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ギガントと審判の剣

魔法カードバトル競技で、優勝した大成の組。

今度はペア戦で大成が出場するが…

【クラスマッチ】


魔法カードバトル女子はジャンヌ達も優勝し、男女の魔法カードバトルが終わった。

次の競技は射的と同進行のペア戦があるので、大成は南の競技会場に向かっていた。




【南の会場】


「何とか優勝したのは良いけど。思っていたよりも、僕は嫌われているな」

ランドニーから握手を拒否されたのが1番ショックだった大成。



大成は、最後のランドニーの言葉が気になっていた。


なぜなら、朝からずっと魔法カードバトルの時も、そして、今も見られている。

いや、監視されていると言った方が良い。

気配の消し方で、結構な腕前の持ち主だと思われるが、向こうから仕掛けて来ないので放置している。



(ランドニーと関係あるのか?それに、自然にわざと隙を作っているのに、襲ってこないとなると仲間を待っているか、それとも、もともと仕掛ける度胸がないかのどっちらかだな)

大成は考えながら、警戒を怠らないまま歩き会場の入口に着いた。



大成は、選手の控え室でルネルと待ち合わせしていたので向かった。


「大和君、こっちだよ!」

大成を見つけたルネルは、手を大きく振り呼び掛けたルネル。


大成はルネルに気付き駆け寄る。

「ごめん。待った?」

頭を掻きながら大成は謝った。


「ううん、大丈夫よ。私も今さっき来たところだから。それより、こっちよ大和君」

ルネルは、頬赤く染めながら大成の手を取り受付に向かう。



受付には、大勢の生徒が集まっており大成達も並んだ。

そして、やっと大成達の番がきた。


「大和君、ここにサインするのよ」

ルネルと大成は参加名簿にサインした。


サインしている大成に気付いた生徒達は、大成を睨んだり様子を窺っている。

「あれが、例の人間か」

「大したことなさそうね」

「やはり、あの情報は偽情報だったみたいだな」

周りから、小さな声で話しているのが聞こえる大成とルネル。



そんな中、サインしているルネルは嬉しそうに小さく笑っていた。

「フフフ…。あとで皆の驚く顔が見られるわね。大和君」

「僕は、あまり目立ちたくないけど」

全力は出さないが、それでも実力を見せるのは好きではない大成は溜め息をした。


「大和君らしいわね。でも、普通こういう舞台は目立った方が良いのよ。将来、騎士団に入団しやすくなったり、希望した職業の内定が決まりやすくなるから」

口元に手を当て、クスクスと笑いながら説明するルネル。


「そうなんだ。でも、僕は普通ぐらいで良いかな。あまり、目立つと敵が増えそうだし。でも、試合は真面目にするよ」

「言わなくても大和君は手を抜かないって、知っているから大丈夫よ」

大成とルネルは、サインをしてクジを引いた。



大成達は、第1試合に決まり、ホワイトボードに大成達の名前が書かれた瞬間だった。

「よっしゃ~!確実に1勝だぜ」

「そうね。初戦の相手が落ちこぼれのクラスで良かったわ」

大成達の背後から男女2人の声がして振り向いた大成達。


「あの人達は?」

何を騒いでいるのかと思いながら、大成はルネルに振り向きながら尋ねた。


「フッ、フフフ…。私達と初戦で当たる5組よ。名前はナイサーとルナシーで、双子よ。2人とも魔力値5だから強いわ。でも、馬鹿にされるのは我慢できないわね。私達との闘いを忘れない思い出にしてやりましょう。ねぇ、大和君。フッ、フフフ…」

ルネルは威圧感が増し、笑顔なのだが目が笑っていなかった。

いや、ギラついていた。


「う、うん。そうだね」

(忘れない思い出にって、拷問でもするのかな…)

