

「やめてくれ」

石扉が崩れ埃が舞い、観客席からリングが見えなくなるが、他の選手達が悲鳴だけが聞こえてくる。


「く、糞が~!」

石扉を破壊されたことにより、魔力が残り僅かになったエヴィンは、憎しみを込めて叫びながら体から魔力を放ち埃を吹っ飛ばす。


観客席からリングが見えるようになった時には、エヴィンしか立っておらず、そのエヴィンは血塗れになっている大成に右手で首を鷲掴みされて持ち上げられていた。


「ぐっ、糞っ。いつの間に…」

首を絞めつけられながら持ち上げられているエヴィン自身も、持ち上げられるまで全く気づかなかったほどだった。


エヴィンは、持っている杖で大成を殴ろうと思ったが、いつもと何か違うことに異変を感じて杖に視線を向ける。


杖は既に根元が切断されており、そのことに気付いた瞬間、杖の先端が地面に落ちた音が聞こえた。



「ば、化け物めっ。ぐぅ…糞っ。何て握力だ…」

エヴィンは苦しみながら大成を睨みつけ、斬られた杖を捨てて両手で首を絞めつけている大成の右手を外そうとしたが、びくともしない。


それどころか、逆に徐々に大成の右手に力が入り絞められていく。


「おい、お前は俺の琴線に触れた。俺のお父さんとお母さんを侮辱したんだ。楽に死ねるとは思うなよ」

冷酷で見ていると闇の中に吸い込まれそうな輝きがない真っ黒な瞳をした大成は、小さく呟いた。


「ガハァッ…。あ、あれは、い、言われたから…したんだ…」

「言われた?」

大成は、話を聞くためにエヴィンが呼吸できるぐらいまで首を絞めている右手の力を緩めた。


「あ、ああ、お前の弱点は…りょ、両親だってな」

「なるほどな…。」

再び、大成は右手に力を込めた。


「ぐっ、し、知りたくないのか。その人物を…」

「残念だが、もう検討はついている」

「な、なら、その人物のことを…。うっ、詳しく、し、知りたくないのか?」

「気になるが、お前はもう死ね」

「た、頼む。許してくれ…。がはっ…」

(流星義兄さんが、お前みたいな奴に自分のことを詳しく教えることなんてないからな)

大成は、エヴィンの首を握り潰して手を離した。


(久しぶりだな。この状態になったのは…。だが、この怒りを鎮めないと…。)

大成は未だに怒りが収まらなく、まだ殺し足りない、殺したいと本能が訴えている。


大成は、今の状態で観客を見てしまうと襲ってしまいそうだったので観客達を見ないように空を見上げた。




【観客席】


観客達の目の前には、戦慄する光景が広がっていた。

リングは血で紅く染まり、大成ただ一人だけが立っている。

だが、その大成も気配がなく、意識して見ないとわからないほどだった。




【観客席・プレミアム席】


ジャンヌ達は、空を見上げている大成の瞳を見てゾッと背筋が凍りついた。


今まで冷酷になった大成の瞳とは違い、今回は冷酷だけでなく、瞳孔が大きくなったり小さくなったりしており、まだ獲物をしとめ足りないと伝わってくる。


会場は、まるで大きな檻で、腹を空かせた猛獣と一緒に入っているかのように感じた。


このままだと自分達も殺されると、本能が警告を最大限に鳴らしている。


「あれは、本当に大成なの…。」

「「……」」

ジャンヌの質問に、誰も答えれなかった。


ウルミラを除く、ヘルレウス・メンバーは何が起きても対処できるように武器に手をかける。


それほど、今の大成は異様な禍々しい雰囲気を醸し出していた。




【観客席・正門側】


「ね、ねぇ、流星。大成君は本当に人間なの!?この魔力の禍々しさは、もう人間のものではないわよ。とんでもない化け物ね…。」

人間離れした大成の雰囲気と戦いを見たメルサは、震えながら流星の腕にしがみついた。


「だろ。だから、俺はあいつと戦いたいんだ。わかるだろ?」

大成の戦いを見た流星は、楽しい玩具を見つけたように生き生きした表情で笑いながらメルサに振り向く。


「ええ、何となく。互角に渡り合える人が欲しいのね」

「そうだ。流石、俺の女だな」

無邪気な表情で流星は笑顔で頷いた。




【リング】


「しょ、勝者、修羅様。今回は予選だったのですが、修羅様以外の選手は立っていませんので、本選はなく修羅様が魔王に決まります。しかし、皆さんはどうでしたか?私は、驚きましたというより、途中から修羅様の姿が見えなくなり、あっという間の出来事で実況する暇もありませんでした。それでは、魔王になりました修羅様にインタビューをしてきます」

静寂の中、ミクの声が響いた。


そして、何も知らないミクは、駆け足でリングに上がり笑顔で大成に近づいていく。




【観客席・プレミアム席】


((今、近づいたらっ!!))

