最後のランキング戦とローケンス家
ウルミラとランキング戦で闘い、負けた大成。
普通は、ここでランキング戦が終わるはずなのだが、ジャンヌの提案により続行することになり、ジャンヌと闘うことになった。
【ラーバス学園・グランド】
「あのさ、ジャンヌ。お願いだけど、日を改めないかな?今日は何故か問題が続いて、今度も何か起こりそうだから…」
苦笑いしながら大成は説明をした。
こんな日は、何もしないで大人しく過ごすのが一番だと思っている大成。
「そんなこと言っても逃がさないわよ。あと、寸止めもなしね」
ジャンヌは、大成を見て首を少し傾げて笑顔を浮かべた。
大成は、ウルミラに助けを求めたがウルミラは苦笑いを浮かべて顔の前で両手合わせて謝っていた。
「わかったよ…」
大成は諦めて項垂れた。
「フフフ…。わかれば良いのよ」
そんな、大成を見て満足そうにジャンヌは頷いた。
「試合するなら、さっさと中央へ来い。あまり時間がないぞ。あと、ウルミラ。フリーズを解け」
グランドの中央でマミューラは面倒くさそうな態度をしていた。
「あっ、はい!すみません」
慌てながらウルミラは、指を鳴らしフリーズを解除すると凍った地面の氷全体に細かくヒビが入り砕けた。
大成とジャンヌは、それぞれ木刀を2本ずつ手に取ってグランドの中央へと向かった。
「ハァ~。やっと、最後だな。最後だから思いっきりやれ」
頭を掻きながらマミューラは溜め息をする。
「試合開始!」
マミューラが試合開始の合図と同時に大成とジャンヌは、お互い身体強化をして接近した。
「私は、大成、あなたを越えて見せるわ」
ジャンヌは真剣な表情で殺気と威圧感を放ち、殺す気で攻めると決意を示す。
大成のことが好きだからこそ、大成の実力を信じている。
「俺も、今、出せる力で全力で戦う」
ジャンヌの覚悟が伝わった大成は、言葉使いが変わったが殺気は出さずに威圧感を増した。
ジャンヌが右手の木刀で斜めに振り下ろそうとしたので、大成は一歩前に出て振り下ろされる前にジャンヌの右手首を左の木刀の根元で押さえて右手の木刀で横に振り攻撃をする。
「くっ」
ジャンヌは少し後ろに下がり回避して、再び接近して左右の剣で上下左右に連撃する。
「ハアァァ!」
「ウォォ~!」
大成は冷静に回避できるのは回避し、受け流したりして捌いていく。
「「ぐっ」」
「そこだ!」
「あまいわ!」
そして、鍔競り合いになり、大成はタイミングを見計って力を抜いて切り込むがジャンヌは難なく防いだ。
「やるな、ジャンヌ」
「大成、あなたに褒められると嬉しいわ」
お互い戦い合っているのに、2人は口元に笑みを浮かべて戦っていた。
「良い機会だ。皆に少し見せてやる。武術は舞でもあることを」
大成は、瞳を閉じ一呼吸して瞳を開いた。
そして、左手は真横に向け右手と左足を上げ構えた。
(何?あの構え!?初めて見る構えね…。いえ、ここは受け身に回るのは愚策だわ)
今まで見たことのない大成の構えにジャンヌは始めは防ぐことを考えたが、すぐに首を振って考えを改めた。
「行くわよ、大成」
ジャンヌは、迷わずに大成に接近する。
「ああ、ハッ!トォッ!ヤッ!シッ!」
大成は回りながら攻撃したり、飛んだり、しゃがんだり、蹴りを放ったりしてジャンヌに次の動きを読ませない。
大成の動きは流麗で、まるで踊っているかのように見えて皆は釘付けになっていた。
大成と直接戦っているジャンヌは、リズムを狂わされて苦戦を強いられながらも皆と同じように大成の舞に美しいと感じていたが、それ以上に勝ちたいと思った。
そして、次第にジャンヌは劣性になり小さな隙ができた。
大成は、隙を見逃さず木刀を投げつける。
「あまいわ。えっ!?」
ジャンヌは飛んできた木刀を横に弾いたが、弾いた木刀の死角からもう一本の木刀が飛んできていた。
「くっ」