とりあえず、ルネルに話を合わせた大成は苦笑いした。


そして、大成達は1回戦なのでリングに向かう。




【リング】


リングの隣に多くの武器が用意されており、大成達は武器を選んでいた。


今回使用する武器は、大成は木のナイフ20本を取り、2本は両手に持ち、残りはポシェットの中に入れた。

ルネルは木の剣を選び、素振りをして感覚を確認していた。


「ねぇ、ところで大和くん。そんなに、ナイフ持って何に使うの?」

大成が沢山のナイフをポシェットに入れていたので、ルネルは気になった。


「まぁ、いろいろとね」

「いろいろねぇ」

ルネルは笑みを浮かべて、それ以上何も聞かなかった。




大成はリングに上がり、周りを見渡した。

「あれ?」

リングには、まだ対戦相手の5組の姿が見えなかった。

ザワザワと観客も騒ぎだしている。


大成がジャッジの先生に聞こうとした時、観客席から声がした。

「「トォ!」」

観客席から身体強化したナイサーとルナシーが、高く跳びクロスしながら前宙をし、その軌道の真ん中から担任のマイク先生も高く跳びムーンサルトを決めリングに着地した。


「「5組、ブラック・ジャスティス!ここに参上!」」

((決まった!))

リングの上で、息の合った掛け声とポーズを決めた5組は満足した。

だが、会場はシーンと静まり返った。



(これは、ツッコミを入れるべきか…)

どうするか悩んだ大成は、とりあえずジャッジの先生に向き、どうするか対応を待つことにした。


ジャッジをしている先生も呆気に捕らわれていたが、すぐに我に返った。

「え、えっと、ゴッホン。それでは揃いましたので早速、試合を始めたいと思います。代表者の選手は前へ」

苦笑いをし、進行を進めることにした先生。


5組の皆は、周りの反応に物足りなさそうな表情をしながら、仕方なく前へ出た。

大成達も前へ進み、それぞれ握手をした。


マイクは、大成と握手した時、怪訝な顔になり何かに気が付いた様だった。

「ん?お前…」

「な、何でしょうか?マイク先生」

「その手、努力している者の手だ。良い手だ」

「いえ…特に…」

強さを偽っていることに気が付かれたと思い、内心ドキドキしながら、大成は否定する。


「ワハハハ…。隠す必要はないぞ!魔力値が低いことを理由にし、すぐ諦める奴は嫌いだが、諦めず努力し頑張る奴は好きだぞ。どうだ俺のクラスに来ないか?俺のクラスは、魔力値が低いでも馬鹿にする奴はいないぞ」

