各戦闘と想い
エターヌの村を奪還すべく、大成は先に村に忍び込んだ。
【ナイディカ村・東口門付近】
東口門、担当のローケンスは待機しており、合図があるまで大成の強さを思い出し考えていた。
(魔王を決める大会で闘う前、ニールに言われたが、闘った時は気のせいだと思っていた…。だが、今回あの異常な強さと殺気は、まるで勇者と戦った時みたいな感じがした。いや、大会の時も…何となく雰囲気や闘い方が似ていた…。もしかして、俺やニールは、自分より強い奴は全て勇者と似ていると思い込んでいるかもな)
「フッ、考え過ぎか…」
小さく笑ったローケンスは頭を掻いた。
偶然にも同じ異世界、年を見ても兄弟や親の関係ではない。
纏めて召喚されたら理解できるが、時期も別々で召喚される。
そんな、とても確率の低い可能性が起こるわけがないと思い。
結局、時の勇者と大成は無関係だと思ったローケンス。
そして、村から建物の倒れる音が響いた。
「始まったか…。よし、作戦開始だな!」
ローケンスは、気を引き締めて門に向かって走った。
「「敵襲!」」
見張り役が鐘を鳴らし知らせ、門から大勢の兵士が出てきた。
「エア・スラッシュ」
ローケンスは、鞘を付けたままの大剣を持って、横に振りながら風魔法、エア・スラッシュを唱え、鎌鼬を飛ばした。
今回のエア・スラッシュは、遠くに飛ばすための維持を弱め、その代わり範囲を強化した。
建物を破壊しないように気遣い、届かないようにしたのだ。
「ファイア・アロー」
「アイス・ミサイル」
「アース・ニードル」
兵士達も魔法を、それぞれ唱えたが、幅横50mほどの暴風は、兵士達の魔法をかき消し、そのまま鎧が砕きながら兵士達ごと吹っ飛ばすほど驚異だった。
「「ぐぁ」」
吹き飛ばされた兵士達は気絶をしていく。
ローケンスは油断することなく兵士達に接近した。
残りの兵士達が慌てて、陣形を整えようとしていたが、ローケンスに接近され迎撃しようと剣を抜くが全く歯が立たないまま、次々にローケンスの大剣に叩きつけられ倒されていった。
「やっと、粗方片付いたか」
「うっ」
「くっ」
ローケンスの周りは、倒れ蠢く兵士達が辺り一面に広がっていた。
ローケンスはイシリアが心配で、すぐにイシリアとマキネがいる北口門へと向かう。
【ナイディカ村・西口門付近】
西口門、担当のジャンヌは、同じ場所を小さく円を描くようにクルクル歩きながら回っており大成のことを考えていた。
(何か最近、大成の周りに女の子が増えてきている気がするわ…。まぁ、大成は強いし、かっこいいから仕方ないけど。まさか、あの堅物なイシリアも…?あり得ない。いえ、あり得るわね…)
「というより、大成の女誑し~!浮気者~!」
考えていたらどんどんストレスが溜まり、いつの間にかジャンヌは大声が出ていた。
ジャンヌはハッと我に返り、慌てて門の方を見たが何も変化がなかったのでホッとした。
その瞬間、村の方から大きな音が聞こえた。
「いいタイミングね。ちょうど、ストレスが溜まっていたから良かったわ」
ジャンヌは殺気を放ち、不適な笑みを浮かべながら鞘が付いたままの双剣を両手に持って門に向かって走る。
「「て、敵襲!ヒィッ…」」
見張り役は、ジャンヌを見て恐怖し言葉が詰まった。
門から大勢の兵士達が出てくる。
「ファイア・ウォール」
兵士達が魔法を唱えるよりも早く、ジャンヌが先制で、炎魔法ファイア・ウォールを唱え発動した。
兵士達の周りに、高さ3メートル近くある炎の壁で囲んだ。
「あっちぃ!」
「こ、このままだと焼け死んでしまう!」
前衛の兵士達は村の中へ戻ろうとして、後衛にぶつかり合い混乱する。
ジャンヌは、前衛が後ろを向いている隙に斬り込み、次々に倒していく。