慌てて、もう片方の木刀で弾いたジャンヌ。
しかし、大成に間合いを詰められた。
大成は、右手を伸ばして発勁の動作に入った。
(本当は頭か心臓に発勁したいけど、頭は危険だし、心臓だと胸に触ってしまうから、試合の後、俺の命が危険だ。ここは安全に…)
大成は、ジャンヌのお腹に発勁することを決めた。
「くっ!」
ジャンヌは、硬直している体を無理やり動かそうとしたのでバランスを崩した。
「きゃ」
「えっ!?」
ジャンヌがバランスを崩したことで、大成の手がジャンヌのお腹ではなく、胸に触れてしまった。
「「あっ……」」
その場で、大成とジャンヌはそのまま固まった。
ジャンヌは一気に顔を赤く染め、一方、大成は反対に一気に顔を青く染まる。
「大成、あなた何か言い残したいことはある?」
先に立ち上がったジャンヌは、笑顔を浮かべて死刑宣告した。
大成は、頬を引き攣りながら覚悟を決めた。
「お、怒ちゃ、いや~ん…」
恐る恐る、大成は空いている左手もジャンヌの胸を触り両手で揉んだ。
「揉むな~!!」
ジャンヌは顔を真っ赤になり、木刀を持った状態でスクリューアッパーを放った。
スクリューアッパーは大成の顎にクリティカルヒットし、大成は空に高く舞い上がり凄い音を立てて地面に落下した。
大成は、完全に意識を失っていた。
意識を取り戻した大成は、再びハイポーションを飲むことになった。
こうして、ランキング戦は終わりを告げた。
クラスのランキング戦の結果。
一位 ジャンヌ
二位 ウルミラ
三位 大成
四位 イシリア
五位 マーケンスとなった。
【ラーバス学園・教室】
昼休みになると、大成の周りにクラスの皆が集まっていた。
イシリアは頬を赤く染め、大成に歩み寄って話し掛ける。
「あの、大成君。突きは、こんな感じで良いの?」
「うん、良いよ」
(あれ?呼び方が大和君から大成君に変わった?)
違和感に気付いた大成は一瞬戸惑ったが、気にしないことにした。
ジャンヌとウルミラは、そんな大成とイシリアを怪しむ様な視線で見ていた。
「あっ、イシリアさん、抜け駆けはズルい!」
「さっきは、ごめん。俺に、もう一度アドバイスをしてくれ」
「大成君が言ってた通り、私は斧より剣の方が向いている感じがしたよ。ありがとう」
クラスメイト達は、いろいろ大成に話し掛ける。
大成は、一人一人に丁寧に教えていき、クラスに馴染むことができた。
こうして、学園生活1日目が終わった。
皆が帰った後、誰もいない教室に大成、ジャンヌ、ウルミラの3人は残っていた。
大成の左右にジャンヌとウルミラが立っており、大成は自分の机の上に座って窓から夕焼けを見ていた。
「大成、初めての学園生活はどうだった?」
「ん?…問題続きで濃い1日だったけど。とても楽しかったよ。2人共、ありがとう」
ジャンヌに聞かれたので、大成は口元に笑みを浮かべ素直に答えた。
「フフフ…。確かに濃い1日だったわね」
「フフフ…そうですね。でも、楽しく過ごせたのでしたら良かったです」
ジャンヌとウルミラは笑顔で大成の腕に抱きつき、屋敷へと一緒に帰宅した。
【ラーバス国・ローケンス家】
「ただいま、戻りました」
学園から下校したイシリアは、対面キッチンのテーブルの自分の席について自身の唇に手を当て頬を赤く染めていた。
向かい傍では、母であるマリーナが料理をしており、鍋からハーブのいい香りがする。
マリーナがトントンとサラダをリズム良く切る音が聞こえてくる。
イシリアは、その音に合わせて組んだ足を前後に振っていた。
もうすぐ料理が完成する時、リビングのドアが開いた。
「おお、美味しいそうな香りがするな」
「そうだね、父さん」
ローケンスとマーケンスが嬉しそうな表情をして部屋に入ってきて、マーケンスはイシリアの隣に座った。
「ウフフフ…。イシリア、マーケンス2人共どうしたの?今日は、何か良いことでもあったのかしら?」
