学園と自己紹介で…
流星が魔人の国にまだ、いるのか捜索しに行った大成達。
だが、流星は自国に帰還していた。
大成は屋敷に戻ったら、ジャンヌとウルミラが制服姿だった。
【ラーバス学園】
ここラーバス学園。
日差しが眩しく、風も健やかで新学期が始まるには、ぴったりな天候だ。
そんな中、バタバタと廊下を走る男子生徒がいた。
男子生徒は、教室のドアを勢いよく開けた。
「どうしたの?マーケンス君」
クラスの女子が気になって尋ねた。
「おい!お前ら今日、編入してくる奴がいるって知っていたか?」
男子生徒の名前は、マーケンスでローケンスの息子。
髪が緑色のツンツンヘアでヤンチャな感じの少年。
「えっ!?本当なの?」
「男?女子?どっちだ?」
「女子やったら良いな」
マーケンスの言葉で、クラスメイトが騒ぎ立つ。
「聞いた話じゃあ、男だ。しかも、人間だとよ」
「はぁ~、男かよ。いらねぇ」
「ん?人間なのか?本当かよマーケンス。いまどき、人間が編入してくるのか?」
3年前に、人間が一方的に魔人に宣戦布告し、勇者が魔王を討伐した。
それからというもの、魔人と人間の関係は最悪になった。
当時、ジャンヌとヘルレウスメンバーは話し合い、魔人の国にいた人間には罪がないということで、帰国したい人は安全に人間の国に帰国させた。
魔人の人々の中には、魔王を討伐されても、いつも通りに優しく接する人もおり、残る人間も多くいた。
しかし、やはり子供や身内を亡くした人、魔王の信者などは、時が進むにつれ嫌がらせや暴行などが増え始めた。
結局、殆どの人間は帰国したのだ。
そういうことで、人間の編入生ということに驚き、それだけで話題となった。
「なぁ、どう思う?イシリア」
マーケンスは、双子の姉イシリアに聞いてみた。
「可能性は低いけど、魔王修羅様かもしれないわね」
イシリアは、席に着いていて、机に右肘を置いて手に顎を乗せたまま答えた。
「「あの修羅様が!」」
イシリアの発言に皆は一斉に驚く。
「可能性の話よ。とても低いけどね」
さっきから、イシリアはテンションが低かった。
「イシリア。お前、興味がないのか?」
面白い話題を手に入れたマーケンスは、不機嫌になりイシリアに詰め寄る。
「魔王修羅様なら興味はあるわ。でも、違う人なら興味ないわね」
イシリアは、面倒くさそうな顔で溜め息をつく。
そんな、イシリアの態度に激怒したマーケンスは、顔を真っ赤に染め、イシリアに間近に迫った。
「まぁまぁ、2人とも落ち着いて」
「落ち着いてよ」
クラスの皆は、ビクビクしながら止めようとした。
そんな時、教室のドアが開いた。
「おはよう」
「皆さん、おはようございます」
ジャンヌとウルミラは、教室に入り挨拶をした。
2人が来てくれたことに、クラスの皆はホッと胸を撫で下ろした。
ジャンヌとウルミラは、皆の顔を見て何となく状況を把握した。
「ジャンヌ様、ウルミラちゃん、おはようございます」
「ジャンヌ様、ウルミラ様、おはようございます」
クラスの皆は、ジャンヌとウルミラに挨拶した。
「ハァ~。また、イシリアとマーケンスが喧嘩しているのね。双子なのだから仲がいいと思うけど。今回は何が原因なの?」
ジャンヌはイシリアとマーケンスに近づき、ウルミラはジャンヌのあとを追った。
「ジャ、ジャンヌ様、ウルミラ様、おはようございます」
マーケンスは、今さっきまで、怒って真っ赤だった顔とは違う、赤さで頬を染め挨拶した。
「ジャンヌ、ウルミラ、おはよう。大したことないわ。ただ、今日は人間が編入してくるという話題があったの。それで、興味がない素振りを見せたら喧嘩になったのよ」
マーケンスの態度の変わり様を見て、イシリアは溜め息をつく。
「やだな、喧嘩なんてしてませんよ、ハハハ…」
マーケンスは、笑って誤魔化した。
「なら、いいわ」
「大きな喧嘩にならないで良かったです」
さっぱりとしたジャンヌと優しく接するウルミラ。
「ねぇ、ジャンヌ」
イシリアが声をかけた時、教室のドアに人影ができた。
「お前ら、席に着けホームルーム始めるぞ!」
女性教師のマミューラが、乱暴にドアを勢いよく開け教室に入った。
「ハァ~。先生、何度も言いますがドアが壊れますよ」
ジャンヌは溜め息をしながら注意をした。
「ああ、すまんな。これからは気を付ける。それより、皆に編入生を紹介する。おい、入って来ていいぞ」
反省の色が見えないマミューラは、後頭部を掻きながら大成を呼んだ。
大成は廊下におり、深呼吸し呼吸を整えて扉を開け、教室に入った。
「皆さん、おはようございます。大和大成です。宜しくお願いします」
大成は、マミューラの隣に立ち自己紹介をし、礼儀正しくお辞儀をした。
1人マーケンスは立ち上がった。
「あのさ。お前、魔力値いくつ?」
マーケンスは、大成を睨みながら質問した。
魔力値というのは、学園では1年に1回魔力を測定する。