兵士達は慌てて振り向いて迎撃しようとするが、ジャンヌは止まらない。
そして、あっという間に制圧したジャンヌ。
「もう、少し粘りなさいよ!私は、まだ全然足りないわ」
ジャンヌは言いながら敵を探しに村の中央へと向かう。
【ナイディカ村・南口門付近】
南口門、担当のウルミラは、学校のランキング戦のことを思い出して。赤く染まった頬に手を当てオドオドしていた。
(た、大成さんに、む、胸を揉まれただけでなく、顔をう、埋められた…)
昨日のことなので、どうしても意識してしまう。
時々、自然と思い出しては、今の状態に陥っていた。
他の人なら嫌だが、相手が大好きな大成なら嫌ではない。
しかし、恥ずかしいのは恥ずかしく一人で狼狽えている。
それと、同時に大成は自分のことをどう思っているのかが気になり溜め息をつくウルミラ。
思い出しては急激にテンションが上がり、すぐに下がる。
それを繰り返していた。
溜め息をついていた時、大きな音と砂煙が見えた。
ウルミラは、自分の頬を両手で軽く叩き任務に集中した。
「作戦開始ですね!」
ウルミラは、右手を地面に触れた。
「フリーズ」
ウルミラは、氷魔法フリーズを唱え発動して地面を凍らす。
夜だったので、見張り役は気付かずに凍り、近くに居た兵士達も次々に凍っていく。
気付いた兵士達は、突然のことで反応が遅れ凍った。
そして、ある程度の時間が経ち、指を鳴らしてフリーズを解除した。
兵士達は、その場に崩れ気絶し倒れた。
「思ったよりも簡単でしたね。とりあえず、姫様の所に行きましょうか」
ウルミラは、あっという間に制圧し、ジャンヌのいる西口門へと向う。
【ナイディカ村・北口門付近】
北口門、担当のマキネとイシリアの2人は自己紹介をし、お互いのことを話していた。
「ねぇ、マキネさんは、大成君のことダ、ダーリンと言っているけど…。そ、その、2人は、け、結婚しているの?」
イシリアは、両手の人差し指をくっつけたり離したりしてモジモジした。
「ウフフフ…。狼狽えるイシリアさんは可愛いね。ダーリンとは、まだ結婚はしてないけど。でも、そのうち結婚するよ。あと、マキネで良いよ」
口元に手を当て、マキネはクスクス笑った。
「そ、そうなの?で、でも、大成君は…たぶん姫様…ジャンヌと結婚するわよ。あと、私もイシリアで良いわ」
話していく内にイシリアの表情が暗くなっていった。
「だね。でも、側室があるわ。まぁ、ダーリンの一番は、私だけどね。私は好きな人の傍に居られるなら、何だって良いと思うの」
マキネは夜空を見上げて星を眺めた。
「好きな人の傍に…か…。そうよね!マキネありがとう。私は、もう迷わない。マキネにだって負けないわよ」
「ダーリンは譲らないよ。イシリア」
「「フフフ…アハハ…」」
迷いが晴れたイシリアは笑顔になり、マキネも笑顔を浮かべ、お互い笑った。
それから、大成の何処が好きになったかの話題になり、問題の話がでてしまった。
「そうそう、大成君ってエッチよね」
イシリアは、笑いながら話題を出した。
「そうだね。この前、大浴場でダーリンにタオルを取れって言われて、私とエターヌ裸になったんだよね」
思い出したマキネは、少し頬を赤く染めながら話した。
「えっ!?」
イシリアは、固まったと同時に何か崩れる音がし、我に返った。
それから、すぐに大成から精神干渉魔法レゾナンスで、コンタクトが来た。
(マキネ、イシリア、そっちに副隊長が向かった。取り押さえろ)
(わかったわダーリン)
(わかったわ大成君。あと、少し聞きたいことがあるの)
ちょうど大成と話せるので、イシリアは確かめようと思った。
(ん?何?)
(大浴場でマキネとエターヌちゃんを、ぬ、脱がして、は、裸を見たのは本当なの?)