ジャンヌ達は、声を出したかったが出なかった。




【リング】


「修羅様、優勝おめでとうございます。今日から、この魔人の国の魔王に決まりました。今の気持ちは、如何でしょうか?」

ミクが大成に尋ねると、空を見上げていた大成はミクに振り返った。


「えっ!?そんな急に…。えっと、まず応援してくれた皆に、感謝します。ありがとうございます。あと、これからの方針は先代の魔王の時と同じで、貿易などは平等に取引をすること。それと、なるべく血を流さないように、獣人の国や人間の国など他国とは同盟を持ち込んで行こうと思います。もちろん。不利な条件や攻めてきた場合は、こちらも対処していくつもりです。これらが、自分が考えた結論です」

大成は、いつもの大成に戻っており、これからの魔人の国の方針を伝えた。


殆どの人は人間の国とは同盟は無理だと思ったが、大成の戦いを見たあとでは反論ができなかった。


だが、大成の声を聞くと何故かできそうな感じがし不思議な感覚だった。



「では、約束の…」

ミクは、話ながら大成の頬にキスをする。


「なっ」

突然のことで、しかも予想もしていなかった事態に大成は驚いた。


「どう?タイセイ君」

「あ、ありがとう、で合っているのかな?」

「可愛いね大成君」

再びキスをするミク。

今度は頬ではなく、大成の唇だった。


「「あっ!」」

ジャンヌ達と男達の声が響いたが、徐々に拍手する人が増えていき、会場に盛大な拍手が鳴り響いた。


頬を赤く染めた大成は、ボロボロになったローブを大きく羽ばたかせながらリングから降りて退出する。




【観客席・正門側】


「さ、流石、修羅様だ…。あのエヴィンを倒すとは…。」

「ああ、あの御方こそ俺達の王に相応しい。いや、修羅様に恥じぬよう俺達も頑張らないとな」

「そうですね」

流星を監視していた騎士団達は、お互いに頷き合う。


大成に釘付けになっていた騎士団は、流星達から目を離して見失っていた。


「あ、あのギヌル隊長。監視していた勇者達を見失いました」

「な、何だとっ!?」

今さっき、大成に恥じぬように頑張ろうと決意したばかりだったギヌルは大きな声を出す。


「な、何たる不覚だ。この俺としたことが…。糞、お前達はこの近くを探せ!俺は、レゾナスでジャンヌ様達に報告する」

右手を横に振りながら、ギヌルは騎士団達に指示した。


「「了解!」」

騎士団は、流星とメルサを探しに行き、ギヌルは辺りを見渡して精神干渉魔法レゾナスを唱え発動するであった。




【観客席・プレミアム席】


ジャンヌ達は、大成が無事に優勝したことやミクに危害がなかったことにホッと胸を撫で下ろしていた。


そんな時、ジャンヌとローケンスの周囲に魔力が集束する。


「ジャンヌ様、ローケンス様。今、御報告を致しても大丈夫でしょうか?」

「大丈夫よ。ギヌルどうしたの?」

「あ、あの、申しにくいのですが、勇者達を見失いました。大変申し訳ありません。今、捜索を行っています」

「わかったわ。私達も今すぐに捜索するわ」

ジャンヌとローケンスは、ギヌル達が流星達を見失ったことには怒らなかった。


元々、監視していた対象が流星達なのだから仕方ないと思っていたからだ。



「いえ、とんでもないです。ジャンヌ様達に捜索を…。」