特別な水晶に魔力を流すと数字が浮き出る。
魔力の強さで1~10で表す。
最小1で最高は10だ。
今までランク10は、先代の魔王、ただ1人だけだった。
「2だけど」
大成は、隠さず恥ずかしからずに答えた。
「2だってさ。おい、皆聞いたか?マジかよ。ハハハ…」
マーケンスが腹を抱えて笑った。
「「ワハハハ」」
「笑うのは失礼よ。大和君は人間だから、それが普通だよ」
「「そうよ」」
他の男子達も笑ったが、女子達は大成を庇った。
大成、ジャンヌ、ウルミラ、イシリア、マミューラは、黙っていた。
ジャンヌとウルミラは、大成を馬鹿にする男子を睨み付ける。
そんな、ジャンヌとウルミラの態度を横目で見て、イシリアは怪しんだ。
大成、本人は特に気にしてなかった。
そして、マミューラは楽しそうに場の成り行きを見守った。
なぜ、大成が魔力値が2なのかは少し、時を遡る。
【過去・屋敷】
朝早く、ジャンヌはフッとあることに気付き、念のため屋敷で大成の魔力値を測定した。
測定結果は、驚きの10だったのだ。
しかも、測定に使用した水晶玉にヒビが入り粉々になった。
「「えっ!?」」
「あっ、壊してごめん」
ジャンヌとヘルレウスメンバーは、測定結果に驚いて口を開けたまま固まった。
一方、大成は全く測定結果の凄さがわかっておらず、水晶玉を壊したので謝罪をした。
しばらく静寂が訪れた。
「め、目立たないようにするには、名前を変えたり変装するだけではなく、魔力測定の時は魔力を抑えないといけないわね」
我に返ったジャンヌが、顎に手を当て考えた。
「普通だと、数値いくつぐらい?」
「同い年の人間の平均だと1~2です。3の方も居ますが本当に珍しいですね。人間は魔人に比べ、魔力が低いですが代わりに光魔法が使用できる方が多く、回復魔法が使用できます。今、魔人の国は人間が殆ど滞在していませんので、回復する手段は主にポーションしかなく、今ポーションの価格が急上昇してます」
ウルミラは、大成の疑問に答えながら説明し、皆も悲しい表情していた。
「えっ!?なら、10って異常じゃない?」
「当たり前でしょう!しかも、水晶玉が壊れるなんて、大成、あなた本当に人間なの?年齢を偽ってないの?」
「ひ、酷いな。どう見ても普通の同い年の人間だろう」
そんな、大成とジャンヌのやり取りが続いた。
結局、名字を神崎から大和に変え、ラナミの実で髪を蒼色に染色し、髪型も変えた。
名前を大成のままにしたのは、違う名前にすると、うっかりジャンヌとウルミラが間違うかもしれないからだった。
あと、ラナミの実は気を付けないと、水性なので強い雨、風呂などで色が落ちる。
それから、皆がまだ登校していない時間帯に大成とジャンヌとウルミラの3人は校長室に行き、不正防止のため教官5人の前で、大成の魔力測定が開始された。
大成は、徐々に魔力を上げ水晶が2になった瞬間、そのまま、魔力を一定に維持した。
そいうことで大成の魔力値は2なのだ。
校長と担任になるマミューラには、大成のことを正直に話している。
【ラーバス学園】
「おい!何だその反応は」
大成の態度に苛つくマーケンスは、大成を睨んだ。
「嘗めてるのか」
「人間のくせに生意気な」
他の男子も、苛ついて罵声を飛ばす。
「ちょっと、男子。大和君が可愛そうでしょう」
「そうだよ」
大成を庇う女子達。
「静かにしなさい!大成、あなたの強さを証明すれば全て解決するわ。弱いなら男子の言う通り、強いなら男子も見直すわ」
ジャンヌは大きな声を出して立ち上がり提案する。
皆は静になり、ジャンヌの方を向いた。
「ハァ~、仕方ないな。大成はランキング戦してないから、今日からするか」
切りがないと思ったマミューラは、溜め息をして面倒くさそうな態度で頭を掻き提案した。
だが、マミューラは笑顔を浮かべていた。
「先生!まさかとは思いますが、たった1日で皆と総当たりさせる気ですか?」
イシリアは、手を上げて質問した。
「そうだ。あまり時間を無駄にできないからな」
「大和君が不利なのでわ?」
「仕方ないだろう。それと、ルールだがランキングが低い順に闘って貰い、負けたらそこで終わりという形式で良いか?」
皆は大成に注目し、大成はジャンヌとウルミラを見た。
ジャンヌとウルミラは、軽く頷いた。
(何で自己紹介で、こんなことになったんだ?)
「別に構いません」
大成は、心の中で溜め息をつき頷く。
口元に笑みを浮かべるマミューラも満足そうに頷いた。
「なら、決まりだな。各自、ウォーミングアップしろ。終わり次第、始める。良いな?」
マミューラは、好奇心丸出しだった。
「「はい」」
生徒達は席を立ち、各自ウォーミングアップしにグランドに向かった。
次回、ランキング戦が始まります。
用事が忙しく、投稿遅れました。
大変申し訳ありません。
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