盛大に笑いながら大成を勧誘するマイク。


マイクの言葉を聞いたナイサーとルナシーは、ビックと肩を震わした。



「嬉しいのですが、今のクラスも見くびる人は居ないので、遠慮させて頂きます。マイク先生」

魔王という正体がバレずに済み、内心ホッとしながら大成は笑顔で答える。


ナイサーとルナシーは、大成の言葉を聞いてホッと胸を撫で下ろした。



「そうか、それは残念だ。だが、俺のクラスに来たくなったらいつでも言ってくれ。いつでも歓迎するぞ」

マイクは、白い歯を見せ、2本指を立てて額の前にピッと少し前に出した。

そして、後ろ振り向きベンチに向かう。




「大和くん。正直に、受付で馬鹿にされたと言えば良かったと思うけど」

大成の耳元で不服そうな顔で言うルネル。


「可哀想だったから、つい…」

「フフフ…。やはり、大和君って優しいのね」

苦笑いをする大成を見て、不服そうな顔から頬を緩め笑顔に変わったルネル。



「それでは、試合開始!」

先生が合図した瞬間、一斉に身体強化をしたナイサーとルナシーは、後ろに下がりながら魔法を唱えようとした。


大成は部分強化をしてナイサーに、ルネルはルナシーに接近する。


「馬鹿な魔力値2の強化を超えているぞ!?だが、間に合うわけないだろエア・カッ…」


「そうね、ファイ…」

ナイサーとルナシーは、大成に驚いたが、それでも余裕があり、魔法を唱えようとした。


大成は、木のナイフを2人に投擲する。


大成が投擲した木のナイフが、物凄いスピードで、ナイサーとルナシーに迫る。


「わぁっ」

「きゃっ」

慌ててナイサーとルナシーは、避けたが魔法が発動できなかった。



大成は近づきながら、次々と木のナイフを投擲して、ナイサーとルナシーが魔法を唱える余裕をなくしていく。


「くっ」

「しつこいわよ」

ナイサーとルナシーは、木のナイフをどうにか避けたり、防いだりしているが、魔法を唱えられずにいる。


「これでも喰らえ、エア・カッター!くっ、ムリか…」

痺れを切らしたナイサーが、風魔法エア・カッターを唱えたが、発動でにず不発に終わった。


魔法を使う時には、イメージ力、集中力、魔力コントロールが必要で、ただ唱えれば発動するわけではない。

失敗したら不発に終わり、魔力だけが消費する。



そして、ナイサーとルナシーは、木のナイフを投擲する大成に釘付けになり、ルネルのことを完全に忘れてしまっていた。


ルネルは、ルナシーの死角、真横から近づいていた。

「私を忘れないで欲しいな」

「きゃっ!」

ルナシーは振り向いた瞬間、ルネルに剣の柄で鳩尾を殴られ倒れた。


ルナシーの悲鳴を聞いたナイサーは振り向く。

「くっそ!」

その隙を見逃さなかった大成は、ナイサーが木の剣を持っている右肘関節を狙って木のナイフを投擲した。


「ぐっ…」

ナイサーは、木のナイフが右肘に当たり、右手が痺れて持っていた木の剣を地面に落とした。


「うぁ」

左手で剣を拾おうとしたが、木のナイフが次々に当たり、慌てて離れたがルネルに接近されており、目の前に木の剣を突きつけられた。


「これで、おしまいよ。どうする?」

「ま、参った」

ナイサーは、素直に負けを認めることしかできなかった。


魔法は不発になるほど追い込まれ、武器は落とされ、終いには接近され、誰が見ても完全に完敗だった。


「勝者、2組チームイーター」

勝利宣言が響き、会場がざわついた。


「魔法を使わないで勝ったぞ!?」

「ああ、それに普通は最短距離を走る人が多いが、落ち着いて死角を走り、接近するルネルの冷静な判断力は大したものだ」

観客は盛り上がって、ルネルの評価が上がった。




リングの上では…。

「あ、あのな。その受付でのことは謝る。すまなかった」

ナイサーは頭を下げ、大成とルネルに謝罪した。


「僕は良いけど…」

受付の時、激怒していたルネルに目線を向けた大成。

ナイサーも、大成と同じくルネルに視線を向ける。


「仕方ないわね。許してあげるわ」

やれやれといった感じで、ルネルは肩を竦めた。


「ありがとう」

ナイサーは感謝し、倒れているルナシーを担いでリングから離れた。


リングを降りた時、ルナシーは目を覚ました。

「私達負けたのね…」

ルナシーがポッツリと呟き、2人は涙が溢れてた。


マイクは、そんな2人に近づいた。


「「すみませんでした」」

「いや、誇って良い試合だったぞ。ナイスファイトだった!」

マイクは、ナイサーとルナシーを強く抱き締めた。

そして、3人は会場を跡にした。


大成とルネルは呆然と見送った。

「ハハハ…。なんか、とても暑苦しい人達だったけど。良い人だった」

「そうね」

大成とルネルは、笑顔を浮かべていた。

会場から声援があり、大成達は手を降りながら会場を跡にした。




【観客席】


観客席の入口の影から、大成の闘いを見ていた2つの影があった。


「魔力値が低いから魔法を使用せず、代わりにナイフを投擲するのか…」

ドトールは、顎に手を当てながら暗殺・殺害の手順を考えていた。


「ドトール、それだけではないわよ。身体強化した時、普通の全身強化ではなく部分強化だったわ。ごく稀に見るけど、あの歳では初めて見たわ。しかも、今まで見たことがないほどの精密さね。魔力コントロールだけなら神童よ。まぁ、元々の魔力値が2だから4程度の性能が限界で、大したことないけどね。大人になれば魔力値が上がり、勇者や英雄、魔王に成れたかも知れないのに可哀想ね」

ミシナが気の毒そうに言う。


「そうだな。だが、これも運命だ。仕方あるまい」

「ウフフフ…。それは言えてるね」

「そろそろ移動するぞ、ミシナ」

「ええ、わかったわ」

ドトールとミシナは、人混みに紛れようとした時、精神干渉魔法レゾンナスが発動し2人の頭の中に声が響いた。


「ドトール、ミシナ聞こえるか?」

相手は闇組織ノルダンのボス・ダビルドだった。


「はい、ダビルド様」

「はい、聞こえます。それで、どうされましたか?ボス」

ミシナとドトールが応答した。


「すまないが、依頼主の意向により少し予定が変更になった。今、獲物がペア戦という競技に出ているはずだ。その競技中に、できるなら始末することになった。もし、失敗しても気にするな。依頼主が考えた作戦だからな。お前達は、依頼主の言う通りに動けば良い。失敗しても午後から30人と合流し確実に始末する」