「いや、ジャンヌ様の言う通りだ。もしかしたら、勇者達は修羅様を暗殺しに向かったかもしれん」

ローケンスは、言いかけたギヌルの言葉を中断させて流星の行動を予想する。


「な、何とっ!では、私と騎士団達は、すぐに修羅様の所に向かいます」

「ええ、頼むわよ。私達も大成の所に向かうわ。その間は、絶対に大成を守りなさい。これは、命令よ!わかったわね?ギヌル」

「了解っ!この命を懸け、修羅様をお守り致します」

「頼むぞ!ギヌル」

「了解!」

こうして、ギヌルはレゾナスを解除した。



ジャンヌとローケンスは、ウルミラ達に振り向く。

「皆、ギヌル達が勇者を見失ったとの報告が入ったわ。それで、皆で今から大成のところに向かうわ。武器と戦闘準備をしなさい」

「了解です」

「「了解!」」

緊迫した空気の中でもウルミラ達は冷静で、ジャンヌの言いたいことを理解して承諾した。


「ジャンヌ。私も手伝わせて、お願い」

「ジャンヌ様。俺も手伝わせて下さい」

唾をを飲み込みながらイシリアとマーケンスの2人は、真剣な表情でジャンヌに頼んだ。


ジャンヌは、2人の両親である父・ローケンスと母・マリーナに視線を向ける。


「そうだな。お前達は強くなっている。今は、頼りになるほど立派な戦力になる。連れていっていいか?マリーナよ」

流星の強さを知っているローケンスは、本当は子供達を連れて行きたくはなかったが、ここで大成を失えば魔人の国が滅びると判断した。


「もう、仕方ないわね。そういうことなら、私も手伝うわ。良いわよね?あなた」

「「えっ!?」」

マリーナも参戦すると聞いたジャンヌ、ウルミラ、イシリア、マーケンスは驚いた。


「こう見えても、お母さんは結婚する前までは、元はヘルレウスメンバーだったのよ」

「「~っ!!」」

ジャンヌ達が生まれる前の話だったので、ジャンヌ達は知らなかった。


ローケンスと結婚してもへルレウスを続けるつもりだったマリーナだったが、自分の身を心配したローケンスがヘルレウスを引退してくれと言われ、初めは断ったのだがローケンスは頭を下げただけではなく、土下座までしたので「仕方ないわね」と言い、ヘルレウスを引退したのだった。



「ああ、頼むぞマリーナ。だが、無理はするなよ」

「相変わらず心配性ね。大丈夫よ、あなた」

笑顔でマリーナは、クスクスと口元に手を当て笑っていたが、その笑顔を見た者は凄みを感じた。


「ジャンヌ!私達も手伝うよ」

「エターヌも手伝う」

「ユピアもっ」

マキネ、エターヌ、ユピアの3人も加わり、大成のもとへ向かうことにした。




【待機室】


大成は、待機室に戻って顔を洗い、正面に掛けてある鏡で自分を見ていた。

(これから、どうしようか…)

もう、答えは出て決まっているが鏡に映る自分に尋ねる。


(ああ、決まっている。流星義兄さんに会わないと、何も始まらないよな)

流星と話しをするために、大成は流星のもとへと向かうのであった。




【賭博屋】


流星達は、チケットを交換しに賭博屋にいた。


「兄ちゃん、本当に凄いな。一点張りで、しかも全財産を賭けて当てるなんてな。今まで、兄ちゃんみたいな奴はいなかったぜ。他の奴は、8割がエヴィンに賭けていたからな。これが、約束の金だ。受け取りな」

