表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/130

宿屋と一致団結

合宿1日目、狩りを終え、キャンプファイアで盛り上がった。

【合宿1日目の夜・ナドムの森付近・ラーバス学園側】


キャンプファイアが終わり、大成達は川の反対側にある宿屋に向かっていた。



「今、思ったけど。宿屋があるところは、森から少し離れいるみたいだけど魔物に襲われないのか?」

「フフフ、大丈夫よ。その心配はないわ。大成」

大成の質問に笑って答えるジャンヌ。


「ん?何で?」

「魔物払いと防御結界の魔法陣の中に建てていますので、魔物は寄り付きませんし、攻撃されても指定ランク2以下の魔物の攻撃は無効できますので大丈夫ですよ」

首を傾げる大成に、ウルミラは説明した。



「そうなんだ。よっと…」

興味が湧いた大成は、ジャンプして近くの木に登り、額に手を当て目を細めて遠くの宿屋を見た。


「あ~、なるほど。ということは、魔法陣を発動するために魔力を使っている使用人がいるのか?あまり使われないのに維持が大変だな…」

木の上から見ると、小さく見える宿屋の周りに水路が彫られており、水路の形が巨大な魔法陣になっていた。


「違うわ大成。まぁ、着いたらわかるわ」

「ですね」

「そうね」

ジャンヌ、ウルミラ、イシリアは、それ以上のことは説明をしなかった。

気になった大成だったが、話に触れずに木から飛び降りた。

それから暫く歩き、大成達は宿屋にの入口に着いた。




【宿屋】


宿屋の門は巨大で強固な門が取り付けられており、門を潜り抜けると道は煉瓦で舗装され、水路の周りには花壇があり花が咲いていた。


「きゃ~、見て見て!水蘭花よ」

「珍しいね。水が澄んだ場所しか咲かない花なのに。こっちも珍しい花があるよ。ミルキ花よ」

女子達は、花壇の近くに行き屈み。


花の薫りを嗅いだり、観察したりして、桃色の雰囲気を醸し出していた。

そんな女子達を見て、鼻の下が伸びる男子達。


(何だか、デートスポットみたいだな。魔王って、ロマンチストだったかな?)

大成は、辺りを見渡して疑問に思った。


そして、先に進むと噴水が見え、やっと宿屋の前に辿り着いた大成達。


「これは…」

「宿屋ですよ。大成さん」

大成の隣を歩いていたウルミラが苦笑いした。


何度か来たことのあるジャンヌ、ウルミラ、イシリア、マーケンス以外の生徒達は、宿屋を見てギョっとし驚いた。


なぜなら、宿屋は、お伽噺からそのまま出てきた様なお菓子家、いや大きさからしてお菓子な屋敷だった。



そーっと、触ってみる大成と生徒達。

「やはり、本物じゃないんだな」

「当たり前でしょう、大成」

ジャンヌは、呆れながら溜め息をした。


「この宿屋は姫様と私でデザインして、先代の魔王様に作って頂きました」

「私もマーケンスも、幼い頃ここに初めて来た時は驚いたわ」

苦笑いするウルミラと、思い出していたイシリア。


「なるほど。だからか、庭がお洒落だったことといい、宿屋といい。しかし、凄いな。発想もだけど、間近で見ても本物みたいだ」

「だな」

壁を触りながら大成は感心し、生徒達は騒ぎ立った。


「「フフフ…」」

ジャンヌとウルミラは、お互いの顔を見て笑った。




「おい!お前達、よく聞け!早速だがルールを教える」

マミューラが、大きな声を出し、注目を集めて生徒達の前に出た。


「屋上にある巨大な魔鉱石には触れるなよ。あれが、ここの魔法陣を維持しているからな。それと、右の棟は男子、左の棟は女子だ。各クラスに部屋が用意されているから、そこに荷物を置いて風呂に入り、疲れをとるといい。風呂は一階の中央の奥にある。入浴は混雑しないように、時刻を書いてあるプレートを用意している。プレートは、部屋のドアノブに掛けてあるからなチェックしとけよ。あ~、それと、男子は左の棟は立ち入り禁止だ。もし、破ったら死刑だからな」