ダビルドの話を聞き、そのあと作戦も聞いたドトールとミシナ。



「で、どうだ?するか?断っても構わないが」

「「もちろん、します。ボス」」

やる気十分な声で答えドトールとミシナ。


「急で、すまないが頼むぞ」

「「ハッ!」」

2人が返事をして、レゾンナスが解けた。


「楽しくなってきたわね」

「ああ、そうだなミシナ。お前の風魔法と俺の氷魔法が十分に生かせる作戦だしな」

「そうね。ウフフフ…」

ドトールとミシナは、クスクス笑いながら闇の中へ消えて行った。




【南会場】


その頃、大成はジャンヌ達と合流していた。


「大成、お疲れ様」

「大成さん、お疲れ様です」

「ダーリン、お疲れ様」

「大成君、お疲れ様」

ジャンヌ、ウルミラ、マキネ、イシリアが笑顔で大成を迎えた。


エターヌとユピアというと…。

エターヌはおばさんと、ユピアは両親と一緒に学園を回っている。



「ところで大成。あなた、何で手を抜いたの?」

怪訝な顔をして尋ねるジャンヌ。


「そうよ。ナイサー君の時よ。大成君1人でも倒せたでしょう?」

身を乗り出し、ジャンヌに賛同するイシリア。


「ん?ああ、そのことを説明する。あと、皆に頼みがあるのだけど。まぁ、保険だ」

「「何?」」

「何ですか?」

大成の頼みごとは、頼られていると感じがして、ジャンヌ達は嬉しかった。


「ありがとう」

(あれ?頼みごとなのに、何でこんな嬉しそうな表情になるんだ?普通は嫌がるはずなのに?)