学園から帰ってきたイシリアとマーケンスの態度が気になり、マリーナは笑顔で2人に尋ねる。
「父さんも気になるな。2人共、良かったら教えてくれないか?」
ローケンスも、気になり賛同した。
「うん、わかった。今日さ、大和っていう編入生が来たんだ。しかも、人間でさ。自己紹介の時に、ちょっと揉め事になったんだけど。ジャンヌ様がランキング戦を提案して、すぐにすることになったんだ。そしたら、人間の癖に強くってさ。俺とイシリアも負けたんだ。その大和と試合をした時、俺に父さんの戦い方をアドバイスをしてくれたんだ」
負けた勝負だったがーケンスは、嬉しそうに話した。
「フフフ…。それでか、久しぶりに手合わせしたら格段に強くなっていたから父さん驚いたぞ」
「エヘヘヘ…」
ローケンスは笑顔でマーケンスの頭を撫でながら褒めると、マーケンスは鼻を掻きながら喜んだ。
「あなた達2人を倒すなんて。人間なのに凄いわね。なら、その子は魔力値がとても高かったのかしら?」
マリーナは、口元に手を当てて驚いた。
「それが、驚くことに違うんだよ。信じて貰えないかもしれないけど、大和は魔力値2なんだ。その代わり武術と魔力コントロールが化け物じみていて、父さんの戦い方もできるんだ」
目を輝かしながら、マーケンスは熱く説明をする。
「何だと!?1つ聞くが、もしや、その子供は髪の色は黒ではなかったか?」
「ううん、違うよ父さん。大和の髪色は蒼色だった。俺も初めは修羅様と思ったけど、髪型や髪色も違うし。何よりも試合中は魔力値2の強さだった」
ローケンスの疑問にマーケンスは答えた。
「ところで、イシリア。あなた、先から顔を赤く染めているけど。もしかして、その子に惚れたのかしら?」
「な、な、何を、お、仰っているのですか、お母様。ち、ち、違います。そ、そ、その…そう、強い子が編入して来ましたから、これから面白くなるなって思っていたところです」
マリーナのダイレクトの質問に、イシリアは挙動不審になり真っ赤だった顔を更に赤く染めた。
「えっ!?そうなのか。試合が終わってから、大和の接し方が変わったから。てっきり、好きになったと思ったんだけどな。なら、試合中にキスしたことを思い出…。ぐぁ、い、痛い、ギ、ギブ、ギブ、ギブ…」
マーケンスが疑問に思っていたことを話していたら、隣に座っているイシリアに顔を掴まれてアイアンクローをされる。
マーケンスは必死にイシリアの手を退けようと両手で引き離そうとするが、逆にめり込んでいき気絶した。
「あらあら、ウフフフ…」
「おい!イシリア!正直に答えるんだ!キスしたって本当か!?それとも無理やりキスされたのか!?どっちだイシリア!いや、どっちも許さん!今から俺が殺しに行く!その人間は、今、何処におるんだ?」
口元に手を当て微笑むマリーナ、一方、ローケンスは顔を真っ赤にして殺気と威圧感を放つほど激怒していた。
「ちょっ、恥ずかしいから、やめてよ。お父様!」
「そうよ、あなた。それは、流石に」
慌てて止めるイシリアとマリーナ。
「くっ、マリーナ。お前が言うなら仕方ない。しかし…。もし、会った際はイシリアに相応しい奴か見極めてやるぞ。合わなければ…どうしてくれようか…ククク…」
マリーナに言われたローケンスは歯を食い縛って堪えたが納得できずに不敵に笑みを浮かべる。
「う、ううう…」
マーケンスは、意識を取り戻して自分の顔を触って凹んでないか確認した。
マリーナは皆に料理を渡していき、イシリアに渡す時に耳打ちをした。
「イシリア、お母さんはあなたを応援するわ。頑張りなさい。あと今度、その大和君って子を家に連れてきなさい。美味しい料理を作ってあげるから」
「〜っ!はい!」
イシリアは、顔を赤く染め口をパクパクさせて最後に笑顔で頷いた。
次回、大成が魔王として初めて戦います。