最後、威圧感を出したマミューラは、男子達を睨め付けた。


「~っ。は、はい!」

男子達は、マミューラの威圧感に怯えて息を呑みながら、背筋を伸ばして返事をした。


「フッ。なら、よし!」

マミューラは、男子生徒達を見て口元をニヤっとしながら、満足そうな表情をして先に宿屋に入る。


皆は、マミューラに続き宿屋の内装を見ながら続々と入った。




【宿屋・男子部屋】


2階に上がり、ドアノブに2組と書かれたプレートが掛けられている部屋をマーケンスが発見した。


「おっ!俺達の部屋はここだな」

先頭のマーケンスがプレートを取り外し、扉を開け部屋に入ると中は広い部屋に布団が敷かれており、それ以外は何も置かれていなかった。


「マーケンス。風呂は、俺達は何時からだ?」

「あ、悪い、えっと21時だな。この時間帯だと、俺達は最後だな」

取り外したプレートの裏を見たマーケンス。


大成の髪のこともあり、ジャンヌ、ウルミラ、イシリアが、入浴の順番を最後が良いとマミューラに頼んでいたのだ。




皆は荷物を置き、寝る場所を決めた。


(あっ、ヤバイな…。ラナミの実を持ってくるのを忘れていたな。森の中にあったから、急いで採ってくるか…)

大成は、リュックの中からタオル、下着を出し、入浴の準備していたら、髪を染めるラナミの実を持ってきてないことに気付き、悩んでいた。



そんな時…。

「聞いてほしい。皆は、このまま合宿1日目が終わって良いと思うか?」

突然、マルチスが大きな声を出した。


「ん?いや、もう風呂入って寝るだけだろう」

「だよな」

大成が答え、隣で準備しているマーケンスが大成に肯定した。



マルチスは、自分の大きなリュックからプリント取り出して、皆に配っていく。


「なんて、無駄な物を持ってきているんだ…」

大成は呆れ、皆も同意した。


皆は、マルチスがやたら大きなリュックを背負っていたので、てっきり、武器など必要な物だと思っていた。




「無駄な物ではないですよ、師匠。それより、まず配ったプリントを見る前に聞いてくれ。これから始まる合宿の最大の問題を解決するために、俺は合宿があることを知った日から一生懸命に考えた。その作戦を、このプリントに書いた。しかし、この作戦は俺一人では成功しない。だから、皆の力を貸して欲しい。それでは、プリントを見てくれ」

マルチスの演説が終わり、大成達は渡されたプリントに目を通して驚愕した。



「女湯覗き大作戦~皆は一人のために一人は皆のために!!って何だ?これは…」

マーケンスが訝しげな表情で呟いた。


「入浴と言えば覗きだろう。なぁ、皆!」

「「わかっているじゃないか、マルチス」」

「「そうだ!」」

「「だな!」」

マルチスの掛け声に賛同する男子達は、いつの間にか悪どい表情に変わっていた。


「これは、流石に止めといた方が良い。もし、バレたら大変だぞ」

「俺も大和の言う通りだと思うぞ」

大成とマーケンスが、止めようとしたが…。


「しかし、問題がある。男湯と女湯の境の壁は、ご存知の通り、魔力値4以下の攻撃だと傷すらつけれないほど強固な壁だ」

マルチスは、大成とマーケンスを無視して話を先に進めた。


「そうだった…」

「くっそー!」

悲しい表情する者、涙を流し腕で拭う者など、悲痛に浸る男子達。


「だが、案ずることはない。プリントにも書いてあるが、俺達には、それを打開できる人物と作戦をより安全に成功させてくれる人物がいる」

マルチスは、大成とマーケンスに振り向き、真剣な表情で2人に歩み寄る。


「頼む!二人とも、俺達を楽園に連れて行ってくれ」

大成とマーケンスの肩に手を置き、頷くマルチス。


「「頼む!」」

皆は、一斉に土下座をした。


「こんなくだらないことのために、俺が協力すると思っているのか?マルチス」

マーケンスは、呆れて溜め息する。


「くだらないことだと!マーケンス、よく考えてみろ。俺達は、まだ子供だ。もし、バレても怒られるだけだ。今回のチャンスをものにしようと思わないのか?運良く、女子側に何か事件が起こり、裸を見れるというラッキースケベなんて、ほぼ0なんだ。だから、自分達で行動し自分達の手で栄光を掴むしかないんだ。しかも、うちのクラスの女子はスタイルが良く、レベルが高い。まとめて拝めることなんて滅多にない。それでも、行動を起こさない男は、本当に息子がついているのか?今回、共に行動し、いろいろと共に大きく成長しようぜ。さぁ、真の男達よ、立ち上がれ!そして、共にこの手に栄光を掴もうじゃないか?」