目を輝かせているジャンヌ達を見て訳がわからず、大成は苦笑いした。



「頼みごとは、ジャンヌ、ウルミラ、イシリアの3人は、ルネルを警護してくれ。マキネには…」

大成は、自分が監視されていることを説明し、標的は自分だと判断したが、念のためルネルの警護を頼んだ。


「「なるほどね」」

「わかりました」

ジャンヌ達は、笑顔で快く引き受けた。


「お礼は、僕が出来ることなら何でもするということで」

「ダーリン!なら、子作りがいい!」

目を輝かせながらマキネは話した。


「「なっ」」

マキネの発言に皆は顔を真っ赤にして押し黙った。


「そ、それは、法律的に年齢が足らないから…」

「愛さえあれば、法律や年齢なんて関係ないよ。ダーリン!」

たじろぐ大成に、マキネの追撃が襲う。


「だ、駄目よ!せめて、デートにしなさい」

「そうよ、マキネ」

「そうです、マキネさん」

ジャンヌが止めに入り、イシリアとウルミラが肯定した。


「え~、ジャンヌ達もダーリンと子作りすれば良いのに」

「「~っ!!」」

マキネの発言に、ジャンヌ達は真っ赤だった顔をさらに真っ赤にし、口をパクパクさせた。


それから、どうにかマキネを説得し、皆はデートすることになった。



「あっ。そろそろ2回戦だな。行ってくる。あとは頼んだよ。皆」

「手を抜いて、負けたら承知しないわよ。大成」

「頑張って下さい。大成さん」

「優勝してね。ダーリン」

「応援しているわ。大成君」

大成は、ジャンヌ達の応援を受けながら待機室に向かった。




【待機室】


ルネルは、手を振りながら大成の傍に駆けつけた。

「お待たせ、大和君。待たせた?」

「大丈夫。今、来たとこ」

「良かった」

それから、大成達は何事もなく順調に勝っていき、ルネルの評価が鰻登りになった。


しかし、ベスト8で大成達のクラスのマルチス、ユニペアは負けた。


こういうバトル競技は進行するにつれて怪我等で、優勝候補が棄権や負けたりして番狂わせが起こる。


準決勝、大成達と当たる1組のチームは、ドクターストップで棄権をし、大成達は不戦勝で決勝戦に進出した。

反対ブロックを勝ち抜けたのは、やはりランドニーが率いる1組だった。




会場が盛り上がっている中、相変わらずランドニーは見下すような目で、大成達を見ている。


「相変わらずだな。ランドニー先生は」

「ええ、そうね。ギャフンと言わせないといけないわね。大和君」

「そうだね」

ランドニーの態度に激怒するルネルと、そんなルネルを見て苦笑いする大成。


今回の武器は、ルネルは今まで通りに木の剣、大成は木のナイフ20本と木の剣を選んだ。


1組の男子・ギシマムと女子・ラシカは、2人とも木の剣を選んだ。



「それでは、男女ペア戦の決勝戦を始めます。試合開始!」

ジャッジの先生が開始の合図をした瞬間、一斉に魔力強化した。


「サンド」

「ウィンド」

ギシマムは土魔法サンドを唱え発動し、ラシカは風魔法ウィンドを唱え発動して、砂煙を発生させた。


「アース・ウォール」

視界を遮断されたが、大成は魔力を感知してギシマムとラシカに木のナイフを投擲し、ルネルは念のために土魔法アース・ウォールを唱え発動し土の防御壁を作り出した。


「ぐっ」

「きゃっ」

大成は長年の経験でナイフを当てた手応えがあり、砂煙の向こうからギシマムとラシカの悲鳴が聞こえた。


しかし、上空からアイス・ミサイルが、雨の様に降り注いだ。


「えっ!?」

砂煙で視界が悪く、ルネルは予想外の攻撃に対応できず、ただその場で上を向いたまま硬直していた。


「ルネル~っ!」

「きゃっ」

大成は魔力値2のまま全力で、駆け寄りルネルに飛び付いて押し倒した。


ルネルは我に返り、自分の居た場所に視線を向けたらアイス・ミサイルが地面に刺さっていた。



「あ、ありがとう。大和君」

頬を赤く染め、間近にいる大成にお礼を言ったルネル。


「ああ。それよりウィンドを唱えて欲しい」

「でも、私、今の状況だと避けれないし、魔法を唱えるから無防備になるわ」

「大丈夫。これで、どう?」

大成は、ルネルをお姫様抱っこをして、アイス・ミサイルを避けていく。


「えっ!?あ、あの…」

顔を真っ赤にし、ルネルは言い淀む。


「ごめん。マーケンスじゃなくって。でも我慢して欲しい。それよりも、早くウィンドを唱えて」

大成は、苦笑いしながら謝る。


「う、ううん、気にしてない。ウィンド」

ルネルは、恥ずかしいそうに俯いて、風魔法ウィンドを唱え発動して、砂煙を吹っ飛ばした。


「チッ…。だが、まぁ予想の範疇だ」

ベンチではランドニーが舌打ちをし、懐からマジックアイテム、アイス・シールドを発動した。

ランドニーの周囲に氷のシールドが展開された。


アイス・シールドは、氷魔法の攻撃を無力化するアイテムだ。




砂煙が消え、リングにはギシマムとラシカは気絶し倒れていた。

会場がざわき出し、皆は上空を見つめた。

今もアイス・ミサイルが降り注いでいたからだ。



「やはりな…」

回避しながらボソッと呟いた大成。


「えっ!?」

ルネルは、大成が知っていたかのような発言に驚いた。


そして、アイス・ミサイルが途切れたので、大成はルネルを降ろした。

ルネルは、少し残念そうな顔になる。