(ブッフー、い、今は話すことではないから…)
大成は、一方的にレゾナンスを解除した。
そのことで、イシリアは本当のことだと悟り、にっこり笑っていたが黒いオーラーが見えそうなほど凄みを増した。
「い、行こうよ、イシリア。そ、その…と、とりあえず、ここに向かって来ている副隊長にぶつければスッキリするよ」
ドン引きな感じになったマキネは取りあえず提案した。
「そうね…。そうよね…。フフフ…」
笑いながらイシリアは、マキネを置いて一人で門に向かう。
「ま、待って!イシリア!」
慌てながらマキネは、イシリアのあとを追った。
「「敵襲!」」
門から大勢の兵士が出てくる。
「ダウンホース」
イシリアは、風魔法ダウンホースを唱え発動し、兵士達の頭上から空気を圧縮した層を落として動けなくした。
「うぉ…、何て圧力だ。押し潰されそうだ…」
イシリアより魔力値が低い兵士達は、必死に耐えることしかできず身動きがとれなかった。
「「ぐっ」」
「「痛って」」
その隙に、イシリアに接近され鎧の隙間を剣で刺されていき戦闘不能になっていく。
「「ギャ~ッ」」
残りの兵士達は外に逃げようとするが、マキネの投げた手裏剣が間接部分に刺さる。
刺さった瞬間、手裏剣から電撃が流れ感電し気絶していく。
そして、取り押さえるのが、間に合いそうになくなった瞬間、マキネは兵士達の周りにクナイを5本を投げ、等間隔で地面に刺した。
「ペンタグラム・サンダー・スパーク」
マキネが唱えると次の瞬間、クナイからクナイに電撃が流れて五芒星の魔法陣が出来上がり魔法陣内に電撃が迸った。
「「ガァァ…」」
魔法陣内にいる兵士達は感電し気絶をした。
間近で見たイシリアは我に返り、マキネの傍に駆けつけた。
「見ていたけど。凄いわね…」
「でしょう!ダーリンがプレゼントしてくれた武器と練習方法が記載されている本のお陰なんだよ」
マキネは、頬を緩ませながら本を取り出して抱き締めた。
大成が渡した武器は、手裏剣とクナイ、それに短剣の3つだった。
大成は本を読んでいたら、新しい武器の開発に興味が出た。
そこで、時間がある時にオリジナルの武器を試行錯誤して色々作っていた。
その中の3つだ。
3つとも魔鉱石が使われている。
手裏剣は魔力を込めて投げると、当たった衝撃でその魔力の属性が数倍増幅した威力が出る仕組み。
クナイも同じで魔力を込めて投げる。
手裏剣と違い呪文を唱えると発動する仕組み。
主にクナイの数と投げた位置により、大規模な魔法陣の発動が可能。
最後の短剣は魔力を込めると、その属性が剣に出る仕組み。
短剣の仕組みは、何処でも売っている品物と変わらないが、増幅能力がついており、市販されている物より威力が数倍に高い。
だが、この武器には弱点がある。
もともと、膨大な魔力の持ち主が使用すると、武器が魔力に耐えきれずに壊れるということ。
あと練習方法が記載されている本は、練習方法だけでなく、クナイで魔方陣を発動させるための形なども細かく、書かれていた。
「なるほどね。大成君は、ただの脳筋ではなく頭も良いのね。しかも、雷属性はイメージが難しいから、他の属性よりも弱いと言われ続けてきたけど。その武器があれば、汚名返上できるわね」
イシリアは、大成を惚れ直した。
「そうだね。私もダーリンの武器に出会わなければ、今も魔法を使用しないまま戦っていたと思うよ」
笑顔で頷き、マキネは肯定した。
雷属性が、一番イメージが難しいので、威力や発動が遅いのが常識だった。
中には、極めてとても強い者もいるが滅多にいない。
理由は簡単で、ビリビリする物は自然の雷か魔物ぐらいだ。
自然の雷を受けたら、ほぼ確実に死ぬ。
そして、この辺りの魔物だとビリビリというより、ちょっとビリッとしたぐらいの攻撃しかしてこない。
結局、どうしてもイメージが湧かないということだ。
だから、マキネは今まで魔法を使用しないで、武術だけで戦ってきたのだ。
「ダーリンの所に行こう。イシリア」
「そうね」
「あっ、そういえば副隊長は何処だろう?」
2人は、副隊長を探した。
そして、イシリアが副隊長を見つけた。
「あっ、い、居た…たぶん、服装が皆よりも立派だから、この人だと思うけど…」
「……。」
副隊長の倒れて気絶していた。
その姿というとイシリアにあっちこっち刺されており、まるで拷問されたかの様で見るのも痛々しいほどの姿だった。
流石のマキネも何も言葉がでなかった。
とりあえず魔法で拘束したマキネとイシリアの2人は、大成を探しに向かう。
次回、エターヌの村の奪還の話は大詰めです。