「マルチスの言う通りだ!」

「目が覚めたぜマルチス、ついて行くぜ!」

「俺も」

マルチスの演説に、大成とマーケンス以外の男子達は盛り上がった。


「お前ら、馬鹿か?目を覚ませ」

マーケンスは呆れていた。


「こう言ったら悪いが、マーケンスが好きなジャンヌ様は、おそらくだが修羅様と結婚するだろう。 そのことは、マーケンスお前もわかっているはずだ。なら、せめて裸を見たくはないのか?せっかくの、このチャンスを不意にするのか?」

マルチスは、両手でマーケンスの肩に置いた。


「うっ…。し、しかし…」

「マーケンス、知っているか?バレなければ大丈夫という、素晴らしい言葉がある。そして、この作戦を更に、より安全に考えてくれる師匠がいる」

言い淀むマーケンスに追い打ちをかけるマルチスは、大成の方に顔を向け笑顔で頷く。


「おい…。僕は手伝わないぞ」

呆れている大成。

(3人か…。気配を消して、こっちに誰か来るな。かなりの腕前だ)

そして、誰かが近づいて来ていることに気付いた。



「俺達には、マーケンスと師匠が必要なんだ」

マルチスは真面目な表情をして、マーケンスの肩に置いている両手に力を入れた。


「……そうだな。見つからなければ問題ないか…。わかった、俺に任せろ!」

「流石、マーケンス」

女の子に興味が出る年頃のマーケンスは誘惑に負け、両手でマルチスと握手をして2人の間に強い絆が生まれた。



そして、今度はマーケンスの隣にいる大成に狙いを定めたマルチスは、大成の肩に両手を置いた。


「マーケンスに言った通り、バレなければ大丈夫です、師匠。師匠が参加し、この作戦を更に、より安全に計画すれば、100%上手くいきます」

マルチスは、大成も断ることはないと思った。


「お前達は、重大なこと忘れているぞ。お前達は子供で魔人族だから、見つかっても怒られるだけで済むけど。僕は同じ子供でも人間だ。見つかった場合、怒られるだけではすまされないだろう?」

大成は、溜め息しながら説明をした。


現在、人間と魔人の関係は最悪の状態なので、皆はハッと気付き押し黙る。



「す、すみません。師匠…」

「「大和っ、すまねぇ」」

「別に構わない」

周りから憐れむような視線を受け、大成は苦笑いした。



「ですが、師匠お願いです。俺達のために、作戦を考えて下さい」

「「お願いします」」

「俺からも頼む、大和」

マルチスと他の全員は再び土下座し、マーケンスは頭だけ下げた。


まるで、何処かの宗教の宗教様を称えているみたいな光景だった。



「………。はぁ~、仕方ない。作戦ではないけど、僕の世界…。いや、家訓みたいなのを教える。あとは、自分達で相談して考えろよ」

やれやれといった感じに大成は溜め息をした。


「わかったぜ大和。それだけでも、助かる」

「ありがとう師匠!」

「「神様!ありがとうございます!」」

男子達は、神の神託を聞くような真剣な表情で大成を見つめた。


「頼むから、神様は止めてくれ。じゃあ、教える。風林火山と言って、疾きこと風の如く、徐かなること林の如く、侵掠すること火の如く、動かざること山の如し。意味は戦いにおける4つの心構えだ。わかりやすく言うと、風のように素早く動いたり、林のように静かに構えたり、火のような激しい勢いで侵略したり、山のようにどっしりと構えて動かない心。その状況に応じ対応をすることを意味する」

たまたま、頭に浮かんだことを教える大成。


「「なるほど」」

マーケンス達は頷いた。



(すぐ傍まで来ているな…。一体誰だ?)