上空では、ミシナの風魔法エア・バーストで空中に浮かんでいたドトールとミシナ。


ミシナは、額に手を当て見下ろしている。

「あ~あ。バレちゃったね」

「仕方ないな、アレをやるぞ」

やれやれと言う感じのドトールだったが口元が笑っており、ミシナと距離を取って、両手をミシナの前に出し魔力を放出させた。


「了解~!」

明るく元気に返事をしたミシナも両手をドトールの前に出し魔力を放出する。



そして、2人の間には、お互いの魔力が混じり合い、共鳴しながら魔力は膨大に膨れ上がっていく。

そして、会場を覆うほどの巨大な氷塊ができた。


「「ユニゾン氷魔法、アイス・マウンテン・フォール」」

巨大な氷塊を落とすドトールとミシナ。



「「に、逃げろ~!」」

「どっけ~っ!」

「きゃ~!」

巨大な氷の塊が落ちてくるのを見て、慌てる観客達。


そこに、黒のローブを羽織った人物が観客から飛び出た。


「あれは?修羅様だ!」

観客の1人が名前を呼ぶと、我先にと逃げていた観客は立ち止まり、パニックになっていたのが収まった。


黒のローブの者は、リングにいる大成に駆け寄る。



「ありがとう、マキネ」

黒のローブを纏っていたのはマキネだった。

大成はマキネにお礼を言った。


「流石、ダーリン。予想的中だね!」

大成にウィンクするマキネ。


「当たって欲しくないけどね…。まぁ、それは良いとして。グリモア・ブック、アース・ガーディアン・ギガント」

大成は溜め息をし、皆を危ない目に合わすドトールとミシナを睨み付けた。


グリモアをマキネの近くに出すことで、マキネがグリモアを出した様に見せ、小さな声で土魔法禁術アース・ガーディアン・ギガントを唱え発動した。

グリモアは光輝き、周囲を照らす。


そして、大成の頭上より少し高めに黒い魔力の塊ができ、重力の塊みたいにリングの土を集めていく。

徐々に集束するスピードが増していった。


あっという間に、リングに大きく深いクレーターができ、大成とマキネ以外、リングの上にいるルネル達は尻餅をついた。


「イタッ…」

自分のお尻を擦るルネル。

ふと見上げると目の前には、土で出来た巨大なゴーレムが立っていた。



ルネルは、ゴーレムに感動していた。

「しゅ、修羅様の禁術が目の前で見られるなんて…」

小さく呟いたルネルや観客は、ゴーレムを神を見るような目で見つめていた。



「ま、魔王修羅だと!」

「き、聞いてないわよ!」

ドトールとミシナは慌てふためく。


「だ、だが、こっちはユニゾン魔法だ。勝てる見込みはある」

「そ、そうよね」

「「いっけ~!」」

ドトールとミシナは逃げずに、自分達の魔法を信じて、立ち向かった。


「受け止めろ…」

小さな声でゴーレムに命令をした大成。


「ゴォォ~!」

ゴーレムは、両手を上げ巨大な氷塊を受け止めようとする。


ドシッと、ゴーレムの両足に負担が掛かり、足元に居た大成達は振動で小さく跳ねた。

次第にゴーレムは押され、体が反っていく。


「ゴォォ~!」

ゴーレムは目が赤く輝き、両手だけでなく胸も使い、身体全体で氷塊を受け止める体勢になり氷の塊が止まった。



「殺れ…」

「ゴォォ~!」

再び、大成がゴーレムに命令を出し、ゴーレムは巨大な氷塊をドトールとミシナに目掛け上空に投げた。



ドトールとミシナは、自分達のユニゾン魔法が止められたことが、未だ信じられなく呆然としていた。


「う、嘘だろ…」

「う、嘘…」

目の前に自分達が放った巨大な氷塊が迫ってくる。

呆然としていたので、2人は反応が遅れた。


「ぐっぁ!」

「きゃっ!」

完全には回避できないまま、2人は氷塊に当たり、氷塊から離れようとするが氷塊の速度が速く、氷塊の勢いに何もできず押さえつけられ、上空へと押し上げられた。


「ファイア・エンペラ・ジャッジメント・ソード…」

大成は炎魔法、禁術ファイア・エンペラ・ジャッジメント・ソードを唱え発動した。


グリモアから真っ赤に燃え盛る巨大な剣が出現した。

剣の周囲には陽炎ができ、反対側が見えなくなるほど、空間が湾曲している。


「終わらせろ…」

「ゴォォ~!」

大成の命令で、ゴーレムは片手で審判の剣を持ち、氷塊に向かって投擲した。


審判の剣は風を切り裂き音速で放たれ、あっという間に氷塊に突き刺さる。

突き刺さった瞬間、水蒸気爆発を起こし大爆発した。


会場は、轟音とともに空気の衝撃波が襲った。

会場の皆は、両手で耳を塞ぎながらしゃがみ込んだ。



「ダーリン。流石に、やり過ぎだよ」

大成に抱きついているマキネは、口を尖らせて注意をした。


「すまない。それより、予定通り姿を眩ませ。マキネ」

「了解!約束は忘れないでね!」

「約束は守る」

マキネは、大成の耳元で囁き、ウィンクをして観客席に跳び移り姿を消した。


大成、ジャンヌ、ウルミラ、イシリア以外の皆は呆然としていた。

ランドニーも未だに、マジックアイテム、アイス・シールドを維持したままだった。

予定より投稿が遅くなり、大変申し訳ありません。

一時、用事が忙しく遅れる可能性があります。

次回、バルーンと、出来ればサバイバル編まで進みたいと思います。

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