今まで流星みたいな人がいなかったので、店主は興奮しており盛大に笑いながら流星にお金を渡した。


賭博屋の中にいる者は、大金が入っている大袋を見て、唾を飲み込みながら釘付けになっていた。


「ありがとう」

周りの視線を気にせず、流星は袋を受け取って店から出た。



「ねぇ、流星。それよりも、こんなにゆっくりと、堂々と道を歩いているけど。大成君に会わなくっても良いの?このままだと、会う前に騎士団達に囲まれるわよ」

メルサは不安ではないが、流星の考えがわからずにいた。


「ああ、こっちから、わざわざ必死に会いに行かなくっても、大丈夫だ。向こうから、やって来るはずだ」

「あなたが、そう言うならそうなんでしょうね」

「ああ、せっかくだから、今は、ゆっくりとデートして楽しもうか」

「フフフ、そうね。なら、あの店に入って見ない?」

「そうだな」

流星の提案に、嬉しくなり流星の腕を抱きしめて店の中へと入る。




【ボルダ城内】


ジャンヌ達は、戦闘準備を整え終わっていた。


「皆、準備は良いわね」

「「はい」」

「レゾナス」

皆が頷き肯定したのでジャンヌは、レゾナスで大成に繋げる。


「大成。今、何処にいるの?勇者があなたを狙っているかも知れないから、私達はあなたの護衛に向かいたいの。だから居場所を教えて」

「ジャンヌ、ありがとう。気持ちは嬉しいけど。護衛は要らない」

「どうして?」

ジャンヌは護衛の必要がない理由を大成に尋ねたが、大成は何も言わずにレゾナスを解除した。


「姫様。大成さんは、何処だと言ってました?」

「いえ、それが、護衛は必要ないと…。」

ウルミラの質問に、ジャンヌは小さな声で答えた。


「何でだ?」

「どうして?」

「修羅様は、何を考えておられるんだ?」

「仕方ない。修羅様と勇者を手分けして探せ。見つけ次第、知らせろ!わかったか?では解散」

お互いの顔を見渡しながら皆がどよめいている中、ローケンスが大きな声で指示する。


「「了解!」」

一斉に、皆は散らばった。




【ボルダ国】


流星達はデートを満喫したので、大成の気配がする方に向かっていた。


流星と大成は、お互いがギリギリわかるぐらいの気配しか出していなかった。


「そろそろだな…。およそ前方50mだな」

「もう、少しね。でも、その前に…」

ここまで来る途中からメルサは、包囲されていることに気付いていた。


「止まれ!勇者!このまま大人しく魔人の国から出国するなら、手荒い真似はしない」

2人の前に立ち塞いだギヌルは剣を抜いて、剣先を流星に向けた。

ギヌルの横に騎士団達が30人が立ち並んだ。


「な、何だ!?」

「勇者だと…」

「逃げろ~っ!」

周りの一般人は、流星が勇者だと知り悲鳴をあげながら、慌ててその場から離れる。



「おいおい、俺の邪魔をするなら殺すぞ」

機嫌が良かった流星だったが、ギヌルの登場により一転して殺気を放つ。


「「ひっ」」

「ぎ、ギヌル隊長」

騎士団達の数名は、腰を抜かして尻餅をつく。


「ほう、手加減はしているが、この殺気を受けても気絶をしないとはな」

顎に手を当てて流星は感心しながら、再び歩を進める。


「くっ、仕方ない。お前達、行くぞ!」

「そこまでだっ!」

ギヌルは突撃を命令したが、背後からローケンスの声が響いた。


「ローケンス様!それに、ジャンヌ様達も!」

「「おおっ」」

ローケンス達の登場に、騎士団の恐怖が和らいだ。


「久しぶりだな。ローケンスに姫様、それにヘルレウス・メンバーの諸君」

「ふん、ここに何をしにきたのだ?勇者よ」

「初めは暇潰しに大会を見に来ただけだったが、予定が変わり修羅に会いたくなった」

「やはりか…。だが、お前には会わせん」

「大成は、私達が守るわ」

ローケンス達は流星を睨めつけながら殺気を放ち、一触即発の雰囲気になる。


「はぁ、お前達に用はないんだが…。なぁ、そうだろ?大成」

「「えっ!?」」

流星の言葉で、ジャンヌ達は後ろに振り向くと、そこには大成の姿があった。


「久しぶりだな、大成。いや…、この世界だと初めましての方があっているか?なぁ、義弟(おとうと)よ」

「やはり、流星義兄さん、生きていたんだね。予想していたけど、やはり【時の勇者】は流星義兄さんだったか…。」

流星と大成は、お互いの顔を見る。

流星は笑顔で、一方、大成は睨みつけていた。


義兄弟だと知っているメルサは平気な面持ちだったが、義兄弟だと知らなかったジャンヌ達は驚愕しており、大成に振り返り固唾を呑んだ。

次回、義兄弟の流星と大成の話です。

投稿が遅れて、大変申し訳ありません。

無事に国家試験を終えました。


話が長くなり、申し訳ありません。

時々、修正はしていたのですが、一時、書いていなかったので、1度書き出したら止まらず、気付きましたら、こうなっていました。

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