大成は、気になり立ち上がった。


「何処に行くんだ?大和」

マーケンスが訝しげな表情で尋ねた。


「ちょっと、トイレに行ってくる」

「そうか」

マーケンスは納得して、話し合いを始めているマルチスの所に向かった。




大成は部屋を出たら、ドアのすぐ傍にジャンヌ、ウルミラ、イシリアの3人がいた。


「2人から聞いていたけど。本当に気付くとは思ってなかったわ。完全に気配を消していたつもりだったけど…」

「流石、大成ね。良かったわ。わざわざ、呼ばないで済んだわ」

「流石です。大成さん」

気付かれるとは思ってなかったイシリアは驚き、ジャンヌとウルミラは感心した。


現に大成以外、マーケンスを含む男子達は、未だに気付かないでいる。



「ところで、僕に何か用事でもあった?」

大成は首を傾げた。


「あの、大成さん。もし良ければ、これをどうぞ」

ウルミラは、持っていた小さい可愛い柄の袋を大成に渡した。


「ん?」

「中身はラナミの実です」

大成は、ウルミラから袋を受け取り開けてみた。

袋の中には、ラナミが7個入っていた。


「ありがとう、本当に助かったよ。実は持ってくるのを忘れていたんだ。だから、今から森に取りに行こうかなっと思っていたところだったんだ」

「大成、あなたねぇ…」

「はぁ…」

「良かったです」

ジャンヌとイシリアは呆れ溜め息をし、ウルミラは笑顔を浮かべた。


その時だった。

男子部屋から男子達の声が聞こえてきた。




マーケンス達は、ジャンヌ達がすぐ傍まで来ていることに気付かず、作戦の打ち合わせに興奮して熱が入り、声が次第に大きくなっていた。


「これで、どうだ?」

風林火山のことを大成から聞いて、少し作戦を変えたマルチス。


「マルチスが、考えたとは思えないほどだ。これなら、イケる。なぁ、マーケンスは、どう思う?」

マルスは感心し、隣に座っているマーケンスに尋ねた。


「ああ、これなら大丈夫そうだな」

マーケンスは、満足そうに頷いた。


「師匠は無理だったが、俺達には最強の矛マーケンスがいる!よし、意思団結の決意の掛け声をマーケンスに頼むが皆は良いか?」

「「問題ない!」」

マルチスの意見に賛同した男子達は、立ち上がる。


「おい…。まさか、これを言うのか…」

「そうだ、マーケンス」

2枚目のプリントを見て、たじろぐマーケンス。

マーケンスは、マルチスに腕を引っ張られ立ち上がり、背中を押され皆の前に出た。



マーケンスは、周りの男子達を見て覚悟を決めた。


「覗きはバレなかったら」

「「Justice(正義)」」


「本能のまま行動することは」

「「Freedom(自由)」」


「俺達は、この日を待っていた」

「「Change has com(変革の時が来た)」」


「俺達は、この大戦に勝利し、大きく成長するだろう」

「「Defining moment(決定的瞬間)」」


「必ず成功する」

「「Yes,we can(俺達はできる)」」


「この手に栄光を」

「「God bless ours(神よ俺達に祝福を)」」


「「オオォ!!」」

男子達は、盛大に盛り上がった。



部屋の外では…。

大成は、いつの間にか3人に包囲されていた。


「ちょっと良いかしら?大成」

「~っ。はい…」

背筋が凍りつくような冷たいジャンヌの声と3人の笑顔を見てゾッとした。

大成の顔は、まるで血を抜かれていくように青くなっていった。




そして、入浴時間10分前、時は来た。


「よし、気合い入れていくぞ!お前ら!」

「「オオォ!!」」

いつの間にか、完全にやる気になったマーケンスの掛け声で、男子達は一斉に立ち上がり、浴衣の襟をグッと正し、身を引き締めた。

男子達の瞳には強い意志が宿っておりマーケンスに賛同した。


そして、マーケンスを筆頭に男子達、いや、男達は、いざ出陣した!。


ただ、作戦がジャンヌ達に丸聞こえだったことを知らずに…。


次回は、入浴です。


覗きは犯罪ですので、絶対にマネはしないで下さい。


国家試験は、自己採点した結果どうにか合格していそうです。


玄関、車庫が浸水したりして、投稿が遅れたり、話が進展せず、大変申し訳ありません。



次回作は、できれば明日中に、遅くとも水曜日には投稿できるかと思いますので、もし、宜しければ御覧ください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
href="http://narou.dip.jp/rank/index_rank_in.php">
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